それでは前回のあらすじ
真が風呂に入っているとこいしがあとから入ってきて二人で一緒に入ることに。
こいしと話している間にこいしは真の周りに女の子が多いから不安になっていることを告白する。
そしてこいしが一番大切だということを証明してと迫られる真の理性がピンチに!
その後は二人で美味しく夕食を食べた。
それではどうぞ!
side真
俺たちは飯を食べ終わった後しばらく雑談を交わしてから布団に入って眠りについた。
こいしがどうしてもっていうから一緒に一つの布団で寝たけど、俺は緊張で全く眠れなかった。まぁ、こいしはぐっすりと気持ちよさそうに眠っていたんだけどな。
そして翌朝––いつも修行やら温泉郷の手伝いやらで今日よりも早く起きているからここまでゆっくりと寝たのは久々だった。
俺は欠伸をすると昨日、こいしが寝ていたはずの真横へと目を向けた。
そこにはすでにこいしは居なくて俺の横が寂しそうに開いていた。
「そうか……もう起きたのか?」
眠気眼をこすりながらも寝起きで目を覚ますために顔を洗おうと洗面所に向かう。
それにしてもこいしはどこに行ったんだろうか。浴場からは水の音は聞こえてこないし、トイレの扉は開いていて中には誰もいなかった。
ちょっと心配になってきてこういう時に能力が使えないのは本当に不便だと感じる。いつもならば無意識を感じ取ってこいしのいる場所を特定できるのだが、外の世界では能力を使えないため、無意識を感じ取ることができない。
それからしばらく部屋の中を探していたのだが、一向にこいしの姿は見当たらない。
外にいるのか? そう思って外へ出てみると、そこへ猛スピードで走ってくる一人の人物が見えた。
「え?」
「あ?」
突然の事、そして寝起きで頭が回っていなかった俺はその走ってきた人物を回避することが出来なくて衝突してしまった。
「いてて……わりぃ、大丈夫か?」
「あ、あぁ、だいじょう、ぶ……ってお前は昨日の学ラン!」
「ん? あ、お前は昨日蓮子たちを助けてくれた人か。昨日は本当にありがとうな」
俺と衝突したのは昨日見かけたすごい力を秘めている学ランキャップの男だった。確か相談屋の会長とか新聞では紹介されていたような気がする。
やっぱり何度見ても迫力がある。間違いなくこいつは強く、こっちの世界に居ちゃいけない人材だと思う。
でも、そんなことよりもまず聞きたいことがあった。
「そんなにあわててどうしたんだ?」
「宇佐見とメリーが消えた」
「宇佐見? メリー?」
「あぁ、昨日の黒ハットが宇佐見、金髪がメリーだ。二人とも俺の大切な仲間だ」
「そうなんだ。で、消えたっていうのは?」
「今朝から家にはいない、連絡も途絶えている。二人の身に何かがあったのはまず間違いないだろう」
家にはいなくて連絡も途絶えているということは突如失踪したということか。となると、確かに何かがあったと考えるのが妥当か。
そしてその二人を探すためにこの人は奔走しているというわけか。昨日もあの二人を探していた様子だし、この人は二人にいつも振り回されているんだろうなと呑気なことを考えたが、すぐに他人事じゃないということに気が付いた。
そうだよ、俺のところではこいしが消えてしまったんだ。宇佐見さんとメリーさんに何かがあったんだと考えるとこいしにも何かがあったんじゃないかと考えるのが妥当だろう。
「まずい。俺も探し人がいるんだ。もしかしたら同じ状況になっているのかもしれない!」
「そうか、なるほどな。お前の探し人も急に消えたっていうわけか」
「あぁ、俺の探し人はこいしっていうんだけど、朝起きたらいなくなっていてな」
「なるほどな。どこを探してもいないわけか。となると確かに状況は酷似している。偶然とは考えられない」
相談屋の男は少し考えると再び俺に視線を向けた。
「俺と一緒に一緒に探してくれないか?」
「あぁ、こっちこそ頼む」
「俺の名前は
「よろしくな一輝。俺の名前は海藤真だ」
俺たちは名乗りあって握手を交わした。俺たちはこれから同じ目的を達成するための仲間というわけだ。
だが、これからどうすればいいんだろうか。人を探そうにも手がかりがない。地道に聞いて回るしかないのか? だが、それでは情報を持っている人を見つけるまで時間がかかりすぎる。
こうしている間にも三人が酷い目に遭っている可能性があっているっていうのに……。
「情報ならある。三人がどこへ向かっていったのかも心当たりがある。心配するな」
「そ、そうなのか?」
またまた心の中が読まれてしまった。まるでさとりと話しているような気分になってくる。
だが、一輝はさとりとは違って外の世界の人間だからそんな能力なんて持っているはずがないんだ。おそらく俺の表情がそれだけ分かりやすかったということなんだろう。
一輝が言うには今からその心当たりがある場所へ行くところだったらしい。そしてその途中で俺に衝突したんだとか。
行き先が分かっているなら話が早い。
俺は一輝に案内してもらって走って目的地へと向かった。
一輝に案内されてたどり着いたのは京都府外のぼろぼろの神社だった。
もう何年も手入れされていないようで、人気も全く感じられなくて、ぼろぼろの神社なんだが、不思議と汚いという印象は受けなかった。
それよりも空間がねじ曲がっているような気配がしてちょっと不気味に感じるし、なぜだか、この神社周辺からは霊力に似た力を感じる。外の世界にはそんな霊力なんて無いはずなのに、だ。
つまり、ここは幻想郷に最も近い場所なのかもしれない。そして結界が歪み、こっちに霊力が微量ではあるが、流れ込んできているのだろう。
「なんだか変な感覚だな。まるで今まで俺たちが住んでいた世界じゃないみたいだ」
どうやら俺と同じ感覚を一輝も味わっているようだった。そのことに俺はまたまた驚いた。
霊力を持たない人間は霊力を感じ取ることができない。だから空間がねじ曲がっていたとしてもそれを感じ取ることはできないはずなのだが、それを一輝は感じ取っている。
俺は幻想郷に長いこと住んでいて霊力に慣れているから霊力を使えない外の世界だとしてもこうして感じ取ることができるが、一輝は普通の人間のはずだ。それなのに、なんで一輝が感じ取ることができるんだ?
「そういえば、どういう情報を得てここに来たんだ?」
「ん? あぁ、サイコメトリーってやつか? それが俺はできる」
「サイコメトリー!?」
「あぁ、ものに触れるとそのものの記憶を覗くことができる。とはいっても制約付きなんだけどな。自分の念じた記憶しか見ることはできないし、一日以上前の記憶を見ることもできない。だから、完全なサイコメトリーってわけじゃないな」
「そうなのか」
ものに触れることで物の記憶を覗き見ることができる。それは確実に能力だ。だが変だ、なぜか能力が使えないはずの外の世界で能力を使えている。
俺もこっちに来てから全く無意識を操る程度の能力も使えないから、外の世界では間違いなく能力が抑制されている。しかし、一輝はサイコメトリーという能力を使った技をこの外の世界で使って見せている。
「だけど、ちょっと困ったことになっているな」
「どうしたんだ?」
「実は、宇佐見、メリー、そして海藤の連れを誘拐した犯人がここで消息を絶っている。この場所のどれの記憶を読み取ってもここからどこに向かったのかが分からない。足跡がここで消えているというやつだ」
間違いない。今、一輝の言葉を聞いて確信した。
この場所に結界があり、それが歪んでいるということに少し違和感を抱いていたが、やはり俺の嫌な予感は当たってしまったらしい。
結界が歪んでいてそこから霊力が出てきているということはまず間違いなくこの結界の先には幻想郷があるのだろう。そしてその結界が歪んでいるということはおそらく、誰かが強引にこの結界をこじ開け、ここから幻想郷へと向かったに違いない。
つまり、今回の事件の犯人はこの幻想郷のどこかにいるということになる。
だが、そうなると非常に困ったことになる。ここから幻想郷に向かう手段は俺たち二人だけではないということだ。
さすがに俺もこの霊力も全く使えない状態でこの結界をこじ開けることができる自信はない。そして今まで霊力に触れたこともなく、これを結界だと認識できていない一輝もそれは一緒だろう。
だけど、一つだけ、たった一つだけこの状況を打開することができる可能性がある。
「俺に、考えがあるんだけど、いいか?」
「……わかった。任せる」
「サンキュ」
俺は一言断ってから息を大きく吸い込んだ。そして周囲に響き渡るような大声でこの状況を打開できそうな人物の名前を叫んだ。
「シャロぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
シャロは帰るときに呼んでくれたら迎えに来てくれると言っていたからおそらく俺の声が聞こえる場所にはいるんだろう。しかし、あの宿泊券は二泊三日の宿泊券だから多分シャロはまだ俺を迎えに来る準備なんかしていなかっただろう。悪いとは思っている。
だが、今は緊急事態だ。シャロの事情ばかり考えてもいられない。
すると、目の前に突如として目が大量にある空間が空間を割いて出現した。間違いない。
「真君、事情は把握してるよ。こいしちゃんが攫われたんだよね」
「あぁ、話が早くて助かるわ。さすが神と言ったところだな」
目の前に開いた空間––スキマの中からシャロが出て来た。どうやらもう準備万端らしい。多分俺たちの行動の一部始終を見ていたんだろう。
「お、おい、これはいったいどういう状況だ」
この場に唯一状況が飲み込めていない人物––一輝はこの世の物とは思えない光景を目にして額に汗をかいていた。
それはそうだ。一輝はずっとこの外の世界で暮らしてきたのだ。こんな非科学的な現象は目の当たりにしたことが無いだろう。いや、一輝のその能力自体が非科学的なものなのだが、そこには触れないことにして––
「この人はシャロ。まぁ、俺の友達だ。一輝と同じく特殊な力を持っている」
「なるほど」
「んで、シャロ。状況はわかっているだろうから知っていると思うけど、輝山一輝だ。一輝も大切な人を攫われてしまったらしいから一緒に行動している」
「よろしくねー」
とりあえず軽くお互いの事を紹介して置いて本題に入る。
「んじゃ、シャロ、さっそく頼む」
「ん、でも、気を付けてね。この先に繋がっている幻想郷は真たちが今まで暮らしていた幻想郷と全く別の幻想郷だから。だからみんな真のことも知らないだろうし、住民がどれくらいの実力を持っているか未知数だから気を付けて」
「了解」
「ったく……やれやれだぜ。一度にいろんな情報が入ってき過ぎて頭ん中こんがらがっているが、とにかくその幻想郷ってところに宇佐見とメリーは居るんだな」
「そうだね。あんまりいろいろとごちゃごちゃ考えてもあれだし、その認識でいいよ」
一輝はこの段階でいろいろな情報が入ってき過ぎてすでに疲れてきてしまっているようだ。まぁ、確かに今まで生きてきた中で入ってきたことのない会話を一度に大量に聞かされたら疲れるのは当然のことだ。
だが、一輝はなかなかに理解力が高いほうなのではないだろうか。この難しい会話の中で重要な情報をピンポイントでピックアップして記憶している。
「それじゃ、準備はいい? 開くよ」
「大丈夫だ!」
「問題ない」
「じゃあ、オープン!」
シャロがそう掛け声を上げた瞬間、空間の歪みが徐々に大きくなり始めた。それと共に俺たちに高密度の霊力が襲い掛かってきた。
今まで霊力のない場所に居たから一気に霊力が押し寄せてきたことによって突風のように感じられる。
そのおかげで少しだけだが、能力が戻ってきている。まだこの場所の霊力量が少ないから能力が不安定だが、この先から確かに無意識を感じ取ることができる。
こいしはこの幻想郷のどこかにいる。
その瞬間、視界が真っ白な世界に包まれるほどの猛烈なフラッシュに襲われ、咄嗟に目を覆う。そしてそれと同時に俺の霊力が完全に復活し、能力が自由に使えるほどに回復した。
体の中の霊力だって自由自在に動かすことができる。
まばゆい光が収まったので、目を開けてみると、そこは先ほど居たぼろい神社ではなく、何度も見たことがあるが、若干違うような気がする博麗神社だった。やっぱりこの場所は俺の住んでいた幻想郷のパラレルワールドのような幻想郷なんだろう。
試しに俺は手のひらに霊力の球を作り出してみる。するとしっかりと手のひらに霊力の球が出現したため、問題なく霊力を操れることを再認識する。
「ここは……」
「幻想郷、忘れ去られた者達の最後の楽園。すべてを受け入れてくれる世界」
はい!記念第6話終了
こいしが消えてしまいました。
そしてついに真と一輝の二人が共に行動し始めましたね。
真はこいしを探し出すために、一輝は蓮子とメリーの二人を探すために!
再び幻想郷にやってきましたね。しかし、この幻想郷は真の元居た幻想郷とは全く違う幻想郷となっています。
なぜ真の幻想郷から来た外の世界なのに別の幻想郷ともつながっているかと言うと、別の幻想郷はパラレルワールドなんですよね。
この神社の結界の歪みが原因で一時的に別の幻想郷とつながるため、その神社が博麗神社へと早変わりするという感じです。
そしてこの幻想郷は【東方魂愛想】の幻想郷となっています。つまり、今回でやっと【東方魂愛想】の第1話の突然景色が変わった謎が明かされました。
ここから物語は加速していきます。
それでは!
さようなら