無意識の恋 Second stage   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 朝起きてこいしが居なくなっていることに気が付いた真は慌てて探しに出る。

 そこで真は一輝とばったり再開した。どうやら一輝の仲間である蓮子とメリーもいなくなってしまったようだった。

 二人は共に一輝のサイコメトリーで見た心当たりの場所へと向かうと、そこは神社で空間が歪んでいることに気が付く。

 ここで完全に一輝のサイコメトリーで追えなくなったので、一輝は絶望するものの、真はシャロの力を借りて空間、結界の歪みを広げ、幻想郷へとつなげた。

 舞台はついに幻想郷へ。

 はたして真と一輝はそれぞれ己の大切な人を助けることができるのか?



 それではどうぞ!


記念第7話 読めてんだよ

side真

 

「……空気が澄んでいるな。あまり工業化が進んでいない世界なのか」

「そうだな。確かに現代日本と比べると工業化が進んでいなくて空気も美味いな」

 

 現代日本は工業廃棄物などで大気が汚染されてしまっていて、空気を吸っていてここまで清々しい気持ちになることはないだろう。

 それに、景色がきれいだ。空気が澄んでいると景色がよりきれいに見えるというのも特徴だ。

 

「いい、場所だな」

「そう、だな」

 

 初めて幻想郷に来た一輝もここがいい場所だと思ってくれたらしい。

 だが、いつまでもこうして感傷に浸っている暇はない。早くこいし、蓮子さん、メリーさんを探し出さなければいけないんだ。もしかしたら何かの事件に巻き込まれているのかもしれない。

 

 今回は何の事件とかにも関わらずにのんびりと新婚旅行気分を味わうつもりだったのに、こんなことになるとは……今回の元凶はマジで許さんぞ。骨の髄まで恐怖を叩き込んでやる。

 俺が手をワキワキさせながらそんなことを考えていると一輝が若干引いたような目で俺の事を見てくる。

 

「それにしても霊夢が居ないな」

「霊夢?」

「あぁ、博麗霊夢。この博麗神社の巫女、のはずの女性なんだけど、今日は居ないみたいだな。俺の居た幻想郷の霊夢は基本的に縁側でせんべいを食べながらお茶を飲んでいるんだけど」

「まぁ、今回の目的はその博麗霊夢って人じゃないんだから今回は先を急ごうぜ」

「そう……だな」

 

 俺は若干嫌な予感を覚えつつも、今回の目的は霊夢を探すことじゃないからとにかくこいしの力を感じる方へと歩いていくことにした。

 景色を見ながら歩いていくが、俺の住んでいた幻想郷とほとんど変わらないように思える。確かにちょっと違う点はあるが、そこまで大きな違いはない。

 

 人里までやってきたが、人里の街並みすらも変わらないように思える。

 

 現在はもうすでにお昼時になっているため、食事処からいい匂いが漂ってきている。

 そういえば俺も急いで飛び出してきたから朝食バイキングに参加していないんだよな。だから腹が減ってしまっている。そしてどうやら一輝も同じようで一輝も周囲にある食事処に目を向けていた。

 

「軽く何か食いながら行くか」

「だな、腹が減ってたら大事な時に動けねぇ」

 

 俺の案は即決された。

 俺たちは共に手で持って食べられるものを食べながら歩き始めた。ちなみに俺が買ったものはみたらし団子だ。俺の居た幻想郷でもここのみたらし団子は美味かった記憶があったから買ったが、味は抜群に美味い。ただ、やはり違う幻想郷で作っている人も同一人物とはいえ、完全に思考が同じというわけじゃないから、少し味が違う。ちなみに俺はこっちのみたらし団子の方が好みだ。お土産に帰りに買っていってもいいかもしれない。

 そして隣を歩く一輝の手にあるものはあんぱんと牛乳というまるで張り込みを行う人みたいなラインナップの食べ物だった。

 

「あ、そういや、俺の所属している相談屋って依頼に関係ないことでの暴力は禁止なんだけど、こっちの世界で人殴っても学校にバレねぇかな」

「だ、大丈夫なんじゃないかな」

「よし、じゃあ主犯殴る」

 

 もう殴る気満々の一輝。まぁ、俺も同じ気持ちだ。今回の主犯は許してはおけないからな。

 でも、その装備は探す側の装備じゃないのよ。待つ時の装備なのよ。殴りこむときの装備じゃないのよ、機をうかがうときの装備なのよ。

 

「うん、こっちの食い物も美味いな」

「あんぱんだけじゃ正確に判断することはできないと思うけどね」

 

 あんぱんは正直外の世界も幻想郷も大して変わらないから判断材料としては薄いような気がする。

 

「んで、今はどこに向かってるんだ?」

「あそこ」

 

 俺は食い終わった三食団子の串で俺が目指している目的地を示した。その瞬間、一輝の足が止まってしまった。

 不思議に思って振り返って一輝の様子を見てみると、俺が示した目的地を見ながら口をかっぴらいて驚いていた。

 

「もうすでに不思議なことを体験しまくっているからいまさら城が浮いているだけで驚くところか?」

「そうだよなぁ、ここは現代日本の常識が通じない幻想郷様だもんなぁ、ちくしょう」

「そうそう、常識なんて捨てた方が楽だぞー」

 

 正直俺はもうこの幻想郷を常識に当てはめることを諦めてしまっている。

 

「仮にあそこに俺たちの探し人がいるとして、だ。どうやっていくんだよ」

「え、飛ぶんだけど」

 

 俺はそう言って霊力を操って軽く自分の事を浮かせると俺の事を呆れたような、そして残念がるような表情で一輝が見つめて来た。

 そしてため息交じりで一輝は言った。

 

「お前もそっち側の人間だったか」

「俺は長らくこっち側の人間だからな」

「さいですか」

 

 こうして驚愕したり呆れたりしているが、一輝は幻想郷に来る前からこっちに片足を突っ込んでいるような存在だったわけだが……。

 手品だとか、超身体能力とかそんなちゃちなものじゃない。こいつは自分のその能力を持っていることに全く疑問を抱いていない。むしろ当然かの様にふるまっているが、普通は現代日本にそんな力を持っている奴なんていない。

 俺はそんな一輝の方が異常に感じる。

 もしかしたら俺たちはとんでもない化け物を幻想入りさせてしまったのかもしれない。

 

「っ、おい、海藤。そこの茂みから禍々しい気配を感じるぞ」

「そうだな。これは妖力、妖怪か。ん? この妖力は……」

 

 森を歩いているとすぐ近くの茂みから妖力が漂ってきているのを感じた。しかも、その妖力に混ざって殺気を感じる。

 だが、この妖力は元居た幻想郷でも感じたことがある妖力だ。

 そうだ、こっちの幻想郷では俺たちは面識がない。だから人食い妖怪である彼女が俺たちに襲い掛かってくるのは必然だ。

 

「ん~? あれ~、妖怪も一緒なのか~?」

「お、女の子?」

 

 やっぱりそうだ。あの金髪に大きなリボン。間違いない、常闇の人食い妖怪であるルーミアだ。

 目の前に出て来たから急に襲われるのかと思ったらちょっと不思議そうな目で俺の事を見られた。そして俺の事を見ながら妖怪も一緒って言ったよな。

 つまり、やっぱり俺は幻想郷内では半分妖怪の血を持っているということになるのか。

 

「えっと、君、迷子か? 親は?」

「えーっと」

 

 ルーミアが若干困ってしまっている。

 おそらく今すぐにでも一輝を襲いたいのだろうけど、妖怪である俺が近くにいるため、自分が他人の獲物を横取りしてしまうことになってしまわないかと心配しているのだろう。

 俺が妖怪でよかった。一輝だけだったらすぐにすぐに襲われていただろう。

 ルーミアの見た目が初見殺しみたいなものだからな。

 だが、これはいいチャンスかもしれない。俺は妖怪だと認識されているから俺が襲われることはない。だからいざとなれば俺が不意打ちでルーミアを倒すことができる。一輝にこっちでの戦い方を教えるいいチャンスだ。

 

「ルーミア!」

「へ? 私、名前言ったっけ?」

「こいつは俺の獲物じゃないから別にいいぞー」

「は? 獲物?」

 

 この場で状況が飲み込めていないのは一輝だけなので、俺とルーミアの会話にいくつものの疑問符が浮かんでしまっているようだった。

 そんな一輝を放置してルーミアは俺に問いかけて来た。

 

「そーなのかー? 食べてもいい人間なのか~?」

「は? たべ––」

「いいぞー」

 

 俺は間髪入れずに勝手に返事した。

 するとルーミアはにっこりと一瞬笑顔を浮かべて俺に礼を言うと、すぐさま鋭い獲物を見る目付きで一輝へと視線を向けた。

 

「ありがとうなのだー。それじゃあ、いただきまーす」

「は? ––まじで? 俺食われんの? てか、海藤今勝手に返事したよな。許さねぇからな!」

 

 なんか状況をやっと把握したらしい一輝は脱兎のごとくルーミアから逃げ出した。そしてその背後を飛んでルーミアが追いかけて行った。

 一輝の全力疾走は確かに速いが、空を飛んだ方が障害物が少ないから早く移動することができる。このまま逃げ続けていても一輝に勝機はないだろう。

 

 俺はちょっと一輝の実力に興味があった。あの平和な現代日本であれほどの威圧感を放っている人物とは初めてであったからだ。

 

「まてーなのだ~。逃がさないのだ~」

「ち、闇雲に逃げていても無駄に体力を消耗するだけだな」

「諦めたのか~?」

 

 やっと走る速度ではルーミアに敵わないことを理解して一輝は立ち止まってジッとルーミアの事を見据えた。

 そしてそれを見るとルーミアも一輝の目の前に着地してお互いに向き合う。だが、その表情はお互いに違うもので、一輝は命がかかっているので真剣な相手の動きをくまなく観察するような目だが、ルーミアはもう追い詰めたと思い込んでにこにこ笑顔を浮かべてじりじりと一輝との距離を詰めていく。

 

「それじゃあ、いただきまーす」

 

 そういってルーミアは飛び掛かった。だが、その攻撃は空振り、何もない場所を抱きしめる結果となった。

 速い、おそらくルーミアはなにが起こったか分かっていないはずだ。その証拠に一輝を見失ってきょろきょろと見渡していた。だが、一輝は消えたわけじゃない。一輝はちゃんとルーミアの後ろ(・・)にいる。

 そう、一輝はルーミアの視線を読み、視界から消えるような動きで飛び掛かってきたのと同時にルーミアの背後へと回った。

 

 そしてついにルーミアは一輝の事を見つけた。

 今の一連の流れを見ていた俺は気が付いていた、一輝は霊力などというものを一切使わなくともすでに妖怪であるルーミアを超えるほどの実力を有していると。

 だが、ルーミアはそのことに気が付いていないようで、まだにやにやと笑っていた。

 

「まぐれで回避できたかもしれないけど、今度はそうはいかないのだ~」

「さいですか」

「貴方はただの人間、そして私は妖怪。ただの人間が妖怪に勝てるわけがないのだ~!」

 

 今度は飛びつくのではなく、一輝を連続で殴りつけるルーミアだが、その攻撃は一切一輝には直撃せず、最小限の動きのみで回避していく。

 まるでルーミアが次にどう動くのかが読めている(・・・・・)かのようだ。

 本来普通の人間よりも力も能力も上の妖怪が普通の人間に負けるわけがない。それはルーミアの間違いではない。しかも、一輝の様に外来人で戦い方もわかっていないような人物だとなおさら勝てるわけがない。

 でも、それが一輝ではない場合だ。

 

「はぁ……はぁ……」

「次にお前は『ただの人間ごときにどうしてパンチが当たらないの?』という」

「ただの人間ごときにどうしてパンチが当たらないの? ––はっ!?」

「読めてんだよ。お前の思考がさ!」

 

 ついに一輝は動き出し、今度はルーミアに向かって蹴りを放った。そしてその攻撃にルーミアは反応することができずにそのまま蹴り飛ばされて森の奥へと消えていった。

 俺が知る限りルーミアはいつも人間を襲おうとしたらその相手が強かったり連れが強かったりして返り討ちに合っているようだ。なんか、人食い妖怪なのに、人を食べることができていないなんてちょっと不憫なような気がするが、人間をそうやすやすと食わせるわけにはいかないんだ、我慢してくれ。

 

「それにしても、一輝強いなぁ。その実力があれば全然異変解決でき––」

「お前も森の中に蹴っ飛ばしてやろうか、かぁい()とぉう()しぃん()

「す、すみませんすみません。許してください」

 

 やっぱり俺がルーミアに一輝を売ったから非常に怒っていらっしゃった。このままじゃ俺も蹴り飛ばされてルーミアと同じ運命を辿ることになりかねない。

 その後、帰りにアンパンをコンビニ袋いっぱいに驕るという条件で許してもらえた。




 はい!記念第7話終了

 【東方現代物語 ~最強の相談屋が華麗(物理)に事件を解決する~】を読んだことがある人は今回の話を読んで思ったかと思いますが、一輝が原作の時よりも強化され過ぎじゃない? ということですね。

 これに関しては相談屋として自分から攻撃ができないという枷があり、相談屋としての仕事以外では正当防衛でも攻撃したらダメというのがあったため、かなり一輝の力をセーブする結果になっていました。

 これがついに相談屋のルールが行き届かないところに来たことによってついに一輝の本気を見せることができるようになりました!

 能力的にはさとりに似たようなものですが、さとりほどは制度が良くはありません。せいぜいこのあとこの人はこうしそうだなとぼんやりと浮かぶ程度ですね。

 と言うか他作品でその実力が明かされるって、それでいいのか輝山一輝!

 まぁ、でも強い敵と戦うならルーミアくらい軽く倒してくれないと話にならないですからね。

 それでは!

 さようなら

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