比企谷、P辞めるってよ   作:緑茶P

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初なので連投。

誤字脱字が多いのはもはや病気の域。

心の目で解読してくだしゃあ…。

―――――――――

プロフという名のあらすじ


 雪ノ下 雪乃 女  22歳

 色々あったが家族の関係は修復に向かいつつあるため、丁度今頃になって思春期の母子みたいな関係になってる。不器用か。そんなこんなで自分の夢を叶えるべく家業を継ぐために大学を専攻し、学ぶ度に自分の身内の凄さを実感したために今ではそこそこ大人になったとの評判。今春から社会人。
 
 美人・絶壁・毒舌を兼ねそろえたパーフェクトウーマンである。


 雪ノ下 陽乃 女  25歳

 雪ノ下家のヤベ―方。

 すったもんだの末、家業は継がずに個人で設計事務所を構えているらしい。顔だしNGで有名ながら、緻密な設計と独創的なアイディアは国内外問わずファンが多い。
 一時期は荒れていたらしいが、最近は終始機嫌が良いとの事で身近な人間ほど不穏な空気を感じているらしい。


 渋谷 凛   女  15歳

 coolの狂犬と言えばこの人。見た目に反したあまりの愛情深さから「咥えた獲物は離さない。情熱の蒼き炎が獲物を焼きつくす」との呼び声が高い。まさに狂犬。


その2

 ~346プロ 某地下倉庫~

 

凛「え、え?話が違うんですけど?誰?無責任に”ドッキリだー”とか騒いでた人?え、未央さんでしたっけ?」

 

 日の差さない地下倉庫の中、集まる乙女を照らすのはいくつかのカンテラの明りのみ。そんな中、響く声は最早ホラーを通り越して、スプラッタのワンシーンだ。更に、その主演女優たる少女の瞳孔が開ききっているのだから今期のノミネートは間違いない出来だ。

 

未央「あっつ!!あっついから!!低温蝋燭なんてどっからパチッて来たのさ、しぶりん!!てか、それは皆で同罪じゃないかなー!?私を磔にしていいのは、あの時笑わなかった人だけッツツツツツあっつーーーーーい!!!」

 

 なんの企画で使ったのか分からないが置いてあった磔セットにあられもなく張り付けられた未央の悲鳴がどうにもコメディぽく地下室に響く。そんな尊い犠牲を脇に他のメンバーが膝を突き合わせて協議を進めていく。

 

拓海「嫌でも実際、あの退職宣言がマジモンとは思わなかったぜ。いくら笑われて腹が立ったて言ってもそれで安定を手放すような馬鹿でもないだろ?」

 

紗枝「そうどすねぇ。346が激務なんはウチラも身を以って知っとりますけど、待遇だけを考えるならここを超える様な所そうあらしまへん。ましてや、あんな状況やろ?」

 

 単位ギリギリ・バイト三昧・就活期間2週間・性格。この目も当てられない四拍子が揃っているなら、マトモに就活に励んだとしてもココよりよい条件が難しい事は分かっているはず。バイトだった時でさえ一般社会人の給与は大幅に超えていた。ソレを超えるメリットは一体なんなのか?

 

周子「うーん、さらに言えば武内Pは分かるけど常務、部長、ちひろさんがあそこまで育てた人材を逃がすともおもえへんしなぁ?」

 

 武内Pは性格上、本人の強い意向ならば身を引くのも分るのだが、他の三人はそう甘くはない。実際にちひろさんがあの手この手でちょくちょく辞めようとするあの男をやり込めていたのは周知の事実。

 なんなら上の二人は必要とあらば、もっと直接的な圧力をかける事に躊躇いはないはずだ。この業界が長ければそのクラスの人間の黒い噂は嫌でも耳に入ってくる。

 

川島「て、ことは。あの二人に釘をさせるほどの後ろ盾。もしくは、比企谷君を手放しても惜しくないくらいの旨みをどっかの誰かに提示されたってことよねー?」

 

 たかがバイトの進退一つに何を大げさな、と考えなくもないがこの巨大プロジェクトの実権を握る二人の仕事をたった一人で補佐しきる人材は探して見つかるモノではない。彼自身、自覚はないかもしれないが、学業との片手間でソレをやり切ったというのだから大概イカレテいる。

 

奏「でも、その彼の仕事っプリを知ってる人間も結局は芸能関係に絞られる訳でしょ?前提が破綻しちゃうわ」

 

 状況を考えれば考えるほど今回の件は不可解な点が多い。そんな謎ときに皆が唸る中、小さく鼻を啜る音が響き視線を集めた。

 

仁奈「仁奈は難しい事も、おにーさんが居なくなった理由も分らないでごぜーます。でも、おにーさんと最後に会ったとき仁奈、”ありがとう”って言えてないで、ごぜー、ます。あんなにやさしい”頑張れ”もらったのに、お返し、じとつもでぎてないでごぜーまず!!」

 

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

 

 それは、きっとみんなが気付いていて、ちょっとずつズルして触らない様にしていた、核心。

 

 何とか彼が辞めた理由を彼自身の中に求めたかった。

 

 あんなに全部、良いとこも欠点も見ていてくれた彼が去った理由を、自分たちの中に見つけたくなかった。

 

 そんな自分たちの醜い部分は何時だって彼が皮肉気に笑って請け負ってくれていたから。

 

 いなくなった今だって、それに甘えようとしている。

 

 どれだけ甘やかされていたのかを、思い知る。

 

「…だからだよ」

 

 誰もが、俯いてしまった中で凛とした声がその沈痛をうち切る。

 

 その声に魅かれる様に、目を向ける。

 

 握りしめた拳は真っ白になるまで握られ、悔しげに噛みしめられたその唇は微かに血が滲んでいる。

 

 だが、その瞳だけは何処までもまっすぐを見据えている。

 

凛「きっとアイツはいまさら謝罪なんか求めないし、引きとめて欲しくなんかない。居なくなるぞって言う時に大笑いした私たちにアイツは楽しげに好き勝手にいって”頑張れ!!”って言って出て行ったんだ。だったら、アイツが居なくたって前に進んでいける所を見せてやる。それだけがきっと、私たちが出来るたった一つのお返しなんだ」

 

 その瞳に、迷いはない。だが、たった一つの後悔だけは、滴となって地面を叩いた。

 

 願わくば、最後に、たった一つだけまた甘える事が許されるならば。

 

「ごめんね、ありがとう比企谷」

 

 この一言を呟く弱さを、彼に願おう。

 

 その一言に、張り詰めていた全員の糸が切れた。

 

 涙を流すもの、肩を寄せ合うもの、至らなさに壁を叩くもの。

 

 様々な感情を抱きつつ、彼女らは己の弱さと醜さを受け入れた。

 

楓「だ、そうですけど。どうします、武内くん?」

 

 そんな空気にまったくそぐわぬ穏やかな声と共に軋んだ扉の向こうから気まずげに現れる巨躯の男。

 

 まったく誰もが状況が分からぬまま固まった空間を彼はゆっくり見まわし、ゆっくり口を開く。

 

武内P「とりあえず、その蝋燭を片づけてください。…渋谷さん」

 

 蝋まみれになって何かに目覚めかけている未央の事は触れないだけの慈悲が一介のプロデューサーにもあったのだ。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

武内P「おおよその経緯と誤解については、かえ…高垣さんからお聞きしています」

 

 そうゆっくりと語る彼の前にはきっかり正座で構えるトップアイドル群。なかなかシュールである。

 

武内P「私の言い方の問題もあったのでしょうが…正直なところ、あんまりな彼への対応に思う所も多々あります。ですが、彼の日頃の口癖を聞いているとそんな誤解が生まれてしまったのも仕方ないのと、先ほどの貴方がたのお話を聞かせて頂き、迷いも産まれました」

 

 滅多に見せない彼の強めの言葉に何人かのアイドルが吐血しながら地に伏せ、その他も脂汗や気まずさで軒並み挙動不審だ。客観的にみていた彼からすればまさに悪鬼の所業だった事は想像にかた過ぎる。

 

 そんな彼女達を見て彼は小さくため息をつき、言葉を続ける。彼はゆっくりと懐から携帯を出す。

 

「本来は余計なお節介なのかもしれませんが…貴方がたの新たな決意を、思いを知らないまま彼がこの仕事を辞めてしまうのは少々残念です。彼には、やって来た事の成果を実感する権利があります」

 

 呟くようなその言葉を理解すると、取り戻せないと思っていた何かを、取り戻せるかもしれない。そんな期待に彼女達は思わず顔を明るく見合わせた。

 

「ただし、彼が承諾してくれた場合のみです。それに、もう関係者でない彼にあなた方が全員で押しかける訳にはいきません。会いに行けるは一人だけです」

 

 その一言に、視線は自然と一人に集まる。

 

 集った視線に臆する事もなく、彼女は力強く頷き微笑む。

 

凛「うん。行ってくるね、みんな!!」

 

 

ーーーーー

 

 

 晴天の春の陽気は緩く空気をほぐし、それにつられた様に桜のつぼみもその身を華やかに散らしている。軽やかに舞う花びらは、こ洒落たカフェテラスにも流れてゆったりと俺のコーヒーに流れ着く。

 

 行き先ならいくらでもあるだろうにこんな所に態々来る不躾者に軽く片眉を潜めて遺憾の意を示してみるが、当の本人はこちらの意向など知った事かと真っ黒な湖面をゆらゆら舞うばかり。そんな気まぐれで不遜な姿に溜息を洩らし、これも春の風情とそのまま頂く事にする。

 

「…コーヒー相手に何を一人で百面相してるの、気色悪谷君」

 

 口に広がる苦さに顔をしかめていると、心底呆れたような声を掛けられた。

 

「春の風情って奴を感じてたんだよ。あと、ナチュラルに名前を悪口に変換すんのいい加減辞めろ、雪ノ下」

 

「あら、てっきり友達がいなさ過ぎてついに食器相手ににらめっこを始めたかと思って心配して上げたのにご挨拶ね?」

 

 流れるように交わされる会話の剛速球(一方通行)に俺は顔をもっとしかめてしまい、俺の向かいに座るタイトなビジネススーツに身を包んだ”雪ノ下雪乃”が楽しげに笑う。

 

「失礼な事言うな。にらめっこなら産まれてこの方負けなしだ。なんなら見つめ合わなくても向こうが勝手に笑いだすまである」

 

「はいはい、それは良かったわね。人を笑顔に出来るって素敵な事だわ。才能があるのね」

 

「…もうその優しげな視線が何よりの暴力ってのもある意味才能だよな」

 

 優しく嗜めるようなその表情が何とも癪だが、少なくとも今日の彼女は随分上機嫌であるらしい事が窺えた。昔と変わらぬ紗のような黒髪は陽光を受けて艶やかに輝き、華奢で儚さすら感じる造形はいつもと変わりない。だが、いつもならば冷たさすら感じてしまうその怜悧な表情は、朗らかで優しげだ。理由は分からずとも無闇に藪を叩く必要もないので鼻を一つ鳴らして鋒をおさめる。

 

 なにより、今日というハレの日を迎えられる恩人相手に毒舌合戦を仕掛ける必要もあるまい。

 

「しかし、良かったのか?初っ端の同期の奴らの集まりについてかなくて。社会人じゃああいうのってたいせつなんだろ?」

 

 適当な話題転換のつもりだったのだが、胡乱気な視線を向けられしまう。今日だけで睨めっこだけでなく蛇を引きよせる才能まで発覚してしまった。そりゃ友達もできねぇわけだぜ。

 

「ええ、そうね。学校と違ってなが―い付き合いになる人たちとの大切な集まりを間髪いれずに断ろうとした誰かさんの用事が終わったら、参加させて頂く事にするわ。…誰かさんを引きずってね」

 

 刺々しい言葉に気押されつつも、どうにも要領を得ない。入社式というハレの日で当然のように企画された同期達の宴会。友でありながらライバルである同世代の人となりを知るにおいてそれは様々な観点から見ても必要な行事で、それ如何によっては今後の立ち位置だって変わってしまう。まあ、しかし。自分がそれに参加したところで結果はお察し。壁の花となれれば良い方で、居るだけで盛りさげてしまう人種が居ては迷惑だろうから別件の用事を優先させたのだが…何故か雪ノ下が俺の頭をひっぱたき後ほど合流という流れにされてしまった。

 

 社長令嬢でいつか自分がその社長の座につかんとしている彼女が、コネと温情で拾って貰ったような自分と関係を勘繰られて不快な思いをするのはどうにも忍びないし、今後を考えるなら控えるべきだ。という事を説明すればさらに大きくため息をつき”なんだか昔より拗らせてるわね、この男…”などと呆れたように呟かれた。意味が分からない。

 

「まあ、その辺はおいおい修正していくとしても今日の用事っていうのは何なのかしら?アナタにしては珍しく嘘じゃないのは分かるけれど、今日で無ければダメだったの?」

 

「なんか前のバイト先の上司から電話が来て、大切な話があるらしくてな。詳しく聞こうにもどうしても直接にしてくれないかって言われてたから会うまで内容は分からんけど、もしかしたら、退職か事務関係でなんか不備があったんじゃねえか?」

 

「まさかと思うのだけれど、入社式まで済ませておいて今さらごねようって話ではないでしょうね?」

 

 何気なく答えると彼女は整った眉をほんの少し潜めて聞いてくるが、それに関しては苦笑を返すしかない。

 

 武内さんは言わずもなが、チッヒにも渋々といった体ではあるが了承を得ているし、肝心のアイドル達とは黒歴史確定級の清々しいほど派手に別れを決めて来た。ココまでやっといてあっちに戻れる程のハートは持ち合わせていない。

 

 そんな俺の様子を見て彼女も眉間のしわをゆっくりとほどいて、微笑む。

 

「ま、そうだと良いのだけれどね。貴方はいつも甘いからせいぜい絆されない様に気を張っていなさいな」

 

 桜が舞う中、悪戯っぽく笑う彼女に思わず見とれ、頬が少し熱くなるのを誤魔化すように目線を逸らす。そんな憎まれ口を叩く彼女が自分の為にあっちこっちに駆け回って、頭を下げ回ってくれた事を知っている俺は思わず心の中で悪態をついてしまう。

 

 本当に甘いのはどっちだよ。

 

 そんな心の声が聞こえたかどうかは分からないが彼女が今さら、といった感じで聞いてくる。

 

「そういえば、約束の時間は何時なの?待つのは構わないのだけど、あまり時間が掛かるならあっちのグループに連絡しなければならないわ」

 

 言われて時計を見てみれば待ち合わせの時間まで後10分といったところだ。

 

 生真面目なあの人の事だからそろそろ――――

 

「比企谷!!」

 

 

 聞き覚えのある声が、俺を呼んだ。

 

 

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