The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題)   作:十五夜の月

27 / 35





終了、体育祭!!

 

 

 

 

 

「それでは、表彰式を始めるわよ!」

 

 観客の目線、マスコミ達のカメラ、それら全てがスタジアム内の一点に、表彰台に向けられている。

 表彰台を見つめるもの達が様々な表情を浮かべているが、生徒達は微妙な表情。

 世間一般に思い浮かべられるような、晴れやかで、喜び溢れる雰囲気など無い。

 

「・・・ちょっとくらいは喜べよ」

 

 俯く轟、歯ぎしりし何やら唸っている爆豪、そして優勝したというのに特に笑顔も見せない無表情なガロウ。

 この空気に耐えられなくなったのか、又は突っ込まざるを得なくなったか。誰の声か分からないが、呟かれたその言葉はよく聞こえた事だろう。そして、殆どの生徒達が心の内で同意した事は言うまでもない事である。

 

「・・・あのね、締まらないから少しは喜びなさい!アンタ達は!!」

「「「・・・・・・・・・」」」

「っーーー!!」

 

 この空気を変えようとしたミッドナイトには、進行役として満点をあげてもいい。

 しかしながら悲しい事に、三人に向けて投げられた会話という名のボールは返ってくることも無く、更に言うなら受け止められることも無く何処かに消えていった。

 これに青筋を浮かべコメカミをひくつかせても、怒鳴らなかった彼女は偉い。

 

「お前ら、ちょっとは反応しろって!ミッドナイト先生キレてんぞ!」

「そうだぞお前ら!中年くらいの人がキレると怖いんだぞ!!」

 

 少しでも場を和まそうとしたのか、無視されたミッドナイトの事がさすがに可哀想になったのか、三人に向けて放った瀬呂と上鳴の声は彼女の耳にもしっかり届く。

 

「二人、後で職員室に来なさい。それから中年って言うのは、四十代くらいからのことを言うのよ」

 

 当然キレる。静かにキレる。

 

「ーーーまったく・・・気を取り直して!メダル授与式に移るわよ!今年のメダルを贈呈するのは勿論この人!!」

「ハーハッハッハッハッ!!」

 

 高笑いと共に、屋根の上から飛び出す人影。

 

「私がメダ「我らがヒーロー!オールマイト!!」たぁ!!」

 

 被った。

 流石のオールマイトもマイクの音量に勝つことは出来ずに、決めゼリフの殆どが聞こえなかった。

 

「んっん!さて、ではメダルの贈呈だ!!」

 

 わざとらしい咳払いで、仕切り直される。

 

「おめでとう轟少年!最後の君の攻撃、個性の使い方を考えた良い攻撃だった!これからもまだまだ君は伸びるよ!」

「・・・ありがとうございます」

「けど、周りの被害は最小限に!」

「分かりました」

 

 轟にメダルを渡し、次に爆豪の前に立つ。

 

「爆豪少年、おめーーー」

「要らねぇ」

「・・・・・・おめでーーー」

「要らねぇ」

 

 二度の拒否にオールマイトは固まり、会場全体が沈黙する。メダルを掛けようとしても、爆豪は一歩後ろに下がって避けていた。

 

「俺は負けたんだ、ビリと変わんねぇ。だからソレは要らねぇ」

「・・・・・・なるほど。爆豪少年、その考えは素晴らしいものだ。だが、君は壁を乗り越える為の成長を見せてくれた。その証として私はこれを贈る。君は、今回のキズとしてこれを受け取ってくれ!」

「しつけぇ!要らねって言ってんだろ!」

「まぁまぁ、そう言わずに!よっと!」

 

 渡そうとするオールマイトと受け取ろうとしない爆豪の二人。数分の攻防の後、爆豪の首からはしっかりとメダルが掛けられていた。

 

 最後に、オールマイトはガロウの前に立つ。

 

「さてと、拳獣少年!開会式で言ってた通りに君が一位になった!おめでとう!!」

「ありがとうございます」

「いやぁ、圧倒的」

「もうちょっと言うことないのかよ」

「最後の最後まで、他者を寄せ付けないような見事な戦いっぷりだった!一度、君の全力を見てみたいものだよ!!」

「・・・・・・あっそ」

「もう!照れ屋さんだな君は!!

  君の金メダルだ!受け取ってくれ!!」

 

 ガロウが頭を少し下げ、オールマイトがメダルを掛ける。

 オールマイトは表彰台の三人を眺めて、会場全体に、テレビの向こう側の人達に語る。

 

「今回は彼らだった!しかしながら、この場に居る誰もがここに立つ可能性があった!!

 彼等、彼女等が、さらに先へと駆け上って行く姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」

 

 オールマイトは右手を上に掲げて、大きく息を吸い込んだ。

 

「最後に一言!ご唱和ください!!せーの!」

 

「「「「「プルスウルーーー」」」」」

「お疲れ様でした!!!!」

「トラ!!」

 

 体育祭の最後の最後。

 会場を包んだのは拍手ではなく、ブーイングであった。

 

 

 

 ◎

 

 

 

「皆、今日は一日ご苦労だった。今日の結果が良かったにせよ悪かったにせよ、各自しっかりと次に活かすように」

「「「はい!!」」」

「あと、表彰台組。全力は出すべきだが、もう少し周りの被害を考えろ。

  さて、明日と明後日は休日になる。遊んだり何をしてもらっても結構だが、今日の疲れは二日間の休日でしっかり取るように」

 

 解散の合図で教室内は一気に騒がしくなる。

 誰もが今日の事を振り返りながら帰宅していく。

 それに混じりながら教室を出ようとした時、ガロウは呼び止められた。振り返れば真面目な顔で轟が立っている。

 しばらく無言だったが、話す事が固まったのか口を開いた。

 

「優勝おめでとう」

「・・・おう」

 

 ガロウは少し驚いた。轟の口から飛び出した言葉を予想していなかった。

 轟は続ける。

 

「完敗だった。両方の個性使って、俺の中で考えられる最良の戦いをした上でだ。

 正直、悔しい」

「それで?」

「けど、負けたけど清々しかったよ。なんでだろな?」

「知るか、そんなこと」

 

 何を思ったのか、目の前に拳を突き付けられる。

 

「またやろう、今度はお前も全力で」

「考えとくーーー」

「何勝手に決めてんだ半分野郎!!」

 

 空気を読み応えるように拳を合わせようとして、爆豪の怒声に止められた。鞄を担ぎ近付いてくる爆豪の目は、酷く血走っている。

 

「なに勝手に再戦しようとしてんだよ!コイツをやるのは俺が先だ!!」

「先に言ったのは俺だぞ?」

「うるせぇ!順位は俺のが上なんだから俺に譲れや!!」

「お前には負けてないぞ?」

「上等だ!だったら今からどっちが強いか決めようか!?」

 

 二人が遂に演習室に行こうとした所で相澤から待ったが入った。

 リカバリーガールから既に休むようにと言われていたらしい。獣のような唸り声を上げながら爆豪はガロウに視線を向ける。

 

「いいか割れ髪!!今回は俺の負けだ!けど次にやる時は完膚無きまでにぶっ飛ばしてやるからな!!」

「程々に期待してる」

「なんだその態度!舐めてんのか!!」

「煩いぞお前達!さっさと帰って休めって言ってるだろ!!」

 

 勝手にヒートアップしていく爆豪、そしてとばっちりを喰う形で轟、ガロウの三人に相澤の雷が落ちて強制的に教室から追い出された。

 

 

 

 





やっと体育祭終了です。
次から新章入ります!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。