それでは前回のあらすじ
こいしが真に殺気を向けたことで紬は二人の戦いを止めに入る。
だが、真は紬にも敵と認定されるために説得しても無駄だと判断されるような発言をする。
さらにはこいしが紬を説得したことでついに紬も本気で真を倒しに来るように。
さぁ、真対こいし、紬の戦いが今始まる。
それではどうぞ!
side三人称
ついに紬も真を殺す気になり、二人は横に並んで真と向かい合う。
この二人が並んでいるのは珍しい光景のため、真は微笑ましくなり、笑いそうになったものの、ここで笑ってしまったらすべてが台無しになってしまうと考えて必死に表情筋を固くした。
そして自分を鼓舞し、右手に霊力刀を作り出した。
(まさか、こいしと紬にこの刀を向けることになるなんてなぁ……)
幼いころに親を亡くしている真にとっては、家族や仲間というのはものすごく大切な存在だ。そんな存在に自分から刀を向けている。そんな状況に嫌悪感を抱いてしまうが、ここでやめるわけにはいかないので、しっかりと刀を構える。
それを見たこいしと紬も戦闘態勢に入り、お互いににらみ合う状況となった。
(真、あなたが何を考えているのか、そこまでは分からないけど、そんなに望むっていうことは、何かあるんだよね)
(シンはあんなことを言っていたけど、目は死んでいない。コイシもいつもなら私たちと同じようにシンを止めようとするはず。なのに、あんなことを言うなんて何かがあったんだと思う。それに私は賭けてみる)
(真を本気で殺す!)
(シンを本気で殺す!)
心の中で二人とも決意すると、こいしは周囲に高密度の弾幕を作り出し、そしてそれに紬は神力を流し込んで呪いを込める。
即死の呪いは真には効果がないため、動き封じの呪いだ。直撃すると体が重くなり、動きにくくなるという呪い。
真は一撃では絶対に倒せないので、地道にダメージを与えていくしかない。だから連撃を加えるためにも動きにくくする必要がある。
(二人は本気で殺しに来てくれるみたいだな。でも、だからと言ってここでこの態度をやめない。俺はこの二人と戦って、そしてこの二人の敵として殺されたい。こいしと紬に殺されるなら本望だ)
その次の瞬間、こいしは真へ向けて弾幕を放った。
「表象《弾幕パラノイア》」
こいしの弾幕が放たれると同時に真の周囲に細かい大量の弾幕が出現し、弾幕の檻に閉じ込められてしまう。そしてそんな真に向かって本命の大きい弾幕が迫りくるのだ。
行動が制限されている今の状態じゃ回避することは非常に難しい。
そして囲まれているため、周囲の弾幕に触れたらダメージを受けてしまう。だが、本命の弾幕に直撃するよりはましだと考えて真は弾幕の檻へと突撃した。
ドカーンドカーンドカーンと真が弾幕に直撃するたびに爆発が起こり、煙が発生する、
その煙の中へと弾幕たちは吸い込まれて行き、着弾したのかそれも爆発していく。
さすがに二人もその行動は予想外だったのか、驚愕してしまっていたが、すぐに元の調子に戻る。
(真は今までいろんな予想外なことをしてきた。これくらいはしてきてもおかしくはないよね)
すると煙の中から人影が猛スピードでこいしたちの方へと走ってきて煙を巻き込みつつ、二人の目の前に現れた。
そして煙が晴れるとやはりそこには真が居て、刀を構えているという状況。少しでも反応に遅れていたら真の剣術だったら今の一瞬で決着がついていた。
だが、二人は長年の経験からこのことは予測できていたため、すぐに真の刀の間合いから離れ、真は刀を振ったのを見てからこいしは再度真との距離を詰めた。
「っ」
「前は負けちゃったけど、私もあれから強くなっているんだから、なめないでよね」
「ぐぅっ」
そのままこいしは回し蹴りをして真を蹴り飛ばすと同時に再び弾幕を展開する。
(はぁ……はぁ……くそ、力が出ねぇ……)
真は蹴り飛ばされて地面に突っ伏した状態で動けなくなってしまっている。このままでは回避できないため、動かなければいけないというのは頭ではわかっているのだが、体がいうことを聞かないという状況になってしまっている。
「本能《イドの解放》」
再びスペルカードを発動し、今度はハート形の弾幕を大量に真に向かって放った。
それを見た真は必死に腕に力を入れて体を持ち上げようとするものの、全く間に合うことはなく、こいしの放った弾幕の直撃をもろに受けてしまって、更にぶっ飛ばされて地面を転がっていく。
「く、はぁ……はぁ……」
なんとか真は一発目の直撃を受けた際、その威力を利用して地面を転がって行ったため、ほかの弾幕には当たっていないが、一発でも直撃したのでかなりのダメージを負うこととなり、額から血が流れ始めた。
真の肉体は妖怪の血が流れているため、すぐに再生はするし、動くことが出来るようにはなる。
だが、真の体はこの度重なる戦い、そして無理な技の使用、更には体にかなりの負担がかかる戦い方をしたことで、真自信でも気が付かないうちに体は限界を迎えていたのだ。
そしてその状態でジーラとの戦いでクレア神を使用した。
さらにそのあとはさんざん暴れまくったおかげで真の体には全く体力など残されてはいなかった。
真は自分が思っている以上に疲弊しているのだ。
(あぁ……意識が朦朧とする……霊力の使い過ぎ……か?)
もうすでに真の体は限界をゆうに超えており、声を出すことすら重労働と言わざるを得ない状況となってしまっていて、意識が朦朧とする中この幻想郷の思い出を走馬灯のように思い出していた。
始めてこの幻想郷に来た日。
地底に突如放り出されて初めて出会ったのがこいしだった。
それから地霊殿に住むこととなり、そしてこいしたちと一緒に異変解決を何度もした。
異変解決はどれも大変なものばかりだったけど、今となっては真にとっていい思い出となっているのは確かだった。
(やっぱり、この幻想郷は諦めきれないよな)
「真、もう終わり?」
地面に倒れて仰向けとなっている真の目の前にこいしが歩いてきた。その手には刀が握られている。真の相棒である神成りがその手に握られていた。
紬がこいしに力を貸したことでこいしが神成りを扱えるようになったのだ。
今にも殺されそうな状況。だが、真はもう抵抗する力も残されていなかった。
さっき弾幕の檻に突っ込んだダメージとこいしに蹴り飛ばされたダメージが決め手となり、本当に力尽きてしまったのだ。
「はぁ……もうちょっと暴れるつもりだったんだけどなぁ……」
「……真、あなたは頑張りすぎなんだよ。今回の異変だって……みんな頑張ってたけど、私にとって一番頑張ってたのは真だから」
「こいし……」
「でも、一度も自分の命を大切にしてくれなかったことは許してないからね」
「はは……」
これに関してはぐうの音も出ず、真はただ笑うことしかできなかった。
「真、これでもう終わりじゃないよね」
「……この幻想郷があるうちは、終わらないよ。なにもかも」
「そっか……」
そこでこいしは真の心臓に神成りを突き立てた。
もう抵抗ができない真はそのまま何もせず、ただただこの刀が突き刺されるのを待つだけの身となってしまっている。
「真……最後に一つ良い?」
「なんだ?」
「幻想郷は好き?」
「……あぁ、大好きだ」
「よかった」
その言葉を最後にこいしは神成りに力を込め、真の心臓に刀を突きさした。
完全に神成りの刀身は真の体を貫通し、そして地面に突き刺さった。これが真へのトドメとなった。
致命傷を無効化する真は、死というものが今までは遠いものの様に感じていた。
だが、この瞬間に明確に死というのものが目の前に迫ってきて、そして己を食い殺さんとしてきていると感じた。
【致命傷を受けない程度の能力】は真の体力がまだ残っていないと発動しない。つまり、今の様に疲弊しきって指一本動かすことが出来ない真が心臓を貫かれたりなどしたら、たちまち致命傷となってしまう。
どんどんと遠のいていく意識。だが、その最中、真は意識してなのか、それとも
「こいし……愛してる」
「っ、わ、私も真のことを……愛してるよっ!!」
思わずこいしは真のことを抱きしめてしまう。
だが、もうその瞼は閉じられてしまっており、呼吸もしないただの抜け殻となってしまっていた。
そんな抜け殻をこいしは必死に抱きしめ、嗚咽をこぼしながら大粒の涙を流した。
こいしも妖怪だ。
妖怪は長寿ゆえに何度も人が死ぬのを見てきた。この異変解決でも何度も何度も人が死にゆくさまを目撃してきた。
だが、この真の死はこいしの中で一番辛いものだった。
「こいし……」
「こいし!」
紗綾や鈴音も集まってきて泣きじゃくるこいしを抱きしめて慰めてあげる。
一番大切な人をこの手で殺してしまったのだ。そのショックは計り知れないものとなる。
でも、それでも、やらなければいけないと覚悟をしてこいしは真のことを刺したのだ。
「真……あなたはこれで終わりではないでしょう? 私たちにはわからないけど、何かものすごいことを成し遂げると信じているわ。こいしちゃんの覚悟にちゃんと答えなさいよ」
一部始終を隙間から覗いていた紫は真に激励の言葉を贈った。
「はぁ……こんな形で来られたくはなかったんだけどな……」
自分の空間で事の顛末を見守っていたシャドウはため息交じりにそう口にした。
真はまだこんなことでは終わらない。
ここから真たちの盛大な計画が始まろうとしていた。
はい!第237話終了
ついにご乱真編が完結し、ついに最終フェーズに入ろうとしています。
真との戦いはかなりあっさりとした結末だったと思いますが、真は今までの戦いでめちゃくちゃダメージを受けまくり、疲弊している状態で全く手当も回復もしていないとなったら倒れて当然ですよね。
むしろよくここまで頑張ったよなって感じです。
では、ついに次回、真の計画が明かされます。
それでは!
さようなら