「ここまで考え方が違うとなれば、プロリーグ設置委員会の委員長を私が務めるのは難しくなります」
「しかしですね……今年中にプロリーグを設置しないといけないことは貴方もご存知でしょう」
「優勝した高校をみすみす廃校にしてもまでですか?」
「まぐれで優勝した高校など……」
文科省に今、西住流家元の西住しほ、戦車道連盟の理事長、教官の蝶野亜美、そして大洗学園生徒会長の角谷杏が、大洗学園の廃校問題について話している。まぐれで優勝という言葉に反応してか、しほは湯呑みをテーブルに叩きつけた。
「戦車道にまぐれなし!あるのは実力のみ!どうすれば認めていただけますか……?」
「まぁ……大学選抜チームに勝つことができれば……」
「わかりました!では大学選抜に勝てたら廃校を撤回してくれますね?噂では口約束は約束ではないということなので今ここで誓約書にサインをお願いします!」
大学選抜に勝てば廃校を撤回してもらえることとなった。口約束は約束ではないと言わせないために、今度はちゃんと誓約書にサインをしてもらうことも忘れずに……大学選抜の責任者のサインも必要になるため、家元であるしほだけが向かい、会長は自分たちの学校のところに送ってもらうこととなった。
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「家元就任おめでとうございます」
「ありがとうございます。そして先程話した件ですが、大学選抜強化責任者である島田流家元にもご協力をお願いしたい…」
「いいでしょう。ですが、やるからには全力でやらせていただきます」
「それはもちろん」
しほは今、西住流家元として島田流家元である島田千代の元を訪ねている。用件は大洗の廃校問題として大学選抜との試合の件である。島田流家元である千代は受けて立つとのことだった。
「もしこの試合の結果で大洗が廃校になったとして、その場合娘さんや息子さんはどうするのかしら?」
「そうなることはありません。みほやりくたちは負けませんから」
「万が一そうなったらお2人を飛び級させてうちがもらいたいですけどね」
「その場合はまた黒森峰に戻ってもらうか……他の高校に転校してもらいます。廃校になった後自分たちだけ……という性格ではないですからね。りくの性格は貴方も知っているでしょ?みほも同じような性格ですよ」
「それは残念です。しかし仕方ないことですが、試合は全力でやらせていただきます」
「もちろん。手加減をしろとなど言いません」
大洗が大学選抜の試合の手筈を整えるための話し合いは終わり、試合が行われることが決定した。試合が決定した後、会長の角谷は誓約書のコピーを手に戻っていった。
「うわぁぁ!?」
「ったく、1人で無茶しすぎじゃないか?桃さん?」
「りく!?戻ったのか!?転校手続きは無事できたか?」
「俺もみほもばっちりだよ」
りくとみほは戻った時、りくは河島が1人で大量の荷物を運んでいたのを見つけた。みほはあんこうチームの方に行ったが、りくは手伝いに来ていた。
「それと、戻ったのはもう1人いるみたいだぜ?」
「もう1人?…………か、会長!!」
「ただいま」
「会長ーーー!!」
戻ってきた会長を見つけた河島は一目散に走っていった。りくもゆっくりとそちらに向かった。
「おかえり杏さん」
「ただいまりくりく、かぁしま、みんなを体育館に集めてー」
「お任せください!」
河島はみんなを集めるために建物内に戻り、小山が放送で招集をかけた。その際、河島の泣き声がずっと聞こえていた……
「やっぱり肝心な時は動いてくれますね。ありがとうございます杏さん」
「そりゃあね、りくりくもありがとね、信じてくれて。最初最悪な印象だったはずなのに…」
「またその話か?最初はたしかに最悪だったけど今では信頼してるよ、だから母さんにもちゃんと話すことできたんだよ」
「そう言われると照れちゃうって〜//」
「レアっすね」
2人が体育館に着くと風紀委員以外のメンバーが揃っていた。それを麻子が連れてきて全員が揃った。
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「大学選抜との試合が決まった」
みんなが体育館に集まると、ステージ上で会長が話し出した。内容は大学選抜との試合についてである。これに勝てば今度こそ大洗の廃校は撤回になるということ、そして今回は誓約書もちゃんと書いてもらっていることを話した。
「お母さん……やっぱり協力してくれたんだ」
「厳しいし怖いけどちゃんと頼めば動いてくれるからな。あらかじめ頼んでおいたしな」
「これに勝てば今度こそ廃校を阻止できるんですよね?」
「そうだ!」
「他にもう隠してることはないのだな?」
「ない!
……厳しい戦いになると思う。でもみんなで力を合わせて乗り越えよう!」
『おおー!』
大学選抜との試合のことを話し、みんなの指揮を上げた。その後は別室で各車長と生徒会、そしてりくが集まって試合のことについて話している。
「社会人を破ったチームだと!?」
「大学選抜の隊長どこかで……」
「ボコミュージアムで会っただろ?島田愛里寿、島田流だよ」
「そうだ!そこで会ったんだ!なんでお兄ちゃんって言ってたのかまではわからないけど…」
『お兄ちゃん!?』
対戦相手のことを話していると大学選抜の隊長の話になった。その隊長の島田愛里寿はあんこうチームとりくがつい最近ボコミュージアムで会った相手だった。みほが愛里寿がりくのことをお兄ちゃんと呼んでいたことを話すとみんな驚いていた。
「そのことは後で聞き出すとして…」
「え、聞き出されるの?」
「この戦いは西住流vs島田流ってことにもなるね」
「そんなの関係ねぇよ、流派の戦いじゃない。大洗を守るための戦い方だ!だからみほ、気にしないでお前の戦車道でやればいいんだからな!」
「うん、わかってるよお兄ちゃん」
この戦いは大洗学園を守るためだけでなく、西住流vs島田流の戦いでもあることを会長は言ったが、りくはそんなこと気にしていなかった。流派よりも大洗学園の方が大事だからだ。
「それで相手は何両出してくるんだ?」
「……30両」
「なんだと!?」
『っ!?』
みほが相手の車両数を言うとみんな驚いていた。当然といえば当然だが……それでも勝つしかないのがこの戦いだ。
「無理だ!お前たちからも無理だと言ってくれ!」
「桃さん、たしかにこの戦いは今までより厳しい」
「そうだろ!」
「でも、この試合を取り付けるのも難しかったはずです。会長が必死に交渉して色んな人を動かしました。それでやっとこの試合を取り付けたんです。厳しい戦いなのは私もお兄ちゃんもわかっています。でも戦車に通れない道はありません!戦車は火砕流の中だって通るんです!」
「みほ……よく言った!」
「だから最後まで諦めずにやりましょう!」
相手の車両数を30両と聞き、河島をほとんどが不安になった。だが、りくやみほは不安な様子を見せていなかった。他に方法がないのもそうだが、会長が戦車道連盟など色々な人が動いてくれていることを知っているから簡単に諦めるわけにはいかないからだ。
もう一つ、フラッグ戦だと思っていたというのもある。しかし……
「殲滅戦だと!?」
「ちょっと待ってください!30両相手に対してこちらは8両……その上殲滅戦だなんて……」
その日のうちに役人がやってきて、試合のルールは殲滅戦だということを伝えられた。さすがのみほとりくも動揺している。
「もうプロリーグは殲滅戦ルールで進めてるんだって…」
「辞退するなら早めにお願いします。それともう一つ、プロリーグでは男性も隊長車に乗ることができるようになりそれに合わせるため、今回の試合から隊長車に同乗できることになりました。ですので、隊長車に乗れば少しはまともな試合になるのではないですか?」
「なんだと!?」
「ではそういうことで…」
役人は殲滅戦になるということ、そして男性も隊長車に乗れることを告げて帰っていった。この話を聞いたりくは反応したが、それは自分も隊長車に乗れるということではなく、怒りから反応したのだった。
「たしかにりく殿の方が装填は早いです…」
「それに砲撃も私より精度があります…」
「2人とも何を言っているの!!あんこうチームにお兄ちゃんの席はないよ!!」
「みぽりん!?」
「言い方は置いておいて西住さんの言う通りだと思う」
「そりゃあそうだろ、うちには麻子以上の操縦手や沙織以上の通信手はいない。それに優花里や華だってたしかに俺よりは劣るけど、俺が入る必要ないくらいにあんこうチームの大事な戦力だからな。俺の居場所はねぇよ」
「りく殿……」
「そこまで私たちのことを……」
「だから自信を持て!あんなこと言ってきた役人をぎゃふんと言わせてやれ!」
「「はい!」」
「お兄ちゃんってば……私が言いたかったのに……」
「す、すまん……」
りくもみほも、華や優花里のことを信頼している。もちろん沙織や麻子も。だから自分が入る必要がないということで怒っていた。それをみほが言いたかったらしく、りくは責められた。
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「苦労かけるね」
「いえ…」
「あれ?りくりくは?」
「お兄ちゃんなら1人で考えるって向こうに……」
殲滅戦が告げられた夜、みほとりくりくは別々に作戦を考えていた。そのみほのところに会長はやってきた。
「どうする?辞退するっていう手も……」
「それはありません!最後まで戦い抜きます!」
「西住ちゃん…ありがとね。できることがあれば協力するから」
「会長はもうたくさん動いてくれたじゃないですか!次は私たちの番です!あ、ただ砲手は最初から会長かお兄ちゃんでお願いしますね」
「了解だよ。じゃありくりくのところにも行くね」
「………やっぱこれしかないか」
「りくりく〜」
「杏さん!?」
みほと話した後、会長はりくの方に向かった。りくはいきなり声をかけられて少し驚いているようだった。
「苦労かけるね」
「何言ってるんですか、杏さんだってこの試合を取りつけるために苦労してたじゃないですか。だから今度は俺たちの番だ。ただ砲手は杏さん、最初からお願いしますよ。俺もいつでもできるように準備しておきますから」
「兄妹で同じこと言うね〜了解だよ」
「それよりも試合のことでちょっと相談が……」
「相談?」
りくは次の試合のことで会長に相談をした。おそらく作戦というよりは別のことだろうが……
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試合当日
ついに大学選抜との試合を迎えた。整列してもわかる通り、人数に差がありすぎる。さすがのみほも今回ばかりは厳しいと感じている。
「みほ、相手に弱気になってる姿は見せるなよ」
「う、うん……」
『両チーム!隊長前へ!』
心配の合図で両チームの隊長、みほと愛里寿が前へ歩いていった。弱気を見せるなとりくに言われたみほだが、さすがに顔に出てしまっている。
『これより!大洗学園vs大学選抜の試合を始めます!一同!れ……『待ったー!』?』
『!?』
「間に合ってくれたか……」
審判の合図で挨拶を……と思ったその時、待ったをかけた者がいた。りくにはそれが誰なのかわかっていた。
「大洗学園西住まほ」
「同じく逸見エリカ」
「以下18名参加する!短期転校手続き及び戦車道連盟の許可は得ている」
「お姉ちゃん…」
「サンダースもいるわよ!」
「今から仲間だ」
「黒森峰にサンダースも来てくれるなんて!」
「鬼に金棒で」
「虎に翼」
待ったをかけたのは黒森峰の隊長でりくとみほの姉のまほだった。大洗に短期転校の手続きを承認してもらった書類と戦車道連盟の許可の書類を見せている。その後にサンダースも到着したが、まだ増員メンバーは来ている。
「ちょっと!1番乗り逃したじゃない!」
「お寝坊したのは誰ですか?」
「う、うるさいわね!」
「やっぱり、試合にはいつものタンクジャケットで臨みましょうか」
「じゃあなんで制服揃えたんですか?」
「みんな着てみたかったんですって」
黒森峰やサンダースに続いてプラウダやグロリアーナが到着。さらに
「ノリとパスタの国からドゥーチェ参上だー!」
「カバさんチームのたかちゃ〜ん!来たわよ〜」
「ひなちゃん!っ!?カエサルだ//」
「みなさんこんにちは、継続高校から転校してきました。よろしくお願いします」
「やっぱり協力するんじゃない」
「違う、風に運ばれてきたのさ」
「昨日の敵は今日の友!知波単学園より22両到着しました!」
「増員は全部で22両と伝えたはずです。貴方たちは6両です」
「それは心得違いしていました!16両は待機!」
アンツィオ高校と継続高校と知波単学園の3校が到着した。まぁ……知波単に関しては来すぎだが……それでも大学選抜と同じ30両に数を揃えることができた。
「みんな来てくれて本当にありがとうございます」
「前に言ったはずだ。協力できることがあればすると」
「助かるよ姉ちゃん、それに他のみんなも」
「お兄ちゃん」
「みほ?」
「改めて作戦会議の時間もらえたから1度戻ってきたよ」
「そっか、それじゃあ各高校の隊長は集まってくれ!副隊長までなら参加していい、テントで作戦会議だ!」
増員が来たことで作戦会議の時間をもらってきたみほ、みほが戻ると大洗からはみほとりくと生徒会、黒森峰とプラウダからは隊長と副隊長、その他の学校は隊長が集合し作戦を立てることとなった。
お久しぶりですカットです。
別の作品をやってから今回この作品を……と思ってたんですけど間に合いそうもなかったのでこちらを投稿しました。
今回でこの作品の今年の投稿を終わりとします。来年もまたよろしくお願いします。
間に合えば他の作品も今年中に投稿します。