男子も戦車道に参加できる世界   作:カット

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タイトルでわかる通りあの2人が対決します。


18、激突!〜悪魔VSブリザード〜

 

「帰りましょう。これ以上ここにいても意味はないわ」

 

「まだ試合は終わっていません。私は終わるまでいます」

 

 

観客席では、みほとりくの母と姉であるしほとまほが大洗学園とプラウダ高校の試合を観戦していた。だが2人は応援に来ているわけではない。まほは内心応援しているかもしれないが、しほは2人に勘当をすることを伝えるために、今日のこの試合を見ている。

 

 

「まほ…」

 

「たしかに戦況的には誰がどう見てもプラウダ優勢……いえ、プラウダが勝つと思うでしょう。ですが試合が終わるまで何が起きるかわかりません」

 

「そこまで言うならいいでしょう」

 

「(みほ……りく……どうする?)」

 

 

母親のしほは、状況的に決着がついたと判断し帰ろうとした。だがまほはまだ試合が終わっていないということで残るつもりだった。しほも帰らずに見ていくこととなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「負けたら大洗学園は廃校になってしまうんだぞ!?」

 

「……えっ」

 

『……ええー!?』

 

 

河島は、負けたら廃校になるということをついに言った。みんなは驚いたのと同時に、まだ信じられない様子だ。

 

 

「っ!!」

 

「みぽりん!?どこいくの!?」

 

「お兄ちゃんを呼んでくる!多分IV号にいるはずだから!……あれ?いない?」

 

 

みほは、廃校になるということをりくにも伝えようと急いでIV号に向かった。だが、キューポラを開けてもりくの姿はなかった。

 

 

「みほ?もう作戦決まったのか?」

 

「そっちにいたの!?それより大変なの!?負けたら大洗は廃校になるって河島先輩が!?」

 

「あぁ〜そのことなら知ってる」

 

「えっ!?」

 

「だから今必要な箇所の修理をして時間になったら動けるようにしてるんだよ。それじゃあ次八九式の方行くから、悪いけど作戦の方は頼んだぞ」

 

「わ、わかった」

 

 

りくが廃校のことを知っていることに驚いたみほ、みんなも知っていることについて驚いている様子だ。

 

 

「りくりくは最初勧誘してる時に気付かれちゃったんだよね、それで黙ってるようにお願いしてたんだよ」

 

「そうだったんですか……脅しの間違いだった気もしますけど……」

 

「うっ…まぁそれは今はおいておいて、かぁしまが言ったことはホントのことだ。優勝しない限り、大洗学園は廃校になる」

 

「残念だけどほんとなの……」

 

「……作戦を考えましょう。大洗学園を無くさないために」

 

「西住ちゃん、うん」

 

 

1度は試合を諦めそうになった大洗学園ではあるが、負けたら廃校になってしまうということを聞いて、再びやる気になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせ、とりあえず全車両の必要な部分の修理は終わった」

 

「ありがとうお兄ちゃん、今優花里さんとエルヴィンさん、麻子さんとそど子さんがそれぞれペアで偵察に出でもらったから少し休んでて」

 

「わかった、38tの中にいるから戻ってきたら教えてくれ、ってか寝てるかもだからその場合は起こしてくれ」

 

「わかった」

 

 

修理が終わったりくは一旦休むこととなった。偵察に行ったメンバーが戻ってきたら作戦会議に加わると思うが、それまでは休んでるそうだ。

 

時間が経つと優花里とエルヴィンが先に戻り、その少し後に麻子とそど子も戻ってきた。りくを呼び、4人の偵察の報告を受けて、紙にプラウダの戦車配置を書いていった。

 

 

「ここだけ包囲網が薄い……これは間違いなく罠」

 

「わざとここから突破させた後に囲うのが無効の作戦だろうな」

 

「うん…でもだからと言って他に隙があるわけじゃないし…」

 

「なら……」

 

 

プラウダの包囲網は一箇所だけ薄くしてわざとそこを抜けさせようとする作戦。だがそれは明らかな罠であるとわかっている。でも他に隙がなくて困ってるみほに対し、りくは1つの提案をすることとした。

 

 

「あえて包囲網が1番厚い部分から突破しないか?さすがのカチューシャさんもそこは想定しないだろうし」

 

「リスクはある……でも包囲網の薄い部分は明らかな罠で他に隙もない……それならお兄ちゃんの言う通りそこがいいかも。でもこれだと囮が必要になっちゃう……」

 

「それなら私たちがなくなるよ!」

 

「会長!?」

 

 

りくの考えた作戦だと囮役が必要だと判断したみほ、そこに会長がやってきて自分たちがその囮役になると言ってきた。

 

 

「りくりく、いいよね?」

 

「ふっ、みほ、これ言っても聞かないだろうし俺たちで囮になる」

 

「お兄ちゃん……会長……わかりました、みなさん!1度集まってください!作戦を伝えます!」

 

 

みほとりくで考えた作戦をみんなに伝えると、また時間まで体を休めることとなった。

 

なったのだが……寒さからみんなの士気が下がってきている。これでは時間になってからも影響が出る。

 

 

「西住なんとかしろ!隊長だろ!」

 

「えぇ!?」

 

 

ここで河島の悪いところが出てしまった。たしかにみほは隊長だが、なんとかしろというのは無責任すぎる。

 

少し悩んだみほだったが、突然あんこう踊りを踊り出した。

 

「みぽりん!?」

 

「あの恥ずかしがり屋のみほさんが!?」

 

「ところどころ間違えてはいるな」

 

「みほ!?」

 

「みんなは歌ってください!私が踊りますから!」

 

 

踊り出したのはみんなを鼓舞するためだろう。自分が踊るからと言ってみんなには歌ってもらうだけのつもりだったが……

 

「私も踊る!みぽりん1人に踊らせない!」

 

「私も踊ります!私も西住殿1人に踊らせません!」

 

 

沙織と優花里、麻子と華のあんこうチームが一緒に踊り出すと、他のみんなも一緒に踊り出した。りくも含めて……

 

 

「あの!!」

 

『っ!?』

 

 

プラウダ高校の生徒がやってきた。返答を聞きにきたのだろう。

 

 

「3時間経ちました。降伏しますか?」

 

「降伏はしません!最後まで戦います!」

 

「そうですか」

 

 

プラウダ高校の生徒が戻っていくと、みんなも準備をし始めた。

 

 

「会長…」

 

「西住ちゃんは気にしないで勝つために動いて」

 

「はい」

 

「杏さんと桃さん、砲手を杏さんにお願いしたいんですけどいいですか?」

 

「そんなことか。私もここは会長にやって欲しいと思ってるし大丈夫だよ」

 

「といかこっちでもう話してたんだよね〜」

 

「はやっ!?まぁいいや……杏さん、俺の本気の装填速度覚えてますよね?」

 

「もちろん……ってまさか」

 

「本気で行きます」

 

「了解」

 

 

みほがIV号の方に戻った後、りくは会長に砲手をお願いしたいと伝えたら、もう既に話し合っていたみたいだ。これにはりくも驚いていた。

 

本気でいくことを伝えたためか、会長は笑みを浮かべたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「わざと包囲網の一部を薄くしたわ!そこから抜けてきてもらうような罠ね!もしフラッグ車を狙いに来ても後ろに待機してる車両に叩いてもらうから問題ない!完璧だわ!」

 

 

プラウダ高校の隊長のカチューシャは、包囲網の一部をわざと緩くしている。フラッグ車を狙ってきても大丈夫なように後ろに待機もさせている。

 

完璧に見えるが、この後カチューシャは驚くことになるだろう。大洗の作戦に……

 

 

「やっぱりそっちから……えっ、こっち?」

 

「まさかこちらに来るとは…」

 

 

1度包囲網の薄いところに行こうとした大洗だったが、その後方向を変え、包囲網の厚い部分に進行方向を変えたのだ。それにはカチューシャだけじゃなくノンナも驚いていた。

 

 

「やっぱり驚いてるみたいだな。みほ!こっちはもう任せろ!」

 

「わかった、お兄ちゃんたちお願い!ではこれより、ところてん作戦を開始します!」

 

 

大洗は囮役となった38t以外は別のところへと走っていった。残った38tは砲手を会長に変えて敵車両に向かっていった。

 

 

「37mmでも0距離なら……ここだ!」

 

 

シュパッ

 

 

「よしっ!」

 

「いいぞ杏さん!次だ!」

 

「オッケー!」

 

 

会長に変わった途端に、38tの砲撃が当たり出した。まぁ河島にセンスがないと言ってしまったらそれでおしまいだが……

 

 

「次は……ここだ!……しまっ!?」

 

「大丈夫だ、落ち着いてもう1発!」

 

「……ここだ!……よしっ!」

 

 

次に狙った車両の砲塔が38tに向けられかけている時に、会長の放った砲撃は履帯離脱させたのみとなってしまった。だがそこはりくの装填でカバーして撃破に成功した。

 

 

「りくりく助かったよ〜でも外さなければもう1両いけたね」

 

「いえいえ……っ!?右展開急げ!?」

 

「っ!?」

 

 

ダーンッ

 

 

「うわっ!?」

 

「杏さん!?」

 

「「会長!?」」

 

 

2両倒した直後、38tの近くに着弾した。本来なら当たっていただろうが、りくがギリギリで気付いて指示を出し、間一髪かわすことができた。

 

だが着弾の衝撃から、38tは半回転するように動き、会長はバランスを崩して頭をぶつけそうになってしまった。それはなんとかりくが肩を抱き寄せて回避できたが……

 

 

「た、助かったよ……ありがと//」

 

「いえいえ、ちょっとこのまま動かないでくまさいね…………ここだな!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「くっ!?」

 

 

安定しない中で撃ったりくの砲撃は見事に狙ってきた車両に命中させた。

 

 

「T34で的確な砲撃……ってことは砲手は……」

 

「今の状態から的確に当ててくる、37mmじゃなくもっと強力ならおそらく走行不能に。さすがですね……」

 

「ノンナさん(りくさん)!!」

 

 

今の砲撃が、お互いがお互いの砲手を把握している。そしてものすごく嬉しそうな顔をしている。そんな中、ずっとりくに肩を抱き続けられている会長の顔は真っ赤になっていて新鮮だ。

 

 

「り、りくりく//そろそろ離してくれないかな//」

 

「へ?……あ、すみません!?謝りついでに杏さんは車長、桃さんは装填手お願いします。俺は一旦外出ます」

 

「「「えっ!?」」」

 

 

会長を離した後に車長会長、装填手河島、砲手りくとなった後、突然りくが外に出た。これには当然3人は驚いた。

 

気になって外を見てみるとT34の方からノンナさんが歩いてきていた。そこに向かってりくも歩き出した。

 

 

「りくさん。私と勝負してくれませんか?」

 

「そのつもりです。こっから……いえ、ノンナさんとの撃ち合いでは俺が砲手をやります」

 

「いい勝負にしましょう」

 

「はい。お互いが戦車内に戻ってから5秒後にスタートとしましょう」

 

「わかりました」

 

 

りくとノンナはキューポラに入る前に互いに礼をし、中に入った。そして5秒が経過して

 

 

ダーンッ

ダーンッ

 

ドカーンッ

 

 

2つの砲撃音が響いた。その後その2つの砲弾がぶつかる音が鳴り響いた。5秒経った途端にノンナは挨拶代わりと言わんばかりの砲撃を放ち、りくの方はわざと遅らせて撃ち、ノンナの砲撃を撃ち落とした。挨拶代わりの悪魔の砲撃だ。

 

そこから戦車も走り始めた。

 

「柚子さん左!」

 

「はい!」

 

 

「左!」

 

「はい!」

 

 

お互いが左に移動しお互いが撃った。お互いに車両を掠めだけで有効打にはなっていない。次にお互い当時に半回転して撃ったが、りくは微妙にタイミングを遅らせて撃ち落とすことにした。距離的に倒せないと判断したからだろう。

 

 

「やるなノンナさん、燃えてきたぜ」

 

「さすがりくさん、負けません」

 

 

2人とも熱くなっている、それでいて楽しそうだ。

 

 

「柚子さん、次指示したら右にお願いします。それまでは前進!」

 

「はい!」

 

「前進してきた?……発射」

 

「今だ!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「っ!?全速前進!!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「ちっ、掠っただけか」

 

 

りくの指示で砲撃を避けることに成功してりくも撃った。だけどギリギリでノンナが全速前進の指示を出してなんとか掠めるだけで済ませていた。

 

 

「このままではやられてしまう…でも相手は37mm、どこかで必ず近付いてくるはず、一か八かそこで勝負に出るしか……」

 

「やっぱり38tじゃ遠距離は無理、かといって静止して撃つのもノンナさん相手だと難しい……賭けるか。

 

柚子さん後退してください。それで俺が合図出したら全速で前進してください」

 

「了解です」

 

「桃さん、後退してる時に撃ってきたら撃ち落とします。俺が撃ったらできるだけ早めに装填してください」

 

「任せろ」

 

「りくりく、任せたよ!」

 

「はい!それじゃあ全速後退!」

 

 

搭載されてる砲撃だとノンナが乗っている戦車の方が有利、だがりくが砲手をやっているためか、りくの方が優勢に見える。しかし、それでも38tの威力ではなかなか倒せなくて苦労している。

 

そこでりくは、一旦距離を取り全速で近付いてその勢いを利用しようとしている。ノンナは近付いてくるであろう38tを待っている状態。お互いに賭けに出ている。

 

38tが下がり出した。

 

 

「下がった?1度撃って様子を見ますか」

 

 

ダーンッ

 

ダーンッ

 

 

「これが狙い!?急いで装填してください!」

 

「今だ柚子さん!全速前進!」

 

 

ノンナが様子見のために撃った砲撃を撃ち落としたと同時に、一気にT34に向かって走り出した。ノンナも狙いに気付いたがギリギリだ。

 

 

「「発射!!」」

 

 

ダーンッ!ダーンッ!

 

シュパッ シュパッ

 

 

りくとノンナ、お互いがほぼ同時に砲撃した。煙が晴れて視界が良くなり確認できるようになると、どちらの戦車からも白旗が上がっていた。

 

同時に行動不能だ。

 

 

『大洗学園38t、プラウダ高校T34行動不能!』

 

「「っ!?」」

 

 

審判のコールが鳴り響き、当然両隊長にも聞こえていた。

 

 

「みほ悪い、行動不能になっちまった」

 

「ううん、ありがとうお兄ちゃん。会長たちもありがとうございます」

 

「後は頼んだよ西住ちゃん」

 

「任せたぞ」

 

「お願いね?」

 

「みほ、精一杯やってこい!」

 

「うん!」

 

「申し訳ありませんカチューシャ、引き分けに持ち込むのがやっとでした」

 

「っ、よくやったわノンナ!ノンナが行動不能になるのは痛いけどあの悪魔を倒したのは大きいわ!あとは任せなさい!」

 

「はい」

 

 

隊長との通信を終わりにすると、りくとノンナが外に出た。周りには他の戦車はいないから安全ではある。

 

 

「さすがノンナさんですね。賭けに出る必要になりましたからね」

 

「りくさんでも賭けに出たのですね。私もです。近付いてくるとほ思っていましたがあそこで一度下がるとは……距離を稼ぎましたね?」

 

「そういうこと、少しでも離れてから全速で近付きたかったので、まぁ引き分けになっちゃいましたけど」

 

「私からしたらなんとか引き分けに持ち込めたというところですね」

 

「そうでしたか、まぁ俺も引き分けじゃなくて勝ちたかったですけど…それはまたの機会にさせてもらいますね」

 

「それはこちらのセリフです」

 

 

りくとノンナの2人は、回収班が来るまでずっと2人で話していた。2人はこの対決をとても楽しんでいた。りくもノンナもここまで楽しめるとは思っていなかっただろう。

 

叶うことならば、2人ともまたやりたいと思っているし、観客たちもまた見たいと思っている。実現して欲しいものだ。

 

2人の好勝負とは別に、みほとカチューシャもそれぞれ勝利のために動いていた。

 




アニメと変わってしまいましたが、ノンナさんはこの試合はここで退場です。

次回でプラウダ戦は決着となります。

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