異世界での暮らし方   作:磨殊

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第21話

うちの店には時々妖怪が落ちてくる。

何をとち狂ったか人里で暴れた妖怪が、センセーにお仕置きされて落下してくるからだ。

時々酔っ払った鬼も落ちてくる。

人が能力使えばへべれけにならずに酒が飲めるからって、酒の席に誘うのも程々にして欲しい。

せめて屋根じゃなく店の入口から入ってきて欲しい。

何で毎回着地ミスって屋根にぶつかるんだあいつは。

まあ、そんな訳で店に妖怪が落下してくるのには慣れてはいたけれど、人が落下してくるのは初めてなんだが、どうして欲しいよ、妹紅?

 

 

異世界での暮らし方 第21話

 

 

 

 のんびりと夕飯を食べとると、「あぁぁぁぁきぃぃぃぃいいい!」と恐ろしい叫び声を上げながら妹紅が店頭に落下してきおった。

 流石は正義のヒーローもこたん、結構な速さで落下したのに生きとるやなんて。やっぱ巫女と同じで人間辞めとったんか。でも、服はボロボロやな。

 

「いや、それあんたにだけは言われたくないから。私は鬼と殴りあいなんで出来ないから」

「おまーらも魔力やら霊力やらで強化したら出来るやん」

「……鬼の攻撃を避けずに真正面から殴りあうのは秋ぐらいと思うけどなぁ」

「そうか?」

 

 紅白なら出来そうなんやけど。

 ま、ええわ。何の用かは知らんけど、立ち話もなんやから店入るか?

 飯もあるぞ、と。

 

「じゃ、遠慮なく。ついでに服もボロボロだから着替えも貸してもらえると助かる」

 

 Yシャツだけ貸してやろうかコノヤロウ。

 

 

 

 

 

「で、オレの名前呼びながら落ちてきたけど、どしたん?」

「ああ、そのことだけど……輝夜と婚約したんだってな?」

「ブホゥっ!」

 

 な、なんでその事知ってんねん!?

 ただ、婚約じゃなくて求婚されただけやけど。

 

「さっき襲いかかってきた巫女と妖怪から聞いたんだ。秋があの性悪女と婚約したって」

「何適当に喋ってんのこうはァァァっく!」

 

 しかも、何で婚約にランクアップしてんの!?

 オレはそもそも求婚を受け入れた記憶は……いや、この結末を予想して紫がホラ吹いたんかもしれんな。何かほくそ笑んでるあいつの顔が浮かぶわ。

 

「あ、あいつらに襲われたから服ボロボロやったんか。あれ、その割に怪我してへんかったな」

「まあ、私も輝夜のやつと同じで不老不死だからね。怪我ぐらいほっとけばすぐに治るよ」

 

 巫女の噂は聞いてたけど、あそこまで強いとは思わなかったと妹紅は笑っとるけど、あいつ相手にそんな感想を笑いながら言えてる時点で人間辞めてるからな。普通の人間は勝負にもならんからな。

 しかも、あっさりと不老不死だとかカミングアウトすんなや。ツッコミ忙しくて驚く暇ないやんか。

 というかやな、意外とおんねんな不老不死。紅魔館とこの吸血鬼姉妹も含めると合計5人か。

 これ、お嬢の妹さんに殺されかけた時に、不老不死って書いても効果発動したんちゃうか? 不老不死なんて見たことないから効果発動せんと思って不老長寿にして生き延びたんやけど、実際に幻想郷におるなら効果発動したやろ、きっと。

 

「その時点では私が不老不死だと教えてないし、実際に復活する瞬間を見せた訳でもないから効果発動しなかったと思うけどね。で、婚約したんだろ?」

 

 何か今回の妹紅はしつこいぞ。目も据わっとるし、機嫌も悪そうやし。

 輝夜のことを性悪女って呼んどったし、仲悪いんかね?

 

「や、求婚されただけやから」

「で、それを了承したんだろ?」

「してへんから、ホントにしてへんから」

 

 おい、何やその目は。何でこいつ本当に男かみたいな目で見られなあかんねん。

 や、だからと言って信じられないと言いたそうな顔で驚かれても。

 

「お前は本当に男なのか!?」

「とうとう声に出して言っちゃったよこいつ」

「性格はともかく、悔しいけどあいつは正真正銘絶世の美女だぞ!? そんなやつの求婚を断るなんて信じられない!」

「ええい、否定したら否定したで怒るとはメンドクサイやっちゃな!」

 

 そのまま額を突き合わせて睨み合うこと5分。

 ようやくお互い冷静になって話し合うことに。

 

「ま、まあ、何だ。断ってるならいいんだ」

「断るというか、まずは友達からってことなんやけどね」

「あ゛?」

「いえ、何でもありません」

 

 怖ええよ、もこたん怖ええよもこたん。そんな目を釣り上げんでもええやん。

 そもそも、何で妹紅に人の恋路の事で怒られなあかんねん。

 

「他のやつならともかく、輝夜だけはやめとくんだ。あいつは悪女だからな!」

「んな力説されてもやね」

「実体験で知ってるからだよ! あいつのせいでお父様は、お父様は!」

「お父様?」

 

 待てよ。父親が輝夜に惚れて……振られたんかな? でもって妹紅は不老不死ということは月に帰るまでに日本にいた時の人物やろ。で、妹紅の苗字からして藤原氏ってことは……

 

「妹紅の父親ってもしかして藤原不比等?」

「え、そうだけど。よく知ってたね」

「そりゃ竹取物語は有名やし、藤原氏は有名な貴族やからな……じゃなくて!」

「じゃなくて?」

「ご、ごごご、ご」

「ご?」

「ご先祖様キターーー!」

「え……えー!?」

 

 流石幻想郷。神様悪魔妖怪宇宙人どころか、ご先祖様とも出会えるとは。

 

 

 

 

 

「という訳で、藤原氏の血は限りなく薄いけど末裔の大月秋です」

「えっと、一応先祖になる藤原妹紅です」

 

 どうしよう、こんな昔のご先祖様に会うとは思ってなかったらか、どういう反応したらええんか分からんぞ。

 幻想郷に来てから波乱万丈すぎるやろオレの人生。

 妹紅もまさか子孫に会うとは思ってなかったらか困った顔を……してへんな。

 あれ、さっきまでは戸惑っとったのに。むしろ何か決意した顔してるんやけど。

 

「よし、秋がお父様の子孫なら尚更あいつなんかと結婚させる訳にはいかないわ!」

「急にお前に娘はやらんと言うお父さんみたいになりおった!?」

「大丈夫、秋にふさわしい人は私が見つけてあげるから」

「お前はいつまで経っても結婚しない息子を心配する母親かっ!」

「慧音なんてどうだ?」

「お前の友人やんけ! しかもオレの恩人!」

「料理も出来て人望もある。ちょっと頭が固いとこがあるけど、良いお嫁さんになると思うよ?」

「たしかに超優良物件やけども! 相手に承諾を得てからそういう話はしようや」

「それもそうか。じゃあ、早速話をしてくるよ」

「ちょっと待てっ」

 

 すぐさま店を出てセンセーの所へ向かおうとする妹紅を捕まえる。

 何なの、何なのこれ。オレが父親の子孫と分かってから急に態度変わりすぎやろ。

 今までもぶっきらぼうやけど優しかったけど、ここまで世話焼きちゃうかったぞ。デレたのか、デレたのか。これが噂のツンデレですか!?

 方向性が微妙にちゃうけどさ!

 

「なんだよ秋」

「いやあの、オレまだ結婚とか考えてないから。そんな歳でもないから」

「あれ、そうなのか? むしろもう遅い方だと思うけど」

「今の日本では、成人は二十歳を迎えてからや」

「あれ、そうなのか?」

 

 ふぅ、良かった、止まってくれた。

 これで諦めてくれるやろ。恋人ならともかくこの歳で所帯持つやつはそんなにおらんぞ。

 あ、そういやこの前会長結婚したとこやったわ。

 

「でも慧音を狙ってるやつは人里にいっぱいいるし、やっぱし話を通しとこうか。」

「里でセンセーと話してたら殺気を感じるんはそういうことか!?」

「な、手遅れになったら困るだろ?」

「何当たり前のようにオレがセンセーが好きって前提作ってんの!?」

「大丈夫だって。慧音も秋のことを悪くは思ってないから」

「人里と関わってるのに、あの人に嫌われるのはよっぽどのことちゃうかな」

「合わないと思ったら別れたらいいんだよ」

「お前もそこらへんの価値観は輝夜とおんなじかいっ!」

「あいつなんかと一緒にするな!」

「怒ってもおんなじ台詞言ってるんやからしゃーないやろ!」

 

 千年以上昔の時代の人やから価値観が合わんなもう!

 昔と違ってそんな簡単に結婚とか離婚とか出来へんっての。あれ、でも最近はそうでもないんか?

 というか、そもそも幻想郷ってそこらへんの法律とかどうなってるんか知らんなオレ。

 

 頭を抱えつつも妹紅とそこらへんの価値観をすり寄せとると、店のドアをノックする音が聞こえた。

 こんな時間に客来るんは珍しいんやけどな。またあの鬼っ娘か?

 

「あいよー、萃香か?……オブッ!」

「やっほー、秋。いつまで経っても会いに来ないから私から会いに来たわよ。あと、永琳が話があるって」

 

 ドアを開けるなりタックルかましてくれたんは、まさかまさかの輝夜やった。

 行動力あるなー、この姫さん。永遠亭からはそれなりに距離あるんやけど。

 

「タックルじゃなくて抱きついてるだけなんですけどー?」

「危ないことには変りないやろ。あんな勢いつけてたらオレ倒れてもおかしくないやん」

「それぐらい耐えなさいな、男の子」

「オイ、いつまで抱き合ってるんだ」

「あら、何であなたがここにいるのかしら妹紅?」

 

 オレが姫さんに抱きつかれていると、不機嫌な顔した妹紅に引き離された。

 いやはや、スマンね妹紅。抱きつかれると引き離されへんのよ、役得すぎて。

 うん、だからそんな睨まないで欲しいですごめんないさい。

 

「お前が巫女をけしかけたからだろ、このバカ!」

「あら、他にも魔理沙とかもけしかけたんだけど、会わなかったのね。残念」

「けっこうえげつないことすんなー、姫さん」

「んー、ちゃんと名前で呼んで欲しいんだけど、いいわ。その呼び方をしていい男性はあなただけよ、ダーリン」

「誰が誰のダーリンだバ輝夜」

「妹紅には関係ない話でしょ」

「大いに関係あるね。秋は私の子孫だ!」

「ほら、そんなに関係ないじゃ……え?」

 

 あ、姫さんが固まった。

 さっきまで妹紅と火花散らして睨み合っとったのに、たった一言で空気変えおったぞ妹紅。

 しっかし、これが噂の修羅場ってやつか?

 若干違う気もするけど。むしろ嫁姑戦争?

 どっちにしろオレが体験することになるとは、ね。

 いっつも会長が修羅場ってるを高みの見物して笑っとったけど、いざ自分がその立場になると笑えないなぁ。

 ……もうちょいご祝儀多めにしといたったら良かったか。

 

 そんなことを考えてる間に姫さん復活。妹紅と激しい舌戦を繰り広げ始めた。

 やばい、逃げるタイミング逃した。

 

「もしもし」

「あ、はい。えーと、あなたが永琳さん?」

「ええ、そうよ。姫様たちの事は一時置いといて、商談しましょ?」

 

 

 

 

 

 永琳さん曰く、人里で薬売をしたいそうな。それも置き薬。

 しかし、先日お弟子さんと一緒に売りに行ったらそんなに売れなかったと。

 その理由はオレが売ってる『治療符』だとセンセーから聞いてこの店に来た、と。

 まあ、そうなってもおかしくはないか。

 『治療符』って便利なんよね。どんな症状でも問答無用で治療するから。

 症状によって『治療符』が何枚いるかは変わるけど、あれさえあれば風邪から骨折まで幅広く対応出来るからな。そういう風に作ったし。

 なんせこの幻想郷、妖怪は知らんけど人里の医療技術は数世紀昔で止まってたからなぁ。おまけに医者も薬師も高齢化しとったし。

 流石にそれはまずいってことで、次の世代の医者が育つまでの代用品として『治療符』を作ったんやけど。

 ちと、便利すぎたかな?

 

「なるほどなるほど。ほなオレが符の販売を抑えればええんやね」

「あら、あっさりと引き下がるのね。売れ筋商品と聞いてたから断られると思ってたんだけど」

「元々、次世代の育成が終わるまでの代用品や。腕の確かな医者がおるんなら問題ないやろ」

「初対面なのに私の腕を信用して良いのかしら?」

「姫さんから不老不死の薬作ったんはあんたやと聞いてる。そんなもん作れるなら大抵の薬は作れるやろ」

「そう思ってもらって構わないわ」

「それに」

「それに?」

「オレの符は、オレが生きとる間、オレしか作られへんからね」

 

 なんせこの店で売っとる商品全て、オレの能力で作られとる。そう、オレの能力で。決して技術やない。

 つまり、オレが死んだら誰も同じもんは作られへん訳や。

 それと比べて薬は次の世代に伝えられる技術や。ちゃんと伝承できたなら、師匠がおらんくなっても薬は作られるからな。

 なら、いつ生産が止まるか分からんもんより、技術の伝承が行える薬の流通を確保するほうがええやろ、うん。

 しかも、この別嬪なお医者様も不老不死らしいからなあ。技術が途絶える事はないし、この人がどこかに移動しない限りは永遠に面倒を見てくれるお医者様やぞ。

 どう考えてもこちら優先ちゃうかな。

 

「でも、完全には符の販売を止めないのね」

「薬ではどうにも出来ないもんがあるかもしれんしなぁ。緊急用にはええんとちゃいますかね」

 

 なんせ骨折も虫歯も治せるからな。あれは薬ですぐどうこうなる物じゃないし。

 

「そう、ね。私が手術をするまでの生命維持装置としても使えるわね」

「手術まで出来るんかい。なんでもござれやな」

 

 スペック高すぎやろこの人。まぁ、そんな人がおるなら安心出来るか。

 

「ほな、今後の人里をよろしゅう頼んます。たぶん出番は多いよ? なんせ鬼と相撲取るのが好きな腕白坊主が多いから」

「あらあら、それは大変ね。主に私の弟子が」

「弟子?」

 

 この人じゃなくて、お弟子さんが人里に来るんか?

 お弟子さんもおるなら、人里も安泰かねえ。

 

「ええ、そうよ。まだ修行中だけど、ある程度の知識はあるから大丈夫よ。手に負えない時は永遠亭に運ぶように言ってるわ」

「あ、そうなんか。で、そのお弟子さんは? 顔知っときたいんやけど」

「あなたがこの前永遠亭に来た時にからかってたウサミミ生えてる子よ」

 

 ああ、あのからかうとおもろい子か。はたして大丈夫やろか?

 人里にはオレみたいな人をからかうのが大好きなやつが数人おるんやけど。

 

「心配しなくても大丈夫よ。だってあの子、人見知りだもの」

「その方が心配や!」

「だから大丈夫よ。いざという時は頑張れる子だもの。それより、あっちのことを心配した方がよさそうよ?」

「……出来れば目を逸らしていたかった」

「でもほら、こっちに歩いてきてるわよ」

 

 その言葉が終わると同時、姫さんは永琳さんにしがみつき、妹紅はオレを引き寄せて後ろに隠した。

 おーい、いったいどうしたんや。

 永琳さんと話しとる間にどんな会話したんやこいつら?

 

「永琳! 永琳からも何か言ってやってちょうだい!」

「まあまあ、2人とも落ち着いて。彼にだって好みがあるんだから」

「オレの好み? とりあえず料理が出来て、代筆して欲しい時があるから字が書ける人かな」

 

 どっちもオレには出来へんことやからね。代筆はともかく、美味い飯が食べたいんよオレは。

 近いうちに食材持って、黒白の家行ってみよかな。あいつはちゃんとした料理が出来るからな。

 

「永琳、明日から料理の練習をするわよ」

「それじゃあ簡単な料理からはじめましょうか。それにしても姫様、彼の事が気に入っているのね」

「ええ、秋と一緒にいたら退屈しそうにないもの。永琳の唖然とした顔を見させてくれたのは秋しかいないわ」

「ふん、何があったってお前にだけは秋は嫁がせないからな」

 

 待て、それは色々とおかしいよご先祖様。そして、やっぱし料理は出来へんねんな姫さん。

 ああ、いや、そんな気まずそうな顔せんでも。これから頑張れば大丈夫やって!

 

「あら、モテモテね」

 

 永琳さん、微笑みながらその感想言うんもなんか違う。

 というか、普通あなたも輝夜はお前なんぞにやらんとか言うんじゃないんですか?

 

 ――おや、私に何の相談もせずに秋の結婚を決めるのはどうかと思うのですが――

 

「あ、母上。お久しぶりやね」

「ええ、少し人里に用があったので帰りに寄らせてもらいました。というか、あなたも偶にはこちらに顔を出しなさい」

「秋、その方は誰かしら? あなたのお母様と聞こえたんだけど」

「ええ、私が幻想郷で秋の保護者をしている四季映姫です。以後お見知りおきを」

「「……え、ええええ!?」」

 

 その日、時が止まった。




まあ、このネタがやりたかったんですよ。
血の濃さを木にしなければ、藤原氏の子孫はそこらかしこにいるので、何にもおかしくはないですよね。
そして、予想外の人を登場させられたと思ってます。
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