それでは前回のあらすじ
鈴音の先読みの能力に苦戦する神楽。
鈴音の指示を受けて龍生も先読みし、攻撃を回避していく。
優勢で戦いが進み、このまま勝利すると思っていた。だがしかし、鈴音の能力の制限時間は十分ほどしかなく、それが切れてしまうとガス欠を起こしてしまって暫く動けなくなってしまうというものだった。
そのタイミングを狙って神楽は鈴音に攻撃を仕掛ける。だけど、神楽が鈴音を殺すことはできなかった。
なんと、消滅したと思われていたライト、紗綾、霊夢の三人が現れ、神楽の攻撃を阻止したのだ。
神楽との戦いも終盤戦へと突入!
果たして勝つのは霊夢達か、それとも神楽か。
それではどうぞ!
side三人称
ライト、紗綾、霊夢の三人が一点が欠けた四角形のポジションで神楽のことを取り囲み、それを見た龍生が状況を察して自分が最後の一点の場所に立った。
神楽は三人が生きていた事に動揺しているが、それは神楽だけではない。この場にいるシャドウと鈴音以外の全員が三人の生存に驚愕していた。
「お前ら、なぜ今更出てきた」
「タイミングを見計らっていたのよ。あんたが油断して、一番ダメージを与えられそうなタイミングを狙っていたのよ」
「へっ、それが正義の博麗の巫女様がやることかよ」
「最終的に勝てばいいのよ、勝てば」
神楽がニヤニヤと口元を緩めながら聞くと、霊夢はゲスの効いた笑みを浮かべて答えた。確かにあれは正義の博麗の巫女がしていいような表情ではないものだ。
霊夢と神楽の間で火花がバチバチと散っていた。
そして霊夢がお札を構えると神楽も目付きを変え、背中から真っ黒な触手を伸ばして臨戦態勢に入る。それはライト、鈴音、龍生も同じだ。
状況だけを見たら四人で囲んでいるのだから数的に圧倒的有利かと思われる。だが、相手はあの神楽だ。たとえ四人だとしても少しでも油断したらすぐに足元を掬われてしまうことだろう。
だけど、この場に神楽を相手にして油断しているものは誰一人としていない。
お互いに臨戦態勢に入ったまま、しばらくの間膠着状態が続く。
辺りはシーンと静まり返り、静寂が五人を包み込んだ。
しかし、突如としてその静寂を破ったのは神楽の触手が風を切る音だった。
風を切るくらいの速度で神楽の触手が四人目掛けて放たれ、龍生は空喰を使用して防御し、霊夢は受け流す。紗綾とライトの二人は触手を切り伏せた。
「行くぞ炎々」
「炎々ってなによ!」
ライトのあだ名に文句を言いながらも紗綾はライトと共に走り出し、二人同時にクレアを使用した。そして龍生もそれに合わせるようにクレアを使用して二人と同時に走り出す。
霊夢だけは動かずにその戦況を見守っていた。
三人を近づけないように放たれる触手を三人は回避したり、迎撃しながら神楽へと接近していくが、近づけば近づくほどその触手の威力は高くなるし、伸ばす距離が短くなればその分出せる触手の本数が増えるようで、三人が近づけば近づくほど触手の本数が増えて苦戦して近づけなくなっていく。
「《炎陣》」
紗綾は炎を出しながら舞うように触手を斬ってどんどんと神楽へと接近していく。その攻撃の威力は炎も加わって先ほどとは段違いになっているため、なんと紗綾は一番最初に神楽の元へとたどり着いた。
「《極炎陣》」
ついに神楽を間合いに捕らえた紗綾は大きく刀を振りかぶって炎の軌道を描きながら刀を神楽へと振る。だが、神楽はそんなものは気にしないとばかりに後ろ手で紗綾の頬をビンタした。
その瞬間、パチンという音と共に衝撃波が放たれ、紗綾はものすごい勢いでぶっ飛ばされて壁に激突、壁にクレーターができるほどの衝撃で紗綾の骨が何本か折れてしまった。
これはビンタの音に邪の力を込めたものだ。それによって紗綾はぶっ飛ばされてしまったが、逆に言えば音に邪の力を使った分、触手の量が減ったということになる。
その隙を突いてライトが神楽を間合いに入れて刀を構える。
ライトの刀にライトの霊力の色が浸透していく。ライトがクレア装を刀に使用したのだ。そしてそのライトの刀の中の霊力が渦を巻いてどんどんと強大化していく。
ライトの眼が一瞬キランと光った、神楽はそう感じた。それほどまでに鋭い目つきで神楽の事を見据えていた。一挙手一投足を見逃さないと言わんばかりにまるで睨みつけているかのような視線だった。
神楽は咄嗟に腕に邪の力を纏わせて腕をクロスし、防御の体制に入る。
だけど、ライトはそんなの関係ないとばかりに刀を神楽へと振るった。
「吹き飛べ! 《風爆一閃》」
ライトは神楽の肉体を斬った。
やはりというか神楽の肉体は邪の力で強化され、硬くなっていたものの突如としてその場に竜巻が巻き起こり、神楽は竜巻にライトと共に飲み込まれて吹き飛んでいく。
この竜巻には霊力が含まれていた。つまりはこの竜巻はライトが誘発させたものだということだ。
「真より俺の方が霊力の扱いはうまいんでな、あいつの霊縛波を参考にさせてもらった。あれをうまく改変すれば大きな渦となり、風を巻き込んで竜巻を発生させる!」
「なるほどな。だが、俺を竜巻ごときで殺せると思ったか? むしろお前の方が竜巻に殺されるだろ」
「そうか?」
「どういうことだ」
するとライトはグッと手を握った。その瞬間、竜巻から大量の斬撃が放たれて神楽へと襲い掛かっていき始めた。
突然の事に神楽はその斬撃を防ぐことができずに次々と襲い掛かってくる斬撃に肉体を斬られていく。
その直後、ライトは竜巻の中から飛び出し、受け身を取って床に着地して床に刀を突き刺した。
それを合図として竜巻はどんどんと細くなっていき、その竜巻の風は全て斬撃となっているため、神楽の体を大量の斬撃で切り裂いていく。
「竜巻・斬《風爆一閃》。真の奴が渦を巻いた霊力のエネルギーを利用してレーザーを放つならば、俺はその渦を利用して相手を吹っ飛ばす、切り刻む」
「く、凄まじい攻撃だが、一撃一撃が弱い。この程度のダメージなら邪の力ですぐに回復するぞ。ほら、この通り」
そういうと神楽は邪の力を増幅させ、それを傷口に集める事によって傷を一瞬にして回復させてしまった。
よく見てみるともう時間が経過していてさっきまでにつけられていた傷が完全に回復してしまっていた。
シャロと彼方はその光景を見て絶望していた。あの程度の攻撃じゃ倒すことは絶対にできないということを思い知らされたからだ。しかし、実際に今神楽と対峙している四人は全く絶望の表情など浮かべていなかった。
「はっはっは、お前らじゃ俺を倒すことはできないんだよ!」
「そうか、じゃあ、とりあえずぶった切ってみるか。博麗!」
「もうできてるわよ」
「っ!」
神楽は驚愕の表情を浮かべ、そして表情に焦りを見せた。
神楽ほどの人物が焦るほどの出来事、それもそのはず。霊夢の使用するさっき使ったのよりも強力な結界が神楽を拘束していたからだ。
だけど、神楽は音にだけじゃない。声にも邪の力を載せることができる。
「すぅぅぅぅっ! ばく…………っ!」
息を肺いっぱいに吸い込んで言霊を発動させるのかと思いきや、神楽の声は周囲に届くことはなかった。そのため、神楽の言霊は不発に終わってしまった。
この状況は四人とシャドウ以外は誰も理解できていなかった。
この自然界で唯一声や音が全く届かない場所というものが存在している。
それは真空空間だ。つまり、全く空気がない空間だと音が全く届かなくなってしまう。
そして今何が起こったのかというと––
「俺の能力は穴をあけるんだぞ? 空気中に穴を開けて真空を作り出すのはお手の物だ。つまり、俺の能力はお前へのメタってことだな。まぁ、お前には俺の声は届いてないだろうけどな」
龍生は神楽の顔の周囲の空気に穴を開け、擬似的に真空空間を作り出したのだ。
それによって今の龍生の説明は全く神楽には届いていない。
だけど、この能力は音に邪の力を載せることができる神楽に対してはかなり有効な力だ。それだけで一つの攻撃手段を完全に無効化することができる。
だけど、この力は鈴音の《
「このクズどもが!」
「私の仕事は妖怪退治、この幻想郷の平和を守らなければいけないの。幻想郷の秩序を乱す奴は神であろうとも許さない」
「っ!」
気がつけば神楽の周囲には無数のお札が宙を舞っていた。それはまるで大量の蝶が夜空をキラキラと舞っているようなこうけいであった。
これにはさすがの神楽も対処不可能だ。
確かに声や音に邪の力を載せれば弾き飛ばすことは可能だが、そんなことを龍生が許すはずもない。
そして拘束されている神楽にはもうどうしようもない状況だった。
「ライト、燐火!」
「あぁっ!」
「わかってるよ!」
二人は同時にクレア装を発動し、刀に霊力を集めていく。
ライトの刀は緑色に、そして紗綾の刀は赤色に染まっていき、ライトの刀の周囲には風が舞い、紗綾の刀は燃え盛り始める。二人の霊力、そして力のそのすべてが込められた霊力だ。
そして二人は神楽を間に挟むように立つと同時に神楽へ向かって地面が抉れるほどの力で駆け出した。この瞬間だけは電光石火をも超えているかのような速度が出て二人同時に刀を構えて残像が生まれるほどの速度で刀を振るった。
しかし、その二人が刀を直撃させたのは神楽ではなかった。神楽の少し上、その位置でライトと紗綾はお互いの刀を叩きつけ合った。
「ぐあああああああっ! 竜巻・斬」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ! 炎陣」
『《
二人がお互いの刀を受け流し空中でクロスしてすれ違った直後、その二人がぶつかり合った場所を中心として暴風が凝縮された風の球が出現し、それがどんどんと巨大化し始めた。
その球の暴風は周囲の物を次々と破壊するような威力だった。
霊夢はそのとてつもない暴風に吹っ飛ばされそうになるのを必死にこらえながら一言ぼそりとつぶやいた。
「これまたとてつもないものがでてきたわね」
さすがの霊夢もこれは予想していなかった。
当然だ、これはライトと紗綾の即興技なのだから。特訓なんかも一回もしたことが無い。だけど、二人はできると確信したため、行動に起こしたのだ。
「さて、やりますか! 霊符《無双封印》」
「ぐあああああ!」
霊夢が周囲のお札を神楽へと一度に飛ばし、それを神楽は一つたりとも避けることが敵わず、直撃してしまう。
そしてダメージによって神楽が怯んだ直後、頭上にあった風の球が変形し、人型となった。いや、角が生えて般若のような表情なのだから完全に人型と呼んでもいいのかわからないが、風が渦を巻いて出来上がった風の魔人とも呼ぶべき姿へと変貌を遂げた。
その風の魔人は神楽の体の何倍もの大きさがあるであろう大剣が構え、神楽へとその大剣を振り下ろした。
さすがに神楽もこれはまずいと判断し、背中に背負っていて今までずっと使ってこなかった大剣を鞘ごと手に取って邪の力で強化して風の魔人の剣を受け止めようとした。
いかし、風の魔人の剣はただの剣ではない。あれは一種の竜巻だ。
体をぶっ飛ばしたり引き寄せたりするような暴風が神楽を襲い、神楽はいともたやすくその竜巻の中に飲み込まれて体を切り刻まれ始めた。
ここで初めて神楽は死を間近に感じた。
全身を襲う激痛に叫びそうになるが、それは彼のプライドが許さなかったため、唇をグッと噛んで叫び声を我慢する。
しかし、この攻撃は神楽が邪の力で再生するよりも早くダメージを与えてくるため、回復する暇がない。
そこで神楽はある名案を思いついた。耐え切れないのならばこの技をどうにかして対処するほかない。それと同時に周囲にいるやつらへとダメージを与えることができる方法。
(この中にいる間はお前も俺の周囲の空気を取っ払うことはできねぇよな。そんなことをしたら俺にダメージを与えられなくなるもんな!)
下種な顔を浮かべた神楽は肺いっぱいに空気を吸い込むとその場で叫んだ。
「竜巻よ、下にいる有象無象共を殺せ!」
声に今使える全邪の力を込めて叫んだ。
言霊は意識があり、身に着けていないものだったらば全て対象となる。弾幕も対象だ。
つまりは霊力で作り出されたこの風の魔人も対象と言うわけだ。
風の魔人は突然神楽への攻撃をやめ、神楽を竜巻の外へと放り出した。
そして霊夢たちへと向き直って剣を構えた。
「そうだ、殺せ、こいつらを皆殺しにしろ!」
この風の魔人は自分にすらも死を感じさせたほどの力を持っている。そしてそんな攻撃を自分よりも弱いこいつらが耐えられるはずがないと考えて勝利を確信していた。
完全に慢心していた。
そんな神楽の様子にシャドウは呆れかえって言葉も出なかった。
仮にも神楽は戦いのプロだから昔、慢心して敗北した経験から学んで成長しているかと思っていた。確かに技のレベルは上がっていたし、身体能力も上がっていた。
だけど、根本的な性格は何も変わっていなかったようだ。
(浅はかだな)
「死ねぇい––え?」
神楽は素っ頓狂な声を出してしまった。何が起こったのかが全くわからなかったためだ。
それもそのはず、もう勝利を確信していたというのに風の魔人の胴体にどでかい穴が開き、そして自分の左腕が木っ端みじんに吹き飛んでしまったからだ。
その穴から先をのぞき込むとそこには拳を思いっきり振り下ろした後と思われる龍生が立っていた。
「
はい!第202話終了
ついに形勢逆転! 次々に神楽を追い詰めていきます。
やっとかっていう感じですよね。結構神楽戦は長いことやってきてますからね。
しかし、まだ終わりません。
まだ終わらないということはもう一波乱あるということですね。
いい加減にしろと言う気持ちも分かりますが、あともうすこしおつきあいください。
あと、主人公が長らく出てきていないのはすみません。
おそらくこの神楽戦中には真が起きることはありません。
実はこんなに激しく険しい戦いをしているにもかかわらずこれが最終戦ではないんですよね。
ちなみに安心してください。実力的には今回の敵で一番強いのが後にも先にも神楽ですから。
それでは!
さようなら
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海藤真
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刻雨龍生
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南雲音恩
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南雲鈴音