「よーし!みんな集まったな!」
練習試合をやった数日後、大洗の戦車道受講者はビデオカメラを繋げることができる部屋に来ている。練習試合の反省をするためだ。
「今日集まってもらったのは、グロリアーナとの練習試合の反省会をするためだ。翔太に撮ってもらった映像を見ながら順番にやっていくぞ」
『はい!』
「それじゃあ翔太頼む」
「はいよ〜」
「会長みたいな返事はいいから……」
「りくりく〜私そんな風にしてる?」
『してます!』
「あ、あれ?」
ちょっとした弄りもあったが、映像を流し始めた。というより会長はみんなに揃って言われるとは思っていなかっただろう。
「まずは囮役として注意を引くシーンだな」
「ここで1両倒せていたらもう少し楽になっていたんでしょうね……」
「そう落ち込むな華。たしかに倒せてたら少し楽になったとは思う。でもな、目的は撃破じゃないんだ。だから気にするな!気にするくらいならもっと上達すればいい」
「…そうですね、練習あるのみです!」
囮役となったIV号の砲手は華、目的は撃破ではないのだが、撃破できなかったことに少し落ち込んでいるようだ。だがそこはりくが上手くフォローした。
「グロリアーナの砲撃が始まったけどよく避け切ったな麻子」
「これくらいなら問題ない」
「頼もしいな。ん?これ見る限りだとみほ、途中でほんの少しだけ中に入ってないか?」
次はグロリアーナの砲撃を避けながらキルゾーンへの誘導の場面。この砲撃をよく避け切ったと麻子に褒めたりくだが、麻子にとってはこれくらい問題ないらしい。初心者のはずなのに頼もしすぎる。その後は、キューポラから顔を出していたみほが少し中に入ったことについて気になったみたいだ。
「これ?これは沙織さんに危ないから入ってって言われたからだよ、お言葉に甘えて少しだけ入ったよ」
「ぜ、全然入ってないじゃん……」
「そうなんだよ〜みぽりんってば全然入らないんだよ」
「まっ、その方が状況を把握しやすいから止めないけどさ、本当に危なかったらさすがに入るよな?」
「た、多分」
『多分なんだ!?』
事情を把握したりくだが最後の質問に対してみほは多分と答えた。そのためみんな同じことを思った。さすがにりくもこの時は入って欲しいと思った。口にはしなかったが。
『見えたぞ!撃てー!』
映像はキルゾーンで砲撃したところだった。だが敵ではなく味方を攻撃している。
「最初の問題点はここだな。河島先輩何か言いたいことあります?」
「うっ……そ、その……すまなかった!あれは私の指示のせいだ……」
「自分のミスってことわかってるならいいです。ちなみにこの時俺が砲撃やめろって言ってたの聞こえてた人は?正直に手あげてくれ」
『………』
「誰もいない?あ、会長と小山先輩は一緒に乗ってたのであげなくていいです。他はBCDチームでいないのか?」
『………』
りくの質問に手をあげる人は会長と小山しかいない。他の人は手を挙げたら怒られると思っているのか、それとも本当に聞こえなかったのか……
「みんな本当に聞こえなかったんですか?お兄ちゃん結構怒鳴るように言ってたと思うけど……」
「「「「たしかに……」」」」
「ってAチームは言ってるけど……最後にもう一回聞く。聞こえてた人は?」
『………』
Aチームは怒鳴るように言ってたと言っているため、本当は聞こえてそうだ。それなのに誰も手を挙げなかった。
「仕方ない。それじゃあみほ、普段から無線でもでかい声で指示しよっか。それで耳がおかしくなっても知らん」
「そうだね」
『すみません聞こえてました!』
「おい!! 」
「みなさん正直にお願いします。反省会を開いて良い所は伸ばし、悪い所は改善していくためなんですから」
『すみません!』
「(揃って言うなよ……)じゃあちゃんと砲撃止めろよな?隊長や副隊長やあとは車長か、その人以外の指示を聞いたらいけないなんてことはないんだからさ」
『はい!』
「それじゃあついでに次の場面だけど、翔太」
「はいよ」
実際はやはり聞こえていたらしい。反省会なのに嘘をつかれると困るみほが正直に言うようにと頼み、りくは試合中の指示についてを言った。
この場面の話を終わりにし、次の場面の話に移る。次の場面はバラバラに撃たず履帯を狙うようにという指示のところだ。
「まず最初にみほの指示聞こえた人は?」
『はい!』
「…………」
「今度は1人除いて全員か、Bチームから順番に狙ってたこどうか言ってくれ」
「狙ってはいました」
「我々も同じく」
「私たちも狙いはしました」
「すまん……必死になって撃っていて聞こえていなかった」
「そうだよな、同じ戦車に乗ってる俺の声も聞こえないくらいだし」
「うっ……」
「狙ってたのはこれを見てもだいたいわかる。ただこれは練習してもっと狙い通りに撃てるようにするしかないな。普段の練習もしっかりやるように!」
『はい!』
「それと河島先輩は指示ちゃんと聞くようにお願いします」
「わ、わかった…」
「この話はこれからもっと練習するってことで終わりだ。そして次は今回の試合で1番問題のところだ」
みほの履帯を狙うようにという指示については河島以外みんな聞こえていたらしい。みんなも狙っていたからここは練習して上手くなるしかないということで終わりとなった。そして次は1番問題となった場面だ。
「俺が言いたいことはわかるよな?まず何か言いたいことある人は?」
「はい……」
「じゃあ澤!」
「グロリアーナとの試合では約束を破って怪我をして、本当にみなさんに迷惑をかけてしまいすみませんでした。もう二度とあんなことしません」
「私たちもです。もう二度とあんなことはしません!すみませんでした……」
『すみませんでした……』
「俺は二度としないっていうのを信じてもう許してるしみんなもう許してると思う、それでも今回みたいなことは絶対にあっちゃいけない!練習試合だったから今回は止めてもらえたけど公式戦は多分止めてくれない。実際去年は止めてくれなかったし」
「お、お兄ちゃんそれは……」
「内容まで言わないさ、知ってる人何人かいるけど……とにかく!今回みたいな危険な真似は絶対しないこと!」
『はい!』
1番問題となった場面は澤の怪我の場面。怖くても絶対に戦車から出ないように前日に言ってあったし、さすがにりくはこの時かなり怒っていた。今はもう許しているが……
「りく先輩、あの時はありがとうございました。怪我の応急処置してくれたことや砲弾を撃ち落としてくれて……約束を破った私が悪いのに助けてくれてありがとうございます」
「助けるのは当然だ。それに相手の隊長のダージリンさんが砲撃中止を言ってるのに撃ちまくってたからな。精神的に痛い目に合わせたかっただけ」
「まさか練習試合で悪魔が出るとは思わなかったよ……私も慌ててダージリンさんに止めるように言ったもん……」
「悪い悪い」
『悪魔?』
「あっ、みんな知らないよな」
「私は知ってるよ〜」
「さすが会長。簡単に言うとな、俺の砲撃は悪魔って言われてるんだよ。見たほうが早いかもな」
「じゃあそこまで早送りするぞ」
澤は助けてもらったことに対しお礼を言っている。危ない所を助けるのは当然だということでりくは特に気にしていない。というよりりくも少し頭にきていたらしい。砲撃中止を言われてるのに撃ってくる相手に……だから練習試合でも悪魔の砲撃を出したのだろう。だがみほが悪魔と言ってもみほと会長以外首を傾げている。見た方が早いとのことで実際にその悪魔の砲撃を見ることとなった。
『おぉー!』
実際に見ると初めて見た人はみんな一斉に「おぉー」と声をあげた。それほど凄い砲撃なのだ。撃ってきた分全てを撃ち落としていたあの砲撃は……
「今みたいに砲撃撃ち落としまくってたらそう言われるようになったってとこかな」
「りく殿1つ言い忘れています!重要な場面で悉く撃ち落として相手砲手の戦意を喪失させるということを!」
「やっぱ優花里知ってたか」
「はい!」
「まぁこれは緊急時やよっぽど重要な場面でしかやらないさ。普段は装填手やるよ。ってことでこの話は終わり。とりあえず囮作戦の反省点としてはだが、大きく分けてまずは味方を撃たないこと!それと砲撃の精度をもっと上げることの2点だ!」
『はい!』
悪魔の砲撃を見終わった後に前半の囮作戦についての大きな反省点をあげた。この後は後半についてだ。
「そんじゃ市街地戦についての反省会に入るぞ。まずはバレー部チームのところからにするか。立体駐車場を上手く使って相手に砲撃を当てたのは良い作戦だとは思う」
「「「「ほんとですか!?」」」」
「息揃えるなよ……じゃあ自分たちがやられた理由はなんだと思う?」
「「「「…………」」」」
「黙るなよ……」
「火力不足としか……」
後半戦の最初の場面はバレー部チームの場面だった。立体駐車場を上手く利用して攻撃したのはよかったが倒せず、逆にやられてしまった。やられた理由をりくは聞いたが誰も答えられず、黙るなという言葉で磯部が火力不足と答えた。
「たしかに火力不足はあったかもしれない。でも1番の問題は砲撃を当てただけで撃破したと思い込んだことだ」
「「「「っ!?」」」」
「試合中にも言ったが撃破報告とかそういった情報は正確に伝えろ!撃破報告はもちろん、偵察に行ってもらうこともある。それを元に細かい作戦の修正をしたりする。間違ってたら味方全体がピンチになる。これはBチームだけじゃない、全チーム一緒だ!」
『はい!』
「次はCチーム」
「……我々か」
Bチームの分の反省は終わりだ。立体駐車場を使った作戦はたしかに面白い、だが撃破判定出ていないのに油断したのは失敗だった。情報の伝達は正確に……Bチームだけではなく全員に言い聞かせた。
そして次はCチームだ。
「まずは1両撃破はよくやった!元からあった旗を利用したのは上手かった。だけどそのあと……」
「言いたいことはわかってる、みんなもいいな?」
「「「もちろん」」」
「そうか、わかってるならいいが改めて映像を見るとわかるように、旗のせいで居場所がバレバレだ。それで壁越しにやられた」
「これからは旗をつけない」
「ならよし」
Cチームは市街地に入ってから大洗にあった旗を上手く利用して1両撃破した。でもその後は旗のせいで居場所がバレバレとなり撃破されてしまった。本当にもったいない。次からは旗をつけないこととなった。
「そんじゃEチーム」
「ふっ、我々がピンチとなったAチームを助けた場面だな!」
「いやまぁ結果的にはそうなったけどさ……」
市街地でのEチームがやったことといえば、Aチームがグロリアーナ4両に囲まれた時に飛び出し、マチルダ1両と相討ちになっただけだ。その後Aチームは脱出できたから結果的にはたしかに助けたことになる。結果的には……
「あれ?でもこれ見る限り最初の1発でも倒せてたらもっとAチームは楽になったんじゃないですか?」
「なんだと!?」
「磯部容赦ないな……」
「それに1両と相討ちに持ち込めたのもりく先輩の装填速度のおかげじゃ……」
「澤まで!?」
「澤……お前も言うのか……河島先輩ドンマイ」
だけど録画した映像を見て、Bチーム車長の磯部とDチーム車長の澤の2人が自分の思ったことを正直に言った。正直すぎるが……
「2人とも言い過ぎだよ?私たちだってまさか1両撃破するなんて思わなかったんだよ?撃破したんだからそこは褒めてあげないと」
「思ってなかったのか!?」
「あ、小山先輩の方が酷いや……まぁたしかに2人の言うことにも一理ある。それは事実だ。でもみほたちはどう思った?1両でも倒せた河島先輩に対してさ」
「たしかにみんなの言うこともわかります。でも4vs1になってたら、最後ダージリンさんとの1vs1に持ち込めたかわかりません。ですから本当に助かりました。ありがとうございます」
「西住……」
「ってことだ。だから河島先輩もそんなに落ち込まなくてもいいっすよ。まぁ磯部や澤の言い分も分からなくはないし、もっと練習な」
「……任せろ!」
磯部や澤に続いて小山も発言をし出した。まぁ正直2人より酷い気もするがそこは見逃そう。市街地戦でEチームが動いたのはその1回だけ、ここで終わりだと思ったが……
「りく先輩の装填速度異常じゃないですか?」
「別に特別なことはしてないぞ?」
「模擬戦の時に見せてもらいましたが、りく殿は装填の時は……」
「優花里それは言うな!!」
『っ!?』
「悪いびっくりさせたな、俺の装填方法は真似して欲しくないから教えない。ちゃんとした理由があるからな。みほは聞いてたと思うけどオレンジペコさんにも俺の装填のこと聞かれたんだよ」
「そうだね、私は事情知ってるけどあれは1試合に何回もやるわけにはいかないの。だからお兄ちゃんの装填方法は教えないことにしてるの。だから知ろうとするのはいいけど知った人は実際にやらないでね?」
「うむ……隊長がそこまで言うのなら詮索はしない……」
「助かる。それと優花里、絶対真似しようとしないでくれ」
「了解であります!」
「それと装填速度アップについてだけど、それはコツを練習の時に教える」
Eチームについては終わりだと思った時にりくの装填の話になった。その時に優花里はりくの装填方法について言おうとしたがりくはそれを止めた。オレンジペコにも言ったことだが1試合に何回もやれない事情がある。だからそれを知っても真似しないようにと、妹のみほがお願いすることになった。
「それでもお兄ちゃん神の装填手って言われてるみたいだね」
『神の装填手!?』
「みたいだな。ペコさんに聞いて初めて知ったけど……ってそれは今はいいや。じゃあ最後にAチームについてだ」
神の装填手についての話題になりそうになったが、りくはそうならないようにAチームの方の話題にした。みんなも映像で確認している。
「今回の試合Aチームには負担かけすぎたな。囮役から最後1vs3まで……それでもよく戦い抜いてくれた」
「りく殿から褒められました〜」
「囮役はともかく最後の1vs3は仕方ないよ。それに河島先輩が1両倒せてなかったらもっと苦しかったくらいだもん」
「西住さんの言う通りだ。それに囮役の時はまだ相手が本気になる前だったし問題なかった。それにりくの装填のおかげで4両から3両にしてくれた。気にするな」
「たしかに負担は少し減りましたが、私としてはもう少し倒す感覚を味わいたかったですね」
りくはAチームに、グロリアーナ戦の時はものすごく負担をかけたと思っている。だがAチームのみんなはそんなこと思っていないようだ。それより助けられたとしか思っていない。
「まぁ敢えて反省点を言うならだけど、工事現場で通行止めになってる道に行ったことだな」
「ごめんなさい……」
「みぽりんのせいじゃないって!みぽりんもりくも大洗に来てからそんなに経ってないし仕方ないよ」
「仕方ないじゃ済まないよ…これが大会だったらとんでもないことになるよ」
「そうだな。これは俺も反省点だけど、会場が大洗だし事前にそういうのはチェックできたな」
「西住ちゃんやりくりくだけのせいじゃないよ〜大洗が試合場所ってわかってからその辺の作戦も立てられたと思う。大会でこういうことはないけど、地形の把握をしっかりするってところかな」
「そうですね、事前にわかればしっかり把握するようにしよう!」
『はい!』
「それじゃあ反省会はここまでにしよう」
Aチームに対して言った反省点は通行止めの場所に行ってしまったことについて。大洗で試合なら事前に把握できたとのことであげたが、そこは会長の一言でみんなの責任ということになり、事前にわかれば試合会場の状況を把握するということで反省会は終わった。
「そういえばみぽりん、グロリアーナから送られたティーカップと一緒に入ってた手紙に公式戦楽しみにしてるってことが書いてあったけど公式戦って?」
「簡単に言えば戦車道の大会です」
「なるほど〜」
「みんなには言ってなかったけど今回の練習試合は経験を積んでもらうってことと、課題を見つけて大会までに直していく目的があったんだよ〜」
「会長言い方軽っ……ウチには翔太がいて試合を録画してもらえた。だからこそできたことだな。ってわけでみほ、最後よろしく!」
「ここで!?」
沙織が公式戦のことを聞いてきたからか、今回の練習試合の目的について会長が話し出した。目的は経験を積むこと、そして課題を見つけその課題について取り組むことが目的だった。
そして最後、りくは隊長のみほに何か言うように促した。突然すぎるが……
「えっと…今回の練習試合とこの反省会で各自課題を見つけたと思います。公式戦まで普段の練習に取り組みつつ、課題にも取り組みレベルアップできるように頑張りましょう!」
『はい!』
突然すぎるりくの無茶振りに対し、普通に応えたみほ。翌日から公式戦に向けての練習が始まった。
そして抽選日を迎え
『大洗学園8番!』
大洗の初戦は、強豪校の1つでもあるサンダース大学付属高校に決まった。
今回はここで終わりです。次回はアニメに沿った話になる………はずです。
それでは次回もお楽しみにー