The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題) 作:十五夜の月
子供を助けた翌日、ガロウは椅子に座りノートに何かを書いていた。
それは、ここ数日で分かったこと。
ーーーまず、考えにくいがここはオレがいた世界とは別の世界、と思った方がいい。
色んな方法(主にネット)で調べたが、シルバーファングやキング、タツマキ等の自分が知ってる、他人も知ってて当然の様な有名ヒーローの名が見当たらない。
更にヒーロー協会も存在しない。
ーーーここでは個性と呼ばれる特殊能力が存在してる。
この世界では人口の約八割が個性を持っているらしい。その内容は多岐に渡り、特殊能力の様なものから先日の男の様に腕が複数あるといった異形型と呼ばれる物まである。
ーーー最後にこの世界でもプロヒーローが存在。更に対する敵側はヴィランと呼ばれてる。
これはガロウがもといた世界とあまり変わらない。正義と悪が見事に分かれていて、非常に分かりやすかった。
「そしてヒーローになる為にーーー」
ガロウは雄英高校の受験票を手に取る。捨てようとも思ったそれは机の引き出しに大切に保管されていた。
「ヒーローについて学べる学校が、この世界にはある」
ガロウにとってこれが重要であった。
趣味とは言え、本気でヒーローを目指す以上、ヒーローについて学ばなければいけない。そう考えたからだ。
「それにしても・・・この倍率はねぇだろ」
愚痴をこぼすのも無理はない。
調べればこの雄英高校のヒーロー科の倍率は300倍。いや、可笑しいだろ。
筆記試験と実技試験があるらしいが重要なのは実技だな。
「ここである程度カバーしねぇと」
天才である自分には楽勝!という考えは捨てた方がいいな。足元すくわれたら元も子もねぇ。
幸い身体能力はより向上している。もしかしたらこれが個性によるものかも知れないが、どっちにしろ悪いことは無い。
「流水岩砕拳も旋風鉄斬拳もキレッキレだし、戦闘には問題ねぇ」
実技試験がどんなものか分からないが不安はない。筆記の分は必要そうな事は調べてその全てを頭に叩き込んだ。
試験は明日。
少しも不安のないガロウは寝坊しないようにそそくさとベッドに寝転がった。
◎
「はぁー、でけぇな」
雄英高校。
日本で一二を争うと言われるヒーロー養成学校。凄いとは思っていたが実際に見てみるとガロウの予想など軽く超えている。
「そしてこの人数か・・・」
倍率300倍。
こちらも疑っていた訳では無いが、実際に見てみると受験生の多さに圧倒されそうになる。
だが、ガロウは違う。
ーーーこんなものS級ヒーローのチームに比べりゃどうってことねぇ。
見た目の歳は周りにいる少年少女と変わらなくても、かつての記憶と経験がガロウに余裕を持たせていた。
そんなガロウから醸し出される雰囲気を察知できる者は、今この場には居ない。
だからだろうかーーー
「おい!そこの君!」
「あ?」
振り向くとそこには如何にも優等生と言った風貌の少年が立っていた。
少年はこちらに近付いてくると目の前で足を止める。
「なんだその服装は!」
「あ?」
ビシッと効果音がつきそうな勢いで少年はこちらに指を指してきた。
自分の服装を確認してから少年の服装を確認する。なるほど、指摘されるのごもっともだ。
今の自分の姿は黒のズボンに黒のインナー。
とてもじゃないが、受験に来る格好ではないだろう。
「なぜ制服を着てこない!学生としての常識がなってないぞ!」
どうやら予想通りだった。
なるほどなるほど、確かに受験に制服で来ないのはマナー違反かも知れない。
実際、家のクローゼットの中には何処の学校の物か分からない制服もあったが、ガロウはそれを着てこなかった。
「見たまんまに真面目だな・・・」
「なんだと?」
「受験には制服で来る。当たり前だな。
だが、その当たり前のことをして無いって事は理由があるからに決まってるだろ?」
「た・・・確かに」
「常に何が起きてもいい様にしておく。制服だといざと言う時に不便だ。
何か起きた時に対応出来なきゃ、ヒーローなんかになれねーぜ、真面目くん」
ーーーな〜んてな。
ガロウはその場を立ち去りながら笑いを堪えるのに必死だった。
さっきの言葉は殆どが出任せ。実際には制服に着替えるのがめんどくさかっただけだ。
それをまさか、あんな風に受け止めるとはな。
「・・・やっぱりどいつも餓鬼だな」
外見は同じだがちょっと観察してみると受験という特別な状況だからか緊張してるのが手に取るように分かる。
こんな状況で冷静になれないやつが、果たしてヒーローとしてやっていけるのか。
そこで考えるのを止める。
自身もヒーローを経験したことは無い。なら条件は一緒なのだからこんな考えでは足元を掬われかねない。
立場は同じ、ヒーローを目指す者。ならば見下さぬように気を付けようと自身に強く念を押した。
◎
「さてと・・・いよいよ実技試験だな」
ふぅ、と息を吐きながら呟く。
正直この実技試験が一番楽しみだった。別に内容に興味がある訳では無い。今現在の自分自身の力を知るいい機会になるかもしれない。強くなるには、まずは自分を知るところからだ。
「リスナーども今日はオレのライブにようこそー!!エビバディセイ!」
『『・・・・・・・・・』』
急にうるせぇ。耳を抑えながら音の発生源に目を向けると一人の男が立っていた。
ーーーあれは確か、プレゼント・マイク。
「コイツはシヴィー!テンションが低いぞリスナー共!」
勝手に騒いでるが、どうするんだこの空気。完全に凍りついてるぞ。静かにさせたいと思ってたなら大成功だが。
「入試要項通り、リスナーの諸君には模擬市街地演習をしてもらう」
「うわぁ、感激だなぁ。本物のプレゼント・マイクだ。・・・ラジオ毎日聞いてるよ。それに雄英高校の教師は全員がプロヒーローだし」
・・・後ろの方がボソボソとうるさい。
説明を聞き落すことは無いだろうがそれでも多少気が散る。近くにいる奴らはたまったもんじゃない無いだろうな。
「持ち込みは自由だ。各自指定の演習場に向かってくれ!」
雄英高校の配慮か持ち込みは自由らしい。
しかし、ガロウにとってはそんなルール関係ない。使うものは己の肉体のみ。
「演習場には三種の仮想ヴィランがいる。それぞれポイントと危険度が違うからそれぞれの方法で撃破しろ!」
説明を聞いてガロウは口角を少しあげる。
遠慮なしに壊せるのならコチラも暴れるだけ暴れられるというものだ。
「勿論!アンチヒーロー的な行動は御法度だぜ!」
「質問よろしいでしょうか!」
「構わないぜ!」
手を挙げて立ち上がったのは何と先程の真面目くんだった。
「プリントには四種類の仮想ヴィランが記載されております!プレゼント・マイクのお言葉が正しければ仮想ヴィランは三種類の筈!誤載であるなら日本最高峰の雄英において恥ずべき痴態!」
真面目という言葉は撤回しよう。
どうやらアイツは超や馬鹿が付くほどの真面目だったようだ。
「それから後ろの君!さっきからボソボソと喋って、物見遊山のつもりなら即刻雄英から立ち去るべきだ!」
「・・・すみません」
ボソボソと喋っていた少年に対してガロウは心の中で合掌した。
「オーケーオーケー!素敵なお便りありがとな、受験番号7111君!
スーパーマリオブラザーズしてるか?あれにドッスンって居るだろ?言わばそれ。
四種類目のそいつは0ポイントのお邪魔虫って所だな!」
「ありがとうございます!」
「他にも質問ある奴は居ないか。なら、俺からは以上だ!最後に我が高校の校訓をプレゼントしよう」
校訓、という言葉にガロウは耳を傾ける。
「かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』だと!ーーーーーー
Plus ultra!!それではリスナーの諸君!善き受難を!」