異世界での暮らし方   作:磨殊

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第8話

 

 

 妖夢が常連に進化した。

 妖夢がたまにおかずをくれるようになった。

 

 ――神様、うちにも家政婦、いや、メイドさんが欲しいとです。

 

 

 

 

 

 

異世界での暮らし方 第8話

 

 

 

 

 

 今日はなんと、冥界から妖夢がやって来てます。白玉楼で初めて出会った時に宣伝しとって良かったわ。

 

「そんなわけで、ようこそミス・ブシドー。気にいるもんあるかわからんけど、存分に見ていってえな。なんなら作るし」

「はい。なら、幽々子様にも面白いものを見つけてくるように言われているので見繕ってもらえますか? あと、私は武士道を学んでいるわけでは無いのですが」

「なんですと!?」

 

 それやったらせっかく考えたあだ名使われへんやん。いや、そんなに深く考えてないんやけど。

 というか、武士道関係ないんやったら、その刀がいつか理不尽にオレに振るわれる可能性があるんか。黒白と違って大人しそうな性格っぽいから、そこまで危険視せんでもよさそうやけど。

 

「でも刀使っとるがな」

「いえ、剣術を使うのであって武士道は学んでません」

「つまり……不意打ち上等?」

「どうやったらその結論になるんですかっ。間のものが色々と抜けてますよ!」

「おっと失礼。そやね、辻斬り最高が抜けとったわ」

「どっちもどっちです! それに辻斬りなんてしませんよ」

 

 なんかそのうちしそうな気がするんやけど、気のせいやろか。こう、拳で分かり合うならぬ、斬れば分かるとか言ってやりそうなんやけど。

 

 

 

 

 

 妖夢におもしろいものを、とリクストされたんで探してきました。主に試作品やね。作ったはいいけど、人里の人たちには受けが良かったんよね。黒白たちにはよく売れるんやけど。せやから試作品止まりで量産はしとらんのよ、これらのおもしろアイテムは。さて、妖夢には気に入ってもらえるんかね?

 

「これなんてどうや? 童話再現シリーズ1『赤づきんちゃん』」

「これが、ですか? ただのマッチにしか見えませんが」

「ここ良く見てみ」

「『赤づきんちゃんのマッチ』?」

 

 説明しよう!

 このマッチは、『赤づきんちゃんのマッチ』と書くことによって、使った人は自分が望む幻覚を見ることが出来るようになったのだ! マッチが細くて筆で字を書くのはしんどかったと言っておこう。

 

「幻覚見るだけなら別におもしろくも珍しくもないのですが」

「リアルすぎて脳が錯覚起こします」

「は?」

「火傷する幻覚見たら、ホントに火傷します。何か食べた幻覚見たら、胃はホントに食べたと誤解する。たんこぶ作った幻覚みたら本当にたんこぶが出来ている。そんな不思議なマッチやねん」

「それは使い方によっては便利かもしれませんね」

 

 ちょっと納得したところで悪いんやけど、問題点もあるっちゃーある。マッチが燃えていって文字が1文字でも無くなったらただのマッチになるということ。文字が力を持っとるわけやさかい、その文字が消えると効果もなくなるんよね。これは他の商品にも言える欠点なんやけど。

 でもってもう1つ。

 

「3回使ったらあかんよ。あの世からお使いくるさかい」

「危ないじゃないですか! 私は半人半霊だからまだ平気ですけど、一般人には危険ですよ!?」

「大丈夫大丈夫。連れてく振りしてもらってるだけやから。驚かすのが目的やし」

 

 あの死神、暇ならやってみるかい楽しいかもよ、と聞いたら喜んで手え貸してくれだで。驚かす方法は自由。ただ、誰かが3回マッチを使ったら現れてくれればいい。そんな雇用条件。2人して閻魔様にバレないかビクビクしてます。あの人のお説教はツライんよ。長いし、かと言って全て正論でこちらのことを思って言ってくれてるから反論も出来ないから。

 

「え、えーっと、シリーズということは他にもあるんですよね。それを見せてください」

「ええよええよー」

 

 しっかし、これではあかんのか。あの微妙な顔からしたらあかんのやろなあ。けど、ある意味これがもっとも大人しいやつやったんやけど。うん、残念やねえ。

 一度倉庫に行って他のやつを探す。童話再現シリーズは一纏めにして仕舞ったけど、どこに纏めて置いたっけか。ん、あそこか。

 

「お待たせー」

「何で同じシリーズなのに一緒に持ってこなかったんですか?」

 

 だって大きい物もあるから一片に運ぶんしんどいねん。何回かに分けんと無理やって。全てがマッチサイズちゃうからなあ。

 

「だってそのマッチはたまたま机にしまっとっただけやもの。他のはどこに置いたか忘れとった」

「お店なんですから、ちゃんと整理整頓しましょうよ」

「おや、本音と建前が逆に」

「絶対わざとでしょう」

 

 妖夢が呆れた顔をして呟いた。うん、そろそろ真面目に商品の説明しよう。帰られたら困る。そろそろ餓死の可能性出てきたから何とかして買ってもらわんと。出来ればリピーターになって欲しいんやけどね。常連さん大歓迎。

 

「童話再現シリーズその3『王様の耳はロバのっ――』」

「何でそこで切るんですか!?」

 

 いや、だってさ。

 

「完全再現しても自白剤もしくはロバ耳になるだけやん」

「まあ、そうですね」

「そんなんおもろいか?」

「……おもしろくありませんね」

 

 そうやろそうやろ。ただの自白剤なんておもろないし、ロバ耳も幻想郷ならいそうやし。てか、馬耳と見分けつかんわロバ耳なんて。

 

「せやから効果をちょっと変えて出来たのがこの錠剤や!」

「どう変わったんですか? 文字が小さすぎて読めないのですが」

「簡単に言うと、秘密を喋りたくてしょうがないのに肝心な部分が喋れないようになりました」

「そ、それってずっと秘密にしておくことよりもかなりしんどくありませんか?」

 

 しんどいやろうねえ。なんせ喋ろうとしてるのに喋れないんやから。書いた文字は『喋りたい、でも喋れない』。まんまやね。

 一度黒白へのお仕置きに使ったんやけど、つらそうやったもんなあ。秘密の前置きとかはすらすらと喋れるのに、肝心の秘密の部分にさしかかると言葉が出なくなるんやもの。

 

「罰ゲームとして最適かと」

「そんな罰ゲームやりませんよ」

「もしくは秘密吐かされそうな時に飲むと喋らなくて済むで?」

「拷問だったら命が確実に助かりませんね」

 

 え、幻想郷に拷問する人おるんか? 拷問する人なんていませんよ、というツッコミくる思うたんやけど。ああ、紫さんならやるかもしれんなあ。お嬢もさっちゃんにさせるかもしれんなあ。

 

「それで、どうやろか?」

「……次のをお願いします」

 

 ですよねー。使い勝手悪いもんなあ、これ。

 ほな次は……もう順番でええわ。

 

「童話再現シリーズ4『白雪姫が食べたリンゴ』」

「ただの毒リンゴじゃないですか! 次!」

 

 説明する前に妖夢に遮られてしもた。くっ、やはりストレート過ぎたか。

 

「なんでそんな危険な物作ったんですか。間違って食べたら大変なことになりますよ」

「なんでって、そんなんオレを食べようとする妖怪への迎撃用に決まってるやん――腹ペコルーミアとか洒落にならん」

 

 人と妖怪が同じ釜の飯を食べるようになったり、弾幕ごっこが出来ても人を食べる妖怪はいるんでね。もしもの時用に作ったんやけど、効果確かめるために実験するわけにもいかんから本当の効果は不明。不安要素が残っとるから使わずにお蔵入りになった一品や。

 

「これはどや。童話再現シリーズ8『かぼちゃの馬車』」

「ただのかぼちゃ……ですよね?」

 

 そう、取りだしたるはただのかぼちゃや。しかし、これには仕掛けがあってやね。

 

「最初から馬車やったらかぼちゃの馬車ちゃうやん。変身、いや変形か? ともかく最初はかぼちゃで後から馬車にならんとね」

「変なところに拘ってますね」

 

 妖夢さんや、変やなくて細かいと言って欲しいのよ。拘るからこそ良い品が作れるんや。それに、ふざけたもんこそ手を抜いたらあかんと思うんよ。

 

「ふざけた品やのに手を抜いて作ったら、それはただのつまらん品にしかならへんよ。それはともかく、その商品は地面に叩きつけると馬車になるんよ」

「はあ、それで馬はどうするんですか? まさか、ねずみを用意してるとか言いませんよね?」

「言わへん言わへん。だって用意したんは馬車だけやもの」

「これだけでは使えないなんて、嫌がらせですか!」

「あほう、自分が食ってくだけで精一杯やのに他の動物飼ってられるかい! ねずみが餓死するか飯になってまうわ」

「意外なことにまともな理由!?」

「ちなみに昨日、お米が無くなりました」

「結構貧乏なんですね」

 

 その憐憫の目で見るのやめれ。同情するなら金ください。いや、ほんと。

 昨日ご飯炊こうとしたらお米なかったんよね。とりあえず正月に作ったお餅があったからそれ食べたんやけど。次は醤油か砂糖が無くなりそうなんよね。また黒白んとこでお世話になろうかねえ。

 

「そんな訳で、何か買ってってーな。オレがお米買えるぐらい商品買ってってくれるとありがたい」

「そう言われてもこんなものばかりではちょっと」

「いやいやいや、面白さ気にしなかったらまともなもんも置いてるから。むしろ一般人にはそっちしか売っとらんから」

「本当ですか?」

 

 妖夢が怪しい物を見る目でこっちを見てくるんで、急いでまともな品を持ってこよ。

 

 

 

 

 

「じゃあ、このマッチと冷蔵庫を買わせてもらいます」

「まいどあり! 冷蔵庫の方は後日お届けさせてもらうわ」

 

 やった、やりましたよ、お買い上げ確定ですよ。冷蔵庫はともかく、マッチが売れるとは思わんかったわ。

 

「いえ、これさえあれば幽々子様がお腹をすかしてもその場凌ぎが出来るので」

「お菓子でもあげればええやん」

「量が足りないんですよ。食べる時は買い置きしていた羊羹等のお菓子が全滅するんです」

 

 妖夢は疲れきった声でマッチを買った理由を教えてくれた。そ、そんなに食べるんかあの亡霊嬢。けど、食べるというわりには太っとらんよね。亡霊だからか?

 

「それで、冷蔵庫は後ほど届けてもらえるとのことですが、いつ頃になるんですか?」

「黒白便で届けるさかい、明日の夕方までには確実に」

「あの重い物を魔理沙さんが運べるんですか?」

「もちろんや」

 

 冷蔵庫に『軽量化』の符でも貼り付ければ無問題やからね。もしくは『重さを感じない』でもええしね。

 

「秋さんの能力って何でもありですね」

「文字使いも大雑把に言えば魔法使いやからね。魔法使いなら何が出来ても不思議ちゃうやろ?」

「幻想郷の魔法使いはそこまで万能じゃない気がしますけどね」

 

 それではお願いしますと言って妖夢は帰って行った。さて、黒白に手紙を送っとこ。明日は手伝ってもらわんとあかんからね

 オレは能力のせいで手紙が書かれへんから、文々。新聞の印刷された文字を再利用せなあかんのよ。これを切り抜いて貼って完成や。後はこれを折鶴にして『思いは届く』と書けば、勝手に黒白のところまで飛んでってくれるんや。結構便利。

 

 さて、今日の売り上げでお米買えるようなったから人里に行きましょか。時刻は夕方。今から買いに行っても、幻想郷にはタイムセールという概念が無から安く買える訳やないんが残念やけど。

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