「「いっせーのーで!!」」
「妖刀『ファルシオン』」
「禁忌『レーヴァテイン』」
妖力を練り上げ、弾幕とは違う形で具現化する。
ちょっと前に出来るんじゃないかと思って試したらできちゃったなんちゃって妖術で、ノルマン人が使っていたとされる私の好きな剣ファルシオン。意味は鎌だったはず。
そしてフランも剣を出してきた、以外な所で気が合うのかもしれない。
レーヴァテインって北欧神話に出てきた剣のことかな?
「まさかフランちゃんも剣を出してくるとはね」
「そっちこそ!」
剣を弾くように後退、剣の打ち合いとなる。
剣の腕前なんてこのスペルが出来てから木などを相手に練習してたのと長い棒切れを振り回して遊んだ程度だが、弾幕ごっこによって鍛えられた反射神経が打ち合いを可能していた。
袈裟懸け横凪ぎ突き、よく見ていたアニメキャラを真似て斬りかかる。
「せいっ!」
「とう!」
避けたり受けたり斬りかかったりをひたすら繰り返し、剣が交わる毎に大きな音が鳴る。
やっぱりきついなあ、もっと練習を積んでおけばよかった。
…まあ弾幕ごっこである以上死ぬことはないだろうからいいか。
二人とも剣術なんて立派なものはなく、他所から見たらさぞかし危なっかしいチャンバラをしていることだろう。
二人は打ち合いながら少しずつ場所を移動していく。
……あ、高そうなツボ割っちゃった。あとで謝っとこう。
周りへの被害は増えていく一方だった。
ーーーー
「なんてこと…」
フランと紗由理が出会ったのを確認したパチュリーは、急いで地下へと向かっていた。
止めなくてはならない、あの子は人間に触れるにはまだ危険過ぎる。
「間に合うといいけど…」
出来る限りの速度で飛行しながら考える。
すでに頭の方では生存確率なんて1パーセントも無いと叫んでいるが、それでも無事だという方に掛けたかった。
「え?」
十字路に差し掛かったところで目の前を左から右へと派手な音をならしながら通る2つの影。
「今のは…!」
後を追ってみれば、そこには剣を持って打ち合う二人の姿が。
「あれは…弾幕ごっこ……なの?」
七曜の魔女は弾幕を使わない弾幕ごっこという一見矛盾した行為に戸惑うが、フランのレーヴァテインに込められている妖力がこの前癇癪を起こしたときより格段に少ないことがそれが弾幕ごっこであると主張していた。
そして二人とも笑っているのだ、楽しそうに。
「……紗由理、貴方は本当に凄い子ね」
人に触れるのにまだ何十年と掛ける必要があったと考えていた身としてはこの光景は驚くべきものだった。
「パチュリー様、この状況は…」
横から声がかかり、まるで最初からそこにいたかのように登場したのは紅魔館のメイド長十六夜咲夜。
彼女も驚いているのだろう、フランが人間と対等に笑っているその姿に。
「あれは弾幕ごっこよ…少し危いけど止めなくていいわ」
「左様ですか…しかし妹様の笑顔など初めて見ました」
隣にいる咲夜も初めてフランに出会った時は殺され掛けたらしい。
原因はただの事故、フランの存在を知る前に掃除をしようと地下に踏み入れたのだ。
その後はレミィによって口煩く言われたようで、以降は咲夜に罪悪感を抱いてあまり接触するのを避けているようだった。
「……レミィが言っていたのはこの事だったのかしらね」
ふと、幻想郷に来るときの話を思い出す。
“これであの子を救うことができる。羽を伸ばし自由に遊ぶことのできるように……“
あれはてっきりこの異変で幻想郷を赤く染めて吸血鬼の弱点である日光の入らないようにしてからだと思っていたけど、もしかしたら異変が解決されるのはあくまで過程でしかなかったのかもしれない。
「これで私達も変われるのですかね」
「変わるでしょうね、これでこの土地の多くの人妖に私達の存在が知れたでしょうから」
主人の趣味でこんなに目立つ館なのだ、視認妨害の魔法を解いた今その存在を知って興味を持たない方がおかしいだろう。
これまでの生活が少なからず変わるのは目に見えていた。
「彼女には大きな借りが出来たわね」
「まったくです」
これでフランも変われるはずだ。どのような形であれ人間や、身内以外の人外と交流する機会が増え主人や私達の悩みの種も減るだろう。
そのきっかけを作ってくれた紗由理にはそれだけで十分なほどに借りが出来てしまった。
二人の勝負は、紗由理が剣を弾かれ隙を作った所を突かれて終わったが、些細なことだろう。
「楽しかったねさゆり!また今度やろう!」
「次は私が勝つからね……あれ、パチュリーどうしたの?それとそちらの方は?」
弾幕とレーヴァテインを受け、ボロボロな姿の紗由理。多少の出血はあるが、フランと戦ってそれなら良い方である。
フランもこちらの存在に気が付き萎縮する。散々暴れまわったことによる気負いだろう。
「はあ…貴方を心配して来たのよ、こっちは紅魔館メイド長の十六夜咲夜」
「お初にお目にかかります」
従者として文句なしのお辞儀をする咲夜。
「初めまして咲夜さん、それとごめんなさい館をめちゃめちゃにしてしまって」
「構いません、むしろ私達は貴方に感謝しています」
感謝?と首をかしげる紗由理。
「そう、実感は無いかもしれないけど。私達はとても助かったわ」
「私はただ遊んでただけだよ、確かにちょっと危なかったけど…なんとも思ってない」
楽しかったからねと笑う紗由理のその言葉は、心からくるものだとわかった。
「パチュリー……」
「フラン、後でレミィの所に行くわ「その必要はない」
言葉を遮ったのは吸血鬼にして紅魔館の主、レミリア・スカーレットだった。
博麗の巫女と戦った為だろう、傷一つ無いものの服は多少汚れていた。
「お姉さま…」
「フラン、後でお話ね……貴方、お名前は?」
「紗由理、そういう貴方は?」
「礼を言う紗由理。私は吸血鬼のレミリア・スカーレット、この紅魔館の主にしてフランの姉でもある…今回は身内が迷惑を掛けた」
丁寧なお辞儀をする主。その姿はどこに出しても恥ずかしくなかった。
「いえいえ、私も楽しかったですし」
「ありがとう、さゆりのお陰で我々は前へ進めそうだ」
「そうですか、なら良かったです。私はもうそろそろ帰りますね……あ、多分近い内に神社で宴会があると思うので、よかったら来てください」
「ああ、是非とも参加させていただくよ。昼間は出歩けないが」
思えば随分とここに留まらせてしまった。
「紗由理、じっとしてなさい」
怪我をしている腕をとり、事故治癒能力を促進させる魔法を掛ける。
腕を淡い緑色の光が包み、少しずつその傷を塞いでいく。
戦闘中に使うような強いものではないが、十分に効果を発揮するだろう。
「ありがとう、パチュリー」
「気にしなくていいわ」
動かしても問題ないところまで治癒を続け、光を止める。
「帰りは案内しよう…咲夜」
「畏まりました」
終わりを見届けたレミィが従者へと送迎を命令する。
「フランちゃん、またね」
「また遊ぼうね!さゆりお姉ちゃん!」
後に紅霧異変と呼ばれるこの異変は。
異変らしく、一人の死者も重傷者も出さずに解決した。
ーーーー
「そこでな!私のマスタースパークがレミリアに当たったんだよ!」
盛大に話酒を一気に煽る魔理紗、その姿はまさにうわばみと呼ぶにふさわしいと思う。
「へー、私はフランちゃんとしか戦ってないからなー」
「フランってレミリアの妹だろ?やっぱり強いんだろうなあ……今度声かけに行くか」
現在異変解決の宴会で、時刻は夜に差し掛かった頃。朝からずっとやってます。
この話も5回目です。ちなみに霊夢から聞いた話と結構違います。
「こんばんは皆様方」
「やっときたわねえあんたたち!」
霊夢も随分出来上がってるなあ…。
と、紅魔館の皆さんが到着だ。
「いらっしゃい、レミリアさん」
「こんばんは紗由理、約束通り来てあげたわよ」
小さなカリスマさんことレミリアに、メイリン、咲夜、パチュリー、フラン。
「さゆりお姉ちゃーん!」
っとと、フランが抱きついてきた。
加減されてるからいいものの、もし吸血鬼のタックルを本気でくらったらと思うとゾッとする。
そんなことないってわかってはいるけどね。
「こんばんはフラン」
そっと頭を撫でてあげる。これが意外と楽しい。
「えへへー、ちゃんといい子にしてたんだよ?」
「えらいえらい」
今の私はきっとお姉ちゃん的なポジションにいるのだろう、実年齢はまるっきり逆だが。
あのあと咲夜さんに教えてもらったのだが、スカーレット姉妹は吸血鬼でその年齢は二人ともおおよそ500歳という驚愕の数字だった。
「はい紗由理」
パチュリーが抱えてる本の内の一冊を差し出す。
「これは?」
「魔導書よ、これにのってるのはほんの基礎。貸してあげるから読んでおきなさい」
受けとる、見ると表紙がなんだかおしゃれでいかにも魔導書っぽい。
「ありがとうパチュリー、今日帰ったら読んでみるよ」
「ゆっくりでいいわよ、魔術は勉強と反復の積み重ねなんだから」
流し読みはするなと言うことですね、わかりました。
「いいなー、パチュリー私にもなんか貸してくれよー」
「貴方に貸す義理は無いわね」
魔理紗がごねるが、パチュリーは冷たい反応だ。
まあ酔っぱらいには正しい対処だと思う。
「紗由理様、こちらはお嬢様からです」
「ワイン?」
「よくご存知ですね、これは当家でも数本とない一級品です。レミリアお嬢様が是非にと」
そういってワイングラスに……多分赤ワインを注いでいく。
ワインなんて飲んだことないけどどんな味なんだろ……というか私お酒の良し悪しあんまりわからないのにこんなのもらっていいんだろうか。
「いいんですか?私なんかがこんな良いものを貰ってしまって」
「お嬢様が良しとするなら、それは紅魔館の皆の総意ですから」
なんだか今の咲夜さんからは断ってはいけない雰囲気が漂っていた。
「それじゃあ、いただきます」
ワイングラスを口につけ、少し含む……うん、わからない。けどふるーてぃな感じがする。
「なんだかふるーてぃで爽やかな味ですね」
「はい、それはベリーや柑橘類を中心に時間を掛けて熟成させたもので……」
あ、地雷踏んだ。これは説明長くなりそう。
「えーい、ながったらしいのは勘弁だ!飲むぞお前らぁ!」
魔理紗が強制的に中断してくれ、また宴会モードへと空気が変わる。
「賑やかね」
「いつもこんな感じ、退屈しなくていいよ」
パチュリーの疑問に答えを返す。
本当にここは退屈しない、ほぼ毎日何かが起こるのだ。
「あまり騒がしいのは好きじゃないのだけど」
「まあまあそう言わずに」
手近にあった日本酒を注ぎ手渡す。
紅魔館の皆洋風っぽいけど口に合うかな。
「ありがとう………ん、不思議な味がするわね。悪くないわ」
どうやら日本酒は初めてだったらしい、同じお酒でもワインとは結構違うよね。
「それはよかった」
私も貰ったワインを飲む…うん、美味しいかも。
「にしても異変の主犯を呼んで宴会だなんてどうかしてるわ」
「霊夢が昨日の敵は今日の友って言ってたよ」
「その割にはあまり良い歓迎を受けてないようだけど」
遠くの方で酔っ払った霊夢にしつこく絡まれてるメイリンの姿があった。
「れ、霊夢なりの歓迎だよ……たぶん………」
私はそう信じている。
そんな感じで、紅魔館一行を新たに交えた宴会は朝まで続いた。