The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題) 作:十五夜の月
どもー、お久しぶりです!
取り敢えず先ずは本文、ごゆるりと!
脳無が一歩前に進み出たのを合図に、ガロウは力強く地を蹴った。
恐ろしく速く、それでいて清流の様に静かで滑らかな動きを見せた拳がガロウの意志に従って吸い込まれるように叩き込まれる。
ーーーだが。
拳が叩き込まれたとほぼ同時に脳無もガロウに対して拳を打ち込んできたのだ。
「ほぉ・・・」
感嘆の声をガロウが漏らす。
脳無に触れる拳からは、剥き出しの脳が少しばかりも揺れていないのが感じられる。
ーーー流水岩砕拳。
迫り来る拳から自分の身体を守るために繰り出されたその技は、脳無の拳を見当違いの方向へと逸らせた。
再び脳無の腕を掴んで投げ飛ばした、そこでピリッと痺れている片手に気づく。別に問題は無いが僅かな驚きが生まれた。
「・・・・・・金属バットと戦った時も手が痺れたが、パワーだけならアイツ以上だな」
加えてどうやら打撃技が効かないあの身体には流水岩砕拳は相性が良くないらしい。
ーーーならば戦い方を変えるだけ。
「フッ!」
気合いと共に短く息を吐きそれと同時に、ガロウは再び全力で地を蹴った。およそ二十メートル程の距離を一瞬で詰めて、身体を僅かに縮ませた。
弾き出された弾丸の様にスピードを乗せた右手の突きを二発、僅かにタイミングをズラした左手の手刀を左斜めしたから一発。
避ける様子を見せずに腕を振り上げる脳無の胴に最初の二発が、次いで振り下ろそうとする腕に手刀の一撃が吸い込まれた。
脳無に打撃は効かないーーー故にガロウが行った攻撃は打撃技ではない。
ーーー旋風鉄斬拳。
駆け抜けたガロウの後に立つ脳無の片腕にパックリと斬撃の切れ目が走り、胴には鋭い槍で突き刺した様な穴が空いた。
攻撃が通った事に対する僅かな歓喜と共に顔を後ろの脳無に向けてーーー眉をひそめた。
斬撃と刺突によって付けた深い傷がみるみるうちに治ってゆくのだ。
「残念だったな。脳無には再生の個性がある、対平和の象徴としてのな。どういう原理で脳無にダメージを与えたのかは分からねぇが・・・無駄だったな」
少し離れたところに居る死柄木の言葉にガロウは納得する。打撃の無効化に再生、更に超絶なパワーと来ている。対平和の象徴と言われるだけのことはある、ということか。
恐らくパンチのパワーは金属バット以上、もろに数発食らえば危ないかもしれない。
ドウッ、という音と風が顔に打ち付けられ、ガロウは目を見開きながら身体を縮めた。
横凪の剛腕が微かに髪を撫でる。
ーーー腕力だけじゃない、脚力も相当なもんだな・・・これは。
ガロウの両腕が霞のように消えたかと思うと、水を斬るような音と共に脳無の胴に二筋の斬撃跡が生まれる。
ガロウは攻撃の手応えを確認しつつ、再び深くしゃがみこむと相手の足を蹴りで払う。予想通りに脳無は体勢を崩して地面に手を付いた。
倒れる相手に向かって三度、地を蹴り飛び出す。関節、靭帯を鉄斬拳で深く切断すれば拘束する時間を稼げると思ったからだ。
だが。地を駆けながら繰り出した二発の手刀を、より正確に言うならガロウを、脳無は輝きの無い目でじっと見ていたのだ。
ーーー何のつもりだ?
そう思った瞬間、脳無の腕が動いた。
バゴンッ!!という音と共にガロウの目の前には幾つものコンクリートの破片が迫っていた。先程に、ガロウが黒霧にやった事と同じ事をこの脳無は行ったのだ。
僅かに焦りを覚えたガロウは飛んできたコンクリート片を上下左右へと受け流す。
最後のコンクリート片を後に受け流した時、力一杯握りしめられた拳が大きく振り被られていた。
脳無との距離感故に回避は難しいだろうと判断し、故にガロウはより近くにと歩を進めた。
振り抜かれる拳が最大速度に達っする前にそっと手をあてがい、逸らす。伸びきった腕の本来ならば血管が走っている部分に斬撃を放ってから距離をとった。
そこで初めて自分の息が僅かに上がっているのを確認したガロウは笑みを浮かべる。
「こっちに来てから、初めてだな。ここまでできる奴は」
腰を落として両の手を地面に触れるか触れないかの高さに落とすと、次の瞬間にはガロウの姿はその場から消えていた。
倒れこむ脳無、その後方に立つガロウと地に転がる二本の足。
浅い攻撃は超再生によりすぐさまに回復してしまうゆえの行動。
自身を支える足を失いながらも体を向ける脳無にガロウは足を向ける。
「だけど、それもここまでだな」
今から数十秒の間の状態の脳無にできることは何もない。
黒霧と死柄木もようやく動き出すがーーー、
「すべてが遅い」
足は地を踏みしめて、腕は腰の横で構える。
狙いは首と胸部の間、そこを深く損傷させれば超再生で完全に回復するまでにかなりの時間を稼げるかもしれない。そうなれば拘束する時間も十分だろうし、万が一脳無が死んでしまったとしても致し方のないことだろう。
僅かな思考ののち勝利の確信と共に打ち出した貫手はショック吸収に阻まれることになく、深々と脳無に突き刺さった。
「いよっしゃあい!!」
だれかの歓声が遠くから聞こえたようにガロウは感じた。
しかしその表情が、笑みから驚愕と苦痛に耐える表情に変わる。
一秒、一秒と時間が経つごとに燃え上がるような鋭い痛みが神経を伝わってガロウの脳に異常を伝える。
周りで戦いを見ていたものたちもその異常に気付き始めた。
「どういうことだ・・・あれ」
「・・・え」
「なんで拳獣の腕が・・・」
ガロウの腹部の激痛はガロウ自身の手によって起こされていた。
ガロウの背後に浮かび出た黒い霧から腕が飛び出し脇腹を貫いていたのだ。しかしながら、死柄木の行動以上に黒霧の行動には最大の注意を払っていた筈なのに。
そこでようやく脳無の体から血液以外に予想してなかったもの、黒霧の靄が漏れ出しているのに気づいた。
「これは・・・予想の斜め上を・・・」
「ふむ、やはり理解が早い。しかし今回は、私の方の策が勝った様ですね」
つまり黒霧は自身の個性によるゲートを脳無の体内に作り出したということ。
一種の固定観念の裏をついた誰も予想せぬ奇策。
ーーー抜けない?
咄嗟に体を守るように片腕を出した判断は間違ってはいなかっただろう。
だが、脳無に関してそんなことは関係なかった。
◎
さっと振り向くとそこに居たのはコスチュームをボロボロにして脇腹の傷口から血を流し、木に打ち付けられたガロウだった。
敵の方を振り返り、綠谷は総毛立つ。
相澤を担いで避難していた綠谷達と敵の間には少なく見積もっても100、いや200mはあいていた。
ーーーその距離を一瞬・・・どんなスピードで!?
それだけのスピードで飛んできたのだから相当の力で殴られたはずだ。
ガロウはピクリとも動こうとしない。
「とにかく、厄介な生徒は消せましたね。一安心ですね、死柄木 弔」
「ばーか、時間かかりすぎだ」
ガロウを助けなければ。遠目で見ただけでも明らかに危険だとわかる。
だが、ガロウが負けた敵を相手がいる状況で助けて逃げることができるのだろうか。
ーーーいや、そうじゃない!
「やらなきゃ、いけなーーーーーー」
「ゲームオーバー、だな。帰るぞ黒霧」
「「「え?」」」
死柄木のつぶやきに緑谷達三人の声が揃う。
「帰る?・・・帰るっつったのか、あいつら?」
「ええ・・・そう聞こえたわ」
「やったな緑谷、俺たち助かるぞ!」
「う、うん・・・ならすぐにガロウくんを助けないと」
動き出す三人をチラリと死柄木は見ていた。そして僅かに口角を上げる。
「その前に少しでもーーー」
死柄木の呟きの意味をいち早く察知した黒霧が個性を発動させ、躊躇うことなく死柄木は腕を突っ込む。
ただただ単純なる、狂気を乗せて。
「平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう!」
死を纏った手が目前まで迫りーーー。
「・・・・・・! ?」
その音が訓練所のドアをぶち破った音であることには直ぐに気付いた。
やって来たのだ。
「もう大丈夫」
「私が来た!」
◎
迫り来る拳を見ながら思う。
恐らく、あのムカつくハゲ程の力はなくとも金属バットやクロビカリのパワーなら余裕で超えてるであろう拳。
片手一本でも流せないことも無いだろうが・・・。
「・・・試すか?」
いつだって戦いを得て成長した。
死を乗り越えて強くなった。
ーーー腹の傷に、あの拳・・・丁度かな。
笑みを浮かべて、衝撃を受け入れた。
自分の鼓動がやけに大きく聞こえる。
自分の命が全身を駆け巡り、染み渡る。
体とそして心が戦えと熱を発する。
「・・・あっちの時とおんなじだ」
ガロウの口から血と共に笑いが溢れた。
久しぶりの投稿でございました、遅れて申し訳ありません!
いよいよUSJ編もクライマックスです!
どんな終わりになるか楽しみにお待ち下さい!
頑張って書きます!
そして、次の話を投稿する時にはアンケートをした応えを書きたいと思います!
活動報告で書きますのでお気を付けて!
感想とか些細なことでいいんでお待ちしております!!
では、また次回!