The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題) 作:十五夜の月
「んじゃ、始めますか」
爆豪と轟の二人の前でガロウはゆっくりと構えた。その動きは非常に緩やかで、落ち着きがある。
だからこそだろうか、その余裕すら感じる動きを見て二人は僅かな苛立ちを感じた。
「随分と余裕そうじゃねぇか、割れ髪野郎!」
叫びながら突っ込んで来たのは爆豪。
爆発の個性をフル活用しながら踏み込みなしで向かって来ており、轟は横に回り込もうとしている。
「死ねやぁ!!」
爆発の勢いを利用して振り下ろされた拳を苦もなく避けるが、爆豪は避けられた拳を軸にして回し蹴りを放ってくる。
「よっと」
だが、ガロウからすれば別段気にするほどの攻撃でもなく上体を逸らすだけで避け、そこからバク転の要領で爆豪の顎を蹴り上げる。
「・・・凍れ」
気付けば直ぐそこまで氷が迫って来ていた。横まで回り込んで来た轟が使う、爆豪を巻き込まないようにした氷結。しかし、それ故に威力を抑えられているそれをガロウは当たり前の様に躱す。
「邪魔してんじゃねえぞ、半分野郎!!」
「こっちのセリフだ」
「・・・・・・チームワークの欠片も無いな」
お互いに悪態をつきあう轟と爆豪、そしてそれを呆れたような顔で見て思った事を呟くガロウ。
ーーー試験じゃ無けりゃ、死んでるな。
爆豪が反応するより早く胴に蹴りを叩き込み、轟の顎を拳で撃ち抜く。
僅かな時間とはいえガロウから意識を逸らした二人にこれを防ぐことは出来なかった。
「おいおい、大口叩いてた割にはこんなもんかよ?」
膝と手をつき倒れ込む二人に対して、嘲笑うかのようにガロウは言い放つ。
二人はその言葉に反応するように腕と脚に力を込めて立ち上がった。
「誰が、こんなもんだって?割れ髪野郎!!」
そしてやはりと言うか、先に飛び出したのは爆豪だった。
だが、前に飛び出したせいで轟が高威力広範囲の氷結の発動を中断した事に気付けていない。
「視野が狭いな、爆豪」
呆れた様に言いながら突っ込んでくる爆豪にタイミングを合わせカウンターを叩き込むために拳を振るう。
「っーーー!?」
が、その拳が爆豪を打つことは無かった。
爆発と共に爆豪の身体が宙を舞い、ガロウの頭上を飛び越えて後に回り込む。
そして、僅かの間も作らずに爆発。
「へぇ・・・・・・」
頬が僅かに緩む。
衝撃は僅かにあれど、熱によるダメージはコスチュームに防がれそれほど無い。しかし、笑みの理由はコスチュームの性能が凄かったからでは断じて無い。
初めて攻撃を防いだ。防御を強いられた事に頬が緩んだのだ。
「が、二度は受けない」
爆豪に狙いを定め飛びかかろうとして足を止める。いや、足が動かなかった。
見れば右足首から下が凍り付いていた。
「ギリギリ、間に合ったな」
「・・・・・・なるほど、爆豪の攻撃を陽動に」
ーーー爆豪を上手く利用したな。
性格から考えてこの二人が協力する事は無いと考えていたガロウは虚をつかれた。
「あんまり、動かない方がいいぞ。足の皮が剥がれる」
「てめぇ、邪魔すんじゃねえよ半分野郎!」
「・・・・・・・・・」
「無視かよ!」
なるほどなるほど、確かにこれでは逃げることはおろか動く事さえ出来ないだろう。
「オレじゃ無かったら、の話だけどな」
「「っーーー!?」」
筋肉を小刻みに運動させて体温を上げることなどガロウには簡単なことで、氷を僅かに溶かし無理やり足を引き抜いた。
そして爆豪の腕を掴んで轟に向けて投げ飛ばし、壁を壊した時に出た瓦礫を蹴り飛ばして追い討ち。
「クソがァ!!」
「っ!!」
爆豪は爆破で、轟は氷の壁で飛んでくる瓦礫を防いだが、その隙にガロウは二人の背後をとっている。
「っぐ!?」
「がっ!?」
その事に気付いたのはガロウに殴り飛ばされた時だ。
「どうした?訓練とは言え、ヒーローにしては手応えがねぇな」
「ーーー死ねぇ!!」
素早く体勢を立て直した爆豪の爆発と爆炎がガロウに迫るが真上に飛んで躱す。だが、どうやらその攻撃は陽動だったようで爆豪は既に右手で拳を握りしめて待ち構えていた。
「くたばれや!!」
「くたばらねぇよ」
すぐ近くにあった柱を片手で力一杯に掴む。
すると、重力に従って地面に着地する筈だったガロウの身体が空中でピタリと止まった。
よって、爆豪の拳は何も無い空を爆発と一緒に打ち抜いた。
拳を振り抜いた爆豪は、格好の的。
ーーーでは無かった。
「おっらぁ!!」
「・・・へぇ」
爆発で身体を無理やり回転させて上、つまり空中に居るガロウに身体の正面を向けて掌をかざす。
そして、爆発。
腕を交差させて防ぐが、ガロウの身体は数メートル程吹き飛ばされた。
「ーーーっ」
そのタイミングを見逃さず、轟がすかさず氷結を発動させる。
が、僅かに遅く、体勢を立て直していたガロウは柱を足場にして轟の攻撃を躱した。
着地し、二人と正対。
「今の攻撃、中々良かったぞ」
肩で息をする爆豪と轟の二人に対して、肩を回して賞賛の声を送るガロウ。
爆豪も轟も、観戦しているオールマイトや他の生徒達も馬鹿ではない。
故に感じ始めていた。
圧倒的なガロウの実力を。
「次は、どうするんだ?」
だからと言って諦めるほど、二人は弱腰ではない。負けを簡単に受け入れる程、プライドは低くない。
「ぶっ殺す!!」
やはり先に飛び出したのは爆豪。
そのせいで先程も轟が氷結を使えずにいた。
「合わせろや、半分野郎!!」
だが、今度は違った。
悔しさを顔に浮かび上がらせながら爆豪はそう叫び、同時に爆発で空中に飛ぶ。
爆豪の意図を察した轟は最速で氷結を発動させた。
「そう来たか」
爆豪を追い抜き、床を這って迫ってくる氷をガロウは跳んで避けるしかない。
「死ね、割れ髪!!」
結果、空中に跳び上がったガロウを待っていたのは迫り来る爆豪の拳だった。
ーーー柱は・・・。
見れば柱にも氷が登って来ており、この状態で掴めばわずかな間とは言え動きを止められてしまう。
今の状況でそれは避けたい。
「仕方ないか・・・」
目前に迫る爆豪の拳に、ガロウはそっと自身の手を触れさせる。
ーーー流水岩砕拳。
腕を弾く音もなく、静かに爆豪の拳が狙いを逸らされる。
「・・・んだと」
爆豪の表情が驚きで染まると同時に、ガロウが拳を爆豪の鳩尾に深々と打ち込む。
完全に凍り付いた地面に着地して、倒れ込む爆豪を横目に地を蹴った。
「ぐっぅ!?」
一瞬で轟と間合いを詰めると、個性を発動させる時間も与えずに爆豪と同じように鳩尾に拳をめり込ませた。
「個性なんてモンに頼りすぎるから、そうなる」
倒れる二人に対して、呟くようにガロウは吐き捨てる。
それと同時にオールマイトの時間切れを知らせる声が、響き渡った。
◎
ーーー恐ろしい程の才能!
全ての戦いを見届けたオールマイトは静かに戦慄していた。爆豪も轟も実力が無い訳では無い。むしろかなりの実力者だ。
しかし、その二人を二対一という圧倒的不利な状況にも関わらず打ちのめした。
ーーーしかも、余力は有りかよ!
息すらきらさずに建物から出ていくガロウのその姿。
正しく、圧倒的。
「め、めちゃくちゃだな、ガロウって」
「才能マンの二人がやられるとか、どれ程の才能マンだよ、アイツ・・・・・・」
それを感じているのは生徒達も同様であった。
どれだけの鍛錬を積んであそこまでの実力に辿り着いたのか、オールマイトにさえ想像する事が出来ないでいた。ただ一つ分かるのは、彼の力が紛うことなき本物という事だけである。
オールマイトはガロウがヒーローを目指している事に心の底から安堵したのだった。
ーーーどうか、彼が素晴らしいヒーローになる事を願おう。
お気に入りが、700超えました!
いつも読んで下さりありがとうございます!
感想もしっかり読ませてもらってます。返事をあまり返せなくてすみません。
誤字脱字報告、凄く助かってます。
それから、ガロウの苗字を考えて下さってる皆さん、ありがとうございます。もう暫くしてから、しっかり決めさせてもらいます。
本格的に暑くなってくる時期です。
皆さんもガロウ君の様にいっぱい食べてスタミナ付けて、サイタマ先生秘伝のトレーニングでもしながら夏バテ対策して下さい!
では、次回もお楽しみに!!