異世界での暮らし方   作:磨殊

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第17話

雲一つない夜空、満月、秋。

ここまで好条件が揃ったのならば、後は団子と酒を用意して月見をするしかない。

だからって人の用意した団子を勝手に食べるな魔女コンビ!

 

 

 

 

 

 

異世界での暮らし方 第17話

 

 

 

 今夜は雲一つない夜空に満月。いやー、都会と違って空が綺麗やから月だけじゃなく星もようさん見れるわ。さすが幻想郷。

 しかし、やっぱ晴れた日の満月はええねえ。過去の日本人は「雲で月が隠れているがそれもまた風流で良いものだ」という俳句を多く残しているが、このお月さんには勝たれへんよ、うん。

 ちなみに、風流だと言ってるのはただの強がりだそうだ。そりゃそうやわな。

 

「で、こんなええ月の夜の何の用や、黒白に人形遣い」

「オイオイ、そう不満そうな顔をするなよ。私たちはあの月を素晴らしい満月にする為に来たんだぜ」

「私はいつものようにこいつに巻き込まれた……て、違う! 魔理沙は気づいてなかったでしょう、立場が逆!」

「それで、仲間を見つけたついでにバックパックを拾いに来た訳だ」

「無視するな!」

 

 人形遣いは私がメインであんたがサブと怒り、黒白はそれを無視して、オレを連れていこうとするのをいいアイデアだろうと胸を張って笑っとる。てか、人形遣いは仲間でオレはバックパックかい。いくらオレが支援特化型やからってバックパックはないやろ、バックパックは。せめて人扱いしてくれへんかな。

 それにしてもこの月を更に素晴らしくするなんてどうするつもりや? いくら黒白でも月までは飛ばれへんから直接月に何かするんはちゃうわな。

 まあ、何にせよいつも通りこいつに巻き込まれるのは確定、か。はあ、まーた厄介事かい、頭痛いわあ。

 

「あー、すまん。まさかバックパックって言っただけでそこまで落ち込むとは思わなかったんだ。気にするなよ、冗談だからな?」

「それで落ち込んでるんちゃうわ! いや、ちょっと傷付いたけど、そうやなくてな。て、おーい、謝りつつ団子食うなや」

「秋が作ったにしては美味しいじゃないか」

「酒のつまみと団子を作ることに関してはそれなりの腕になったわね。形はいまいちだけど」

 

 謝罪終了して団子の批評までされた!? もう、好きなだけ食べてええから。話を進めなさい、話を。

 

 

 

 

 

「つまり、あの月は少しだけ欠けてる、と」

「そうなんだぜ。欠けてる月より、異変を解決して本当の満月でお月見した方が気持ちいいだろ?」

「アンタたち、メインはお月見じゃなくて異変なのを忘れないでよ」

「はい? 異変はほっといても紅白がどうにかするやろ。それより月や月」

 

 黒白や人形遣いは異変解決に意欲を見せとるけど、オレにとってはこいつらが解決しようが紅白が解決しようがどっちでもええ訳で。なら、オレがやる気を出す理由は満月、しかもこの中秋の名月を邪魔してくれたやつを懲らしめるという事ぐらいしかないわ。

 満月なんてオレの能力でどうこうすることが出来ないレア物なんやぞ! ちとばかしキツイお仕置きをしたるわ。『抱腹絶倒』あたりが妥当かな。

 ま、もう1つ理由はあるんやけども。

 

「そうと決まったらさっさと解決に行こうや」

「あら、いくらお月見が邪魔されたとは言っても、秋にしては珍しくやる気があるわね。いっつもは異変に巻き込まれないようにしてるのに」

「明日は友人の結婚式やからな。この異変のせいで間に合んとかなったら、合わす顔がないわ」

「おっと、そういうことなら急がないとな」

 

 そういうと黒白はドアを開けて外に出て行き、人形遣いも後に続いて出て行った。

 ああ、そうとも。明日の結婚式に出席する為に、ようやく博麗大結界を全部消滅させずに、一部だけ切り開いて外の世界に出られるような装備を作ったんや。今更異変ごときで出席出来へんとか絶対嫌やぞ。というか、出席出来へんかったら副会長に殴り飛ばされそうやしな。

 さて、魔導書とコートを用意して、と。

 

「マスタースパーク!」

「ん?」

 

 何でこんな所で黒白のスペルカードの宣言が聞こえるんやろ。近くに人里があって、そこにセンセーがおるから、黒白がスペルカード使うような妖怪はあんまし現れへんはずやけど。

 異変解決に向かっても大丈夫なように装備整えたから外に出てみると、そこにはマスタースパークで薙ぎ払われたであろう妖怪と妖精の群れが。おいおい、こんだけの数は今まで見たことないぞ。

 

「うちの近所にこんだけの妖怪がいたとは、驚きやねえ」

「急いでるから今回は特別にマスタースパークで薙ぎ払っておいたぜ」

「言っておくけど、普段はこれだけの数はこの近くには現れないわよ。何故か人里が存在していないから、いつもはやって来ない妖怪までもがこの店を狙ってやって来たんじゃないかしら」

 

 人里がないからその分狙いもここに集中したのね、と人形遣いは説明してくれた。

 なるほど、センセーという脅威がいないうえ人里も見つからないから、その近くにあって人間の気配がするうちが狙われた、と。うん?

 

「いやいやいや、ちょっと待て。人里が存在せえへんなんて、んなアホなあ」

「確かに有り得ないんだけど、見つからないんだからしょうがないじゃない」

「ここまで空を飛んできたんだけどな、いつもならここからでも見える人里が見えないんだ。いやー、おかしなこともあるもんだぜ」

 

 2人とも自分の目で見た光景を話してくれるが、あの人里がねえ。

 いくら狭い幻想郷と言えど、里やぞ、里。そう簡単に消える訳ないやん。

 でも、こんなことで嘘言う必要なんて無いしなあ。しかも、センセーがおるからあっこが被害を受けるようなことは滅多にないと思うんやけど。

 ふーむ。ありえへんことが起こるんが幻想郷名物であり、異変ならではの現象とも言えるしなあ。はてさて。

 

「なら、とりあえず人里があるはずのとこ行こか」

「ああ、行けば手掛かりぐらいあるだろ」

「もしかしたら、霊夢か誰かがいて情報が聞けるかもしれないわね」

 

 3人の意見が一致したので早速人里に行くことにする。

 ただ、紅白に会ったら問答無用で「異変を起こしたのはアンタ達かー!」と襲い掛かられる気もするけどな。なんせ、こっちにもおんなじ事しそうなんがおるし。

 2人はそのまま飛び立ち、オレは黒白の箒の後ろに飛び乗る。

 ん? なんや人形遣いが物言いたげにこっちを見とるな。

 

「秋はいつも魔理沙に抱きついてるけど、恥ずかしくないの?」

「変なことしたら振り落とすだけだぜ」

「振り落としたそうな顔すんなど阿呆。あんな、人形遣いさんや。こうでもせんとオレはこいつの運転について行けずに振り落とされるし、抱きしめないとこいつは風圧とかに負けて振り落とされるんねん」

 

 なんせこいつの注文を叶えて箒を改造したものの、未だに満足に乗りこなせてへんからな。最高速を出したら速度に負けて箒から落ちるもんな、こいつ。出力はデカイのに制御が甘いんよ。だから吹き飛ばされないないようオレが『固定』して、おまけで制御も肩代わりしてる訳や。

 

「まったく、自分で扱いきれる物を注文しなさいよ」

「このスピードで曲がりきれる訳がないという常識に囚われてるこいつが悪い」

「どうせ私は未熟者だよ、ふん」

「拗ねるな拗ねるな。ほらほら、行き先はあっちやぞー」

 

 自分と黒白の体を『固定』してから、こいつの頭を帽子の上から軽く叩いて出発を促す。

 

「分かった、分かったからから頭を叩くなよ。まったく、帽子がズレたじゃないか」

「文句言ってる割には嫌そうな顔してないわね」

「うっさいアリス! ほら、行くぞ」

「安全運転で頼むわ、運転手さん」

「知るかっ!」

 

 ちょ、ちょい待ち、速い、速過ぎるって。ほら、人形遣いがあっという間に後ろの彼方に――

 

 

 

 

 

「ほい、到着したぜ」

「たかが歩いて5分の距離やのに、こんなスピード出す必要ないやろ」

 

 黒白はスッキリした顔で到着を告げてきた。悪いがこっちはそれどころちゃうわ。うぷ、あまりの加速に胃が、胃がきゅっとなって気持ち悪い。

 あらかじめ加速のタイミングが分かっとったら覚悟も出来てるから問題ないんやけど、今みたいにタイミング知らせずに急加速されるとキッツいわ。やっぱ自分でスピードの管理が出来へんもんは苦手や。ジェットコースターとか、こいつの箒とか。

 

「善は急げ、だぜ」

「狭い幻想郷、こんなに急いでどうすんねん」

「お前たちか。こんな夜中に人里を襲おうとする奴……は?」

「いいや、通りかかっただけだぜ」

「いやいや、様子を見に来たんやろが。て、センセー?」

 

 何も無い、人も居ない、消えた人里から現れたのは上白沢慧音。人里で教師をしている人がなんでおるんや。いや、センセーがおるってことは人里のみんなもどっかにおるんやろ。

 まさかとは思うけど、地下に人里が隠れてるとかないよな。

 

「秋。どうしてお前がここにいるんだ?」

「どうしてって、人里が無くなってたから様子見に来たんよ」

「魔理沙と一緒にいるとはいえ、妖怪に襲われたら危ないじゃないか」

「人里が無いから、その分多くの妖怪が秋の店の近くにいたんだ。あのままだったら、いくらあの店が頑丈でも危ない目に合ってたぜ」

「……あっ」

 

 おい、そこでどうして、やっちまったって顔するんかなセンセー。これ、絶対人里が無くなってるんにセンセー何か関わっとるやろ。ちゃんとこっちの目を見て話そか?

 

「いや、そのだな。人里の歴史を食べて隠したんだが、秋の店に妖怪が集中するとは思わなかったんだ」

「うぉーい、センセーが人里隠してたんかいな、スゴイなー! でもそんなこと出来るんやったらウチの店も隠してくれてもよかったんちゃうかな!?」

「そうしようと思ったが、お前の店は強力な結界か何かで干渉出来なかったんだからしょうがないじゃないかっ。どうしてあそこまで強力なんだ!」

「まさかの逆切れ!?」

 

 まあ、こんなことになった原因は店を要塞化したオレなんやけどね。

 以前店で紅白と黒白が喧嘩して、それ以来能力禁止・弾幕ごっこ禁止にしたんやけど、人の善意の行為も妨害してしまうことになるとは。今度改良して悪意だけに反応するようにした方がええか、これ?

 そして、センセーがオレのことも気に掛けてくれたんは今の説明で分かるんやけど。分かるんやけど、それやったらオレも人里に避難させて、それから人里を隠して欲しかったわ。そんな時間の余裕が無かったんかもしれんけど。

 

「そうか、秋を人里に呼んでから歴史を食べれば良かったのか。しかし、私は人里から動けないし、誰を呼びに行かせれば……」

「気づいて無かったんかい!」

 

 今度、香霖堂で携帯おいてないか調べて、置いてたら使えるようにしてセンセーに渡しとこか。もしくは『思いは伝わる』とか『伝書鳩』とでも書いた紙を渡すかやな。

 

「アンタ達、いったいいつまでそこで騒いでるのよ」

「お、アリス遅かったじゃないか」

「アンタ達が私が追いつけないスピードで行くのが悪いんでしょう!」

「いや、オレは悪くないんちゃうかな。加速したんは黒白やし」

 

 さて、これで全員揃ったし、次はどこ行くか決めんと。どうも人里は異変とは関係ないみたいやしな。と言っても、手掛かりなんて全然ないんやけど。

 

「ん? このおかしな月の原因を作った奴なら、あっちだぞ」

 

 手掛かりどころか答え貰えるとは思わんかったわ、うん。




就職が決まったので、引越しする事になりました。
その関係で、今月末からしばらく、ネット環境が整うまで執筆する事が出来なくなります。
執筆再開できるようになったら、活動報告にて一報書かせていただきます。
なんか、いつもと変わらないだろうと言われそう。
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