それでは前回のあらすじ
真と妖夢が手合わせをする事になった。
それでは!
さようなら
side真
「久しぶりですね。こうやって向き合うのも」
嬉しそうな声色で言う妖夢。
「ああ」
素っ気ない返事だが、妖夢の剣を見るのは楽しみだ。どこぞの戦闘民族でもないが、ワクワクしている。
昔はこういう風に向き合って稽古をつけてもらってたな〜と懐かしい気持ちになる。
「さぁ、やりますよ」
そして妖夢は人差し指と中指を立てる。
「ルールは二つ。ひとつは相手を殺さない。もうひとつはスペル無し。そして」
そう言って妖夢は懐からコインを取り出した。
「これが地面に落ちたら開始で」
そして妖夢はコインを指の上に置いて弾く体制に入った。
よくあるやつだな。
俺はいつもは実践で戦ってばっかりだったからこうやって決闘形式のマジのってあんまりやった事ないな。
やったのは大会の時と音恩位だと思う。音恩も強くなっててびっくりしたな。
大会の時は負けちゃったみたいだけど、妖夢のことだから以前よりも強くなっているだろう。
「行きますよー!」
そう言って妖夢はコインを弾き、刀を二本構えた。
自然と俺はそのコインに視線が向く。それは妖夢も同じようで二人で同じ一点。コインを注視する。
自然とコインがスローに見えた。
相当な集中力だからだろうか。動体視力のコマ数が多くなっている。
コインが落ちた瞬間、勝負開始。コンマ一秒でも早く動きだした方が有利になる。
寒いはずなのに汗が出てくる。緊張の汗だ。
これは稽古だ。だが、負けたくない。それは妖夢も同じだろう。だから──
「「全力で!」」
コインが雪に触れる。
その瞬間俺と妖夢は雪を蹴って一気に距離を詰める。ほぼ同時と言っていいだろう。俺と妖夢の反射速度はほぼ同じだ!
カキィィッン!
刀同士がぶつかり合う甲高い音が鳴った。
やはり妖夢は昔より強くなっていて、俺も強くなってるのにかなり重い。寧ろ気を抜くと押し返されそうだ。
『妖夢は強いね。だけど真も負けてない。そうでしょ?』
ああそうだ。俺もこの1ヶ月、ただ怠けていたわけじゃない。
過酷な筋トレ。霊力不足は日常茶判事。トレーニングしてきたんだ。妖忌さんのもとで。
これしきのことで押し返されてたまるか!
そして俺は腕に今出せる最大の力を込める。
「重い……っ!」
それは無意識だろう。妖夢はそう呟いた。
そして!
「貫く!」
押し切る!
妖夢の二本の刀を弾き、妖夢を押し返した。
妖夢は押し返された反動で数メートル飛び、刀を雪に刺してそれ以上飛ぶのを防ぐ。
「やっぱり真は凄いです。私の絶対的自信が揺らぐ人の内の一人です」
絶対的自信があるなら
「だからこそ……。真と刀を交えるのは楽しいです。真とやっていると自分が強くなっていくのが実感出来るから!」
ニコッと笑う。
俺もだ妖夢。
俺も戦法が同じの妖夢と戦って、自分の成長が分かるから。
「やっぱり妖夢は強いな。だけど剣筋が単純な所は直ってないみたいだな。だけどそれでそこまでの力を出せんのはスゲーよ……はぁ……」
「真だって、剣一本で私の二本の刀を弾いただけではなく、余波だけでここまで私を吹っ飛ばすなんて……なんて馬鹿力ですか……はぁ……」
今の一撃だけでお互いに息を切らしてしまう。
だが、こんな程度で息を切らしていたらあいつには勝てない。
見えなかった。一瞬で叶わないって思ってしまった……。
俺は稽古と言えどこんな所で負けてられない。
「すぅ〜〜っ、はぁ〜〜……」
大きく深呼吸をして呼吸を整える。妖忌さんに教えて貰ったことだ。
『力を長時間使うと息切れするじゃろ?実は霊力を扱う上で一番の強敵は息切れなんじゃ。息切れすると霊力コントロールが乱れてしまう。すると繊細な技が使えなくなってしまう。だから息切れしたら深呼吸でもして呼吸を落ち着かせろ』
戦闘する上で一秒でも長く息切れしていた方が不利だ。だから息を整える
「息を整えるの早いですね!?」
まだ呼吸を整え終わらない妖夢は息を荒くしながらそう呟いた。
しかしその数秒後にはもう整え終わるのだから、妖夢も充分早い。
「さぁ、第二ラウンドだ!」
俺が飛び出すのに合わせて妖夢も飛び出す。
先程も言った通り、俺と妖夢の反射速度はほぼ同じ。
そして俺はコンマの速度で動き出すことが出来る。反射速度では誰にも劣らない自信がある。
そんな俺と同じ速度なんだから、当然妖夢も俺が動き出すのとコンマの違いしかないだろう。
次は妖夢の一本の刀が薙ぎ払うように飛んできた。
それを俺は剣先を下に向け、防御する。
しかしそれは愚策だった。
「囮か!」
剣が一本しかない剣を防御に使ってしまったため、もう一本を防ぐ
「そうです!真は斬っても死なないですよね?」
怖いよ!と言うかそう言う事をその顔で言わないで?口は笑ってるのに目が笑ってない!めっちゃ据わってるから!
そしてもう一本の薙ぎ払いを足からの霊力の噴射でジャンプして避ける。
避けたと同時に回し蹴りを放つ。すると妖夢は腕だけ動かし、俺の回し蹴りを受け止める。
「流石の反射だな」
「剣士に反射は必須です」
『良い攻撃だと思ったんだけどね。流石妖夢だね。そうそう出来る人は居ないよ。ゼロタイム反射なんてね。あの霊夢だって一秒はかかるんだから』
ゼロタイム同士で戦う時は考えていたら遅れる……。考えるな……。感じろ。
「真っ!霊力が!」
そう言われてハッとなる。
「悪い悪い。さぁ、続きだ続き」
『待って!』
続けようと思ってると刀の中から待ったがかかった。
「なんだ」
『空』
そう言われて空を見るともう既に藍色に染まっており、空には三日月が浮かんでいた。
「そうだな。ここら辺にしようか」
「はい。そうですね」
そして俺は神成りを紬に戻し、妖夢は刀を鞘に仕舞った。
「んじゃ帰りますかね」
そして俺達は三人並んで帰った。
はい!第52話終了
妖夢対真。どうでしたでしょうか?
まだまだこの章は続きます!
それでは!
さようなら
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