無意識の恋 Second stage   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は幻想郷の守り神達、紅蓮編となります。

 紅蓮編は今までとは少し雰囲気が違うと思います。

 悲惨な過去を追った燐火とシャロ、果たして紅蓮はどうなのでしょうか?

 それではどうぞ!


勝たねば死ぬ。力を求め続けた少年

「みんな、飯だぞー」

 

 一人の少年が洞窟へ帰ってきてたくさんの子供たちに飯を配る。

 

 子供たちは痩せ細っており、まともな食事を食べれていないというのが伺える。

 

 そして食事をくばっている少年ですらも痩せ細っており、食事を入手するために苦労したのか身体中、すすだらけになってしまっている。

 

 そんな少年は皆が美味しそうに食事をしているのを見てニコニコしていた。全く自分は手をつけずにただそこでじっとしていた。

 

 少年もお腹がすいていたであろう。しかし、少年は自分よりも子供たちのことを優先にしたのだ。

 

「兄ちゃん、これからまた戦いに出る。しばらく帰って来れないかもしれないが、心配しないでくれ。兄ちゃんはまた帰ってくる」

『はーい』

「いい返事だ」

 

 少年は子供たちの頭を撫でると少年は踵を返した。

 覚悟を決めたような表情をうかべる少年。

 

「こいつらを絶対に守れる力が欲しい」

 

 そう呟いて少年は洞窟を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の名前は蓮太郎。どこにでも居る普通の少年だったはずなんだが、ある日両親が辻斬りにあってこの世を去ってしまった。

 両親が居なくなったことによって俺たち兄弟は途方に暮れた。これからどうやって生きていけばいいのか。

 

 俺は長男だ。そのため、みんなを守っていかなければならない。だから俺は食事を求めて旅に出ることにしたのだ。

 だが、そう簡単に行くわけが無い。行く先々で命を狙われる。今の今まで戦ったことの無い俺が直ぐに戦えるようになるわけが無い。

 

 そのため、俺は力を求めた。

 力を求め、数年間師匠の元で剣を習った。そして今の俺がいる。

 

 俺は腰に剣を提げて着物を着て食事を求めて旅をしている。そんな中でも当然命を狙ってくる人はいるもので、そんな時は――

 

「ぐはっ」

 

 高速で剣を抜き、そして切り捨てる。

 やらなきゃやられるのだから誰だってそうする。この世界は弱肉強食。強いものが喰らい、弱いものは喰われるのをただじっと待つしかないんだ。

 俺は喰われない。弟たちを守らなきゃいけないんだから、今ここで俺が喰われるわけにはいかない。

 

 師匠の元で剣術を鍛えた俺がそうそう負けることは無い。たった一人の存在を除いて。

 そいつは俺と同じ師匠の元で一緒に修行をしていたものなんだが、そいつは剣の才能がすごく、わずか数ヶ月で修行を終えて師匠の元を去っていった。

 俺はそいつと手合わせをして一回すらも攻撃を与えることが出来たことがない。それほどの実力者だ。

 敵でなければいいと思っているんだが、あいつは強くなる為ならば何でもするというようなやつだ。悪に手を染める可能性がある。

 

 その時だった。見覚えのある着物を着た男性が居た。

 そいつは紫色で、そして腰に禍々しい剣を提げているやつだ。

 異様な雰囲気を感じとった俺は咄嗟にその場を後にしようとする。

 

「……どうして俺を避ける? れんじゅうろう」

「俺は蓮太郎だ!」

 

 昔のくせで思わず返してしまった。

 そいつはこっちを見ることも無く俺のことを認識してきているようで、かなりやばい状況なのは直ぐに感じとった。

 振り向くとそいつは片目が斬られて潰れており、そしてもう片方の目は充血していた。

 かなり傷だらけの様子で、歴戦の戦士といった風格だ。そしてその風格は俺に威圧感をもたらした。

 

「ひ、久しぶりだな。……郷間(ごうま)

「……」

 

 俺の挨拶を無視して俺の事をじっと眺めている郷間。その様子を見て俺は身構えてしまった。

 気がついたら郷間は俺の目の前に居り、剣が俺の横すれすれに振り下ろされていた。

 

 全く見えなかった。少なくともあの頃は俺でもこいつの剣は見えていた。だが、今は全く見えなかった。

 俺が成長しているようにこいつも成長しているようだ。それも俺の成長なんかとは比べ物にならないくらいの速度で成長をしている。

 

「ぐあぁぁぁっ」

 

 背後から悲鳴が聞こえる。

 郷間が剣を鞘にしまったのと同時に俺は背後を見た。

 するとそこには見知らぬ剣士が居て、胸から血を流して倒れていた。

 恐らくこいつは俺を殺そうとしてきたのだろう。

 

「ふん、俺にばかり集中していないで背後も警戒しろ馬鹿者」

 

 郷間に助けられてしまったようだ。

 有難いが、郷間の目的が全く分からない。今までの郷間だったら俺一人死んだってどうとも思わないはずだ。

 なのに、俺を助けてくれたのだ。

 

「れんしろう」

「蓮太郎だ」

「着いてきてくれないか?」

「? ……わかった」

 

 イマイチ状況が理解出来ていないので、これが危険なところについて行くということなのかもしれないと思ったけども、助けられてしまった手前、俺は断ることが出来ない。

 なので俺は大人しく着いていくしか選択肢はなかった。

 

 しばらくついて行くと洞窟らしきものが見えてきた。

 俺たちが住んでいる洞窟とは違う洞窟のようだ。その中はかなり鬱蒼としており、何が起きてもおかしくないというものだった。

 

 こつこつこつと俺と郷間の下駄の音だけが辺りに響く。

 その時だった。

 

「ふんっ」

 

 郷間が突然剣を振ってなにか飛んできたものを防いだようだった。

 見てみるとそれは矢だった。そんなものが突然何もない所から飛んでくるわけが無い。

 確実に何かがいる。そう確信を持った。

 

「役割を果たしてもらおうか」

「へ、役割?」

「囮だ」

「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 役割ってそう言う!?

 それだけ郷間は俺に言い放つと一瞬で郷間は洞窟の奥の方へと走って行ってしまった。

 走るのはやすぎだろう……。

 仕方がない。ここは俺一人で何とかするしかないだろう。

 

 幸いにも俺は洞窟で生活しているから暗いのには慣れているんだ。

 長い洞窟暮らしで身につけた能力を舐めるなよ。

 

 俺はこの薄暗い中でもしっかりと矢の存在を認識して回避するか切り払う。

 一番最初は不意を突かれたため、かなり驚いてしまったものの、慣れてしまえばこんなものは回避するのは簡単だ。

 そして回避しつつ、攻撃してきている奴らに少しづつだが、近づいていく。

 

「終わりだ!」

 

 遂に全員を倒すことに成功した。

 この程度ならば俺でも何とかなるようだ。

 

「しかし、郷間の奴はどこまで行ったんだ?」

 

 敵を全て倒したので、俺も郷間を追って奥の方へと突き進んでいく。

 すると、急に血の臭いがしてきた。そしてその血の臭いは奥に行けば行くほど強くなっていく。

 

「この奥には何があるんだ?」

 

 俺は思わず小走りになる。

 ここまでで分岐している道はない。郷間は必ずこの先に居る。

 

「え」

 

 俺は思わず声を漏らしてしまった。

 洞窟内に明るい場所があったのだ。これは人工的に作られたものだ。

 ここはただの洞窟ではないようだ。恐らくこの洞窟自体が人工的に作られたものなんだろう。そしてこの先にはその秘密が隠されていると確信した。

 なにせ、郷間があれほど急いでいたんだ。何も無いはずがない。

 

 すると男の声が聞こえてきた。

 

「神力水を渡せ!」

「だ……めだ」

「え、」

 

 俺は再び素っ頓狂な声を漏らしてしまった。

 なにせ郷間は男に首元を掴まれている。これはかなりの異常事態だ。

 郷間は俺が思うに相当強いやつだ。しかし、そんな奴があの男に負けたのだ。

 あの男はどれほどの力を持っているんだろうか。

 

 本来ならばここで逃げるのが得策なんだろう。だが、さっき助けられてしまった手前、見捨てて逃げるなんてことは出来やしない。

 俺は震える手を何とか押さえて剣を構えた。

 

「何をやっている、れんじろう! 早く逃げろ!」

「逃げないし、俺はれんじろうじゃなく蓮太郎だ!」

 

 すると男も俺の存在に気がついたようで、こっちを見た。

 

「お前も神力水を狙ってきたのか?」

「神力水?」

 

 聞いたことの無い名前だ。

 

「神力水は一滴飲めばどんな病気でも治り、全てを飲み干すと神に値するほどの力を得ることが出来ると言われている水だ。それを今、こいつが持っている」

 

 言われて郷間の手を見てみる。するとそこには真っ白な瓶がしっかりと握られており、その手は決して離されることは無い。

 恐らくあれが神力水というものなんだろう。つまり、郷間は神力水を手に入れるためにここに来たんだろう。

 

 郷間は俺よりも強さに恵まれている。そんな郷間がどうして神力水を欲しがるのかがよく分からない。

 

「さて、小僧。その手に持っている神力水を寄越せ」

「ふ、お前に渡す神力水はな――がはっ」

 

 郷間にボディーブローを入れる男。その姿を見ていられずに俺は飛び出した。

 郷間が勝てなかった男に俺が勝てるはずがない。そう思ったが、ここで動かないなんて人間失格だ!

 

「がぁっ!」

「無力だ。非常に無力だ」

 

 俺はいつの間にか地べたを這っていた。

 何をされたのか全くわからなかった。だけど、ひとつ分かったことは――次元が違いすぎるということだ。

 

「さて、貴様らを殺して頂くとするか」

「ぐっ!」

「何!?」

 

 郷間は男を蹴り飛ばすと高速から逃れて俺の方へきた。

 

「れんごろう、動けるか?」

「すこしなら」

「なら、これを飲め」

 

 そう言って置いてくれたのは神力水だった。

 郷間はこの神力水が欲しくてこの洞窟に入ってきたはずだ。そしてその狙いはやはり力だろう。

 さっきの説明を聞く限り、俺が少しでも飲んでしまったら神に値するほどの力は得られなくなってしまう。

 だと言うのに郷間は俺の目の前に置いたのだ。

 

「どういうつもりだ」

「いいから、俺が足止めをする。お前はそれを一気飲みしろ」

「え?」

 

 益々郷間の考えていることがよくわからなくなってきた。

 どうして俺に力を寄越す? 力なら自分で使えばいいだろう、俺なんて放っておいて……。

 

「いいから早く!」

「わ、分かった」

 

 どういうつもりかは分からないけども俺は郷間を信じてこれを一気飲みすることにした。

 液体が体に流れ込んできた瞬間にとてつもなく体が熱くなってきた。恐らく傷を修復しようとして発熱しているのだろう。

 それだけじゃない。筋肉が膨張していく。筋力がどんどんと上がっていく。

 

「させるか!」

「もう遅い!」

 

 男が俺に襲いかかろうとした瞬間に郷間は男を蹴り飛ばす。

 少し不安になったものの、託されたものはしっかりとこなさなくてはならない。

 俺がこの力を得て郷間を助ける。

 

 そして遂に最後の一滴を飲み干した。

 

「ぐ」

 

 急に心臓がはねた。それと同時に声が聞こえてくる。脳内に直接語り掛けてくるような感じだ。

 

『お前はどのような力が欲しい』

 

 少しびっくりしてしまったものの、俺は正直に答えることにした。

 

「力が欲しい。みんなを守れるようになる力が!」

 

 その瞬間、更に力が湧いてきたような気がした。

 胸の内から力が湧いてきて収まらない。

 

『お前に空間を移動する力と戦う力を与えた』

 

 今までと感覚が違う。体が軽い、これならば今までの数十倍の速度で動くことが出来る。

 これなら行ける。そう思って二人の方を見てみると――

 

「ごう……ま?」

「一足遅かったようだな」

 

 郷間は力なくその場に倒れていた。俺が神力水を飲むスピードが遅かったため、その間にやられてしまったのだ。

 俺がもっと早い行動をしていれば郷間流行られずに住んだかもしれないのに……。

 

「許さない!」

 

 俺は叫んで走った。そしてそれに合わせて俺は剣を振った。

 その剣は燃え盛っていた。どうやら俺の力が影響して件を燃やしているらしい。

 そして俺はその剣で男を切った。

 

 するといとも簡単に男の首は斬れ、男は全く声を上げる暇もなく絶命した。

 神力水を飲むだけでこうも違うのか。

 

「が、は」

「郷間!」

 

 郷間が声を出した。それに反応して俺は郷間の元へ走って向かう。

 かなり弱っているものの、何とか目を開けて俺のことを認識している様子の郷間。だが、胸を見ているとかなりの出血量だ。これは恐らく男が持っていた剣で斬られてしまったのだろう。

 

「今すぐ人里に連れて行ってやるからな」

「いや、もういい」

「え?」

「俺の当初の目的は達成されたからな」

 

 当初の目的? 達成されたって……あの神力水は俺が飲んでしまった。そのため、達成はされていないはずなんだが。

 

「もともとあれはお前に飲ませるつもりだった」

「え?」

「お前、兄弟を守りたいんだろ? だから力を求めている。そんなお前に俺は感化されてしまったんだな」

 

 郷間がそんなふうに考えてくれていたなんて知らなかった。勝手に俺は降魔に対して苦手意識を持ってしまっていた。

 俺は郷間の手を握る。

 

「お前から貰ったこの力を使って皆を守り続ける」

「あぁ、期待しているからな。蓮太郎」

「郷間!?」

 

 その瞬間、郷間は倒れてしまった。力尽き、天へ登って行ったのだろう。

 最後の最後にやっと俺の名前を言ったな、畜生。

 

「お前の分も生きるからな」

 

 勝たないと死ぬ。この世界はそんな残酷な世界だ。だから俺はこれからも力を求め続ける。




 はい!紅蓮編終了

 今までとは違ってバトルものでした。

 紅蓮の昔のライバル的存在、郷間。本当は良い奴だったんですね。

 次は彼方で恐らくこの幻想郷の守り神たちは終了です。

 それでは!

 さようなら

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