スマホ片手に生き抜こう(凍結)   作:麻婆被験者01

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はい、すみません。ひっさしぶりの投稿になります。
い、いやですね?リアル事情が色々とね?
・・・はい、申し訳ありません。
な、何にせよ、『荒れ狂う偽りの竜』。どうぞ!


荒れ狂う偽りの竜

「ベヒモスッ!」

俺が微かに覚えている原作についての記憶。その中で、ベヒモスは原作の始まりだった筈だ。故に

「先手必勝っ!重くっ、鋭くっ、早くっ、星のようにっ!!」

グゥルァ?!!

相手がこちらに攻撃してくる前に、こちらから先に攻撃を仕掛けていく。憑依している聖女マルタが教えてくれる。

『拳を振るう時には、腰をしっかりと据えて、一撃一撃に祈りを込めるのです。ただ闇雲に力を振るうのではなく、命への感謝、命の尊さを尊重して振るいなさい』

かの聖人モーゼは海をも割った。聖ゲオルギウスは竜を下した。同じく、聖女マルタは竜を下している。俺の力は借り物。所詮は虚偽の力。けれど、けれど!

---俺の思いはっ、虚偽ではない!

「メルドさんっ、光輝っ!後ろは頼むっ!雫っ、こいっ!」

「「了解っ!」

「小僧っ、無茶はするなっ!」

まだ足りないっ、守りがっ、足りないっ!

---先輩ッ!

守り、盾、守護者。ならば、彼女だっ!

「我汝らの主なり。故に来たれ、我が元に!シールダー、マシュ!」

「はいっ!うけたわまりました、マスター!」

ベヒモスの頭突きを、受け止めるマシュ。そしてその隙に、俺はまた懐に入り込み、拳をめり込ませる。後ろを安心して任せる為、雫は後ろに下がってもらう。

グルゥァ!!!

吠える。しかし、意味はない。威圧のような効果があったとして、そんなのは気にしない。拳を振るう。振るわれる。マシュが防ぐ。また振るう。単調、けれど、気を抜けない。

・・・一手足りない。いや、それはある。だが、振るえない。今振るえば、後ろに被害が出てる。

「雫っ、そっちはどうだ!」

「だめっ!どんどん増えて、手が足りないっ!」

っ!後ろは人が足りない。だとしても、今この状況では、召喚もできない。どうすれば・・・!

「現堂君ッ!」

「「?!」」

一人、後ろのトラウムソルジャーを相手にしている集団から、飛び出してくる。

「南雲氏っ、こっちに来るなっ!」

微かに残っている、前世の記憶が叫んでいる。彼を、南雲ハジメをこちらに来させてはいけないと。

「そんなこと言ってる場合じゃ無い!後ろはもう限界だっ!」

「知っているっ!だがっ、今の状態ではっ・・・!」

「後ろはっ、僕がなんとかするっ!だからっ!」

「っ!」

正直、どうにか出来るとは思っていない。だが、信用ができる気がした。心のどこかで、それを許容した。

「了解したっ!後ろが大丈夫になるまで待つ!それまで持ちこたえるぞ、マシュッ!」

「はいっ、分かりました先輩っ!」

ここまでのように、倒すために拳を振るうのではなく、後ろに被害が出ないように、徹底的に受け流していく。

力を抜く。脱力。そこから、一瞬だけ力を込める。相手からの攻撃はそれる。それを、何度も繰り返す。赤熱化を込めた頭突きは、マシュが盾で受け止める。

そして、それを繰り返すと、その時が来た。

「現堂君っ!後ろはもう大丈夫っ!だからっ、全力をっ!」

後ろを一瞬見る。全員退避していた。メルドさんも含めて、こちらを見ていた。南雲氏は、延々と骸骨を産む魔法陣を壊し続けていた。

・・・・・・。

「マシュッ!」

「はいっ、下がりますっ!」

そう言って、マシュはカルデアに戻っていった。そして、 ベヒモスがこちらを見た時には・・・もう遅い。

「鉄、拳、聖、裁っ!!」

突進してくる怪物に対し、全力の拳を振るう。本人から教えられた・・・今なお教えられている全力の、全開の拳を振るう。

「ちぃっ!硬いっ」

まるで鉄のようだと思った。しかし、それだけだ。今の俺は彼女とほぼ同化している。経験が、彼女が戦ってきた記憶が、竜よりも柔らかいと告げている。竜を沈めることができるのだ。ならば、それ以下を下せぬ筈はない。

拳を振るう。いままでのようにヒット&アウェイではなく、超近距離での連続打撃。攻撃をいなし、その拳すらも砕き、真正面からその力を挫く。

グルゥオゥ?!?!

まさか自身が力負けすると思っていなかった怪物は、驚愕に目を見開く。しかし、そんな隙を俺は見逃す程甘くはない。全力を、全開で、全てを置き去りにして、この一撃をっ!

彼女と同じ言葉は紡がない。これは、彼女の力で、俺はただ借りているだけだ。だからこそ、こう紡ぐ。

「愛を知らぬ偽りの竜よ、ここに。星のように!『 荒れ狂う偽りの竜よ(タラスクッ!)』!  鉄・拳・聖・裁!」

ベヒモスに拳が沈む。硬直し、血を垂れ流して力なく床に頭を垂れる・・・完全に沈黙。

「・・・ごふっ」

「ケイッ!」

俺は膝を着く。流石にもう助力が・・・。

「ケイィィ!!!」

俺は落ちる。谷の底に、深い場所に、落ちていく。

視界の端に、黒髪の少女が俺と同じように落ちながら手を伸ばしているのを見ながら、俺の意識は閉じていく。


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