「……というわけで、頼むわよ」
「フン、要は殺さなければ良いのだろう?」
薄暗い広間にて2つの人影が語り合う。
「それじゃダメよ、スペルカードルールを広める為の異変だって説明したじゃない。ならば誰もが安全だと認識出来るようにしなければならない」
「郷に入っては郷に従え、だったか…善処するとしよう」
背の高い人影が低い方へと“なにか“について説明をする。
「もうそろそろ来るわよ、くれぐれもあの子を壊さないよう」
そう言い残すと、背の高い人影は消えていった。
「……ッチ、あの年寄りめ。厄介な注文をしてくれる」
一人を除いて誰も居なくなった空間に、静かな悪態がつかれる。
「しかしこれも愛しい我が妹の為、今しばらく道化を演じるとするか」
彼女は自分が家族と認めた者の為に尽力する。
それが実の姉妹とあらば尚更に。
小さい暴君は、一人静かに微笑むのであった。
ーーーー
「今日からあんたもあたいのライバルね!」
そう別れ際に言われ、現在赤に赤を足したような館に向けて進行中。
それにしても元気な子だったなあ。妖精は皆ああなのだろうか。
「湖だ」
さっきは木々で見えなかったが、あの館は湖の側に建てられているらしい。
赤い霧はこの館から出ているようで、ここが異変の中心で間違い無さそうだ。
「あ、誰かいる」
さらに近付けば、門の所に人が立っているのが見えた。
「こんにちは」
「貴方は…妖怪?」
ありゃりゃ、また間違えられた。やっぱり妖力があると妖怪と見られちゃうのかな。
「違います、私は歴とした人間ですよー」
彼女の服はボロボロで、恐らく魔理紗と弾幕勝負をした時こうなったのだろう。
「それは失礼、貴方はここ紅魔館にどんなご用件で?」
「異変解決ですね、首謀者がいるのはここでしょう?」
「そうですか…確かに首謀者はここにいます。レミリア・スカーレット、此度の異変の首謀者にして私達の使える主です」
説明を終えると彼女は門に手を掛けそれを人一人通れるように開いた。
「いいんですか?」
「私はここの門番を請け負っていますが、“妖怪のような人間“が来たら通すように言われているんです」
妖怪のような人間とは疑うまでもなく私の事だ、なんでここに来ることがわかったんだろ。
「レミリアお嬢様は運命を見ることができます。貴方がここに来ることも、先程来た白黒の魔法使いが来ることもあの方は理解していたことでしょう」
私の内面を察してか、なぜ知っていたかの説明をしてくれる。
「私は美紅鈴、メイリンとでもお呼びください」
「私は紗由理、ではお邪魔しますね」
「どうぞ、私が言うのもおかしな話ですが…健闘を祈ります」
ありがとうとお礼を言い、館へと入る。
「広いなあ」
歩くこと数分…いや数十分?同じ景色ばっかりだから時間感覚が狂う。
似たような扉に似たような部屋、廊下を何回曲がったかも覚えてない。
「大きい扉発見」
もう出られないんじゃないかと悩んでいたら、さっきまで見てきた扉とは大きさも模様も違うのを見つけた。
一様ノックをしてから扉に手を掛け、押し開く。
「お邪魔しまーす」
入ってまず目に入ったのが自分の何倍もの高さのある本棚、それがズラリと列を組んでいる。
図書館なのかな?
「あら、さっきのと比べて随分礼儀正しいお客様だこと」
本棚を眺めながら歩いてると、大きい机とそこに座る紫色の服を着た人物の声を掛けられた。
「あ、お邪魔してます」
「知ってるわ、貴方が扉を潜ったときからね」
分厚い本を開き読書の体制をとる彼女。その見た目は、あまり外に出てないのか病弱そうに肌が白かった。
「それで、私の図書館に何の用?」
「異変解決の為にレミリアって人を探してるんですけど、迷子になっちゃって」
言うと露骨にため息を吐かれた。解せぬ。
「レミィのいる玉座はここの反対よ、今から行っても先に来たあの未熟な魔法使いと博麗の巫女が異変の首謀者として退治するでしょうね」
あらら、もう私の勝ち筋が無くなっちゃったみたい。
「そっか、結局異変解決一番乗りは出来なかったのか」
ならここにいる必要もない。
来てからそんなに経ってないけど帰ろうかと考えていたとき、ふと目の前の人に目を向けるとあることに気がついた。
「魔力の…反応。貴方魔法使いなんですか?」
「良くわかったわね、気づかなければそのまま帰そうかと思ったけど。私はパチュリー・ノーレッジ、生粋の魔女よ」
本を閉じ、真っ直ぐこちらを見るパチュリー。
最初はただの司書さんかと思ったけど、魔理紗に魔力の捉え方を習った甲斐があった。
「私は紗由理、空を飛ぶくらいしか魔法は使えないけど」
「空を飛べるのに他が出来ない?一体どんな手順で魔法を学んだのよ」
不思議そうにパチュリーが疑問を繰り出す。
「多分さっき来たはずの魔理紗って人から飛び方だけ」
「それで飛べたの?本当に?」
「はい」
「……」
パチュリーが固まってしまった。
おーい。
目の前で手を振って上げると、ハッという効果音が聞こえそうな勢いで意識を戻した。
「ごめんなさい…とにかく、貴方には興味が沸いたわ。私が直々に魔法を教えてあげる、あんな未熟者とは比べ物にならない知識と経験をもってね」
「いいんですか?」
「話は通しておいてあげる、今日は忙しいから無理だけど。貴方の都合の良いときにここに来なさい」
一体私の何に興味を持ったのだろう。なんだか気になるけれど、今日は忙しいみたいだし帰るとしますか。
「それじゃあお言葉に甘えさせていただきますね、それと今日は帰ります」
「そう、案内をしたい所だけど。今誰も手が空いてないのよ、私はこれから一仕事あるから動けないし」
「大丈夫です、自力で帰れますから」
そういって、扉を開き廊下へと出る。
不安しかないけど、まあなんとかなるでしょう。
そう思っていた時期が私にもありました。
「ここどこー?」
私は来たとき以上に迷子になるのでした。
ーーーー
信じられない。
まさか基礎を通さずに難易度の高い飛翔を成し遂げるなんて。
それにあの体。
魔力に対する適性は抜群、魔力容量は少ないが、それは魔法を日頃使ってないからだろう。あの金髪なんか比ではない程強大な魔法使いになる素質を秘めている。
もしかしたら、私なんかよりも。
見届けたい。
今だかつて私以上の存在に遭遇したことはない。
今目の前にあるのはその私以上の可能性。
あの子は育てればどこまでも強くなる。
そして私にはそれを手助けする力がある。
先に覗き見した時からわかっていたが、人間なのに妖力を持ち、かつそれを扱って見せた。
普通の人間は、妖力を扱うと穢れが溜まり妖怪へと近づいていく。それなのにそういった気配はなかった。
これほどまでに謎と可能性を秘めたものはないだろう。そんな人材。
齢100を越えた魔女の興味を引くには十分過ぎた。
「小悪魔」
「はいパチュリー様」
「あの子が来るまでに魔法の基礎について書かれた魔導書を全て集めておきなさい」
「かしこまりました、紅茶のおかわりはどうなさいますか?」
「いただくわ」
召し使いである小悪魔に仕事を頼み、その職務を全うするためにこの場から去る背中を見送りつつ。
「まずは基礎から教えないとね。人にものを教えるなんて何十年ぶりかしら」
滅多にしない体験に、僅かながらに心の踊る魔女。
さてどこから教えようかと考えにうつつを抜かしていると、突然地面が揺れた。
地震などの自然現象ではない衝撃による揺れ。その震源はある人物を幽閉している地下からだった。
すぐさまそこの映像を魔法によって呼び出し、なにが起こったのかを確認する。
「紗由理!なぜ貴方が…」
そこにはあろうことか先程別れた紗由理と、絶対に身内以外と会わせてはいけない人物が映っていた。
活動報告にて本編で書きづらい設定について書いてたりしますので、そちらもよろしくお願いします。