それでは前回のあらすじ
ついに神楽に勝利した一行は目を覚ました真と共に最後の戦いへと臨む。
最後の部屋にたどり着いた一行の目の前に現れたのはやはり真に恨みを抱くジーラだった。
以前戦った時は相手にならないほどの小物だったが、あれから非常に強くなっていることに驚愕しながらも真はジーラを倒し、幻想郷を救う決意を高める。
ついに主犯との対決。
果たして勝つのは真たちか、それともジーラか。
それではどうぞ!
side真
もしも、もし、俺があの時、ダーラのところに直接転移されてしまっていたら。
もしもあの時、こいしが俺の事を見つけ、あとをついてこなかったら、そう考えると時々眠れないことがあった。
となりで眠るこいしにおやすみと告げ、俺も同じように仰向けになって目を閉じるが、その瞬間に見たこともない景色が視界に広がるのだ。
人里も、妖怪の山もめちゃくちゃに破壊され、空が真っ黒なエネルギーで覆われて住人がみんな苦しんでいく。
真っ黒なエネルギーは幻想郷に住んでいる人たちにとってはとても有害なもので、それによって苦しみながら息絶えていく人々の姿をダーラとポリオンは上空から笑いながら眺めている。
そしてそんな二人の横に俺も居て、これをやったのはほとんどが俺で、現実では自分の命よりも大切なはずの幻想郷を崩壊させ、こいしを苦しめてしまっていた。
だが、この俺は何も思っちゃいなかった。なにせ、これをしでかした俺に幻想郷への思いなどゼロだったからだ。
俺がこいしと接触したおかげで俺はこの幻想郷の事を好きになったし、守りたいと本気で思うようになっていた。
だけど、俺がこいしと接触することが無かった場合、俺はこっちの運命を辿っていたかもしれない、そう考えると俺は恐ろしくて夜も眠れなかったんだ。
その可能性がある俺に本当にこの世界を、幻想郷を救う資格なんてあるのだろうか、そんな考えがこの戦いの最中にも何度も何度も頭をめぐっていた。
でも、今の俺はこの幻想郷を救いたい、その思いが俺を何度も助けてくれ、原動力になってくれている。
しかし、みんながことごとく俺に敵対していく、そしてこの幻想郷が崩壊の一途をたどっている。まるで俺が見た夢の話みたいだと、今更ながら考えてしまっていた。
違う違う。俺は違うんだ。
今、目の前に居る敵に集中しよう。今の俺の敵は誰だ? 俺じゃないだろう。
ジーラだ。ジーラを倒せばこの異変は解決される。この異変は収束し、幻想郷ももとに戻ってくれるはずだ。
なら、俺はただ、今まで通りにこの異変を解決して平凡ないつもの生活を取り戻す、それだけだ。
「さぁ、緑! ここがお前の死に場所となるのだ。そして魂となって永遠にこの空間をさ迷い続けるがいい!」
「……なぁ、みんな」
俺は今までの事を思い出しながら静かに言葉を放った。
正直この異変が始まってから俺はずっと迷いっぱなしだった。いや、今もずっと迷い続けている。
本当に俺はこの場に居ていいのだろうか。ジーラが幻想郷をめちゃくちゃにしている原因は俺にある。
俺こそみんなに叱責され、退治されるべき存在なんじゃないかとずっと思い続けている。
今回の異変の元凶は俺だと言っても過言ではない。
ここまで着いて来てくれたみんなには感謝しているし、悪いことをしたとも思っている。だから––
「この戦いは俺一人に任せてくれないか?」
「っ、シン。それって」
「あぁ、自分の尻拭いは自分でする」
もとはと言えば俺がこいつに止めを刺しておけばよかっただけの話なんだ。だけど、それをしなかったのは俺の責任だ。
だから、自分の尻拭いは自分でする。
すると彼方が俺のことを止めようと血相を変えて俺の前に飛び出してこようとしたが、それよりも先に隣に来ていたこいしが俺の手を握った。
「こいし?」
「?」
そのこいしの様子を見て俺と彼方は止まってしまう。
なにせ、未だかつてこいしはこれほどに真剣な表情で前を向いているのを見たことがないからだ。
真剣な表情をして前を向いているこいしの横顔は凛々しかった。
だが、そのつないでいる手からはこいしの緊張が伝わってくる。
「ねぇ、真。あなたはどうして自分のせいにしたいの? 自分一人ですべてを終わらせようとするの? 真はどうして……いや、真はこの状況を必ず誰かのせいにしないと気が収まらないの?」
「っ」
そこまで言ってこいしはくるりとこっちの方へと顔を向ける。
とても真剣な表情。
その瞳は全てを吸い込んでしまいそうに深い緑色をしていて、俺の魂に訴えかけるかのようだった。
確かに俺はこの異変を自分のせいにして心の安定を図ろうとしているのかもしれない。
だけどそれは事実なんだ。
もしあそこで俺がトドメを指していたらこんなことにはなっていないのだから。
「自分が悪い、自分が何とかしなきゃって、そう思うのは真の悪いところだと思うよ」
「でも!」
「でもじゃない。それに、あの状況なら私だってトドメを刺すチャンスがあったはずなのにトドメを刺さなかった私にも原因がある。だから、私が一人で戦うよ」
そう言って俺から手を離してゆっくりとジーラへと向かって歩き始めるこいし。
その目は座っており、危なっかしく見える。
そう思った瞬間に今度は俺から慌ててこいしの手を掴んだ。
ダメだ。一人で戦っちゃ。
この霊力量は確かにこいしの相手にはならない程度だが、あいつからは霊力量以上に不気味な何かを感じる。
それに、こいしにもしもの事があったら俺は……っ!
「ほら、やっぱり」
「え?」
「やっぱり、真は私のことを引き止めた」
「どういうことだ?」
「真は今、多分私の身を案じて引き止めたんだよね。でも、それは私達もおなじ。真にもしもの事があったらって考えると悲しくて……苦しくて……だから、引き止める。私達の気持ち、分かったでしょ?」
こいしに言われてハッとなった。
そうだ。
俺もこいしに何かあったらって考えると悲しくて苦しい。
こいしには戦って欲しくない。
そうか。
いつもこいしはこんな思いをしているんだ。
心配で心配で胸が張り裂けそうで……。
一人で戦うといった瞬間、俺は頭が真っ白になってしまった。
俺は思いをさせてしまっていたのか。
「……ごめん」
「謝らなくていいよ。分かってくれたならさ、みんなで一緒に戦おうよ」
「あぁ、頼む。俺と一緒に戦ってくれ!」
俺はみんなへ向けて頼み込んだ。
するとみんなからは何か言葉が返ってくる訳じゃなかったが、俺たちの真横まで歩いてきて武器を構えた。
俺たちの間に言葉なんて必要なかった。
当然だと言わんばかりの動きだった。
「話は纏まったか? だが、誰が相手であろうとも、俺に勝つことは出来ないけどな!」
「そうか? やってみなければわからないぞ?」
そして俺は神成りを、ジーラは拳銃を構え、そして同時に攻撃を開始した。
はい!第212話終了
戦いはこいしがいる事でこいしが説得に成功し、全員で戦うことになりました。
これもこのルートの特徴ですね。
こいしが居たり、極が居ないことで色々変わります。
それでは!
さようなら