それでは前回のあらすじ
ライト、紗綾が同時に霊力斬を放ち、衝撃波によって相殺しようとする神楽を結界で拘束する霊夢。
この三人のコンビネーションによって神楽に攻撃が当たるかと思ったが、神楽が「爆発しろ!」と言った瞬間、霊力斬が大爆発。
遠くにいた真たちは無事だったが、その爆発に至近距離で巻き込まれた霊夢、ライト、紗綾の姿が消え、霊力もなくなった。その代わりに三人が元居た位置に血だまりができていた。
誰もが三人の死を考えたが、真は諦めずに神楽に突っ込んでいくものの、神楽の猛攻、そして地面が剣山に変化したことによって真は串刺しにされてしまい、意識を飛ばしてしまう。
果たして神楽に勝つ方法はあるのだろうか?
そしてこの大ピンチをどう切り抜けるのか?
それではどうぞ!
side三人称
「やだ…………やだよ…………真!!」
「ちょ、ちょっとまて!」
こいしは真が串刺しにされてしまったのを見て心配して駆け寄ろうとしたので、正邪はそれを羽交い締めにして必死に止めた。
今真に近づくのは非常に危険だ。
なぜなら、真が倒れた場所は神楽のすぐ目の前なので、真に駆け寄るということは一人で神楽に突っ込むのと同じなのだ。
つまり、自殺行為である。
「落ち着け」
「で、でも真が!」
「だから、落ち着けって! 今は真がやられたことを悲しんでいる場合じゃない。それに、お前は私よりも付き合い長いからあれくらいで死ぬわけないってこと、わかってるだろ?」
正邪が真と行動を共にしていた期間はこいしと比べれば非常に短いものだったが、その短い期間でも真を信頼していた。
「お前が死んだら悲しむのはあいつだ。あいつのためにもいま、この戦いでは生き残らなければいけないんだよ」
「っ! そうだね」
正邪のその言葉にこいしははっとなった表情をしたあと、冷静さを取り戻した。
こいしは正邪の言葉によって我を取り戻したのか、それとも
「なんて強さなの……っ!」
霊夢、ライト、紗綾、そして真がやられてしまったという光景を見て紫は無意識に小さくつぶやいた。
神楽は今、手を叩くでもなく音を立てるわけでもなく周囲の環境へ影響を及ぼして四人に攻撃して見せた。つまりは神楽の攻撃のトリガーは物音だけではないということになる。
そして神楽の発言から導き出した紫の答えとは––
「あいつ、声にも邪の力を載せることができるのね。差し詰め言霊って言ったところかしら」
そう、声だ。声も一応は音であるため、音に邪の力を載せて攻撃するということは何も変わっちゃいない。だが、みんな無意識のうちに物音ばかりに気を取られていて声はノーマークだった。
なぜなら、神楽は今までにも何度も言葉を発していた。だが、その言葉には一回たりとも邪の力を載せたことはなかったのだ。だから無意識に声には邪の力を載せることはできないと思い込んでしまって不意を突かれてしまった。
しかし、神楽の声は衝撃波を生み出すわけじゃなく、周囲の環境に影響を及ぼすというものだった。一回目はライトと紗綾の二人の霊力斬を爆発させて見せた。二回目は周囲を火の海に、三回目は地面を剣山に変化させた。
つまり、神楽の声の力は衝撃波の様に直接攻撃することはできないけど、環境を変化させてあいてを追い詰めることができるというものだ。
「しかし、それが分かったからって何ができるのよ……霊夢が居なくなった今、あいつの行動を抑制することができる人物はこの場にはいない。だからまた衝撃波が飛んでくるのは必至。そして言霊まで使える。ははっ、詰みじゃないの……」
紫は必死に頭の中で戦況を巡らせる。だが、一向に神楽に勝てる未来が見えないのだ。
それは紫だけではなく、この場にいる全員が感じていることだった。
「君たちはみんなこの幻想郷の事を守ろうと戦っているようだけど、運命で決められた崩壊は避けることはできないんだよ。諦めな。そうしたら特別に痛みを与えずに殺してあげるよ」
「そ、そんなの絶対に認めない」
「ん?」
誰もが俯くことしかできないこの状況で言葉を発したのは正邪だった。
正邪は肩を震わせて神楽をにらみつけている。そんな正邪の様子にみんな驚いて正邪に注目が集まる。
正邪も気が付いている。どう考えても勝機が薄いことなんてとっくにわかっていた。だが、そんな状況でも正邪は神楽に指を突き付けて堂々と言い放った。
「へへ、残念ながら私は諦めが悪いんだよ。諦める? 冗談じゃない。そんな運命なんて認めない。神がなんだ。私は天邪鬼なもんでねぇ……諦めろと言われると抗いたくなる質なんだ! そしてそれは私だけじゃない。この幻想郷は諦めの悪いやつらの集まりだ。幻想郷の力を舐めないで貰おうか!」
正邪の言葉にみんな一斉に頷いて再度戦闘態勢に入る。
そう、正邪の言葉の通り、この幻想郷には諦めの悪いやつらが集まっている。そんな奴らがこの程度のピンチで諦めるというのは絶対にありえないことだ。
その光景を見て神楽はため息をついた。こんな状況下でも諦めないという無謀な連中に呆れてしまったのだ。
「はぁ……大変面白いものを見せてもらったからお礼に楽に殺してあげようかと思ったが、やめだやめ。惨殺してやるよ」
パチーン! と神楽は勢いよく手を叩き、周囲に衝撃波を放った。
この一撃は真が全体力を使ってやっと上書きすることに成功した衝撃波と同等、いやそれ以上かもしれない威力だ。これに直撃してしまえばひとたまりもない。
だが、これに直撃する者は誰一人としていなかった。
衝撃波が放たれた直後、全員の足元にスキマが出現し、その中に全員落下したことによって回避した。
「スキマを回避に使うとは……これはお前か、妖怪の賢者」
「あら、私の事を知っているのね。そうよ、私のスキマよ。あっちの子たちはさっきので体力を使い果たしているでしょうし、ここからは私たちの仕事よ」
その紫の言葉に神楽は再度呆れたようにため息をついた。
神楽はあまり戦いに快楽を見出すような性格ではない。壊せるものはすぐに壊せた方が楽だというのが彼の考え方なわけで、彼にとって一番面倒な相手は絶対に諦めずに闘志を削ぐことができない相手である。
今までも同じようなやり方で相手の闘志を削ぎ、すぐに相手を始末するという戦い方をしていたため、この幻想郷の面々は神楽にとって過去一番といっても差し支えないくらいには面倒な相手だった。
「っ!」
その瞬間、背後から蹴りが放たれ、神楽はその蹴りに反応することが出来なくて蹴り飛ばされて壁に激突。そんな神楽に対して追い打ちをかけるように大量の弾幕が襲い掛かった。
さすがにこの攻撃には神楽も仮面の奥で目を見開いて驚愕した。
この感覚は初めてだった。彼にとって不意打ちをかけられて一切反応できなかったのは初めてだった。
その不意打ちをかけた少女は黒色の帽子をかぶった銀髪で胸元に閉じた目がある少女、古明地こいしだった。
神楽は今まで幾度となく戦ってきた。だが、神楽が戦ってきた相手は特殊能力というものが無い敵がほとんどで、能力持ちの相手と戦った経験があまりないのだ。
つまり、この幻想郷はほとんどの人物が神楽の弱点となりえる存在だ。
「表象《弾幕パラノイア》!」
「失せろ!」
しかし、神楽も伊達に長いこと戦ってきてはいなく、すぐに我に返って言霊を使用することによって弾幕を消滅させた。
「やっぱり飛び道具は効かないんだね」
「俺の言霊は意思を持つもの以外なら効くからな」
なぜこいしが背後を取ることができたのかというと、紫が咄嗟の機転でこいし一人だけを神楽の背後に出し、瞬時にこいしが状況を判断、無意識を操る程度の能力を使用し、気配を殺して神楽の背後から接近して攻撃した。
昔のこいしだったらおそらく無意識を操る程度の能力を使用したところで、神楽に気が付かれておしまいだっただろう。だが、こいしも強くなっている。能力も進化し、より気配を殺すことができるようになったため、神楽ですら全く気が付くことができないほどに気配を殺すことができるようになった。
「それにしても、これが能力者たちか……なるほどなるほど、確かに今まで侵略してきた世界の中で最難関なだけある。だが、面倒だな」
その瞬間、神楽の目の前にスキマがいくつも出現し、その中から紫、幽々子、正邪、永琳の四人が飛び出してきた。そしてその四人は同時に神楽へと殴りかかる。
さすがに今から衝撃波を飛ばす暇はないので、神楽は身をかがめて回避するとすでに下へと潜り込んでいたこいしが神楽のあごにアッパーを決めた。
「ぐっ、お前たち、弾幕でしか戦えないわけじゃねぇのか」
「そうね。基本的に私たちはお互いの戦闘能力を平等にするために霊力、妖力、魔力を球状にして放つ弾幕を主に使用して戦っているけど、私たちがいつ肉弾戦はできないといったかしら」
「肉弾戦だったらあなたの言霊も効かないものね」
「肉弾戦で簡単に私たちと拳をぶつけて衝撃波を出せると思わないことだね。私があんたの平衡感覚を狂わせる!」
「そして傷ついたらその場で私の作った薬で回復してもらうわ」
「いわゆるゾンビアタック。あなたに隙は与えないよ!」
次々と仕掛けられる攻撃にさすがに神楽も苦悶の表情を浮かべた。
やはり能力が神楽にとっては一番厄介なことであったし、種族的に妖怪なもので、回復能力が人間とはまるで違う。そこに永琳の薬も相まって尋常じゃない回復能力になっている。
それに幽々子の能力も完全に効かないわけじゃない。彼女の能力を食らうと目の前がフラッシュして一瞬だけだが、隙が生まれる。
そして神楽が攻撃しようとすると間に合えば紫のスキマで瞬間移動され、直撃しない。
さらに、こいしは常に無意識状態で戦っているため、どう動くのか長年の経験がある神楽からしても読むことができない。
神楽にとって最悪の条件がそろっていた。
最強は神楽にとってはそんなに倒すのは苦ではない。だが、神楽にとって最強よりもこういうチームワークとわけわからん力が合わさった戦い方をする幻想郷の面々の方が強く感じた。
「これが最高難易度、幻想郷か……」
面倒くさそうな表情をしながら殴られ続ける神楽。
その様子はあまりダメージが入っていないかのようだった。しかし、手応え的にはしっかりとダメージが通っている感覚がある。
このメンバーの中で一番頭が回る紫はそのことを不思議に思う。
そして気が付いた。
神楽が言っていた邪の力、それは果たして衝撃波を出したり言霊を使ったりすることしかできないものなのだろうかと。もしかしてほかにも力はあるんじゃないかと、そう考えた直後、突然正邪がその場に倒れた。
「せ、正邪!」
その後、続けてこいし、幽々子、永琳とその場に倒れてしまった。
「邪の力は衝撃波を出したり言霊を使うためにあるものじゃないんだよね。これは俺が勝手にこう使っているだけ。本来、邪の力は相手の力を奪ったり、衰弱させたりっていうマイナス方向に働かせる力なんだよね。至近距離に近づいてくれたらそれだけ力を奪いやすいっていうもんだよ。それにクレアと同じように身体能力の強化なんかもできる」
そのことを聞いた瞬間、紫は自分のせいで、自分が采配を間違えたせいでこの状況が生まれてしまったと、そう考えてショックで膝から崩れ落ちてしまった。
「さようなら幻想郷。お前たちが力を隠し持っているように、俺も隠し持っている可能性を考えなかったお前らが悪いんだ」
そういった神楽は徐に手のひらを上に掲げると、どんどんと周囲からまがまがしいオーラが集まり始め、その手のひらの上に球状に集まり始めた。
ばちばちと稲妻が走っており、周囲を漂っているオーラのみならずその球そのものがまがまがしい力を帯びていて紫のみならず、その場にいた全員の意識がどんどんと刈り取られていくような感じがした。
神であるシャロと彼方ですら、このまがまがしく強いオーラの前に意識を刈り取られようとしていた。
このままでは全滅してしまう。
紫は決死の覚悟で神楽を自分の空間、スキマの中へ引きずり込もうと神楽へと手のひらを伸ばした。だが、その手のひらはスキマを開く前に誰かにそっと優しく掴まれ、その行為を止められた。
子供のような小さい手、だけど女の子のような柔いものではなく、間違いなく男の弾力のある手だった。
紫は一瞬の間にこの場に男の子なんていただろうかと思考を巡らすものの、心当たりはなく、手が伸びてきている方を見てみると、そこにはスキマが開いており、その中から男の子の手が伸びてきていた。
「落ち着け」
「っ! その声は」
男の子のような声だが、落ち着いた威厳のある声に紫は驚愕した。なにせ、この人物は最初にもう手助けなんかしないと言っていた人物だったからだ。
その人物が目の前に現れたら誰だって驚愕するだろう。何のために来たのだろうと紫は必死に考えるが、どうして現れたのかが見当もつかなかった。
「神楽もさ、そんな危険なものは仕舞ってくれないかな。俺の
「っ!」
スキマの中から出て来た手が紫の手を離してぎゅっと握りしめたその瞬間、神楽の手のひらにあったプラズマのようなまがまがしい球体が一瞬にして消えてしまった。
あれほど自分たちが威圧感に押しつぶされてしまいそうになっていたのは一体何だったんだと思ってしまうほどにあっさりとその球体は消え去った。その事実に紫は目を見開いて驚く。
そしてスキマの中から這い出るように一人の人物が出て来た。その人物は全能の神、シャドウだった。
はい!第192話終了です
裏話なんですけど、実は神楽は今回の異変の主犯の仲間になる前はありとあらゆる世界に対して侵略行為をしてきました。
そして侵略に成功した世界を自分のものとして好き勝手していたという実績があります。
その中で神楽はその世界の事について事前に情報を収集するということをしていたのですが、そこで得た情報から自分で難易度を設定していました。
侵略してきた世界の中にはいくつか能力を使用する世界もありましたが、そういった世界は総じてかなりの高難易度に設定していました。
それはなぜか、神楽は邪の力という邪の心を持った神が使う神力に似た力を扱うことができ、神楽は邪の力を使う人物たちの中では達人の域にまで達していると言われており、その力で圧倒することはできるのですが、神楽には能力が無いのです。
幻想郷の神たちは~~程度の神の能力を使用することができますが、神楽には能力が存在しないため、その能力に対抗するためには邪の力を駆使しなくてはいけません。なので、いつもよりもかなり大変な戦いを強いられてしまうので難易度を高く設定するのです。
そしてなんで幻想郷が最高難易度かというと能力の扱いに慣れている人がそこら中にいるからですね。そのため、今まで戦ってきた世界の能力者たちよりも苦戦するということが考えられました。それに妖怪などの強い種族まで混ざっているから神楽は最高難易度に設定したわけですね。
ここら辺の設定に関しては次回詳しくシャドウが解説してくれますので、お楽しみに。
それでは!
さようなら
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