The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題)   作:十五夜の月

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戦闘訓練 上

 

 

 

 目が覚め、ゆっくりと身体を起こす。

 起きてすぐの頭痛を何とかするため暫く布団の上で座り込み、ボーとする。

 何分かそうして頭の痛みが引いてから立ち上がり洗面所で歯を磨き顔を洗う。

 

「くそ眠い・・・」

 

 何故学生はこんなにも早起きしなければいけないのか。面倒に思うが、これもヒーローになる為だとガロウは勝手に考えて勝手に納得する。

 

「そう言えば・・・何で食費が置かれてるんだ?」

 

 この世界に来てからの不思議。

 家は勿論のこと生活費や個人情報など、この世界での拳獣牙狼としての個人情報はしっかりと登録されてる。

 誰かがしているのか。

 

「・・・・・・」

 

 大きな疑問が一瞬脳内に浮かぶが、寝起きの頭で考えるのは諦め学校に向けて家を出た。

 

 

 

 

 

 道を歩いていくのも面倒なので先日と同じようにベランダから飛び出し、電柱や屋根の上を飛び跳ねながら学校へと向かう。

 

「ん?あれって確か・・・」

 

 学校の目の前に到着し校門をくぐるとちょうど目の前に見覚えのある、緑髪のモサモサ頭の少年、緑谷が歩いていた。

 どうやら後ろに居るガロウの存在に気付いていない、と言うより他の事に意識がいっていない。

 

「電子レンジ・・・卵が爆発しないようにするには・・・、殻となる身体を鍛える、それともワットを下げるべきなのかな。・・・あまりに抽象的で掴めてない・・・身体を鍛えるのは別として考えるとやっぱり技術力を上げるべきなのか?」

 

 ーーーこわっ。

 

 緑谷の独り言に対する不気味さが勝り、ガロウは声を掛けるのをやめて追い越し、教室に向かう。

 少し興味があったが、あんな状態の人物に声を掛ければどうなるのかガロウにも想像出来ない。

 

「オッス、ガロウ」

「よぉ」

 

 教室に入って早々、瀬呂から声を掛けられて短く挨拶を交わす。そして席に座ろうとすると。

 

「なぁあんたは、おっぱい好きか?」

「・・・何言ってんだお前?」

 

 名も知らない小柄な少年が近付いてきて声を掛けられたと思ったら、突然妙な事を聞かれ思った疑問がそのまま口から出た。

 

「だから、可愛い女の子のおっぱいは好きかって聞いてるんだよ」

「ちょっと待て、質問の意味は分かる。だが、その前にお前誰だよ?」

「俺の名前は峰田実。で、おっぱい好きか?」

 

 ーーーぐいぐい来るな、こいつ。

 

 いきなりの非常識な質問に戸惑いながらガロウは考える。

 

「別にんなもんに興味はねぇよ」

 

 そう答えればこのよく分からない少年も自分の席に戻るだろうとガロウは思った。

 しかし、少年、峰田は席に戻ることなくその場に留まり先ほどのガロウの言葉を否定する。

 

「いいや、オレには分かるね。絶対お前はおっぱい好きだ」

「いい加減にしないと殴るぞ?」

「・・・おい、そこ二人。早く席につけ」

 

 どうするべきか悩んでいると、丁度相澤先生が教室に入ってきて、何とか峰田を引き剥がすことに成功した。

 

 午前中は普通の授業。

 普通の授業もプロヒーローが行うのは意外だった。だが、それ以外に特に目立った所はなく午前中の時間は過ぎていった。

 

「さーてと、飯だ飯」

 

 授業が終わると同時に誰よりも早くガロウは食堂に足を運ぶ。その後、有り得ないほどの量の昼食をたいらげるガロウの姿が色んな生徒に目撃され、フードファイターとして噂されることになる。

 

 

 

 ◎

 

 

 

「わーたーしーがーーー、普通にドアから来た!!」

 

 高笑いしながら大声を上げてNO.1ヒーロー、オールマイトが教室に入ってきた。その様子はガロウの目に些か滑稽に映る。

 

 ーーーこれが、NO.1ヒーローなのか?

 

 浮かんで来た疑問。しかし、それを頭から振り払う。

 見た目と強さは比例しない。もしそれで足元をすくわれれば滑稽なのは自分の方だ。

 

「オールマイトだ・・・!すげぇ!」

「シルバー時代のコスチュームだ!画風が違うぜ!!」

 

 どうやら午後からの授業、ヒーロー科にのみ存在する【ヒーロー基礎学】はオールマイトが担当の教師となるようだ。

 この授業、実はガロウも少し楽しみにしていた。別にオールマイトに教えてもらえるからではない。自身のヒーローとしての人生、その大きな一歩になるという意味合いで楽しみだった。

 

「ヒーロー学、それはヒーローの素地を作る為に様々な演習を行う。

  そして、今日行うのは戦闘訓練!!」

「っ・・・・・・」

 

 戦闘訓練と聞きガロウの心が僅かに沸き立つ。しかし、表情に出す様なことはしない。

 

「そして、それに伴って・・・これだ!!」

 

 オールマイトがリモコンを操作すると壁が動き出し人数分のケースが出てきた。

 

「入学前に送ってもらった要望に沿ってあつらえた、君たち専用のコスチュームだ!!」

「「「オオオオオオオオオ!!」」」

 

 教室が喜びの声で沸き立つ。

 確かにコスチュームはヒーローには不可欠な要素であると同時に戦いを上手く行うためのキーアイテム。

 こればかりにはガロウも僅かにテンションが上がり、口角を上げる。

 

「・・・バッチリだな」

 

 ケースを開けると、要望に沿って完璧に作り上げられたコスチュームが入っていた。不備があったらどうするかなどと考えていたが、そこは流石の雄英高校、心配する必要などなかったようだ。

 

「着替えたら順次グランドβに集まるように!」

「「はーい!!」」

 

 オールマイトの言葉に全員が返事して、更衣室に移動する。

 

「ガロウはどんなコスチュームなんだ?」

 

 着替えようとした時、後から峰田にそう聞かれた。後ろを向くと他にも何人かコチラに目を向けており、何とも断りづらい。

 

「・・・これだ」

「黒・・・だな」

「なんと言うか、意外っつーか」

「地味だな」

 

 目線に負けてコスチュームを見せてみれば良く知らない奴からもダメ出しをくらい、少し切れそうになる。

 

「見せろって言って、その反応はないだろ。と言うより、峰田以外のお前らは誰だ?」

「あぁ、悪ぃ悪ぃ。オレは上鳴電気、これから宜しくな」

「オレは切島鋭児郎だ!個性把握テストの時は驚いたぜ!」

「・・・拳獣牙狼だ。ガロウでいい」

 

 パッパッと自己紹介を終わらせて服を脱ぎ、コスチュームを着ようとして、まだ視線が突き刺さってることに気付く。

 

「まだなんか用か?」

「いや、筋肉がすげぇと思ってよ」

「ザ・オトコ!!って感じだな」

「・・・凄くもなんともねぇよ。必要だったから筋肉が付いただけの話だ」

 

 二人からの賞賛を受けて不思議とガロウは嬉しく思う。思えば最後に褒められたことなど何時だったか思い出せない。

 悪い気はしなかった。

 

「って、時間時間!遅れるぞ、ガロウ!」

「誰のせいだと思ってる!」

 

 急いで着替えを済まし、駆け足でグランドに出る。会話のせいで大分遅くなってしまったようだ。

 

「やっほーガロウ君!君のコスチューム変わってるね!」

 

 葉隠に声をかけられ見渡せば全員、様々なコスチュームを身にまとっている。が、確かにその中でもガロウは異質なのかもしれない。

 

 上下共に黒一色で統一しており、マントなどの装飾品の様なものは一切ない。付いているものと言えば腰部分にいくつかある、小さなポッケのみだ。

 

「ホントだ、変わってるね。あ、ウチは耳郎響香宜しく!」

「拳獣牙狼だ」

「オッケー。んじゃ、葉隠みたいにガロウって呼ぶよ」

 

 明るく自己紹介した少女は耳郎響香と言うらしい。

 ガロウの興味は耳郎が履いている靴に移り、次いで耳たぶから伸びているイヤホンジャックに移る。それだけで、耳郎が音に関連する個性と言うことはよく分かった。

 

「しっかしなぁ、黒一色って地味じゃね?」

「見た目は関係ない」

 

 失礼なことを言う上鳴にそう返す。

 

「オレは身体を激しく動かすから、これ以上の付属品は要らねぇ。それにこの布一枚とっただけでも、耐刃、耐寒、耐熱、それにしても筋肉の動きをサポートする役目もある」

「へぇ〜、意外と多機能的なんだな」

「そういう事だ」

 

 上鳴が感心したように頷いていると、オールマイトがみんなの前に立っていた。

 皆の視線がそちらに向く。

 

「始めようか有精卵共!!戦闘訓練の時間だ!!」

 

 オールマイトの言葉に周りが一斉に沸き立つ。すると一人の生徒がビシッと手を挙げた。

 

「先生!また、入試と同様に市街地演習を行うのでしょうか?」

 

 コスチュームのせいで顔は見えないが礼儀正しい物言いだけで、あれが飯田と言うことが分かる。

 そしてオールマイトは声を上げて応えた。

 

「いいや!さらに奥に踏み込む!今回行うのは屋内での対人戦闘訓練だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

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