それでは前回のあらすじ
真は死んだかと思われたものの、神であるシャドウに助けられる。
そして、真はシャドウに礼を言って帰ろうとするとシャドウの口から驚きの一言が放たれた。
「古明地 こいしはこの世界にはもういない」
それではどうぞ!
side真
こいしがいない? それはどういう事だ。
「おい、冗談も過ぎると怒るぞ」
「冗談ではない。もうこの世界にはいないのは確かだ」
「嘘だろ?」
言われて俺は無意識を探知してみる。しかし、どこにもこいしの無意識は感じられない。その事が表していることはただ一つ。こいしはもうこの世にはいない。
確かにあの時、俺はこいしに見送られて地獄に向かったはずだ。こいしが居ないなんてことは――もしかして俺が地獄に向かった後に何者かの襲撃を受けたってことか。
その事が頭をよぎった瞬間、俺は膝から崩れ落ちてしまった。
「あ、あ……あぁぁぁぁぁっ!」
俺は叫び声をあげる。
悔しくて悔しくて仕方がなかった。俺は皆を守れなかったのだ。
俺はみんなを守っているつもりでいた。だが、それがなんだ。結局守れていないじゃないか。意味が無いんだよ、守れなきゃ過程など意味がない。全て無なのだ。
叫び声を上げ、嗚咽を漏らす俺のことをそっと傍らで見守ってくれているシャドウ。だが、今はその対応が嬉しかった。
初めてあった人だが、人の感情をよく理解しているのだろう。
暫くしたら俺も落ち着いてきて、何とか事態を受け止めることが出来た。
「なぁ、聞いてもいいか? こいしの最期を」
「……知らん」
「え?」
「俺もそこまで全てを理解しているわけじゃない」
それもそうか。全ての力を持っているとはいえ、その力には限度はあるものか。
冷静になったら今度は怒りが湧いてきた。
こいしたち妖怪は長寿だ。そのため、この短い時間で寿命なんてことはありえない。だが、事故というのもありえないだろう。
妖怪だったら人間が死ぬ程度の事故でも平然としている。……つまり、こいしたちは何者かの襲撃を受けたということになる。
「行くのか?」
「まだ現場と思わしき場所には霊力が残っているはず。その霊力を探知する」
「無駄だ」
「なんでだよ!」
「襲撃者は別の世界へ渡ってしまった。今から探してもたどり着くことは出来んよ」
「…………」
俺は神様じゃない。そのため、空間移動技など持っているわけがない。別の世界に行かれてしまったらもう狸寝入りするしかないのか?
悔しい……俺が無力なばかりにまた大切な人を失ってしまった。
未来の俺もこんな気持ちだったのか?
今の俺ならば未来の俺の気持ちが手に取るように分かる。失う辛さ、悲しさ、これは狂気にもなり得る。
もっと俺に力があれば……。
「その前に、着替えたらどうだ」
「え?」
「その服はボロボロだぞ。適当に日本のお前の部屋から見繕ってやろう」
「あぁ、ありがとう」
するとシャドウは手を伸ばし、スキマを作ってその中に手を突っ込んだ。
暫く突っ込んでいると漸く手を抜いた。そこに見えたのは俺にとっては驚きの服だった。
「こんなものでどうだ?」
「あぁ、大丈夫だが」
受け取って俺はその服を見てみる。
その服は青いパーカー。確実に未来の俺が着ていたそれと全く同じものだった。
そういえばこの服も持っていたんだった。つまり、未来の俺とこの俺はこの時点で分岐していたんだな。緑パーカーを着ていた世界線と青パーカーを着ていた世界線。
確かに俺の今来ているパーカーは今までの戦いでいくつもの穴が空いてしまっている。もうこの服はあまり着ることは出来ないだろう。
受け取ったその青パーカーを俺は素直に着る。
そして備え付けてあった鏡を見てみると自分を見ているはずなのにまるで未来の俺を見ているような不思議な気分に至った。
これでオッドアイなんかになったら完全に未来の俺だ。まぁ、そこまで未来の俺に似せる気は無いけどな。
「まぁ、復讐したいなら好きにするがいい。シャロならお前に協力してくれるだろう」
「そうか」
その手があった。
俺にはシャロや彼方といった仲間が居たじゃないか。恐らくその二人に言ったら手伝ってくれるだろう。
そうと決まればあの俺が地獄へ向かったあの場所へ行かなくてはならない。恐らくあの場所に行かないと霊力を探知してその世界を探し出すことは出来ないだろう。
「シャドウ。お世話になった」
「まぁ、これくらいならおやすい御用だ。それに彼方のチビにお前だけは殺すなと言われているからな」
「あ、あはは」
そうか、彼方が頼んでくれたからシャドウは俺を助けてくれたのか。彼方には今度礼を言わないといけないな。
「じゃあ繋げるぞ」
シャドウはスキマを作り出して例の草原へ繋げた。俺は何も言っていないが、俺の心を察して繋げてくれたのだろう。
俺は絶対に復讐を成功させる。
未来の俺はこいしを失った時、全てを破壊しようとしたが、俺はそんなやり方はしない。
失うのは怖い。だが、それ以上失うのはもっと怖い。
俺はスキマの中に入る。すると直ぐに草原へ到着した。そこにはもう誰も居らず、静寂だけが存在していた。
だが、その中にもかすかに感じる霊力。これが恐らくこいしたちを襲ったやつの霊力だろう。だが、その中には感じたことのある霊力も混ざっていた。
しかし、こうして現場を訪れることによってことが現実味を帯びて俺の中に入ってくる。
俺は再び膝を着いてしまった。受け止めたつもりだった。だが、やはりダメだった。悔しいし、悲しいものは悲しい。
天気は雨。まるで俺の心を示してているようだった。
「くそ、くそ、くそ!」
俺は地面を殴る。その力は段々と強くなっていき、遂にはバゴん! と大きな音を立てて地面が割れてしまった。
こいしとの思い出が走馬灯のように蘇る
今までずっと一緒に戦ってきた一番大切な人……。
ポケットに入っているお守りを握りしめて蹲る。
すると、急に俺に雨がかからなくなったのを感じた。そのことを不審に思い、顔を上げてみるとそこには傘を差しながらしゃがんで俺のことを見てきているシャロがいた。
はい!第109話終了
ついに第伍章が本格スタートします。
消えたこいしたちの謎。そして真は復讐を果たすことが出来るのでしょうか。
それでは!
さようなら
好きな神は?
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紬
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シャロ
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紅蓮
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彼方
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シャドウ