無意識の恋 Second stage   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 鬼流がこの場に現れたことに困惑する一同。

 紗綾が鬼流へと声をかけるものの、なにも反応しない。

 その理由として神楽が感情や心と言った不必要なものを取り除いて完全な戦闘サイボーグに改造したと告げた。

 その事実に紗綾は激怒、怒りのパワーでついにクレア王を発動させた。

 そしてそのクレア王のパワーは真のクレア王を遥かに超えていた。

 そんな紗綾の前にオーバーヒートを発動させた鬼流が立ちふさがる。

 果たして勝つのは紗綾か、それとも鬼流なのか?

 全くの未知数の力を発動させた二人の戦いが、今始まる!



 それではどうぞ!


第209話 後悔

side三人称

 

 紗綾と鬼流はほぼ同時に地面を蹴り、急接近する。

 そして紗綾は炎とクレア王の力を纏わせた刀を構え、鬼流は霊力で強化した拳を構えた。

 その二つの攻撃はほぼ同時に繰り出され、お互いの力拮抗しているというのもあり、ぶつかり合った瞬間に周囲にとてつもない爆風にも似た衝撃波が放たれた。

 

 その衝撃波はとんでもない熱さとなっており、下手するとやけどを負ってしまいかねないほどの熱風となっていた。

 それもそのはず、紗綾は今、炎を操っており、鬼流は体から灼熱の蒸気を出しているのだ。この二人が出した衝撃波が熱くないわけがない。

 

「春斗、なんで、なんでよ! 目を覚ましなさいよ!」

「……」

 

 紗綾の涙ながらの声にも今の鬼流には一切響くことはない。

 ひたすらに紗綾へと攻撃を浴びせ続けるしかない戦闘サイボーグ。そんな彼に情なんてものは微塵もなかった。

 そんな鬼流の攻撃を紗綾は涙を流しながら永遠に刀で防ぎ続ける。さっきまでとは違い、鬼流の事情を何となく知った紗綾は鬼流へと自分から攻撃しに行く気にはなれなかった。

 だからひたすら攻撃を防ぎ続ける。自分の声が鬼流の心へ届くまで何度でも叫び続ける。

 

 そんな紗綾の姿を見て神楽は感情の起伏が少ないというのに「くかかかか」と楽しそうに笑い始めた。

 

「あいつ、もうそいつに言葉は通じないとわかっていながらも声をかけ続けている! 滑稽だ、実に滑稽だ。あれが、あれこそが馬鹿の一つ覚えと言うのだろう? 人間ども」

 

 神楽はもうすでに鬼流に戦いを任せ、上空で高みの見物を始めていた。

 そして大声で紗綾のことを笑い飛ばしている神楽に対しては誰もが怒りを覚えていた。だけど、ライトも龍生も鈴音も紫もさっきよりはよくなったものの、邪の力の影響でまだ思うように動けなくて攻撃できないことを悔しがっていると、突如神楽の背後に神楽を軽く飲み込んでしまえるほどに巨大な陰陽玉が出現した。

 

「っ!」

 

 その気配に神楽も気が付き咄嗟に後ろへと振り返り、手のひらを向けた。

 

「反射《攻撃返し(カウンター)》」

 

 それはさっきもシャドウがやられてしまったカウンターだった。

 相手の手から離れた攻撃を相手の方へと返すことができる技だ。だが、それは相手の手から離れた攻撃のみに適応されるという技なのだ。

 

「残念だったわね。その技は直撃するまでどこまでもあんたを追い続けるホーミング球よ」

「な、なに!?」

 

 神楽はカウンターを発動させたというのに、その陰陽玉は止まることはなく、どんどんと神楽へと迫っていった。

 このカウンターではじき返せると思っていた神楽はそれに反応することができずにその陰陽玉に直撃して地面へと叩きつけられた。

 陰陽玉が消え、神楽が見えると、確かに神楽の服装はボロボロになっていたが、どうやら体自体は邪の力で強化していたようで、思ったよりもダメージが入ってはいなかった。

 神楽のカウンターを破り、神楽にダメージを与えることに成功した、この事実はものすごく大きなものだった。

 

「だ、誰だ!」

「あんたねぇ、あの必死に訴えかけているあの表情を見ても何も思わないわけ? 思うわけないか、あれやった元凶ってあんただものね。思うような心があるんだったら端からあんなことはしないはずよ。何も思わず平気でああいうことをする、そしてあの姿を笑い飛ばす。いくら感情の起伏が少ないからと言ってあんなことをするなんて本当に邪神ね。いや、邪とは言え、あんたの事を神と呼ぶのはものすごく嫌。あんたはただのシャドウさんに恨みを抱いて現世に現れた怨霊ね」

「き、貴様、この俺を愚弄するか!」

 

 神楽が睨んだその先、陰陽玉が出現した場所に居たのは博麗の巫女、博麗霊夢だった。

 霊夢は巫女の力と能力の相乗効果によって邪の力の影響を全く受けていない。そのため、普通に動くことができるし、戦うことができる。

 そしてシャドウ以外で唯一神楽にこの場で対抗できる可能性がある人物だった。

 

「私はね、あんたみたいな怨霊や妖怪を退治するのが仕事なの。さっきは呆気に取られちゃったけどシャドウさんが下に落ちてしまった今、私がやるしかないものね。面倒だわ。なんであんたらみたいなのが定期的に湧いてくるのかしらね」

 

 霊夢はお祓い棒を構えながらじっと神楽の事を見据える。だが、その霊夢の額にはジワリと汗がにじんでいた。

 先ほどのシャドウと神楽の戦いを見ていたからだろう。霊夢の表情には緊張こそ見えるものの、決して神楽の力に恐れをなしてなどいなかった。

 むしろ、自分ならシャドウに勝てると自信ありげな表情にも見えるほどだった。

 

 どうして霊夢がそこまで自信を持てるのかと言うと、長年の経験によるものが大きかった。

 霊夢は真たちが幻想郷に来るずっと前から、幼少期の頃から親に稽古をつけてもらって妖怪退治をしていた。

 霊夢にはその中で培った実力と経験がある。その二つが霊夢の背中を押しているのだ。

 

「神が何よ、邪の力がなによ、再臨がなによ、そのすべてをねじ伏せて、あんたを地獄に送り届けてやるわ!」

「出来るもんならやってみろよ、博麗の巫女!」

「っ! 霊符《無双封印》」

「だらららららっ!」

 

 霊夢は周囲に大量の弾幕を出現させ、神楽に向けてホーミングさせたものの、神楽は今度は大量の触手を作り出し、その全ての弾幕に触手を当てて破壊してしまった。

 やはり攻撃の威力としては神楽の方が上のようで、神楽の触手の方はびくともしていない様子だった。

 霊夢の攻撃の威力はこの幻想郷の中でも特段高いわけではない。でも、それでもこの幻想郷で勝ち続けてきたのには理由がある。

 

「私の親友にね、弾幕はパワーだぜとかいうやつもいたわ。確かに威力も重要。だけどね、それ以上に戦いの上で重要なことがあるのよ」

「それは一体何なんだ? 一応聞いてやるよ」

「あら、優しいのね。やっぱり弾幕で一番重要なのは技なのよ」

「なるほどな。どれだけ威力があっても当たらなければ意味がない。馬鹿でもわかる単純なことだ。で、それがどうしたって!?」

「そう、技が大切なのよ?」

 

 神楽は正面から飛んでくる弾幕と霊夢の言葉に気を取られていて全く背後に気を配ることはしていなかった。

 そのため、神楽は背後から飛んでくる弾幕に気が付くことができなかった。それによって神楽は反応に遅れてしまい、防御する術を失ってしまった。

 

「そう、弾幕は技が大切。よく覚えておくことね。境界《二重弾幕結界》!」

「ぐああああああああ」

 

 神楽は背後から飛んできた弾幕に反応することができずにすべての球をもろに受けてしまってそのまま地面に落下してしまう。

 

「確かにあんたは強いんでしょうけど、慢心するようじゃその力をフルに使うことはできないでしょ?」

「おのれおのれおのれ! 鬼流! そいつはもういい! まずはそこの博麗の巫女を始末しろ!」

「……」

 

 鬼流はそんな神楽の命令を聞いた瞬間、紗綾に繰り出していた猛攻をピタッと止め、すぐに霊夢に向かって走り始めた。

 

「っ、ま、待って!」

 

 そんな鬼流を追って紗綾も走り始める。

 だが、紗綾のクレア王をもってしても鬼流に追いつくことはできず、どんどんと二人の距離が離れて行ってしまう。

 紗綾はどんどんと離れていく鬼流を見て涙がどんどん溢れていた。

 

(あぁ、どんどん離れていく。私の手からこぼれていく。また、こぼれていく。楓花も、春斗も、私の力じゃ誰一人として救うことはできなかった。ごめんね、楓花。私じゃ春斗の事を助けることはできなかったよ)

「春斗! あんたの人生はそれでよかったの!? 春斗、あんたは楓花を守るために強さが欲しかったんでしょ? それじゃ見境なく人の事を襲う兵器だよ!」

「……ふう、か」

「どうした、鬼流。早く博麗の巫女を始末しろ!」

 

 紗綾の声を聞いた瞬間、ある人物の名前をつぶやき、鬼流はその場に立ち止まってしまった。

 その人物は鬼流––春斗にとって最愛の人物であり、一番の守るべき対象だった少女の名前だった。

 その瞬間、一瞬、たった一瞬だが、鬼流の力が弱まった。だが、それもたったの一瞬だった。すぐに元通りに戻ってしまい、霊夢に向かってとてつもないスピードで走り始めてしまった。

 そんな鬼流の様子を見て紗綾は楓花の名前でも今の鬼流を救うことができないと知ってやるせない気持ちになり、地面に手をついて一言、呟いた。

 

「春斗……ごめんね」

「……っ!」

 


 

side春斗

 

「なん、だよ。これは」

 

 俺はその日もいつものようにさぼりを決め込んでいた。

 どうせ授業なんか受けても詰まんねぇし、外で日向ぼっこでもしていた方がよほど有意義だと感じていたから今日もいつもの丘の上で日向ぼっこをしていた。

 

 そして楓花を迎えに行くために寺子屋へと返ってくると、なんとそこはもぬけの殻と化していた。

 教室内は荒れに荒れ、何かの激しい争いがあったことを示唆していた。

 

「っ! 楓花! 楓花! 楓花!」

 

 俺は必死に彼女の名前を叫びながら寺子屋の中を走り回った。

 だが、俺のその声に呼応する声など一切なく、しんと静まり返ってしまっていた。

 

 俺が居れば、そう思ってしまう。

 俺の教室には俺が覚えている中では俺以外に戦える奴など存在していなかった。だから、何者かに襲われ、集団で誘拐されたとしたら手も足も出なかったことは確実だろう。

 つまり、俺が居たら、もしも俺がその場に居たら何とかできたかもしれない。そう思って俺は後悔した。

 

 もし授業をさぼらなければ、そんな後悔に苛まれる。

 

 もし、これが授業をさぼった俺への天罰なのだとしたら、もう授業はさぼらない、もう真面目にこれから生きる。

 だから、だから……。

 

「楓花を……紗綾たちを……返してください……お願いします」

 

 俺はその場に崩れ落ちてしまった。

 俺が崩れ落ちたその床には俺の眼からあふれて来た涙で水たまりが出来上がってしまっていた。

 

「ん? これは」

 

 目の前にさっきは焦っていて気が付かなかったが、靴による足跡があった。

 それも結構大きめの靴の後からやはり大人たちがこの寺子屋内に侵入してきてみんなを攫ってしまったのだと考え付いた。

 そしてこの足跡はかなり先の方まで続いているようで、どうやら飛べるような人たちじゃないみたいだからこれを辿っていけば攫った奴らの居場所をつかむことが出来そうだと思って俺はその足跡をどんどんと追っていき始めた。

 

 足跡をたどって走り始めてから一時間。ようやくそれらしき建物が見えて来た。

 遠目で見てみるとそこにはいっぱい大人たちが出入りしており、なにやら大切な施設であるということは分かったが、それ以上に悪意の臭いがプンプンと漂ってきていたため、一目見てこの施設を破壊することに決めた俺は手始めに入口にダイナマイトを投げ込んだ。

 

 ドガーンというものすごい破裂音と共に火薬のにおいが周囲に充満する。

 向こうの方では奴らがぎーぎーぎゃーぎゃーと騒いでいたが、そいつら全員を相手にするのは面倒なので俺は混乱に乗じて内部への侵入を試みた。

 

 そこは決して気分のいい場所ではなかった。

 檻が立ち並び、その中には子供たちが幽閉されていた。

 体にはいくつものあざができており、俺の事をひどく怯えた目で見つめてくるのだ。

 

「く、こいつら、どれだけ腐ってやがんだ」

 

 中にはもうすでにぐったりと動かなくなってしまっている子供も存在し、その子供を見かけては手を合わせ、奥へ奥へと進んでいく。

 その時、背後から気配を感じたためすぐさま後ろへ振り返って回し蹴りを披露した。

 

 すると真後ろから俺に飛び掛かってきていた鉄パイプを持った男は俺に蹴り飛ばされて壁に激突し、気を失ってしまった。

 

「しかし、だるいな。俺に攻撃を仕掛けて来たということは俺はすでに侵入していることがばれているということか」

 

 そのことが分かると俺はすぐに再び走り始めた。

 俺は昔から近くにいる他人の気配を感じ取ることに長けていた。そして気配から相手の力量を図り、勝てそうかと言うこともわかる。だからこそ、今背後から攻撃しようとしてきたやつの事もわかったのだ。

 だから近づいた瞬間に楓花、紗綾の気配も感じ取れた。だが、その近くにはヤバい存在がいるということもすぐに分かった。

 

「俺じゃ、勝てない」

 

 俺よりも圧倒的に強い気配を放っている奴が楓花と紗綾の近くにいる。しかも楓花の気配がどんどんと弱くなっていっている。

 

「楓花、楓花を助けなきゃ」

 

 圧倒的に自分より強い相手を目の前に足がすくんでしまうのは動物として正しいのだろう。だが、今はこの足が忌々しかった。

 楓花を助けたい、その一心のみで足を引きずって歩いていた。

 だが、俺はこの気配に気を取られていて再び背後に近づいてきた気配に気が付くことができなかった。

 

 そして俺は背後からの攻撃に反応することができずに気を失ってしまった。

 

 再び目が覚めるとそこは手術室のような場所で、俺は手術台に動けないように拘束されていた。

 

「やぁ、気分はどうだい?」

 

 目の前に居たのは仮面をかぶって大剣を背負った変な男だった。

 声は安らかで、優しい雰囲気を醸し出そうとしているようだが、こいつからは何も感じない。気配も、感情も、こいつは何もかもが無だ。

 

「そんなに警戒しなくてもいいよ。俺は君の味方さ。ところで君はあんなところで何をしようとしていたのかい?」

「っ! そうだ、楓花! 楓花はどこだ!」

「? んー……さぁ、俺にもわからないよ。だけど、そういうことか。君はあの楓花と言う少女を助けるために……なんて他人思いなんだ」

 

 こいつ、何か様子がおかしい。

 俺が助けに行こうとしたのだからまず最初に思い浮かぶのは友達思いとかそういう単語のはずなのに、こいつは今、他人思いって言った。

 なんなんだ? 不気味すぎる。

 

「そうかそうか、君は弱いばかりにこうして助けに行けなかったわけか」

「く、離せ!」

「そうかそうか、そうかそうかそうかそうかそうかそうかそうかそうかそうかそうか! なら、一ついい提案をしよう」

「なんだ」

「俺なら君をもっと強くしてあげる。あそこにいた奴らなんかよりももっとね」

「っ!」

「どうだい? ほしいだろ、この力。あの少女を助けるためにも、ね?」

 

 確かに欲しい。だけど、こいつに頼むのはかなりリスキーな気がする。何をされるか分かったものじゃない。

 だから俺は断ろうと口を開いたその瞬間だった。

 背後からものすごい衝撃が走り、視界に真っ赤な液体で染まった真っ黒な触手のようなものが出現した。

 

「さようなら」

 

 どんどんと意識が薄れて行く。

 そうか、俺は心臓を貫かれて……。

 

「ジーラ、本当にこいつは戦力になるのか?」

「あぁ、そいつから素質を感じる。そいつを改造しよう。くれぐれも心は取っ払うなよ。戦いたくないのに戦わなければいけないという苦痛を味わわせるのさ。その表情を俺は見たいんだ」

「それってそんなに苦痛なのか? 俺には温情にしか聞こえんが」

「まぁ、感情の起伏が薄いあんたにはわからないことだろうさ」

 

 くそ、こいつら、絶対に、絶対にいつか、殺してやる!

 

 それを最後に俺は完全に意識を手放した。




 はい!第209話終了

 ついに神楽戦も大詰め。

 おそらく次回で神楽戦は終了だと思います。

 この章ではいろんな人物の心情を頑張ってみたのですがどうですかね?

 で、春斗が感じられる気配と言うのが言うまでもなく霊力になります。

 春斗は無意識に霊力を使えるわけですね。

 紗綾は能力を手に入れてから使えるようになったので無能力で霊力を使えるのはすごいですよね。

 春斗はこういった経緯でサイボーグになりました。

 それでは!

 さようなら

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