東方人の生   作:喜求

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妖精

 幻想郷の空が赤い霧によって塗り潰される。

 日光が届かず薄暗いけど遠くが見えないわけでもないこの不思議な霧は、特有の湿っぽさもなくただただ朱に染めるためにあるようだ。

 

「ねね、霊夢!空が赤いよ!」

 

「そうね……はあ、面倒だわ」

 

 

 テンションの高い私とその逆の霊夢。理由はその肩にかかった責務だろうか。

 

 そんなことを考えていると、いつものように箒に乗った魔理紗がやって来た。

 

 

「よ、霊夢に紗由理。今日は待ちに待った異変ってやつだな」

「異変?」

「そ、妖怪達の起こしたばか騒ぎさ。異変は私達人間が弾幕ごっこで解決するんだぜ」

 

 へー。でもなんで異変なんだろ、いや異変ではあるんだけど。今回はただの霧みたいだけど場合によっては災害レベルになりそうなのに異変で片付けるのか。

 

 

「さて、せっかくの異変なんだから勝負といこうぜ、誰が一番に異変の首謀者を倒すか競争だ!」

 

 今から開始な!といって魔理紗は赤い空へと消えてった。行動力高いなあ。

 

 

 

 ……あれ、これ私強制参加じゃない?まあ元よりそのつもりだけど。

 異変解決に向かうべく私も空へと舞い上がると霊夢は大きなため息をして

 

 

「……あんたたちに任してお茶でも飲んでようかしら」

 

 

 今日も霊夢は絶好調らしい。

 

 

 

 

 ーーーー

 

 

 

 

 さて、意気揚々と出てきたのは良いが。いかんせん情報が足りない。

 

 というわけで情報収集を始めようと思うんだが、私には知ってそうな人物に心当たりがない。

 慧音はこんなことしないだろうし、紫は居場所がわからない……手詰まりじゃない?これ。

 

 仕方がない。そこら辺を適当に飛んでれば誰かに会うかもだし、お散歩しますか。

 

 

「ふんふふふんふーん……ん?」

 

 

 鼻歌を歌いながら飛んでいると、周囲の異変に気がついた。

 

 周りの木々に所々氷のようなものがついていて、弾幕でできたらしい抉れた木もある。

 

 

「なにこれ」

 

 誰かが弾幕ごっこをしたらしいが、その主はいったい何処にいるのか。

 

 しばらくキョロキョロしていると、それっぽい人を見つけた。

 

 青いワンピースに氷の結晶のような羽、そしてこんな人里から離れたところにいる見た目の幼い少女などおおよそ人間ではない。

 

 妖精ってやつだろうか、魔理紗から聞いた内容と似た点がいくつかある。

 

「ねえ、貴方が木に氷をくっつけた犯人?」

 

「あ、人間!さてはさっきのやつの仲間ね!あたいと勝負しなさい!!」

 

 

 妖精はこちらに気が付くと3枚のスペルカードを掲げてそう宣言した。

 

 

 …なんでよ、なんでそうなるんですか。

 そんな目があったらなんとやらみたいに殺伐としてるのかこの世界は。

 

「弾幕ごっこは構わないけど、まず貴方の名前を教えてくれない?私は紗由理っていうの」

 

「あたいはチルノ!このへんをしきってる妖精だ!」

 

 

 やはり妖精だったようだ。

 純真無垢だという妖精の例にもれず、活発な雰囲気のチルノはその体から冷気を放ち始めた。

 

「それじゃあ始めるよ!」

 

 

 試合開始の宣言をし、後方へと飛ぶ。

 チルノも同じく飛び上がり、空中戦の準備が整う。

 

 

「さて、早速一枚…人符『幻想花火』!!」

 

 

 早々にスペルカードを発動、大型の弾幕が複数チルノへ向かう。

 

 

「なにこれ、こんなのめをつむっててもよけられ…へぶっ!」

 

 

 花火が炸裂すると同時にチルノが被弾……なんで本当に目を閉じたんだ。

 

 純真無垢に加えて単純とは面白い種族である。

 だが幸先は良い、このまま押しきってしまいたい。

 

「くそー、こんどはあたいのばんだ!氷符『アイシクルフォール』!!」

 

 私のスペルカードが終わる間も待たずにチルノがスペルカードを宣言した。

 チルノのスペルカードが切られた瞬間チルノを中心に氷の弾幕が上下左右、私に対して垂直になるよう展開され反輪を描くように向かってくる。氷がキラキラしていて結構綺麗。

 だからといって見惚れている訳にはいかない、すぐさま自分のスペルカードを中断し回避に専念する。

 

 だが魔理紗と比べると弾幕の密度も薄く、かなり避けやすいのであまり苦もなく突破する。

 

 

「ふう、やっぱり魔理紗は上手な方なんだなあ」

 

 チルノに聞こえないように小声で呟く。相手に失礼だもんね。

 

「むう!こんなのまだじょのうちよ!凍符『パーフェクトフリーズ』」

 

 

 それは序の口ではないのか。

 

 そんな突っ込みが口から出る前に連続してスペルカードが切られ、七色の高速弾幕が四方八方ランダムに放たれる……ちょっと危ないかも。

 

 すると弾幕がピタリと止まった。これがフリーズの部分だろうか。

 

「あっぶな!」

 

 

 油断大敵、止まった弾幕に目がいっている時を狙ってチルノが早めの弾幕を放ってきたのだ。

 幸いにも回避が間に合い、目の前を青い光が掠める形でなんとか避ける。

 

「ぐぬぅ、さっきのやつみたいにすらすらよけて!」

 

「こっちはヒヤヒヤしてますけどね!!石符『明日は藍晶石と共に』」

 

 

 こちらもスペルを発動、赤色を含まない私の弾幕を形成していく。

 

 遠くからでも見えるであろう量の弾幕がチルノに殺到し頑張って避けていたが、ついにはその腕に被弾させた。

 

 

「いづっ……あたいをここまで追いつめるなんてなかなかやるわね!」

 

 よし、被弾をとれた!あともう1つ!!

 

 これで私が被弾0、チルノが被弾2の0-2になった。スペルカードは互いにあと1だが有利なのは変わらないだろう。

 

「これならどうだ!雪符『ダイアモンドブリザード』!!」

 

 

 おおう、もう3枚目のスペルを切ってきた。これで3被弾が取れる自信があるということか。

 

 スペルカードルールとして、宣言したカード枚数を全て使いきると、自動的に負けになってしまうルールがある。つまりチルノはこのスペルカードが終了する前に私を倒さない限り負けが確定してしまったのだ。

 

 もしくはやけくそになってるという可能性もあるけど、警戒するに越したことはない。

 

 

 チルノから白い弾幕が縦横無尽に放たれ、視界を白く染め上げる。

 季節は夏前だというのにあっという間に雪景色となってしまった。

 しかも気温も下がっているらしく、あまり厚着をしてないので結構寒い。

 

「スペルカード終わるまで耐えられるかな…」

 

 

 私が低体温症でダウンするのが先かチルノのスペルカードが終わるのが先か。

 

 一様こちらも牽制程度にチルノに向けて通常の弾幕を撃つも、雪を模した弾幕に阻まれたり避けられたりとうまくいかない。

 

「いっ……冷た!」

 

 そうこうしているうちに足に被弾、異様に冷たい弾幕が足から冷気を伝えてくる。

 弾幕なのに痛いのではなく冷たい。

 これ大丈夫?凍傷とかにならないよね?

 

 

 あとで暖めておこう。

 

 

 その後はなんとか避けきり、チルノのスペルカードを攻略する。

 

 これでカード使いきりでチルノの敗北だ。

 

 

「くそー、ぜったい倒せると思ったのにー!」

 

 チルノが空中で地団駄を踏むという高等テクニックを披露してるが、あの状況でスペルカードを使うのはどうかと思う。

 

 結局1つ被弾しちゃったんだけどね。

 

 

「私の勝ち、じゃあ質問に答えてもらおうかな」

 

 弾幕ごっこに勝ったので勝者が敗者に何かしらの要求ができる。互いに何かを賭けてから試合を行うのが主流らしいけど、向こうから一方的に始めたのだし良いだろう。

 

「私より前に誰かと闘ってたみたいだけど、どんな人で何処に向かったか教えてくれる?」

 

 今現在必要なのは情報収集だ、そして試合前チルノは“あ、人間!さてはさっきのやつの仲間ね!“と言っていた。

 

 こんな異変時に行動する人間などそう多くない、しかもここは人里からそれなりに離れている。

 

 

 私の予想が外れることなく、チルノはその名前を口にした。

 

 

「魔理紗ってやつ、あたいに勝ったあとあっちに飛んでいった」

 

 

 

 そういって指差す先には全体が真紅で塗られた館が建っていた。

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