無意識の恋 Second stage   作:ミズヤ

272 / 285
 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ついに歴史修正が完了したが、代償がひどく、苦しむものの、まだ死ねないという思いで真は現代に帰ってきた。

 しかし、幻想郷は元に戻っていなかった。

 真の行為は果たして無駄だったのか?

 最後に真がやるべきことがシャドウの言葉によって判明する。



 それではどうぞ!


第最終話 忘れない

side真

 

「能力の譲渡?」

「あぁ、【崩壊させる程度の能力】は前使っていた人物が死ぬと、この世界に生きているランダムな誰かに受け継がれる。【幻影を見せる程度の能力】は死んでも能力は譲渡されない。死んでもあの世で能力を保持し続けることになる。だが、その能力者が譲渡を行うことで能力者は命と引き換えに相手に能力を譲渡することが出来る。そして、【能力を奪う程度の能力】は能力者が殺されることで殺した相手に能力が譲渡される。加害者が居ない場合は思念が残留し、近くを通った相手に能力が譲渡される」

 

 初めて聞いた話だった。

 能力を奪うことが出来る能力があるというのは知っていたけど、能力が譲渡されることがあるというのは初めて聞いた。

 

 俺が今、こうして【崩壊させる程度の能力】を持っているのも前任者が死んでしまってランダムに選ばれた結果ってことか?

 まぁ、少しだけ【都合のいい状況を作り出す程度の能力】が作用しているようにも思えなくは無いけど。

 

 だが、なぜ今シャドウは俺にこの話をしてきたんだ?

 

「この説明を聞いてお前は何か気づくことは無いか?」

「気づくこと?」

「さっきも言ったが、お前はもう既にこの幻想郷を救うためのカードを手に入れている。あとはその手に入れたカードを有効的に活用する、ただそれだけだ」

 

 俺がもう、この幻想郷を救うカードを手に入れている? どういうことだ? なんの事だか全く分からない。

 今の説明で一体何がわかるって――

 

『俺の能力は【能力を殺して奪う程度の能力】』

 

 嫌なことを思い出してしまった。

 俺らはあいつのせいで大苦戦し、そして音恩を失ってしまったんだ。

 でも、でももし、デイが言っていた【能力を殺して奪う程度の能力】の定義が【能力を奪う程度の能力】なのだとしたら、最後にトドメを差した俺にこの能力が渡ってるんじゃないかって。

 

 それなら今の俺にはこの幻想郷を救える力がある。

 この死んでしまった世界を生き返らせることが出来る力がある。

 幽々子を殺したことで幽々子の【死を操る程度の能力】が俺に渡っているはずだ。

 

 なるほど、そういう事か。

 今ここで極が幽々子を殺せと言っていた意味がわかった。

 極は俺にこの幻想郷を救う方法を教えてくれていたんだ。

 

 確か幽々子の力だけでは生き返らせることは出来ない。

 だが、そこに神や閻魔の力が加われば生き返らせることが出来る。

 この死んでしまった幻想郷を復活させることが出来る。

 

「ぐぅっ!」

 

 拒絶反応が激しくなってきた。

 動悸がすごい。気を抜いたらすぐにでも意識を飛ばしてしまいそうだ。

 そうなる前に能力を使うんだ。

 

 今、能力を使えるんじゃないかと認識したら俺の頭の中に【死を操る程度の能力】の使い方が浮かんできた。

 今なら使える。幽々子から奪った【死を操る程度の能力】。

 失敗することは出来ない。絶対に許されない。

 

「なぁ、シャドウ」

「なんだ?」

「お前も俺の事を忘れるのか?」

「さぁな。俺も代償で消えるやつは初めてだからな。だが、お前という英雄が居たってことは忘れられるわけが無いだろうよ」

「そっか、それなら十分だ」

 

 シャドウの返答に満足した俺は能力を発動する。

 俺の中でこの能力のことがどんどんとわかってくる。

 死を操るということは生き返らせることも死なせることも出来る。だが、霊力の消費は生き返らせる方が圧倒的に多い。

 殺すだけならば魂を体の中から消失させればいいだけだ。だが、生き返らせるとなるとそうはいかない。

 生き返らせるには魂を現世に引っ張ってきて、さらにその魂が入る器、肉体を再構成しなければいけない。

 

 多分今の俺の体ではこの異変で死んでしまった人を全員生き返らせたら耐え着ることが出来ずに、その後すぐに代償を受けることになってしまうだろう。

 もう既にだいぶ俺の存在自体があやふやになってしまっているんだ。

 古い記憶からどんどんと消えていってしまっているんだ。

 

 だが、絶対にこの幻想郷のことは忘れない。そう思って耐えているが、それも能力を使ったあとはどうなってるか分からない。

 だから能力を使う前にシャドウをこの幻想郷に見立てて笑顔で言った。

 

「幻想郷、俺はお前のことを忘れないし、ここでは無いどこかへ行ってしまったとしても必ずここへ戻ってくる」

「ああ、待ってる」

 

 俺の言葉に幻想郷に代わってシャドウがそう答えた。

 その言葉を聞き、俺は満足して能力を発動していく。

 

 効果の対象範囲は今回の異変で死んでしまった元凶側ではない住人達。

 せっかく倒してしまった元凶を生き返らせてしまったら意味がないから、そこだけは除外しておく。だが、一つだけ問題があった。

 どう検索をかけても龍生の魂だけが検索に引っかからないのだ。

 これだけでわかってしまう。どう足掻いたとしても龍生だけは生き返らせることが出来ない。

 

 龍生は世界の崩壊に巻き込まれて死んでしまった。だから龍生は世界の外側で死んでしまったことになる。

 やはり世界に存在していない魂となると、引き寄せることも叶わないということか……。

 

 でも、もう後戻りをすることはできない。

 今ここで過去に戻って龍生を助けたとしたら、またどのような歴史改変が起こってしまうかわからない。

 龍生なら「俺のことは気にしないでお前は前を見てくれ」と言ってくれそうな気がする。あいつならこうまでして助けられることを望まないだろう。俺もそうだ。

 長年親友やってるんだ。それくらいは分かる。

 

 だから、俺は能力を使用した。

 この異変で失われてしまったすべてを生き返らせる。

 

「龍生、お前の思いは無駄にしないからな」

 

 その瞬間、俺の意識は飛んでしまった。

 


 

sideシャドウ

 

 真の奴が能力を使った瞬間、その場に倒れ込んでしまった。

 今回、真がこの幻想郷を救うための条件は大きく分けて3つだった。

 

 一つ目はやはりジーラを倒すこと。まず最初に異変の元凶を倒さなければそのあと何をしようとも意味がないからな。

 

 二つ目は過去の修正だ。だが、これにはいろいろとシビアな条件が関わってきてしまうから、正直ここが一番できるかどうか不安だった点だ。

 なにせ、力が足りなかったらそもそもとして時空神になっても過去の修正なんてできるはずがなかったからだ。

 だが、こいつはついにクレア神を完成させた。それほどの力を手に入れることが出来たからこそ歴史の修正が出来た。あとはこいつが現代に影響をあまり与えずに歴史の修正ができるかどうかだったが、それは杞憂だったみたいだ。

 

 そして最後にこの異変で失ったすべてを生き返らせる。これは真がキーマンだったからこそ心配な点があった。

 それは真が幽々子のことをすんなりと殺すかどうかということだった。

 真は自分の仲間が傷つくことを何よりも嫌がる。それも、自分の手で殺さなければいけないんだ。そうしなければ幽々子の能力を使えないから。

 自分であの能力を使って生き返らせる場合は神になっていれば大丈夫だが、幽々子が能力を使う場合は閻魔の四季映姫の力が必要だった。

 だが、少し地獄に偵察に行こうとしたら、そこはすでに崩壊した後だった。四季映姫の協力は見込めない。

 真が能力を奪う必要があったんだ。

 

 だが、何とかなった。全てコンプリートした。

 

 真の体が徐々に徐々に薄くなっていっている。

 この後、真はこの世界の理に従って、外の世界に送られて記憶を全て消去される。その際にこの世界に生きるすべての人々の記憶から真という人物が消えてしまう。

 だが、ちゃんとその真が消えた穴が埋まるのかと言われたらそうではなく、歴史にぽっかりと穴が開いてしまったような感じで消えてしまう。

 

 それにしても、真はこの光景を見ることが出来ないなんて残念だな。

 

 俺は丘の上に立つと、その場に座り込んで世界を見渡した。

 

「お前の活躍で幻想郷は何とかなりそうだ。お前は今まで頑張りすぎたんだ。今くらい、休んでも誰も文句は言わねぇだろうし、俺が文句を言わせねぇよ。だから、ゆっくり休め。英雄」

 

 どんどんと修復されていく幻想郷を見る。

 そしてふと真の居た方へと目を向けるとそこにはもうすでに真は跡形もなくなっていた。

 

 俺の記憶からも真の記憶が薄れていく。

 だけど、俺は約束を果たすために歩き出した。真が、帰ってくる場所を守るために。

 


 

sideこいし

 

 最悪の異変から5年が経過した。

 

 幻想郷の過去が改変されてしまうという異変。

 私たちはの異変に挑んで勝利した――勝利したはずなのに、どうしてか私たちは誰もどうやって勝ったか、崩壊していくこの幻想郷をどうやって修復したのか、全く記憶にない。

 気味が悪い終わり方だけど、私以外の誰もそのことについては気にしていない様子だった。

 

 これじゃ私が異常者みたいだ。

 

 なんだろう。すごく気持ち悪い。

 今まで大切にしていたものがなんなのか分からないけど、急にその存在がこの世界から消えてしまったような。

 心にぽっかりと穴が空いてしまったような、そんな感覚だった。

 

「こいし、コーヒーでもどう?」

「うん、貰おうかな」

 

 地霊殿のベランダで今日も外を見て黄昏ていた私にコーヒーを勧めてくれるお姉ちゃん。

 自分でもよく分からないんだけど、最近私はいつもこうして外を見ては黄昏ているからお姉ちゃんには心配をかけてしまっているみたい。

 

 でも、本当に心にぽっかりと穴が空いたみたいで気持ち悪いんだ。

 

 5年前、異変が解決した直後はみんななんか胸にモヤモヤがあったみたいで、どうして異変が解決されたか分からなかったから気持ち悪くて宴会なんて開くことはなかった。

 だけど、今日は5年前解決した異変の宴会を今更ながら開こうと誘いが来た。

 段々とみんなは胸のモヤモヤが晴れて行ってるんだ。私とは違って……。

 

 なんだかそれが悔しくて、苦しくて、悲しくて、胸が張り裂けそうになるけど、いつまでも後ろを見ていられないということなのかもしれない。

 だって私の中のモヤモヤも晴れかかっていて、だけどやっぱり気になって……。

 

「そう言えば、音恩君はにとりの工房でお世話になることにしたらしいわ。この前、手紙が来てた」

「そうなんだ……あの人は前から機械に強かったもんね。にとりの工房では大活躍だと思うよ」

 

 音恩君は確かにあの異変で死んでしまったはずだった。それにフランちゃんも……。

 だけど、いつの間にか音恩君とフランちゃんは目を覚ましていて、二人はすぐに結婚した。

 音恩君とフランちゃんはにとりの工房に近い家に引っ越して新婚生活を楽しんでいるみたい。レミリアは少し寂しがってたけど。

 

 そこで私は左薬指の指輪へと視線を向ける。

 どうしてこんなものが私の手にはまっているのか全く分からない。でも、私はずっと外さないでいる。

 別に一度ハマったらもう二度と外せない呪いの指輪という訳ではなく、これは私自身の意思で外さないでいる。

 

 なんだか私にとってこの指輪はとても大切で、そして外してしまったら何か大切なものを失ってしまう気がするから。

 多分、私は5年前の異変で色んな人が死んでしまったから臆病になっているんだ。

 

 お姉ちゃんだって崩壊に巻き込まれていたはずだった。

 あとから見てみたら地底なんてもうどこにも無くなっていた。

 でも、突然元に戻ってお姉ちゃんもどこからともなく現れた。

 

 私は今生きてるこの時間が夢で、私自身は5年前のあの異変で命を落としてしまったんじゃないかって思い始めてる。

 だって、突然死んでしまった多くの人々が生き返るなんて、普通はおかしいから。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。こんなこと聞くなんておかしいと思うけど、あそこの部屋って何があったっけ?」

「あそこ? 元々何も無かったと思うけど」

 

 私が示したのは何も無い空き部屋だった。

 あそこの空き部屋は昔から何もなかった。だけど、私はいつも幻影を見る。妄想する。

 あの部屋に私とお姉ちゃん、ペットたち以外の誰かが住んでいて、そしてとても仲が良くて……。

 

 でも、そんな記憶はどこにもなくて。でも、何かあの部屋だけ過去に取り残されているような、ぽっかりと穴が空いてしまったような……。

 そして誰もが意識している訳では無いのにあの部屋だけは絶対に物置にはしない。

 

 あの部屋が誰かの帰りを待っている。そう思えるほどに不自然な、でもそれが自然に思える光景。

 

「そろそろ博麗神社に行きましょうか」

「うん……」

 

 この宴会を執り行ってしまったら、あの異変が全て解決したということになってしまう。

 でも、私はまだあの異変には解決されていないことがあるような気がしてならない。

 まだ、絶対に過去の出来事にしてはいけない。

 

「っ、やっぱり、私、霊夢に直談判して宴会を中止にしてもらう!!」

「ちょ、こいし!?」

 

 私はお姉ちゃんの静止を振り切り、勢いよく地霊殿を飛び出して博麗神社へと飛び立とうと思って門を勢いよくくぐると、視界の端に誰かが門前に立っているのが見えた。

 その瞬間だった。

 

「ただいま」

 

 声を聞いた瞬間、思わず立ち止まってしまった。

 震えが止まらない、どんどんと鳥肌が立っていく。

 

 そして涙が止まらなくなってしまった。

 

 どうしてだろう。こんな声、知らないのに。知らない声ならスルーしてもいいはずなのに。

 この声だけはスルーしちゃダメな気がしてならなかった。

 

 知らない、しらないはずなのに……。

 しらな、しら……。

 

 そこでパリンという自分の中で何かが破壊されたような音が鳴り響き、その音が聞こえた瞬間、私はその人に思いっきり飛びかかるように抱きついた。

 

「うわっと」

 

 その人は私が急に飛びついたから態勢を維持することが出来ずにそのまま尻もちをついちゃったけど、そんなことは気にする暇は無く、私は大粒の涙を零しながらギュッと、もう二度と離さないとばかりに抱きしめた。

 

 そして私は言うのだ。

 

「おかえり」

 

 ――と………………。




 はい!第249話終了

 とりあえず最終回ですいえーい。

 これにてTrue End完結となります。

 次回はTrue Endのエピローグとなります。

 最後まで楽しんでいってください。

 エピローグは本日19時に公開予定ですので、お楽しみに!

 それでは!

 さようなら
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。