「……ここどこ?」
おかしいな、来たときの道を辿ってたと思ったんだけど。
いつの間に降りたのか地下っぽい所に来ちゃったし。
……もしかして私って方向音痴?
「誰かたすけてえ」
声を出すも虚しく響いておしまい、そろそろ泣きたくなってきた。
「あ、扉だ」
地下に来てから見る回数ががっくりと減った扉、しかもこれは装飾されていてパチュリーの時みたいに誰かがいるかもしれないという期待を膨らませた。
「おじゃましまーす」
先程と同じようにノックと挨拶をして入室する。
「あなた、だあれ?」
そこは一人部屋だった。もう見慣れた全体的に赤でまとめられベッドに棺桶、ドレッサーや人形など赤すぎたり棺桶があったりするという点を除けば羨ましいぐらいの豪華な部屋。
そして今まさに遊んでいたであろう人形を握りつぶしてこちらに問い掛ける金髪で宝石のような羽のはえた少女。
…………いや、ちょっと待って。人形軽く握り潰すってなに?その細い腕には何が詰まってるの?
というか目が怖い、具体的には獲物を見つけた獣のような目をしている。
「え、えと…私は紗由理。ご、ごめんね。勝手に部屋入っちゃって」
とととりあえず謝る、下手に逆撫でしたらどうにかされそうだ。
本能的に死を悟るとはこのこと、冷や汗が全身から出てくるが、取り乱すこともできない。
「いいの、私はフランドール・ドールスカーレット」
よ、よかった…怒った様子は見受けられない。
落ち着こう私、はい深呼吸。
「ふ、フランちゃんかー。いい名前だね」
おだててみるも、その表情に変化はない。
「そんなことはどうでもいい…ねえ、さゆり」
「……はい、なんでしょうフランちゃん」
フランは潰れて元がなんだったかもわからない物体を投げ捨て
「あそびましょ?」
「ひいいい!」
「アハハハハ、おもしろい!あなた最高よさゆり!」
フランが右手を握る…と同時に自分の体を横にずらす。刹那私のもといた位置の壁が爆ぜた。
「もうひとつ!」
今度は左手を握り、私が体を反らす。
開戦の挨拶代わりにさっきの爆発を目の前でやられてからずっとこんな調子だ。そろそろ集中力が…。
「キャハ!もっともっと!次は同時にいくよ!」
今度は両手を構え、握る動作に入る。
それが握られる直前に上へ飛ぶことで回避する。
「すごいすごい!んじゃー次はねー」
このまま彼女のおもちゃとして終わるつもりはない、なんとか打開策を立てないと…。
このまま逃げるといっても逃げ切れる自信はないし…。
攻撃しようにも弾幕を作る暇もないし……弾幕?
「ちょ、ちょっとまってフランちゃん!!」
次の攻撃体制に入られる前に声を掛ける。
「なあに?降参は受け付けてないよ?」
「ちがうちがう!……弾幕ごっこって知ってます?」
ダメで元々、もし弾幕勝負に持ち込めれば勝機が出てくる。本来その為のルールだし。
「知ってるよ、お姉様が教えてくれたもん。お外での戦いは全部これなんだって」
「それで私と勝負しませんか?せっかく覚えた遊びなんですから、やらないと損だと思うの!」
「あそび?」
「そう!こんな殺伐としたものじゃなくて、もっと綺麗で美しい遊び。それが弾幕ごっこだよ!」
さあ…どう出る!
フランは手をこちらに向けるのをやめ、思考に入った。
「うーん……いいよ!」
いよっし!
これで私にも勝機が見えてきた!
神様ありがとーう!
「じゃ、じゃあ被弾、スペカ両方とも3回でいい?」
「うん!じゃあこのコインが落ちたら開始ね!」
フランが懐から西洋風のコインを取り出し、指で弾く。
コインは回転しながら私の頭の上程の高さまで登ったあと、ゆっくりと降下を始めた。
このコインが落ちたら試合が始まる。それまでに妖力をできるだけ練り上げる。
コイン床に落ち、キーンという甲高い音を発する。
「「はじめ!」」
一気に後ろへ後退、すると同時に気がついた。
弾幕ごっこをするにはこの部屋は狭すぎる!
これじゃ避けれるものも避けられない。
「フランちゃん!移動するよ!」
牽制を強め、入ってきたドアを蹴破り廊下へ出る。うん、十分な広さだ。
弾幕を撃ったり避けたりしながら、廊下を進むように交戦する。
二つ目の曲がり角を曲がった所で、フランが最初のスペルを切った。
「わたしからいくよ!禁忌『クランベリートラップ』」
フランから四つの白い球体が現れ、私を中心に一定の距離を置いて、丁度×印が組めそうなところに陣取り弾幕を放ちはじめる。
「わわっ……と」
前と後ろ両方から飛んでくる弾幕。私の目は前に2つしかないので、首をあちこちに回さないといけない。
しっかりとフランも弾幕を撃ってきているのでより大変。
幸いなのは規則性を持っていること。それぞれの白い球体の真ん中を撃つようになっているらしく、これがなければすぐに被弾していただろう。
「やるじゃないさゆり」
「お褒めに預りどうも!」
フランの弾幕に込められた妖力が心なしか増えた気がする。
白い球体も移動してるし…当たらないことを祈ろう。
祈りを交えながらフランのスペルカードをやっとの思いで乗り切る。
「ふう、やっと終わった…」
「まだまだ始まったばかりじゃない、さ!次はさゆりの番!」
次のスペルカード宣言を譲ってくれるらしい、なら期待に応えてあげよう。
「じゃあいくよ!石符『明日は藍晶石と共に』!!」
黒色を中心とした弾幕を大量にフランへと放つ。
…はやい、避けるスピードが尋常じゃない。そういえばフランって種族なんなんだろ。
「アハハ!」
これ当てられるのか?いや、当てるつもりで撃たないと当たらないか。
「楽しいわさゆり!こんな楽しい遊びがあったなんて!」
負けの色が濃厚になりつつある私を他所に、顔一杯の笑顔を張りつけ楽しそうなフラン。
楽しんでるとこ悪いんだけど込める妖力押さえてもらえない?喰らったら割と危ない怪我しそうなの。
「もういい!?ねえもういい!?」
「なにがですか?」
フランがなにかを待っているようだが、聞き返す私の問に答えもなく、代わりに出されたのは一枚のカードだった。
「禁忌『フォーオブアカインド』」
「え?」
フランが増えた。
「さあ!」「ここからは」「ほんきで」「いくよ!!」
ちょちょ、それは反則だって。
なんで四人に増えてるのよ。
しかも幻影とかそんな生易しいものではなくしっかりと実体を持って弾幕放ってる。
「さあさあ!」「もっといそがないと!」「よけないと!」「あたっちゃうよ!」
「ああもう!あちこちでしゃべらないで!」
右斜め前に左上に後ろに下から声を掛けられよくわからないことになってる。
「まとめて当たれ!人符『幻想花火』」
この場合四人に当ててもルールによる所謂無敵時間があるために被弾は一つしかとれないが、相手の集中を乱しスペルカードを中断させるのが目的なので気にしない。
それぞれの方向に向けて大型弾幕を放ち、炸裂させる。
このスペルカード遠くから見たら綺麗なのだが、間近で見るとよく分からないのが欠点だ。
「アハハ」「キャッ!」「まだまだ!」「グッ!やったなあ!」
二人にヒット、でも被弾は一つだ。
「「「「おかえしだあ!」」」」
分身が消えることなく、体制を立て直し四人同時に弾幕を放ってきた。
「グッ!……いつつ」
さすがに避けきれず被弾…ちょっと血が出たしかなり痛いけどまだ大丈夫。
フランのスペルカードも終わり、私は被弾した時に中断。これで互いに1被弾のスペルカード2枚使用だ。
「これで二人ともあと一枚だね……ねえ、一騎打ちしない?」
一人に戻り、声の聞きやすくなったフランが弾幕を撃つ手をやめる。
「一騎打ち?二人でスペルカードでも使うの?」
「そう!そんで、当たった方の負け!」
なるほど確かにこれなら長期戦にならずに済みそうだ。
気がつけば廊下には窓がついていて、その外は赤い霧が晴れかかっているようだ。
「いいよ、それじゃあいっせーのでいこうか」
もう異変は解決されたのだろう、ならばこちらも終わらせるとしよう。
二人は同じ高さかで少し距離を置き、深呼吸をしてから。
「「いっせーのーで!!」」
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