昔の俺はとにかく本を読むのが好きな子供だった。
周りには同年代の子供はおらず、自分の白髪を見ると気味が悪いと言って離れていく。本が友達といっても良かった。そんな俺が運命に出会ったのはまだ6歳の頃だった。
その本にタイトルはなく、1ページ目にこうとだけ書かれていた。
「英雄譚」
気づけば俺は誘蛾灯に誘われる蛾のように手を取った。これが俺の始まりだった。
それからは事あるごとにその本を読み続けた。他の子供が戦隊ものや変身するヒーローに憧れるように、俺は物語の英雄に憧れていた。どんな窮地でもひっくり返す人、人々のピンチにすぐさま駆けつける人、か弱い民のために立ち上がった人。テレビの中だけのヒーローに比べ、実際にいたということがより一層魅力的だった。そんな生活を続けていたからなのだろうか。
『ん?おーようやく会えたなボウズ!これでやっとお前さんにイイとこ見せてやれるぜ!』
俺は、英雄に出会った。
「愛宕英雄?」
そう言われて頭に浮かぶのはインターハイで部長と戦った少し騒がしい人と和ちゃんのエトペンを蹴り飛ばした人だった。なのでどうしても眉をひそめてしまった咲だったが楽しそうに話す京太郎の様子から悪い人ではないのだと判断した。
「そうそう、インターハイの会場であったんだけどさ、そいつが麻雀すげー上手いんだよ。話して見たら面白いやつだし友達になったんだよ」
「ふむ、愛宕ということは姫松高校のご姉妹の家族でしょうか?」
「家族なんだってさ。だから応援に来たんだって言ってた」
「わざわざ東京まで来るとはいいやつだじぇ!」
なるほど、家族の応援なら女子の麻雀大会に来ていてもおかしくはない。姉妹を大事にするというのもGOODだ。この夏、ようやく姉と和解し長い姉妹ゲンカに終止符を打った咲からしてみればとても良い人に聞こえた。
ふと、ここまで反応の無い先輩方を見ると染谷先輩だけではなくあの部長までもが口を開け目を見開き驚いていた。その様に他の一年も何事かと思っていると先輩たちも再起動したのか、口を開いた。
「あなたたち、その名前を聞いて何も…思わないわよね、男子だし」
「それでも知らんのはどうかと思うぞ…これからは周りの情報収集もやっていかんといけんか…」
「あ、あの…その愛宕さんって有名な方なんですか?」
「まあ有名も有名よ。寧ろ咲や須賀くんならともかく和や優希が知らないのはどうかと思うけど…」
「そんなに有名なんだじぇ?」
「愛宕…愛宕…言われてみれば聞き覚えが…」
「愛宕英雄はインターミドルとインターハイを6連覇した前代未聞のチャンピオンよ」
「「「「!?」」」」
「あーやっぱり今年も優勝したんかいな」
「まあ彼に勝てる人は男子にはいないでしょうしねー。女子でも限られてるでしょうし…」
「…!思い出しました、昔インターミドルで優勝したときに受けた取材で名前が出ていました。そんなに強いとは思っていませんでしたが…」
「あ、あいつそんなに強かったのか!?」
「彼とは麻雀で戦ったことはないの?」
「は、はい。いつも話すことは大体おも…雑談でたまに麻雀の打ち方を教えてもらうぐらいでした」
「あら、チャンピオンに教えてもらうってことは私の指導はもうお役御免かしら?」
「い、いえいえ部長の指導も受けたいです!」
「あらあら、そんなに熱烈に求められちゃあ仕方ないわね」
「話が脱線しとるぞー。愛宕兄の話をしてたんとちゃうんかい」
「はいはい…まあそんなことだからこの機会に徹底的に教えてもらいなさい。チャンピオンに麻雀を基礎から教えてもらうなんて贅沢滅多にないんだから」
「むー京太郎だけずるいじぇ!優希ちゃんもチャンピオンと戦ってみたいじぇ!」
「ほなやってみよか?片岡優希ちゃん」
いつからだろうか、ドアの方から声が聞こえて来たと思いそちらを見ると1人の男性がドアにもたれかかりながら腕を組みこちらを見ていた。半分ほどまで開かれた赤い目に整った顔立ち、すらっとした体格から170後半はあるだろうことが窺える。だが1番目を引くのはその髪の毛だろう。サッパリ短くしているがサラサラしていることが遠目にもわかる白髪。どことなく愛宕さん家の姉(おそらく)の面影があることから血縁関係なのは容易に想像がつく。そう、この男こそが、
「ワイこそが噂のチャンピオン、愛宕英雄その人やで!」
6連覇の男、浪速の英雄、プロ入り確実の期待の新星、そしてーーーーーーー
「さあ、かかってこんかい!」
ようやくFate要素出せた…基本思いつきでやってるから矛盾やおかしいところがあったら教えて欲しいです。