この小説も三周年を迎えました。
ということでついに彼方編です。
一応、彼方で紬を除けば一番最後に神になったキャラですけど、シャドウの過去も知りたい人がいたら書きます。
最後にアンケートを残しておくので出来たら投票お願いします。
それではどうぞ!
――あぁ、なんでだろう。
人同士が争い、血を流し、そして一つのものを求めて殺し合う。
――なんでだろう。
人間とはなんて醜い生き物なのだろうか。
一人の少女は人間同士で争っている姿を見て心を冷やしながらそんなことを考えていた。
全く笑わない少女だった。人形のようだとすら周囲に言われている。
表情筋はすっかりと固まってしまっており、これからもずっと笑うことは無いんだろうなと少女は考えている。
報道されている戦争の写真。
この争いの種となっている存在のことを彼女は知っていた。
「ねぇ、かなた」
「なに、ハル」
ハルが名前を呼ぶとかなたは直ぐに目の前に顔を出した。
スキマという力を使ってやってきたのだ。
かなたは神である。そんなかなたが友達だからこそハルはこの戦争のきっかけを知ることが出来たのだ。
「バカみたい。神力水を手に入れるためだけにそんなに争うなんて」
「そうかな。私は神になってから長いからよく分からないんだけどね、人間にとっては物凄いことなんじゃないかな」
確かにハルもその神力水の凄さに関しては理解しているつもりだった。
ただの人間が神の力を手に入れることが出来る。それはこの世の全てを支配したのと同義だ。だからこそ、ハルは心が冷めてしまったのだ。
人間の愚かさ、浅はかさに気がついてしまったから。
そして悪い心を持った人間の手にそれが渡ってしまったら大変なことになるとも気がついていた。
ただ、だからといって自分に何が出来る訳でもない。そう考えて傍観に徹しているのだ。
「ねぇ、気がついているんでしょ? あの水は危ないものなの。もしあれが悪用する人に渡ってしまったら……この世界は終わってしまう。簡単に世界を作り替えることが出来るほどの力を得ることが出来るのよ。そんな事のためにあれが存在しているわけじゃない。本当に必要としている人を助けるために存在しているんだよ」
このようにかなたはハルに何度も声をかけているものの、ハルは一度たりとも頷いたことがない。
それどころか興味なさげに漫画へと集中してしまうのだ。
そんなある日の事だった。
遂にハルが住んでいる地域にまで戦争の魔の手が迫ってきた。
町は焼かれ、全てが崩壊してしまった。
シェルター内だけが唯一の安全地帯。だが、籠ってばかりいてもいずれは食料が尽きて死んでしまう。
なので、両親が食料を集めに行こうとシェルターを開けると、そこには敵国の兵士が立っていた。運悪く、最悪のタイミングでシェルターを開けてしまったのだ。
「見つけたぞ。死ね!」
シェルター内に投げ込まれる大量のダイナマイト。
万事休すかと、そう思ったその時、爆発と同時にハルだけ落ちたのだ。
どこに落ちたのか? それは分からないが、ハルは気がついたら目玉だらけの場所に立っていた。
「危ないところだった。そして済まない。君の両親は助けられなかった」
「かなた?」
ハルは助かった。
そしてその助けた人物というのはかなただった。
そんなかなたは今、ハルに土下座をしている。
普通、神が人間にそんなことをするはずが無いのだが、かなたは土下座をして両親を助けられなかったことを謝った。
だが、ハルの心が冷えていたせいか、両親が死んでも悲しいとは思わなかった。
ただ、その代わり、湧いて出てきたのは怒りだった。この世界への怒り。この戦争への怒り。くだらない争いをしている人間への怒りだった。
「こんな世界、ぶっ壊してもいいよね」
「え、ハル?」
「行こう、神力水を奪いに」
そしてかなたはハルに押し切られるがままに超神水の在処へとスキマを繋げた。
そこは洞窟だった。そしてその最深部、神力水の目の前にやって来ていたのだ。
目の前には小瓶のようなものがあり、直感的にハルはこの小瓶の中に入っている液体が神力水であることを理解した。
小瓶を手に取ってみるとかなりずっしりとしており、ただの液体なのだが、水よりも重みがあった。
これを飲めば神と等しい力を手に入れることが出来る。
そう考えてハルが神力水に口をつけようとしたその時だった。
バァンと破裂音がして、背中に激痛が走った。
ハルはそれが自分が撃たれた痛みなのだと理解した。
激痛で神力水の小瓶を落としてしまう。そして蹲って動けなくなってしまった。
入口方面を見てみると武装した男の人がそこに立っていた。
その手には銃を手にしており、その銃をハルに向けて発砲したのだ。
「はは、ははは、はははは! 神力水は俺のものだ! ついに手に入れたぞ!」
神力水を拾い上げる男性。
ハルは直感的に察した。この人にだけは神力水が渡ってはダメだと。
「くぅ……」
何とか手を伸ばして取り上げようとするものの、男性の力には勝てないのと、痛くて力が入らず、取り上げることは出来ない。
「お前は俺が神になったあとたっぷり遊んでやるからな。まぁ、その頃には死んでいるかもしれないがっ!」
男性がゲスな笑みを浮かべた瞬間、その場からぶっ飛んで行って、神力水が地面に落ちる。
「ハルにそんな表情を向けるなケダモノ! ハルは私が守る!」
「かなた」
そう、ハルを助けたのは他の誰でもない、かなただった。
かなたはハルを助けてくれた。このチャンスを逃すまいとハルは小瓶を手に取って蓋を開ける。
パァン。またもや発砲音が鳴り響いた。
その瞬間、かなたが目の前で倒れた。
「うそ、でしょ。かなた」
「私のことはいいよ。私は親友を守れて満足してるんだ。十分神として務めあげたからね。来世は幸せな人生を歩めると信じているよ」
「な、なんでそんなことを言うの」
その時、久しぶりにハルの目から涙がこぼれ落ちた。
かなたは神とはいえ、急所を打たれてしまったらしく、もう助からない。
流石に親友が死ぬというのはハルにとっても心を揺れ動かされた。
ぐったりともう動かなくなってしまった親友を見つめて神力水を持つ手に力を入れるハル。
「さぁ、それを渡せ!」
再び男性がハルに銃を向ける。いつ撃たれてもおかしくない状況だ。
その状況でハルは一気に神力水を口に放り込んだ。
その瞬間、発砲音が鳴り響き、ハルの胸に銃弾が打ち込まれた。
「ち、このガキ、飲みやがったな! この神力水は瓶があれば勝手に溜まっていくが、溜まるのにかなりの年数がかかるんだぞ!」
「このガキ!」
力なく倒れているハルと抜け殻となってしまったかなたの体を交互に蹴る男性。
『お前はどのような力が欲しい』
ハルの脳内に直接語り掛けてくる声。
――この不条理な世界を破壊したい。そしてもう大切な人を失わないための力が欲しい。
その瞬間、ハルの体には力が湧いてきていた。
ハルは起き上がると思いっきり男性を蹴り飛ばしていた。
「がはっ」
あまりの衝撃に銃を手放してしまう男性。
そしてハルは転がっている神力水の小瓶を手に取った。
「こんなものがあるから…………こんなものがあるから争いが起きるんだよ! こんなもの!」
ハルは思いっきり地面に神力水の小瓶を叩きつける。
だが、小瓶は壊れるどころか、割れる気配すらない。
「無駄だ、神力水の小瓶は神々が作りし最強の素材だと聞いたことがある。人間が破壊できる代物じゃねぇ」
ニヤニヤと小馬鹿にするような笑みを浮かべる男性。
その話を聞いてハルは小瓶を拾う。
「この神力水の噂が本当ならば、私はこの水を飲んだから神になったということになる」
「……まさか! やめろ!」
「はぁぁぁっ!」
ハルは力を込める。
すると体の内になにかの力を感じたので掌に集めてみると、その掌にはエネルギーボールのようなものが発生した。
そのエネルギーボールの中に入っている小瓶はどんどんとヒビが入っていき、やがて粉々に砕け散ってしまった。
「あ、あ、あ」
男性はショックで声にならない声を上げる。
「そしてこんな世界、もう要らない! 壊れてしまえ!」
ハルはもう一度掌にエネルギーボールを作り出すと、地面にそれをたたきつけた。
その瞬間、世界の崩壊が始まった。
大地は割れ、火山は噴火し、海は干上がる。
こうして世界が終わりを迎え、ここに破壊神『彼方』が誕生したのだった。
「……仕方ねぇ。直しておいてやるか」
はい!彼方編終了
この彼方という名前は親友の神であるかなたから撮ったものだったんですね。
そして破壊神となった訳。
基本はこの話を見なくても本編は楽しめるのですが、大切な人を失わないための力というのはかなり本編でも中よな要素となってきます。
そして彼方編はこれで終わりではありません。
幻想郷に行ったあとも、彼方にはドラマがあるので、気が向いたら書きたいところですね。
書くとしたら最終章完結後になります。
それでは!
さようなら
シャドウの過去
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いる
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いらない