「さて〜いよいよ準決勝だね〜」
「まさか本当にここまで来れるとは……」
「これも西住ちゃんやりくりくが来てくれたおかげだね〜」
「いえいえ、そんなことないですよ」
とある日の昼休み、りくは会長に呼ばれて生徒会室に来ている。呼ばれたのはりくだけであり河島や小山は今は生徒会室にはいない。
「ところで……なんで俺を呼んだんですか?そろそろ訳を……」
「2人きりになりたかった……って言ったら迷惑?」
「……本当の理由は?」
「もぅ〜そこは動揺したりしてよ〜」
「すみませんね〜で?目的は?」
「2回戦の前に見つけた戦車2両あるでしょ?」
「ありますね、沙織たちが迷子になったりも……」
「あはは……」
どうやら2回戦の前に見つけた戦車についての話らしい。2回戦の前にみんなは戦車を探していた。その時に見つけた戦車が2両あったが、整備が間に合わないため2回戦で使えなかった。
「2両のうち1両…ルノーの方は次の試合で使えるようになるんだけど風紀委員の3人に乗ってもらうことになる。それで車長をやる人も呼んでるから顔合わせってところかな」
「みほじゃなくて俺なのは?」
「実は2人きりで少し話したかったっていうのも嘘ではないんだよね……」
「そうなのか?」
「ずっと謝りたくてね、りくりくや西住ちゃんを戦車道に参加させた時って少し無理矢理だったじゃない?」
「…………少し?」
「……かなりだね、あの時は本当にごめん。
謝って許してもらえるとは思ってないけど」
「(なるほどな、ずっとそのことを引きずってたのに表情に出さないようにしてたのか)」
会長はずっと謝りたかった。りくとみほの2人を戦車道に参加させた時、お願いしたことを約束してないと言って無理矢理参加させたことをずっと引きずっていて、今頭を下げている。
「頭上げてくださいよ会長。そりゃあ最初はぶん殴りそうになりましたけど……今は感謝してるんです。俺はともかく、みほは戦車道をもうやりたくないって気持ちで転校してきたんですよ?それでも今はまた楽しくやれてるんです。それは大洗みんなのおかげですよ」
「りくりく……」
「大丈夫、最初は恨みましたけど…今はもう感謝の気持ちしかありませんよ」
「ありがとう……りくりくー!」
「うわっ!?」
大洗で始めた当初はたしかに恨んでいた、自分がやるからみほには脅したりしないように言っていたのに、承諾したように見せてそれを裏切ったからだ。でも今はもう感謝の気持ちしかない。それを聞いた会長が涙を浮かべながら抱きついてきたため驚いている。急すぎて避けられなかったくらいに……
「びっくりした……」
ガチャ
「失礼します、風紀委員の……ちょっとあなたたち!?何してるの!?」
バタン!
りくに抱きついたところで会長に呼ばれた風紀委員の園みどり子が生徒会室に入ってきた。しかしちょうど抱きついたところに入ってきたため誤解が発生してしまった。
ドアはちゃんと閉めている……
「学校で……しかも生徒会室で男女が抱き合って……何してるのよ!?」
「誤解だ誤解!?」
「そうだよそど子〜まぁ誤解させちゃったのは悪いけど私たちは何もないよ」
「ほ、本当ですか?」
「私がとある事情で嬉しくなって抱きついちゃっただけだからさ〜」
「会長がっていうのがどうにも信じられないけど……何もないならいいわ。それより呼んだ理由を教えてちょうだい」
どうやら信じてもらえたようだ。これは会長の人柄もあるだろうが……それよりも自分が呼ばれた理由を知りたいみたいだ。
「戦車道だけど次のプラウダ戦から前に見つけた戦車が使える状態になったんだよ〜それでそのことを伝えたかっただけ〜」
「じゃありくさんがいるのは?あ、悪いけど私他の人のことはさん付けで呼んでるから男子でもさん付けでも大丈夫?」
「俺は構いませんよ」
「りくりくがいるのは私の個人的な理由で呼んだだけ〜ついでに顔合わせって感じかな」
「個人的な理由……やっぱり」
「なんでその発想にいくんすか!?」
「まぁまぁ〜誤解されても仕方ないでしょ〜」
「されるようなことしたの会長でしょ……」
微妙にりくはツッコミ疲れているが、会長がちゃんと説明をしたため、そど子の誤解は解かれた。風紀委員の3人と戦車道受講メンバーの合流は今日のうちに行われることとなった。
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「はいみんな集合〜」
「なんだろ?お兄ちゃん何か聞いてる?」
「う〜ん、ルノーに乗る3人が今日から合流するからそれでじゃないか?」
「そうなの!?」
「あ、そういや言ってなかったか」
「りくりくの言う通りルノーに乗る乗員を伝えるよ〜」
午後の戦車道練習前、突然会長が集合をかけた。何も聞かされていないみほがりくに聞くと、りくは昼休みに会長から聞いていたため驚くことはなかった。というより伝え忘れていた。
「風紀委員の園みどり子です。よろしくお願いします」
「そど子って呼んでやってくれ〜」
「会長!人の名前を勝手に略さないでください!」
「それじゃあ操縦は冷泉ちゃんに教えてもらって〜」
「ちょっと!?」
ルノーに乗るのは風紀委員の3人。会長がそど子と勝手に略してそれに対して文句を言っているが、会長はそれを無視して話を進めた。
「私が教えるのか」
「冷泉さんに教わるの!?」
「じゃあ自分でマニュアル見て覚えるんだな」
「なっ!?なんて無責任なこと言うのよ!?ちゃんと丁寧に教えなさいよ!」
「いやそれ教えてもらう態度じゃないだろ……麻子もそんな雑にならないで教えてやれって」
「りくが言うなら仕方ない」
一瞬麻子が雑に教え……というよりマニュアル見て自分で覚えてもらおうとしていたが、そんなことですぐ操縦ができるのは麻子くらいだろう。りくが声をかけてなんとか雑にならずに済んだ。
「さて、砲手は誰がやるつもりだ?」
「あ、決めてなかったわね……そうね、砲手はパゾ美、操縦手はゴモヨ、お願いできる?車長と通信手は私が兼任するわ」
「「大丈夫です」」
「ルノーに5人で乗り込むのは狭いし……いいや、まずは麻子に操縦を教わってもらってその後俺が砲撃を教える、いいか?みほ」
「うん、とりあえずお兄ちゃんはIV号に入って麻子さんの代わりに操縦、麻子さんが教え終わったら交代してもらうね。カメさんチームは申し訳ないですけどお兄ちゃん抜きで練習していてください」
「はいよ〜」
「それじゃあ今日の訓練を開始します。パンツァー・フォー!」
『おぉー!』
新しく入ってもらった3人はまず基本的なことから覚え始めた。風紀委員チームはカモさんチームと呼ばれることとなったが、そど子が少し文句を言っていたがそれは気にしなかった。
麻子も意外とちゃんと教えていたのか、操縦手を任されたゴモヨは思っていたより早くまともに動かせるようになった。
麻子とりくを交代して今度は砲撃について教えていたが、飲み込みが早いのか、的に当て始めるのが早かった。まだ真ん中の方には当たらないがそこは練習していくしかない。
…………河島より命中率が高いとりくは思ったのは内緒。
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「今日の訓練はここまでとする!」
『ありがとうございました!』
河島の号令で、今日の練習はここまでとなった。今日から参加している風紀委員たちもいい感じにできていた。みんな帰り支度を始め出し、みほとりくも支度しようとした時に
「西住ちゃんとりくりくはこの後生徒会室来て、大事な話があるから」
「「大事な話?」」
会長から声をかけられた。理由はよくわからないが重要な話らしいということで2人は生徒会室に向かった。
「いや〜悪いね〜」
「いえ、それより話って」
「まぁまぁ〜まずはあんこう鍋を食べてよ〜」
「会長のあんこう鍋は美味いぞ」
「いやそういう問題じゃねぇって……まぁとりあえず食べるか」
「食べるんだ!?お兄ちゃんお腹空いてるとか?」
「それもある(このタイミングで話だと多分廃校問題のことか?)」
『あるんだ……』
呼ばれた2人は話をされる前に会長が作ったあんこう鍋を食べることとなった。どうやら会長が作るあんこう鍋は評判が良いらしい。りくはお腹が空いているという理由で誤魔化したが、話が廃校のことについてだと予想している。
「うん、たしかに美味い!」
「ほんと美味しい!」
「そりゃよかったよ〜」
「そんで?話って?」
「まぁまぁ〜まずは食べてからってことで」
「「(また誤魔化した)」」
時々話の内容を聞こうとしたりくとみほだったが、ことごとく誤魔化せられたため聞けなかった。そして作ってもらったあんこう鍋を食べ終わった後はアルバムを見せられている。
「これが夏の水かけ祭りでこっちが泥んこプロレス大会の時だよ〜」
「楽しそうですね」
「俺たちが来る前はこんなことやってたんですね」
「うん。楽しかったよ」
「ああ、この時は本当に」
「(やっぱり話は廃校の件か?)」
「……いや〜2人ともごめんね?2人が来る前にここがどれくらい楽しいことやってたか伝えたかったんだよ〜」
「そう……でしたか」
「なるほどな〜(嘘か)」
あんこう鍋を食べた後は、アルバムを見せながら2人が転校して来る前に学園でやっていたことを教えている。まるで自分たちが思い出を振り返っているように……
「わざわざ残ってもらって悪かったね〜気を付けて帰ってね〜」
「(言わないんですね)」
「(やっぱりバレてたか……うん、言わないことにするよ)」
「(そうですか…じゃあみほにも黙っておきます」」
「(助かるよ〜)」
「あ、そうだ」
『?』
りくとみほの2人を残したのは学校の廃校の件を伝えるためだったが……結局言わないことにした。りくと会長は2人で目だけで話していた様子だが、お互いの思っていることは伝わっているみたいだ。
帰る直前急にりくが何かを思い出したようだが……
「次のプラウダ戦……その時が来るかわからないけど相手の優れた砲手……ノンナさんが38tの方に来たら俺に相手させてくれないか?あの人と撃ち合いたい」
「私じゃ勝てないと言うのか?」
「それは100%、俺でも撃ち勝てるかどうか……砲撃を撃ち落とすのはできても倒せるかどうかって感じかな」
「珍しいね、お兄ちゃんからやりたいって言うの」
「まぁな」
りくのお願いはプラウダ戦で、もしノンナと遭遇した際は、自分が砲手をやりたいということだった。普段は装填もしくは悪魔の砲撃を出すだけのりくがこのようなことを言うのは珍しい。
「そんじゃそん時はりくりくに任せるよ」
「操縦はいつも通り任せて」
「仕方ない。それなら私が装填をしてやろう」
「それじゃあその時は車内で話して交代してください。余裕があれば無線で連絡もお願いします」
「サンキューみほ。会長、柚子さん、桃さん」
『!?』
りくのお願い通り、その時が来たら砲手をやらせてもらえることとなった。
お礼を言った時に生徒会メンバーのことを苗字+先輩ではなく、名前+さん付けで呼んだことに4人は驚いた。急だったから驚くのはわかる。
「ん?」
「私たちのことを名前で呼ぶなんて……りく君どうしたの?」
「どうしたんだろうな、自分でもわかんないっすね」
「私だけ呼ばれないのはショックだな〜」
「ふふっ、杏さんもそういう風に思うんですね。頑張りましょう」
「まぁね〜」
「それじゃあ今度こそ、気を付けて帰ってね〜」
「「はい」」
遅くならないうちに2人は帰り出し、片付けは生徒会メンバーだけでやることとなった。みほは帰り道、本当に楽しかったことを伝えたいだけだったのかと思ったが、りくはそうなんじゃないかと誤魔化しておいた。そのうち自分たちから話してくれると信じて。
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プラウダの学園艦では……
「準決勝惜しかったですね」
「去年カチューシャたちが勝ったところに負けるなんてね」
「勝負は時の運というでしょ?」
グロリアーナのダージリンが遊びに来ていた。グロリアーナは準決勝で黒森峰と当たったが負けてしまっている。
「それよりまだ試合があるのに練習しなくていいのかしら?」
「あんな無名相手に練習だなんて、燃料がもったいないわ」
「でも相手は西住流よ?」
「なっ!?なんでそれを言わないの!?」
「何度も言いました」
「西住流と言っても妹の方だけどね」
「なんだ、それなら問題ないわね」
大洗のことは眼中にないカチューシャ。ダージリンから西住流と聞いたが、その後妹の方と聞いて安心した。
だがこの後のノンナの言うことで顔色が変わることになる。
「ですがカチューシャ、妹だけならまだしも、あのりくさんもいますよ?」
「そうなの!?」
「はい、試合の映像を見ましたが、サンダース戦ではあの悪魔の砲撃をしている戦車がありました。しかも偶然ではなく明らかに狙ってやった様子でした。おそらく普段は悪魔ではなく神の方だと思われますが、重要な時は砲手をやっていると思われます。アンツィオ戦でも最後おそらく砲手を……」
「ノンナがそこまで言うなんて珍しいわね。でもあの悪魔がいるのはさすがに厄介ね……ところで神ってなんのこと?」
「私もそれはペコから聞いて初めて知ったことですわ」
「りくさんは悪魔の砲撃と言う呼ばれ方で有名なのはカチューシャも知っての通り、ですが、普段は装填手をしています。装填速度が他の方よりかなり早いため、装填手の間では神の装填手とも呼ばれているのです」
「あら?詳しいのね?ノンナさん」
「調べましたから」
カチューシャもりくが神の装填手と呼ばれていることは知らなかったみたいだ。装填手の間で呼ばれている呼ばれ方も知っているノンナを見て、ダージリンは少し驚いている。
「でもまっ、問題ないわ。西住りくが乗っている戦車は?」
「38tです」
「なら重要な場面では近付けさせなければ問題ないわ」
「そうですね。
……カチューシャ、お願いがあるのですがよろしいですか?」
「お願い?珍しいわね」
さすがは強豪校の隊長と言うべきか、すぐさま対策を思いついたカチューシャ。ノンナもその作戦に賛成みたいだが、何やらお願いがあるみたいだ。
「もしその機会が訪れたらで構いません。りくさんと一騎討ち……やらせていただけませんか?」
「ノンナがそういうことを言うの珍しいわね。いいわ、その代わり、負けるんじゃないわよ?」
「もちろんです。ありがとうございます」
「あらあら、ですが、私も砲手なら同じことをさせてもらっていたかもしれませんわね」
ノンナのお願いは、りくと1対1の勝負がしたいということだった。カチューシャも許可を出し、ダージリンもその気持ちがわかるらしい。1対1の勝負がしたい、それほどの相手ということだろう。
大洗ではりくが、プラウダではノンナが、お互いに1対1の勝負を望んでいる。実現してほしいものだ。
次回投稿までは時間がかかると思います。別の作品の投稿を再開させるつもりなので……
それまでお楽しみに