東方人の生   作:喜求

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報酬

 

「はぁ、はぁ、はぁ……か、勝った~……」

 

 

 なんとか勝ちをもぎ取り、勝利のガッツポーズをする。

 

 

「ま、負けたぁ…」

 

 

 草地に多少息を荒くしながら横になる橙ちゃん。

 結果は3-1、上々だと言えるだろう。

 橙ちゃんが最後に出したスペルカード──天符『天仙鳴動』あの速さは反則だと思う。

 

 

「お疲れ様♪」

 

 

 まさに音符を付けたような言葉遣いで空間の切れ目登場する紫。

 その隣に続いて尻尾が沢山ついた狐っぽい人がやってきた。

 

 この前の紫と似たような服装だからさっき言ってた藍って人かな。

 

 

「労いどうも…まったく、移動させるならもっとゆっくり下ろしてよね。妖怪と違ってそんなに頑丈じゃないんだから」

 

 

 弾幕勝負を始める前の事を思い出す。

 

 朝一から危うく首がポッキリいくところだった、妖怪は人間の命を軽く見すぎだと思う。

 

 

「生きてたんだからいいじゃないの、これも修行の一環よ」

 

 

 なんと無茶苦茶な。

 抗議をしても、本人はどこ吹く風だ。聞く耳をもっちゃいない。

 

 

「はぁ……それで、妖怪退治はこれでおしまい?」

「ええ、約束通り霊力の使い方を教えてあげるわ」

 

 

 ふぅ……と胸を撫で下ろす。

 

 良かった、報酬はちゃんと貰えるみたいだ。

 

 

「うぅ…藍様紫様、申し訳ございません。人間に負けてしまいました……」

 

 

 尻尾を垂らし、項垂れながら報告を行う橙ちゃん。その姿は親に叱られるのを待つ子どもそっくりだ。

 

 ちょっと可哀想……私が退治したんだけど。

 

「なに、今回は二人の実力を見るため試合だ。気にするな」

 

 

 優しい手つきで頭を撫でて慰める藍さん、こうしてみるとまるで親子の様だ。

 

 

「……っと、自己紹介が遅れたな。私は紫様の式の藍だ。呼び捨てで構わない」

「私は紗由理、よろしく藍」

 

 

 挨拶ついでに尻尾の数を数えてみると九本あった。ということはかの有名な九尾か。

 

 

「ん、尻尾が気になるか。見ての通り九尾だ……触りたいのか?」

 

 

 コクコクと無言で頷く。

 

 その尻尾はモフモフで、さわり心地がよいというのが一目でわかる。

 

 

「藍の尻尾は格別よ、きっともう他のでは満足できない体になってしまうでしょうね……」

 

 いつの間にか藍の尻尾に飛び込み体を埋めている紫、子供か。

 それとその言葉は誤解を招くと思うけど。

 

 

「紫様、話が進まなくなりますのでお戯れは程々に……」

 

 

 案の定叱られてる。まったくだよ、早く話を進めてくださいな。

 

 

「むぅ、藍のいじわる……ん、で報酬だったわよね」

「そうそう、霊力の使い方って話だけど具体的にはどんなことを教えてくれるの?」

「うーん、霊撃や結界の張り方とか基本的なことね。幼い頃の霊夢に教えたのとほとんど同じ事よ」

 

 

 あの感覚だけでなんとかなるような霊夢に教えたことって……というか霊夢には先代さんがいた筈だけどその人が教えてたんじゃないのかな。

 

 

「霊夢に霊力を教えたのって先代さんじゃないんですか?」

「博麗の奥義だとかは代々巫女が継承していくから私達妖怪じゃ教えられないわ。でも先代も忙しかったからそれ以外の殆どは私や藍が稽古していたのよ」

「へぇー、妖怪なのに霊力について教えられるんだ」

 

 基本的に妖怪は霊力を持たないって聞いたから難しいと思うけど。

 

 

「…勘違いしているようだから教えておくけど。私や藍、橙は霊力使えるわよ?一部の大妖怪や妖獣なんかは生まれつきだったり後天的に使えるようにしたりしてね」

 

 

 そうなのか…あ、そういえば慧音も霊力を持っていたか。

 

 ……妖怪に基本的という言葉は使わない方が良い気がする。例外が多すぎて意味をなしてない。

 

 

「じゃあ紫が私に霊力を教えてくれるの?」

「私は忙しいもの、藍にやってもらうわ」

 

 

 一体何に忙しいのか。紫が何かをしている所なんて見たことないんだよね、まあ紫が用のあるときにしか来ないというのもあるんだけどさ。

 

 

「わかった、稽古の時はそっちが来てくれるってことでいいの?」

「ええ、いつ行くかはその都度伝えておくからその時に家にいてくれれば構わないわ」

 

 

 よし、これで一通りの話はついただろう……ふう、やっぱり朝一で派手な運動するもんじゃない。いつもより疲れたや。

 

 

「紫、私そろそろ帰りたいんだけど」

 

 そういいながら出てきた欠伸をかみ殺す。

 

 起きたばっかりだけど寝たい。現在の時間は昼前といったところか。

 

 

「そう、ならこのスキマを通りなさい。稽古は明日から始めるから」

 

「はーい──それじゃあ橙ちゃん、また弾幕ごっこやろうね」

「ふん、次は負けないんだから!」

 

 

 気だるげな声の私と対照的に元気な橙ちゃん。

 それに対し私はいはいと生返事を返しながら目の前に開かれたスキマを通る。

 

 見慣れた内装…うん、間違いなく我が家だ。

 

 

「ふぁ~……さて、もう一眠り…………」

 

 

 布団に寝転がり、眠気に意識をゆっくり委ねていく。

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

「よう紗由理!邪魔するぜ……ってこんな時間まで寝てるのか?寝坊は三文の損だぜ」

 

 

 それから小一時間と立たずに。ドアを盛大に開け放ちながらやって来た魔法使いにたたき起こされた。

 

 ……早起きは三文の徳のことを言ってるのだろうけどそれはなんか意味が変わってくる気がする。

 

 

「んぅ……眠い………何の用?」

 

 

 

 眼を擦り未だ眠気を訴える体を起こし、問い掛ける。

 

 返答が返ってくるのを伸びを一つし、鉄瓶でお湯を沸かしながら待つ。

 

「いや、大した用はないんだが昨日の事が気になってな。その様子見だ」

 

 

 辺りを見回しながら、手近にあった椅子に腰かける魔理紗。

 

 心配してきてくれたのか。いいねこういうの、親友って感じで。

 

 

「ありがとう、でも大丈夫。さっき終わって疲れて寝てたとこだから」

「そうか、ちゃんと報酬は貰えたか?あいつはすぐに話を有耶無耶にするからな」

「うん、明日から稽古をつけてもらう予定だよ」

 

 

 急須に茶葉を入れ、二人分のお茶を用意する。

 相も変わらず紫の評価は低いようだ。

 

 

「それならよかった……私はこれから神社に遊びに行くけど、紗由理もどうだ?」

「行く、これ以上寝ても夜眠れなくなっちゃうからね」

 

 

 昼夜逆転は健康に悪いし、それにこのあたり夜中になると周囲の物音が……。

 

 一様霊夢に貰った簡易的な結界を張る御札をつけてはいるから安全ではあるんだけど気になって眠れなくなる。

 

 

 恥ずかしいから言わないけどね。

 

 

 

「おっし、じゃあ行くか」

「おー」

 

 

 

 なんにせよ、今日はまだまだ始まったばかりだ。

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