それでは前回のあらすじ
ついに神となった真は出発の時を迎える。
シャドウに礼を伝え、過去へと旅立とうとすると、真はシャドウに幻想郷を託される。
真は覚悟を決めて、希望を胸に
それでは!
さようなら
side真
スキマを出た。
必ず幻想郷を救ってみせると覚悟を決めて飛び出したその場所は、俺が初めて幻想郷で目を覚ました場所だった。
すごく懐かしい。
初めてこの景色を見た時はついに異世界に来たのか? とかなり喜んだものだ。
厳密に言えば幻想郷は異世界では無いらしいが。
これで過去へ来たのは二回目だ。
一回目はダーラとの戦いの後、俺は爆発に巻き込まれたと思っていたが、気がついたら過去の幻想郷に居た。
ここは地底なんだが、今とは全く景色が違う。
今では家も点々とある場所なのだが、この時代には辺りにはあんまり家がない。
そして何よりも俺が感動しているのは、地霊殿が昔の見た目だということだ。
いや、過去へ来ているんだから当然と言っちゃ当然なのだが、地霊殿は一回全焼して建て直しているため、昔とは外観が違うのだ。
しかも今の地霊殿は温泉としても使いやすいように立て替えているため、あの地霊殿は今はもう見ることが出来ない。
「そう言えば、あの地霊殿に向かっている時にこいしに出会ったんだよなぁ……」
こいしは最初から俺に良くしてくれた。
見ず知らずの俺を地霊殿に案内して、そして住まわせてくれた。
本当にこいしが居なかったら俺はどうなってたか……。
あの時の俺は本当に弱かったから野生の妖怪に殺されてしまっていたかもしれない。
と、こんな感慨にふけっている場合じゃない。
俺の目的はなるべくこの時間に干渉せずに歴史を元に戻す。
これが最優先事項だ。
ジーラの霊力を感じ取ってスキマを繋げてみたらこの時代にたどり着いた。
もし本当にジーラがこの時代で歴史改変をしたんだとしたらこの時代のどこかからジーラの霊力を感じ取れるはず。
そこが事件現場ということだ。
「とにかくまずはジーラを探さないと」
今の俺はジーラが何を改変したことで歴史が変わってしまったのかが分からない。
歴史が定着してしまう前にジーラを見つけ出さないと。
そして俺は走る。
なるべく石を蹴飛ばしたりしないように慎重に一歩一歩進めていく。
シャドウの話によると石を蹴飛ばしたりするのだって命取りになってしまう可能性があるというんだから。
その時、背後から短く「きゃぁ」という可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
そこには一人の少女が転んで倒れていた。緑色の服を着ている少女で、顔は下に向いているからはっきりと見えない。
「だ、大丈夫か?」
何故か心がざわついた俺は思わず反射的に声をかけてしまって、擦りむいているかもしれないと考えて絆創膏をポケットから取り出したところでハッと今の状況を思い出していた。
何やってんだ俺。この時代で何かに干渉するのはダメだと分かっているはずだろ。
ここで手当なんかしたら思いっきり鑑賞してしまうじゃねぇか。
でも、声をかけたのにそのままここから走り去るって言うのも可哀想だよな。
幻想郷の運命と少女を天秤にかけ、またまた何故か俺の中で少女の方が上になった。
何故か大丈夫だって思ったのだ。
「お兄さん、誰ぇ?」
「そんなことより、怪我はしてないか?」
名前を伝えると干渉度合いが更に増してしまうと考えた俺は名前をはぐらかして怪我のことを聞いた。
すると少女は腕を見せてくれて、少し擦りむいたあとのようなものが出来ていた。
幸いにもここは袖で隠れるため、あまり目立たない場所だ。
「よし、染みるかもしれないけど我慢してくれよ」
「う、うん。っ!?」
そういうと水を傷口にサッと掛け、ハンカチで拭くと、そこに絆創膏を貼った。
少女は一瞬痛そうな苦悶の表情となったが、何とか我慢してくれたおかげで簡単に処置できた。
このくらいの軽傷ならばこれでも大丈夫だろう。生憎、消毒液みたいなものは持ち合わせていないしな。
「これで大丈夫だ。気をつけろよ。女の子が怪我なんかしたら大変だ」
「あ、あの……お兄さんのお名前は――」
「そんじゃ、元気にな!」
再び俺は名前をはぐらかすと全速力で飛行を開始し、他の人に認識されないよう、無意識を発動した。
今の俺の全速力はそう簡単に着いてこれるものじゃないため、あの子も追ってきては居ない様子だった。
ちょっと不振だったかもしれないが、どうせもう会わないんだから関係ないと考えて全力で飛行を続ける。
薄いがジーラの霊力をここから感じ取れる。
俺は早くジーラのところに行かなければと考えて地底を飛び出していくのだった。
side三人称
ここは過去の地霊殿。
まだ真も龍生も居ない頃の地霊殿。
「お姉ちゃんただいま〜」
「あらこいし。おかえり」
帰ってきたこいしは姉であるさとりに挨拶するとさとりの横に椅子を持ってきてさとりが今読んでいる本を覗き込む。
「どうしたの、こいし」
「ねぇ、お姉ちゃん」
いつもはさとりと一緒に本を読むなんてことをしないため、何かあったのかと考えたさとりはこいしに聞いてみた。
すると思い詰めたような声色でこいしは爆弾発言を落とした。
「私、好きな人が出来ちゃったかも」
「ぶふぅぅっ!? こ、こいし、どういうこと!?」
こいしは《無意識を操る程度の能力》のせいで《心を読む程度の能力》を持つさとりでも心を読むことは出来ないため、こいしの爆弾発言に思わず飲んでいたコーヒーを吹き出してしまうほどに驚いた。
それもそのはず。こいしが誰かに恋をするなんてもう無いだろうと考えていたのに好きな人が出来たと言うんだから。
「こいし、大丈夫? 変なもの食べてない?」
「食べてないよ! 失礼だなぁ、もう……」
さとりの言葉に頬を膨らませて不満を表すこいし。
「でも、こいしが好きな人ねぇ……あの事はもう大丈夫なの?」
「ううん。今でも時々思い出して辛くなるけど、でも落ち込んでばかりも居られないもんね!」
「前向きねぇ」
つい最近まで塞ぎ込んでいた妹。
他の人に顔をあまり見られたくないがために帽子の唾も大きめのものを被って見られないようにしている。
そんなこいしが前向きなことを言ったため、さとりはすごく嬉しくなって笑みがこぼれた。
「で、何があったのよ」
「それがね? 私、道端で転んじゃったんだけど、通りかかった男の人が擦りむいちゃった腕を手当してくれたの、ほら!」
「へぇ……、ってこいし、あなたちょろすぎないかしら……」
ちょっと前まで塞ぎ込んでいた妹が恋に落ちてしまうほどの出来事と言うことから凄いことがあったのかと思ったものの、実際はそれほどでもなくてさとりは落胆してしまった。
それと同時に自分の妹のちょろさ加減に頭を抱えてしまう。
「その人、なんて言う名前なの?」
「分からない!」
「分からないって、あなたねぇ……」
「し、仕方がないじゃん! 教えてくれないままどこかに行っちゃったんだから! でも、黒髪で緑の服を着てたってのは覚えてるよ!」
「珍しい服装ねぇ……外来人かしら」
服装の特徴から外来人であると推測するさとり。
さとりが心配する感情とは裏腹にこいしは頭お花畑になっているため、再び頭を抱えてしまうのだった。
はい!第242話終了
ついに過去編開始!
前期が始まる前の世界線ですので、今合って、昔は無いものとか色々あります。
一応そんなに長引かない予定です。
神楽戦みたいにはならないようにしないと……。
それでは!
さようなら