異世界での暮らし方   作:磨殊

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第6話

 巫女が飲む。

 魔法使いが飲む。

 吸血鬼が飲む。

 メイドが飲む。

 亡霊が飲む。

 半人半霊が飲む。

 

 ――神様、こんな面子に混じって酒を飲むのに違和感を覚えなくなってきたのですが、そろそろ自分を一般人と称するのは無理なのかもしれません。

 

 

 

 

 

異世界での暮らし方 第6話

 

 

 

 

 

 紅白と黒白と合流して話をしとったら、ここの住人らしき声が聞こえてきた。

 

「あら、見た事のない顔が1つあるわね。妖夢、あれは誰かしら」

「幽々子様、私に聞かれても分からないのですが」

「妖夢が呼んだんじゃないの?」

「いえ、違いますって。そもそも私が見た事のある人間は、そこにいる3人だけです」

 

 現れたのはたぶんここの主人やろうなあ。

 ピンクの髪した頭に渦巻模様(?)が描かれている帽子を被ってる女性と、銀髪で刀を2本持っとる女の子。銀髪の女の子の近くにはなんか人魂が浮かんどるんやけど慕われとるんやろか。

 さっきの会話からすると、ピンクの髪の毛の人が主人で銀髪の人が家来なんやろね。取り合えず銀髪の子は要注意。刀使えるような肉体派は天敵や。

 

「という訳で、あなたは誰かしら?」

「どういう訳かはわからないけど名乗りましょう。初めまして、僕の名前は大月 秋。人里から歩いて5分の場所で店を営んでいるので良かったら来てください」

「秋さん、その言葉使いは控えめに言って気持ち悪いわ」

「ああ、聞いてて鳥肌がたったぜ」

 

 ひどっ。それはあんまりとちゃうか紅白に黒白。さっちゃんとお嬢も、何も腕さすってまで気持ち悪がらんでも。というかお嬢、貴様は今のオレと似たような事をしょっちゅうやってるからな。

 まったく、初対面の人には礼儀正しくせんとあかんがな。そんな事も分からんとはこの傍若無人の集団め。あ、嘘です言い過ぎました各々武器をしまおうか。

 

「そうね。さっき私達が現れるまでと同じ口調で構わないわよ。その方が楽しそうだもの」

「はぁ、そうですか。ほなご期待通りに。オレの名前は大月 秋。設定年齢19歳、蟹座のB型。人里から歩いて5分の場所で少し変わった店を営んどる能力以外は極普通の一般人や。周りの面子と違ってが個性が薄いのが悩みやけど、ま、これからよろしゅうに」

「あ、あの、設定年齢って何なんですか?」

「それに、あなたも十二分に個性豊かと思うわよ」

 

 いや、だってスク○イドの台詞は一度は言いたいのが多すぎて。アニメは無理やろうから、せめて漫画版が幻想郷に流れて来おへんかな。

 いくら幻想郷が刺激には満ち溢れてるとはいえ、好きな漫画の一つや二つないとツライんやけど。だってオレはインドア派やし。幻想郷での刺激といったら妖怪に見つからないように移動したり、見つかったら全力で逃げたり、飢え死にしないように野山駆け回って山菜探したりするのがメインやから家の中で暇潰せるもんが欲しいねん。

 おっと脱線してもうた。

 

「細かいことは気にしない気にしない。いい大人になれへんよ?」

「私達の方が長生きしていると思うわ。まあいいわ。私の名前は西行寺 幽々子。ここ、白玉楼の主よ。宴会に招待してなかったけど歓迎するわ」

「私はここで庭師をしている魂魄 妖夢と申します」

「幽々子さんに妖夢さんね。うん、覚えた」

 

 ピンクの人が幽々子さんで銀髪の人が妖夢さんというらしい。

 ちなみに、初対面の人にはさんづけをするようにしている。だってオレより幼く見えても年上の場合が多々あるからな、幻想郷では。良い例でいうとお嬢がそうやね。幽々子さんは年上っぽかったけど、どうも妖夢さんも年上っぽいなあ。

 そんな訳やから、さすがにオレも初対面からあだ名で呼んだりはせえへんのよ。ある程度仲良うなって、多少弄っても大丈夫なラインを見極めたらあだ名つけるつもりやけど。

 

「あら、別に幽々子でかまわないのに」

「ほなそうさせてもらうわ。幽々子、妖夢、お酒とお菓子持ってきたからどうぞ。オレが持っとったら酔った黒白かお嬢に略奪されてまうんで」

 

 と言って、持ってきたものを妖夢に渡す。運が悪いと弾幕ごっこ挑まれて持って行かれるんよね。もしくはいつのまにかさっちゃんの手にお酒が移動していたり。

 けど、この2人ならそう易々とは奪われへんやろ。紅白と知り合いで冥界なんて所に住んでるんやから、きっと弾幕言語で語り合うことが出来る人達に違いない。

 

「あら、ありがとう。さっそく皆で頂きましょうか。妖夢」

「はい、さっそく盛り付けますね。あれ、なんで焼き芋があるんですか。今は春ですよ?」

「ちょっと前までは冬だったぜ」

「春だろうが冬だろうが関係あらへんよ。オレの能力使ったらどの季節の物でも育つから」

「どんな能力なんですか!?」

 

 そんな会話をしつつ宴会は始まった。とりあえず妖夢、そんな詰め寄らなくってもオレの能力ぐらい教えたるから。え、季節関係なく芋が育つなら食費が浮く? こんな庭つきの屋敷に住んどる人からそんなひもじいセリフ聞かされるとは思わんかったわ。後でその符売ったろか?

 

 

 

 

 

「なんですと!?」

 

 紅白によって、幽々子と妖夢が今回の異変の犯人だと教えられた。ついでに黒白とさっちゃんは出遅れたということも。しかし、2人が本当に紅白と弾幕ごっこできるような人物だったとは。しかも紅白に喧嘩売っても平気なレベルの。うーん……人は見かけによらんなあ。妖夢はともかく、幽々子は見た感じこんなのほほんとしとんのに。まあ、それ言ったらお嬢もただの幼女やったな。

 

「2人とも、オレは弾幕ごっこ出来へんし身体能力等もこの世界の一般人以下なんでそこらへん気をつけてな」

「え、秋さんは弾幕ごっこ出来ないんですか? よくここまで怪我1つ無く来れましたね」

「咲夜さんが優秀だったとだけ言っとくわ。それと、オレは燃費悪いからあんまし弾幕張れないんよ」

 

 呆れた顔されてもなあ。なんせ弾幕の1つ1つが文字を書いた紙やからね。弾幕用に使うぐらいなら逃走用に使った方が効率ええんよね。というか弾幕ごっこしてもすぐ弾切れするわ。

 

「秋、そんなことよりだな」

 

 少し顔を赤くした黒白が話しかけてきた。それなりに飲んでるのに少ししか赤くなってないんがすごいわ。

 

「なんでお前は異変を解決しようとした時にいなかったんだ!」

「いや、おっても意味ないやん。それとお嬢の世話しとったの」

「お前がいたら霊夢より先に解決出来たのに!」

 

 あぁ、やっぱ悔しかったんや。だからと言って、こうなったら自棄酒だとその酒飲むのやめよう、勿体無いしオレまだ飲んでない!

 

「ちょっと魔理沙、秋さんがいたら何で私より先に解決出来るのよ。秋さんは弾幕ごっこでは役に立たないわよ?」

「いやいや、こう見えてブースターとしては結構優秀なんだぜ。なんせ『加速』と書けば好きなだけ加速するし勝手にバリアも張ってくれるからな」

「へえー」

 

 そんなびっくりした顔で見られても。てかさっちゃん、しまったその手があったかとボソッと呟やいたやんな今。でも悪いけどさっちゃんには協力出来へんのよ。

 

「驚いとるとこ悪いんやけど、ブースターとして役に立てるんは黒白限定やよ」

 

 沸き起こるブーイング。おいおい。

 

「あんたらオレおらんでも、もう十分に強いやん」

「それは魔理沙でも変わらないわ」

「何か独占契約でも交わしたのかしら?」

「魔法使いと妖怪と悪魔との契約は極力しないようにしとるからそれは無い。返済が怖すぎる。そうやなくてやね」

「なくて?」

「黒白の箒しか――二人乗り出来るもん無いやん」

「……ああ、確かに」

 

 皆理解してくれたみたいやね。いくらブースターとして役立っても、オレを連れて移動する手段が無いということに。黒白以外は皆何も使わずに飛ぶもんなあ、羨ましいぞ。

 

「あのー」

「はい、妖夢君何でしょうか」

 

 妖夢が質問をしたそうに声をかけてきたので当ててみた。

 

「よ、妖夢君って。それは置いといてですね。お店で『加速』や『バリア』と書かれた紙は売ってないんですか?」

「売っとるよ」

 

 一番人気の商品やもの。配達が忙しい兄ちゃんや子供の怪我を心配する親御さんにお勧めです。

 

「ならそれを買って使えばいいだけの話では?」

「妖夢、それじゃ意味が無いわ」

「え、そうでしょうか」

「そうなのよ。私達が自分で使おうとしたらそっちに意識がいってしまうわ。それならいつも通り避けることに集中した方がいい。彼が一緒に乗って、彼が勝手に能力を使ってくれるから役立つの。だってその分相手を追い詰める事に集中できるもの」

 

 幽々子の言う通りや。ただ、文字の書き方によっては自動で発動するようにも出来るんやけどね。

 ん? 妖夢なら半霊の方に発動任せれば大丈夫な気が。

 

「ちなみに、バリアはただのサ――ヴィスや。撃墜されたらオレまで落ちるからな」

「それに、秋が弾切れしたら盾に使えるという特典まであるぜ」

「ちょっと待て。そんなん付けた覚えないし、オレが頑丈になってきた言うても耐久力があるんやぞ」

 

 何そんな特典があるのがさも当たり前のように言うとんねん。こいつ、そんな恐ろしいことしようとしとったんかい。いやいや、そんなサムズアップされても。

 

「大丈夫。使い終わったブースターは切り離すだけだぜ」

「洒落にならんっ!」

 

 オレはVFシリーズのアーマードパーツ扱いですかよ!? いや、確かに使用済みのブースターは邪魔でしか無いけど。

 

「あら、仕える主人の盾になるのは光栄なことですわ」

「咲夜さんはそうかもしれんけど、オレにはそこまでして守りたい相手も仕える主もおらんのでしばらくは己の身が第一かな」

 

 そこまで思える相手がおるんは羨ましいけどな。

 まあ、今はそれよりも。

 

「あ」

「すまんな幽々子。卵焼きは大好物なんよ。最後の1つは頂いた」

 

 この卵焼きが甘口だったのがいけないのだよ。ちょうど良い甘さで最高やと思います。

 

「秋、落ち着いて話し合いましょう。取り合えずその卵焼きをお皿に置きなさい」

「あむ」

「あ、ああ……」

 

 おいしゅうございました。

 あれ、何か幽々子が俯いてブツブツ言うとる。

 

「あ、あの、幽々子?」

「秋、あなたはやってはいけないことをやってしまったわ」

 

 何かめっさ恨みこもっとる!? こいつ、見た目はこの面子の中で一番大人っぽいのに予想外に大人気ないなあ、おい。

 

「だからあなたには後悔してもらおうと思うの」

「どうやって?」

「こうするの。あむ」

「ぎゃー!」

 

 一瞬で残っていた焼豚6枚全部一気に食べられた!?

 

「こっちも」

 

 こ、今度は里芋の煮っ転がしが。

 

「これも頂くわ」

「ちょ、ちょっと待てあほー!」

「幽々子様、食べたいならまた後日食べられますから全部は食べないでくださいっ!」

「秋だけならともかく私が食べようとしてたのまで食べるな!」

「全くもう。少しは落ち着いて食べなさいよ。あ、妖夢お茶のお代わりちょうだい」

「咲夜、私達が食べる分を確保しなさい」

「はい、お嬢様。どれの確保を優先しましょうか?」

 

 

 

 

 

 こうしてかなりの量があったご馳走は、そのほとんどが幽々子のお腹に収められたのであった。

 ああ、楽しみにしとった、さっちゃんの作った豚の角煮が。滅多に食べられないのになあ。

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