The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題) 作:十五夜の月
「それでは、表彰式を始めるわよ!」
観客の目線、マスコミ達のカメラ、それら全てがスタジアム内の一点に、表彰台に向けられている。
表彰台を見つめるもの達が様々な表情を浮かべているが、生徒達は微妙な表情。
世間一般に思い浮かべられるような、晴れやかで、喜び溢れる雰囲気など無い。
「・・・ちょっとくらいは喜べよ」
俯く轟、歯ぎしりし何やら唸っている爆豪、そして優勝したというのに特に笑顔も見せない無表情なガロウ。
この空気に耐えられなくなったのか、又は突っ込まざるを得なくなったか。誰の声か分からないが、呟かれたその言葉はよく聞こえた事だろう。そして、殆どの生徒達が心の内で同意した事は言うまでもない事である。
「・・・あのね、締まらないから少しは喜びなさい!アンタ達は!!」
「「「・・・・・・・・・」」」
「っーーー!!」
この空気を変えようとしたミッドナイトには、進行役として満点をあげてもいい。
しかしながら悲しい事に、三人に向けて投げられた会話という名のボールは返ってくることも無く、更に言うなら受け止められることも無く何処かに消えていった。
これに青筋を浮かべコメカミをひくつかせても、怒鳴らなかった彼女は偉い。
「お前ら、ちょっとは反応しろって!ミッドナイト先生キレてんぞ!」
「そうだぞお前ら!中年くらいの人がキレると怖いんだぞ!!」
少しでも場を和まそうとしたのか、無視されたミッドナイトの事がさすがに可哀想になったのか、三人に向けて放った瀬呂と上鳴の声は彼女の耳にもしっかり届く。
「二人、後で職員室に来なさい。それから中年って言うのは、四十代くらいからのことを言うのよ」
当然キレる。静かにキレる。
「ーーーまったく・・・気を取り直して!メダル授与式に移るわよ!今年のメダルを贈呈するのは勿論この人!!」
「ハーハッハッハッハッ!!」
高笑いと共に、屋根の上から飛び出す人影。
「私がメダ「我らがヒーロー!オールマイト!!」たぁ!!」
被った。
流石のオールマイトもマイクの音量に勝つことは出来ずに、決めゼリフの殆どが聞こえなかった。
「んっん!さて、ではメダルの贈呈だ!!」
わざとらしい咳払いで、仕切り直される。
「おめでとう轟少年!最後の君の攻撃、個性の使い方を考えた良い攻撃だった!これからもまだまだ君は伸びるよ!」
「・・・ありがとうございます」
「けど、周りの被害は最小限に!」
「分かりました」
轟にメダルを渡し、次に爆豪の前に立つ。
「爆豪少年、おめーーー」
「要らねぇ」
「・・・・・・おめでーーー」
「要らねぇ」
二度の拒否にオールマイトは固まり、会場全体が沈黙する。メダルを掛けようとしても、爆豪は一歩後ろに下がって避けていた。
「俺は負けたんだ、ビリと変わんねぇ。だからソレは要らねぇ」
「・・・・・・なるほど。爆豪少年、その考えは素晴らしいものだ。だが、君は壁を乗り越える為の成長を見せてくれた。その証として私はこれを贈る。君は、今回のキズとしてこれを受け取ってくれ!」
「しつけぇ!要らねって言ってんだろ!」
「まぁまぁ、そう言わずに!よっと!」
渡そうとするオールマイトと受け取ろうとしない爆豪の二人。数分の攻防の後、爆豪の首からはしっかりとメダルが掛けられていた。
最後に、オールマイトはガロウの前に立つ。
「さてと、拳獣少年!開会式で言ってた通りに君が一位になった!おめでとう!!」
「ありがとうございます」
「いやぁ、圧倒的」
「もうちょっと言うことないのかよ」
「最後の最後まで、他者を寄せ付けないような見事な戦いっぷりだった!一度、君の全力を見てみたいものだよ!!」
「・・・・・・あっそ」
「もう!照れ屋さんだな君は!!
君の金メダルだ!受け取ってくれ!!」
ガロウが頭を少し下げ、オールマイトがメダルを掛ける。
オールマイトは表彰台の三人を眺めて、会場全体に、テレビの向こう側の人達に語る。
「今回は彼らだった!しかしながら、この場に居る誰もがここに立つ可能性があった!!
彼等、彼女等が、さらに先へと駆け上って行く姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」
オールマイトは右手を上に掲げて、大きく息を吸い込んだ。
「最後に一言!ご唱和ください!!せーの!」
「「「「「プルスウルーーー」」」」」
「お疲れ様でした!!!!」
「トラ!!」
体育祭の最後の最後。
会場を包んだのは拍手ではなく、ブーイングであった。
◎
「皆、今日は一日ご苦労だった。今日の結果が良かったにせよ悪かったにせよ、各自しっかりと次に活かすように」
「「「はい!!」」」
「あと、表彰台組。全力は出すべきだが、もう少し周りの被害を考えろ。
さて、明日と明後日は休日になる。遊んだり何をしてもらっても結構だが、今日の疲れは二日間の休日でしっかり取るように」
解散の合図で教室内は一気に騒がしくなる。
誰もが今日の事を振り返りながら帰宅していく。
それに混じりながら教室を出ようとした時、ガロウは呼び止められた。振り返れば真面目な顔で轟が立っている。
しばらく無言だったが、話す事が固まったのか口を開いた。
「優勝おめでとう」
「・・・おう」
ガロウは少し驚いた。轟の口から飛び出した言葉を予想していなかった。
轟は続ける。
「完敗だった。両方の個性使って、俺の中で考えられる最良の戦いをした上でだ。
正直、悔しい」
「それで?」
「けど、負けたけど清々しかったよ。なんでだろな?」
「知るか、そんなこと」
何を思ったのか、目の前に拳を突き付けられる。
「またやろう、今度はお前も全力で」
「考えとくーーー」
「何勝手に決めてんだ半分野郎!!」
空気を読み応えるように拳を合わせようとして、爆豪の怒声に止められた。鞄を担ぎ近付いてくる爆豪の目は、酷く血走っている。
「なに勝手に再戦しようとしてんだよ!コイツをやるのは俺が先だ!!」
「先に言ったのは俺だぞ?」
「うるせぇ!順位は俺のが上なんだから俺に譲れや!!」
「お前には負けてないぞ?」
「上等だ!だったら今からどっちが強いか決めようか!?」
二人が遂に演習室に行こうとした所で相澤から待ったが入った。
リカバリーガールから既に休むようにと言われていたらしい。獣のような唸り声を上げながら爆豪はガロウに視線を向ける。
「いいか割れ髪!!今回は俺の負けだ!けど次にやる時は完膚無きまでにぶっ飛ばしてやるからな!!」
「程々に期待してる」
「なんだその態度!舐めてんのか!!」
「煩いぞお前達!さっさと帰って休めって言ってるだろ!!」
勝手にヒートアップしていく爆豪、そしてとばっちりを喰う形で轟、ガロウの三人に相澤の雷が落ちて強制的に教室から追い出された。
やっと体育祭終了です。
次から新章入ります!!