それでは前回のあらすじ
クレア神の力を使い、必死に再臨した神楽と戦いを繰り広げるシャドウ。
しかし、再臨の力は凄まじく、クレア神を発動したシャドウでも倒れてしまう。
そして心の弱さをさらけ出し、ルミアに助けを求めると、彼方が代わりにシャドウに言葉をかける。
そんな彼方のやさしさに触れ、シャドウはもう一度立ち上がることができた。
そしてついにシャドウは己の弱さ、相手を傷つけたくないという気持ちを今だけは捨て去り、本気で神楽との戦いに臨むのだった。
それではどうぞ!
side三人称
(シャドウのやつ、さっきまでとはまるで雰囲気が違う。あいつとは10メートル位離れているが、それでもあいつの神力がここまで届き、ピリピリと肌がざわつく。どう言うことだ? いや、だが、今の俺は強くなった。あいつ程度、簡単に捻り潰してやる)
神楽はニヤッと口角をあげると、周囲の空間から触手を出現させ、シャドウへ向かって飛ばした。
それはさっきまでよりも大量で、それがシャドウへ向かっている最中に絡み合い、超巨大な拳へと変化した。
これは神楽の触手を使ったパンチだった。
さっきまでも神楽は幾度となく触手を絡ませていろいろな攻撃をしていた。
だが、今回のは少し違った。
なんと、真っ黒ではなく若干赤みがかっているのだ。
シャドウの技は真っ黒なものを消滅させることができると言うものなので、これでは消滅させる事はできない。
神楽は再臨し、強くなったのにも関わらず、今この瞬間に技を進化させ、さらに強くなったのだ。
この技に直撃すればシャドウも一溜まりもない。
「死ねぇぇ、シャドウ!」
「神楽、こんな技を知ってるか?」
「あ?」
するとシャドウは巨大な拳に手のひらを向けると、手のひらからオーラを出した。
その瞬間、シャドウへと飛んできていたはずの拳がそのまま空中で止まってしまった。
「ど、どう言うことだ!?」
流石に困惑を隠しきれない神楽。
「昔、俺が神になりたてでまだ神としての仕事に慣れていなかった時に教えてくれた先輩の神が居たんだ。そしてなんとその神は相手の技を利用し、逆に相手に攻撃するって言う戦い方を得意として居た。真が使って居た上書きはその下位互換って言う感じだ。そして俺はその神に技を教えてもらったんだ。あの神は強かったぞ。今は何をしているかはわからないけど、あの神なら生きていると信じている」
「何が言いたい––まさか!」
「その人はこの技のことをこう言ってたね。反射《
「っぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ––ぐっ!」
シャドウが握り拳を作り、目の前の空間を殴ると、なんとさっきまでシャドウへ向かって飛んできていた拳が反対方向を向き、神楽へと飛んで行ったのだ。
神楽は突然のことに不完全な状態でしか防御ができず、どんどんと己が作り出した拳に押されていく。
だが、再臨した神楽がそう簡単にやられるはずもなく、その拳は両手でかき消してしまった。
「どうだ? 自分の技をはじき返される気分は」
「最悪だ」
「そうだろうな」
今の一撃ごときで神楽が消耗するはずもないが、シャドウにはじき返されたという屈辱によってかなりの精神的ダメージを受けていた。
この構図はまるで昔を彷彿とさせるものだった。油断した神楽に対してシャドウが反撃の一撃を加える。
その昔の構図を思い出すからこそ神楽の怒りのボルテージはどんどんと上がっていく。
昔の弱く、シャドウに負けてしまったあの屈辱を思い出し、神楽の顔こそ仮面で見えないものの、周囲にあふれ出している邪の力や神力を伝って強い怒りをシャドウたちは感じていた。
「き、つい」
「ぐぅ……っ」
「はぁ……はぁ……」
「くっ」
(なんて力なの? 凄まじい力に充てられてちょっと眩暈すらしてくるわよ。霊夢や神力を持っている二人は大丈夫みたいだけど、紗綾、龍生、鈴音、ライトの三人も苦しそう)
紗綾は胸を抑えてうずくまり、龍生は両手を地面について声を漏らす。鈴音は地面に倒れこんで藻掻き苦しみ、かなりの精神力があるライトですら胸を抑えて膝をついてしまっていた。
それほどまでに人間にとって、地上の者にとって邪の力というものが有害なのだ。
この状況では何かの攻撃が飛んできたとしても五人はその場から動くこともままならないだろう。
(くそ、まだか!)
シャドウはかなり焦っていた。
このまま戦いが長引けば邪の力の浴び過ぎで五人の命が危ない。この周囲に漂っている邪の力はシャドウの力でさえ防ぐことができない。
この状況はシャドウにとって最悪の事態と言っても過言ではなかった。
その時、側に落ちていた一振りの刀が目についた。
(妖刀【神成り】、あいつは確か紬とかいう付喪神が刀化した姿だったよな。ならば、もしかすると)
シャドウが徐に落ちていた刀を手に取って、手を通じて刀に神力を送り込むと、なんと刀身が光始めた。
その光は暖かく、周囲に心地のいい神力を撒いた––だけだった。
その反応にシャドウはより一層焦ってしまう。
(こんなんじゃダメなんだよ。やっぱり、あいつじゃなければダメなのか? それとも……まさか!)
シャドウは驚きの表情を浮かべると咄嗟に地面に倒れている真へと顔を向けた。
真は相変わらず目を覚ます気配は一向にない。だが、さすがは妖怪の血が入っているということだけはあり、傷は回復してきていはいるが、さっきからずっと眠りっぱなしだ。
だけど、シャドウは真の異変に気が付いていた。
(もしこの中に紬が居ないのだとしたら今いる場所は一か所しか考えられない)
「どうした? 俺の力に恐れをなして逃げる算段でも考えていたのか? 安心しろ。絶対にお前だけは逃がさないからな」
「そうだな。怖い。怖いさ」
「はっはっは、この弱虫が、俺に逆らうからこうなるんだ!」
「––俺の力が、な!」
神楽が殴りかかろうとしたその瞬間、シャドウは最小限の動きで神楽の攻撃を回避して腹に回し蹴りを加えた。
そしてそのまま蹴りの威力によって壁に激突してしまう神楽。神楽が再臨して初めて体から血を流した。
シャドウはゆっくりとゆっくりと神楽へと近づいていくが、神楽がシャドウを見る目はもう弱者として見下している目ではなかった。
どちらかと言えば化け物を見るような目をしていた。
だが、紫たちにとってはどちらも化け物で、化け物同士の戦いにしか見えなくなっていた。
「だぁっ!」
次は大量の触手を玉上にすることはなくそのままシャドウへと飛ばしてきた。
さっき使ったシャドウのカウンターは相手が触れているものには効果が無い。つまり、完全なる飛び道具でなければならないのだ。
さっきの拳は神楽の支配から逃れていたため、カウンターが使えたが、今回のはそうはいかない。
だけど、シャドウの得意技は闇を消去したりカウンターすることだけではない。シャドウが最強の神と呼ばれる理由はもっと別のところにある。
今まではリミッターの様になっていて使えなかったが、リミッターが外れた今なら自由にこれを使うことができる。
シャドウが最強の神と呼ばれる所以、それが––
「ふんっ!」
「なっ!」
相手の技をまねることができるということだ。
別に相手の行動をまねる程度の能力とかいうことじゃない。能力じゃないけど、シャドウはそれができるのだ。それができるだけの身体能力、力を保持している、それが最強たる所以なのだ。
シャドウの背後から大量の触手が出現し、それが神楽の触手とぶつかり、押し合い始める。だが、この威力は互角だ。この攻撃ではお互いに倒すことはできない。
「俺の触手をまねている!? まさか、近くの影を操って俺の触手にぶつけて来たのか! だが、まねるだけでは俺の邪の力からあいつらを守り切ることはできないぞ。早く俺を倒したいんじゃないのか?」
「今の俺はお前の影だ。影は持ち主と全く同じ動きをする。だが、俺はただ相手と同じ行動をするだけではないぞ。相手の数段上のステップまで上り詰める、模範《ザ・シャドウ》」
その瞬間、シャドウの背後からさらに複数の触手が出現し、神楽へと向かっていった。
しかし、すでに神楽は全ての触手でシャドウの現存の触手と押し合っているため、残っている触手はなく、さらにはこれ以上触手を増やすほどの力は残っていなかった。
シャドウのこの大量の触手は神楽にとって絶望の一撃だった。
それを見た神楽は仕方がなく、横に飛んでシャドウの触手を回避した。だが、その行動は神楽にとってものすごい屈辱だった。
強くなった、シャドウよりも強くなったはずの自分が相手の攻撃を回避しなければいけないほど追い詰められたということなのだから。
その感情によってさらに神楽の中の怒りが膨れ上がっていく。
(ぐ、まずいわね。これ以上怒りの邪の力を受けたら妖怪の私ならまだしも人間である彼らは耐えられない)
(はやく、はやく神楽をどうにかしないと。くそ、まだなのか!)
まだ余裕が残っている紫とシャドウがこの怒りのパワーを感じて焦りを募らせていく。
他の二人よりも精神力が強いライトと紗綾の二人は何とか耐えられているが、龍生と鈴音は意識を失いかけていた。
その様子を見てシャドウはどんどんとイライラを募らせていく。
シャドウは戦いのプロだ。だからこのイライラが判断能力を低下させるということは知っていたが、この状況ではさすがのシャドウと言えども焦り、イライラせざるを得なかった。
(早くしないとっ!)
そしてシャドウは周囲の影を操ってさっき神楽がやって見せた巨大な拳を作り上げた。
これは今シャドウが作り出せる最大の拳だ、それを神楽に向かって飛ばす。
だけど、神楽だって弱いわけじゃなかった。神楽の身体能力なら能力を使わないといけない技以外は模倣することができるほどだということをシャドウは失念していた。
「それを、待っていた!」
「な、なに!?」
「反射《
神楽が手のひらを向けて握りこぶしを作ったその瞬間、シャドウの拳は反対方向を向き、シャドウへと飛んでいき始めた。
一瞬、神楽の思わぬ行動にぎょっとしてシャドウは反応が遅れてしまったが、すぐにシャドウはカウンターを使用して受け止めるが、このカウンターという技の特徴としてカウンターの回数を重ねるごとにカウンターに必要な力がどんどんと増えていくというものがあった。
そしてその上昇率と言うのが、直前のカウンターの時にどれほどの力でカウンターをしたかということで決まる。
今、神楽がカウンターをするのに使用した力は全力のものだった。そのため、これをカウンター返しすると神楽はシャドウへ返すことはできない。
だが、その前に、この威力が高すぎてシャドウは圧され始めた。
(お、おっも、あいつなんていう馬鹿力ではじき返してんだよくそっ。だけど、返せないほどじゃない。これを返せば神楽は返すことができない!)
リミッターを解除したシャドウの力は神楽以上にあった。押し返すのは容易ではなかったが、可能な範囲ではあったため、シャドウは拳をはじき返そうとした、その時だった。
「《豪王》!」
「え?」
本来だったらシャドウの能力だったら避けられない攻撃ではなかった。
目の前に迫ってくる無数の攻撃、だけどシャドウにとっては遅い攻撃でしかなく、避けるのは本来なら容易のはずだった。
だが、さっきからどんどんと募っていく焦りとイライラがシャドウの思考能力を鈍らせ、拳を押し返す方に集中してしまっていたため、シャドウは反応が遅れてしまった。
シャドウは本来だったら避けられるはずだった無数の攻撃の直撃を受けてしまったのだ。
「ぐ、かはっ」
そしてダメージによってシャドウは拳への集中が途切れてしまい、思わずカウンターを解除してしまったのだ。
カウンターを解除してしまったらどうなるのか、それは猿でもわかる簡単な事実だった。
シャドウへと向かう抵抗を無くしてしまったその攻撃はもちろんシャドウへと抵抗なく飛んでいく。
ここでも本来のシャドウだったらダメージを受けた程度で怯むこともなく、すぐに技を発動することができ、あの拳を受け止めてはじき返すことはできるはずだったのだが、シャドウは焦りとイライラによって判断能力が低下し、すぐに反応することができなかった。
そんな状況が重なってしまったらどうなるのか、誰にでもわかることだ。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
シャドウは拳に直撃してしまい、そのまま押されて地面へと叩き潰されてしまった。
その威力は凄まじく、シャドウの攻撃にカウンターの威力も上乗せされているため、この部屋の床を突き破って地面までも突き破ってこの浮島の下へと落ちて行ってしまった。
神楽以外の誰もがその光景に唖然としてしまって開いた口がふさがらなくなってしまっていた。
「く、くくく、よくやった」
直前にシャドウへ向けて無数の攻撃を放ったのは神楽ではない。全力でカウンターを放った神楽にはあれ以上の追撃をする力は残されてはいなかった。
じゃあ、誰がやった? そう考えれば自ずと答えは見えてくる。
そう、神楽以外の第三者。だけど、この場に現れたのはジーラではなかった。
その人物の姿を見て紫たちは全員驚愕したが、一番驚愕したのは紗綾だった。
「は、春斗!?」
そこには先ほど倒したはずだった鬼流が何事もなかったかのようにそこに居た。
はい!第207話終了
ついに神楽が鬼流のところに現れた伏線を回収しました。
あの後どうやって真たちの前に現れたのかと言うと、普通にスキマを使って移動したっていう感じですね。
そしてシャドウが奈落の底へ落ちて行ってしまいました。シャドウは無事なのでしょうか?
次回、神楽戦終結です!
それでは!
さようなら
好きな主人公枠キャラは?
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海藤真
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刻雨龍生
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南雲音恩
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南雲鈴音