The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題)   作:十五夜の月

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キャッキャウフフ、な展開が、ない!!




既視感

 

 

 

『勝者、拳獣ガロウ!!二回戦進出!!』

 

 ミッドナイトが、次の試合への進出を知らせる。運ばれて行く切島の事を見送り、ガロウは舞台を降りて通路へと入る。

 良い運動が出来たことを満足に思い歩み続けるガロウは、前方から近付いて来る男を見て歩みを止めた。

 

「余裕の勝利、おめでとさん。まぁ、アンタだったら当たり前か」

「・・・闘千、だったか?」

 

 ガロウの十歩ほどの所まで来ると、男ーーー闘千は足を止めて向き合った。髪を短く纏めた、どこか自分に似た感じがする男だ。尚且つ狡猾な雰囲気もする。

 嫌いな感じではない。

 

「実はアンタにさ、礼を言いたくってな」

「礼だと?」

「そそ、礼だ」

 

 少し長くなるとでも言うように、闘千は壁に背を預け此方に視線だけを向ける。

 

「知ってるかもだけど、闘千形象だ。他の奴等はショウって呼んでる。第一試合に出てた心操と同じクラスの普通科でーーー」

「本題に入ったらどうだ?時間ないだろ?」

「ああ!そうだそうだ、次の試合は俺の番だったな」

 

 慌てる素振りを少しも見せることなく、闘千は壁から離れて深々と頭を下げた。わざとらしく、どこか演技地味た行動を前に、僅かに目を細める。

 

「ありがとう!お前のお陰だ」

「・・・何がだ?」

「勝てるってことさ。とりあえず、見といてくれよ」

 

 それ以上は何も言う気がないのか、舞台へ向かって自身の横を通り過ぎて行き、歓声と熱気が渦巻く舞台へと躍り出ていった。

 

 

 ◎

 

 

『続いて第四試合!!

 男気一筋ど根性!鋼化!ヒーロー科、鉄哲徹鐵!!』

「いよっしゃぁぁあああ!!」

 

 雄叫びを上げながら舞台に上がる鉄哲に、酷く既視感(デジャブ)を感じる。直前まで切島と戦っていたガロウならば尚更だ。

 

『それに対するのは心操に次ぐ普通科からの出場者!詳細のプリント忘れたから正直どんな個性か、実力すらわかんねーからゴメン!!闘千 形象!!』

『忘れてんじゃねぇ』

 

 ガロウも含め、会場の視線の半分以上は闘千に向いている。初戦で見せた心操の活躍もあり、実力が未知数だとその分観察しようと思うのは当然の事ではある。

 だが、闘千の実力もこれからの戦いでハッキリするだろう。通路の壁にもたれ掛かり、興味と期待の混じった視線を闘千の背に向ける。

 

『START!!』

「行くぞオラァ!!」

 

 先に動いたのは鉄哲。

 切島と同じような個性なら、接近してからの格闘戦が得意なのは明らかだ。

 

「お手柔らかに頼むわ!」

「ワリィ、手は抜かねぇ!!」

 

 笑いお願いする闘千に断りを入れると、身体を鉄化させるや容赦なく一撃目を打ち出し、盛大にから振った。

 無駄のない綺麗な動きで避ける。それを見て闘千が格闘技経験者である可能性をガロウは見抜く。

 

「怖い怖い、流石はヒーロー科」

 

 だが妙な事に、闘千は決定的な隙を撃つことなく軽口を叩きながら距離を取るだけに留めている。

 時間制限がある以上は体力切れを狙っている訳では無い。個性の特性上、攻撃が通りにくいとはいえ攻める方法が無い訳でもない。流石にそれが分からない程、馬鹿ではないだろう。

 更にガロウに見せたあの妙な自信。

 行動と言質が噛み合っていない。ボタンを掛け違えた様なモヤモヤが、ガロウの思考を深める。

 

「・・・何を狙っている、あの野郎」

 

 呟きに応える者は居ない。いや、否だ。

 一人だけ無言ではあるが、応えた。

 鉄哲の猛攻を避けながら闘千とガロウ、二人の両の眼が交差する。

 

「あぁ、はいはい。見てろって事ね」

 

 闘千は意思が通じたかのように満足気に笑みを浮かべると、完全に動きが切り替わった。

 

「余所見なんかしてんなよ!!」

「っと、悪い悪い」

「本気で来ねぇのかよ!?」

「そーだな・・・アイツも見てるし、そろそろ真面目にやってみますかね」

 

 向かう拳を眼前まで引きつけると、手首でそれを弾き、あらぬ方向に流すと同時に鉄哲の右頬に拳をめり込ました。

 

「っ、あれは!?」

 

 一目見て、それが何か分かった。

 

「いやぁ、流石に硬い。手が痛え」

「っ!効かねぇよ!!」

「阿呆、知ってるよ」

「っ!?」

 

 三発連続に打ち出された鉄哲の拳は、闘千の手によって再びあらぬ方向に流され、投げ技による反撃を顔面から食らうことになる。

 この時点で、既にガロウの中で疑惑は確信に変わった。間違いようがない、闘千が使っているのは流水岩砕拳(・・・・・)だ。

 

「どういう事だ・・・!」

 

 見様見真似の即興で行っているとは思えないほどに、精度が高い。

 

『うぇ!?アレって拳獣と同じ・・・!』

『同じ動きだな・・・』

 

 ガロウの事を知っている教師や、同じクラスメイト達も気付いた。闘千が使っているそれは、ガロウが普段使っている技と同じだと。

 

「効かねぇって言ってんだろ!!」

「あぁ、そうかい」

 

 ざわめく中でも試合は続く。

 詰め寄った鉄哲を軸にするようにして後ろに回り込んだ闘千は、両手で腰の部分を完全に拘束する。

 重心を後ろに傾けて行き、鉄哲の足が地面から離れた瞬間を見逃さなかった。

 

「離せっーーー」

「あ、よいしょっ!!」

 

 力を込めた腹筋と背筋を総動員して、後ろに倒れていくスピードを一気に加速させる。

 二人の身体が、綺麗な弧を描く。

 僅かな浮遊感の後、強大な衝撃が鉄哲の脳天から全身に駆け巡った。

 

『ば、バックドロップ!!?てか、脳天から行ったぞ?死んだか?』

『アホな事を言うな』

『あ、そうか。鋼化・・・』

『・・・マイク、やっぱりお前はアホだ』

 

 少し間の抜けた実況のお陰で雰囲気は保たれているが、舞台上では生徒が顔面をコンクリートに埋めており、何とも凄惨な光景になっている。

 鉄哲はピクリとも動かない。

 

「・・・・・・あ、あれ?もしかして、死んだ?」

「・・・・・・・・・・・・」

「え、ちょっ・・・死ぬなって!!」

『なぁ、イレイザー。アレって』

『・・・・・・』

『え!嘘だろ!?死んでnーーー』

「死ぬかぁぁあああああ!!!!」

 

 コンクリートから頭を抜いた鉄哲が、叫びながら立ち上がった。衝突した際にかなり脳を揺らしてしまったのか、フラフラと揺れており足元も覚束無い。

 

「見た感じふらっふらだけど、まだやんのか?」

「・・・問題ねぇ!!こんなの・・・気合と、根性でなんとかなるんだよ!!」

「うわぁ、タフだな」

 

 闘千の言葉にガロウも同意であった。個性由来の打たれ強さもあるのだろうが、あの打たれ強さの根本、それは恐らく強靭な精神力だ。

 ガロウの中で、鉄哲のその姿がどこか生意気なリーゼント野郎と重なる。

 

「あ〜・・・嫌なこと思い出した」

 

 そうなると、何とも厄介なことだ。

 見た感じではあるが、闘千の攻撃にはパワーが足りない。鉄哲も気付いたのか、勝機を僅かに感じ取っていた。

 

「行くぞ闘千!!」

「面倒臭い・・・」

 

 スパートをかけるように怒涛の連続攻撃が始まり、闘千は攻撃を流し続ける。

 試合が近かった事もあり、観戦している者は先程の試合を観ているかの様に、強力な既視感(デジャブ)を感じていることだろう。

 闘千が半歩下がり拳を突き出すのと鉄哲が拳を突き出したのは、ほぼ同時だった。二人の腕が交差する。鉄の拳で殴られれば、大ダメージは免れない。肘で僅か上に弾いた。

 鉄拳は頬をかするだけに終わり、闘千の拳は顎を的確に撃ち抜く。一発、二発、三発。拳と手首、そして肘を上手く利用した三連撃は的確に脳を揺らす。

 

「っーーーーーー」

 

 大抵の衝撃には耐えられる鉄哲も脳を揺らされて目眩を覚えるーーーだが、それでも強靭な精神力で踏ん張る。

 そこに僅かな隙が出来た。闘千にとって、タメをつくるには充分な時間が与えられる。拳は握られること無く、開いてる。

 

「ふんっ!」

「っ!?」

 

 ガードの下から鉄哲の顎を、アッパー気味に掌底がかち上げた。想像していた威力と違う。鉄哲が少し宙に浮くほどの重い一撃。ガードが解ける。首元から股下にかけて、数瞬だけガラ空きになる。充分過ぎる隙が再び出来る。

 闘千は両手を胸部に添わせた。既視感と悪寒が混じりあった嫌な感覚を鉄哲は感じるも、行動が間に合わない。

 

「一勝目だな」

「っーーー!?」

 

 体内に弾けたような痛みが駆け巡り、吹き飛ばされて身体を地面に強く打つ。背が付いているのはラインよりも外側の地面だ。

 

「鉄哲くん場外!勝者、闘千くん!!」

 

 自身の負けを知らされる。

 一発もまともに攻撃出来なかった、呆気ない幕切れ。鉄哲は口に広がる鉄の味と悔しさ、それをただ噛み締めながら意識を手放した。

 

 

 

 





UAとお気に入りを確認したら結構増えてて、おっふ、ってなった。
いやぁ、こんなに沢山の人に読んで頂いてるとは、感無量です。

感想ありがとうございます。すっごく励みになる!マジで!!
そして確かにリューキュウ改めて見ると良いわ!

ちょっと更新に期間空いちゃったのは申し訳ございません。
次はなるべく早くする!(絶対とは言ってない)
これからの展開で色んなキャラクターにガロウをガンガン絡ませていきたいです。


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