前回のあらすじ
第144話『私だってもっと強く』のライト視点でした。
ライトは心底迷惑そうでしたが、一応鈴音の修行を手伝うことには前向きでしたね。
それではどうぞ!
sideライト
初日は修行が終わったあとはとても疲弊したような様子で南雲姉は帰って行った。
あいつは普段修行をするような性格じゃないから相当疲れたのかもしれないな。
問題は明日も来るかどうかって言うことだ。
明日になってみて来なかったらその程度の覚悟だったって言うことだ。何も変わらない、いつも通りに俺は修行をするだけだ。
そう思っていたのだが――
「よし、今日も頑張るぞ!」
そう言って気の上に登る南雲姉の姿が次の日もあった。
どうやら修行は続ける気はあるらしい。だが、それがどれくらい続くかの問題だ。
二日三日位ならば誰でも続けられる。強くなるには継続する必要があるのだ。
そして次の日――今日もあいつ、来ているのか。
南雲姉が修行をしている後ろ姿を見て俺はそんなことを思う。
そんなある日、俺は思わず南雲姉に声をかけてしまった。
「しかし、よくもまぁ飽きることなく毎日来るもんだなお前は」
「まぁ、一度やると決めたからね。途中で投げ出したくない」
「ほー。それは律儀なこって」
俺は普通に感心してしまった。
なんとなくのイメージで直ぐにやめてしまうかと思っていたんだが、彼女はそうでは無かったらしい。
確かに、あれから数日が経ったが、それでも飽きることなく通い続けている。それはかなり立派だと思う。
仕方がない。少し様子を見てみることにするか。
そういえば、クレア程とは行かないが、それに近い力を引き出すことが出来る技があったはずだ。
それなら南雲姉でも習得できる可能性はある。その方向性で考えておこう。
そして更に俺は二週間ほどが経過した。
南雲姉の様子を見ているとだいぶスムーズに木と木を飛び移ることができるようになっていたようだった。
そろそろ修行内容を変えてもいいかもしれない。そう考えて俺は木の上に立っている南雲姉に声をかけてみることにした。
「おい南雲姉」
「っ、ライト君?」
「おい、降りてこい」
「どうしたの?」
「あぁ、お前がこんなに長く修行を続けるとは思っていなかったんだが、そろそろ体力も着いてきただろうと思ってな、面倒だが次の指示をしておくことにした」
しかし、そう説明しても南雲姉は俺の方を見て惚けているばかりでどうにも降りてくる気配が無い。
「おーい、お前から教えを願ってきたんだろ。早く降りてこい」
「分かった!」
そこでやっと南雲姉は木の上から降りてきて俺の目の前に降り立った。
本当に手間をかけさせるやつだ。
だが、覚悟は本物だと信じているので、俺が考え抜いた修行法を伝授してやることにする。
「さて、これからの新しい修行を伝える」
宣言して滝の前まで移動するとちゃんと南雲姉は後ろに着いてきたのを見てから、俺は南雲姉に見せるようにして腕に霊力を纏わせ、コーティングをしてから拳を滝の中に叩き入れた。
その腕の感覚は不思議なもので、水が当たっているはずなのに冷たくなく、水が当たっている感触がない。
そしてその腕を引き抜いてみても水滴一つ着いていない。
「濡れてない!」
「あぁ、これは霊力を腕に纏わせることで水を弾いたんだ」
南雲姉の方へと向き直って説明を続ける。
「まぁ、なんだ。お前に教える技術は霊力操作だ。お前は体術で戦う戦闘スタイルだから身体強化を教えようと思っている。そのためにも霊力操作を覚えてもらう必要がある」
「しっかりと私のことを考えてくれてたの!?」
驚きの表情をする南雲姉だが、その反応は些か失礼だと思うのは俺だけだろうか。
確かに、お前には微塵も興味は無かったが、引き受けたんなら俺もそれに答えようと思っただけだって言うのによ……。
「……まぁ、引き受けたしな」
「もう……私のことを冷たくあしらったと思ったら、私のことをそんなに考えてくれてたなんて! ツンデレなんだからぁっ♪」
「黙れ。次そんなふざけたことを言ったら斬るぞ」
「ごめんごめんごめん!」
本当にこいつ、一度ぶん殴ってやろうか。
面倒なやつだ。こんな奴に今後も修行をつけてやらないといけないと考えると頭痛がしてくるな。
「で、やるのかやらねぇのか!」
「うん、私も強くなりたいから頑張るよ!」
返事だけは無駄に良い奴だ。
すると、俺と入れ替わるようにして南雲姉は意気込んで滝の前に立つと確かに腕に霊力を纏わせ始めた。
だが、俺はこの後の展開が容易く予想出来た。霊力の膜が薄すぎるのだ。
南雲姉は勢いよく霊力でコーティングした腕を滝に叩き込んだものの、その腕はびっしょりと濡れてしまっていた。
「お前は確かに霊力操作は悪くないんだが、力が分散してしまって効力が弱くなってしまっている。分散しないように頑張れ」
「うん、分かった! 絶対に強くなるために、私は頑張る!」
それに比べてこいつは霊力操作はそこそこできていると考えていいだろう。今まで何度か戦いを見てきたが、その中で自然に霊力を使って体を強化しているように見えた。
それを自分の意思で使えるようになったら、こいつは化けるぞ。
再び南雲姉は霊力を腕に纏わせ始めたのだが、さっきとはまるで違う雰囲気を漂わせていることに気がついた。
これならもしかして――
そこで南雲姉は腕を滝に叩き込んだ。
その直後、南雲姉の顔がパァァっと明るくなったものの、直ぐにその表情は曇ってしまった。
「やっぱりすぐは無理か……」
いや、一瞬だが、水を弾くことに成功していた。
その事に俺は目を見開いて驚く。まさか、二回目でここまでできるとは思ってもいなかったからだ。
やはりこいつ、才能があるようだ。俺たちよりもずっと。
「……南雲 鈴音、か」
覚えておくことにしよう。
はい!第147話終了
今回もライト視点でした。
ライトからはこう映っていたんですね。
そしてライトも鈴音のことを認めた様子。これからどうなって行くのか。
それでは!
さようなら
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