「うー、何も見つからない」
森の中を探索し始めて二時間ほどが経っただろうか。
修也とヲリヴィアは森の中を二人で探索していたが、その間に人や家を見つけることはなかった。
「とりあえず、そこの木の幹にでも寄りかかって少し休憩しましょうか」
そういって、木の下に座り込む修也。
ヲリヴィアも無言でそれに続き、お互いによっかかる形となる。
ヲリヴィアは汗一つかかず涼しい顔をしているが、修也はそうもいかなかった。
軽く息を整え、服の袖で顔の汗を拭う。
さすがに、元運動部とはいえ二年近くも碌に運動していない大学生に二時間歩きっぱなしは厳しかったらしい。
さらに、現在は何の現象か体が変化しているのだ。体にかかる負担は増えていると考えられる。
「ちょっと、疲れた、な……。ヲリヴィアさん、すぐに起きるけど、何かあったら教えて」
そういうと、ゆっくりと横になり目を閉じ始める。
十数秒後、すーすーと寝息が聞こえてくる。
肉体の変化の影響であろうか。
どちらにせよ、すぐに起きれるなどということはなく。
彼が起きたのは、その数時間後であった。
「ヲ」
◆
ゆさゆさと肩が揺らされる。
「んん……。ん」
それで目を覚ましたのか、目を擦りながら起き上がる修也。
まだ眠そうな顔をしてはいるが、しかし寝る前の疲労は残っていないように見受けられる。
「ヲリヴィアさん、どうしたの……って、暗い?!」
傍らのヲリヴィアに何かあったかと尋ねようとして、既に夜が更けていることに気づく修也。
そのことに慌てつつも、とりあえず立ち上がろうとし──、
「おー、起きたのだー」
「うわっ!」
目の前にあった少女の顔を見て驚き、尻餅をつく。
修也の顔のすぐ前に、金髪の女の子の顔があって、目があったのだ。
頭の左上に小さな赤いリボンをつけた、金髪の少女。
年は現在の修也よりさらに若く見え、おそらくは小学生くらいであろうか。
その赤い瞳が夜の闇の中で輝いて見える。
その小さな口が開かれ、言葉が紡がれる。
「ねえ。あなたは食べて良い人間?」
その口から放たれたのは、予想外の一言であり。
理解できずに数秒ほど固まり。
その意味を理解して、彼の顔は青ざめた。
「──ッ!」
本能が訴えかける。
この少女は危険だ。
にげろ逃げろニゲロ……!
しかし、体は動かない。
ガタガタと震えるのみで、一向に動きはしない。
心拍数が急激に上昇する。
脂汗が噴き出し、少女の動きがやけにスローに見える。
「返事がないってことは、食べていいのかな? じゃあいただきまーす」
「──ぁ……あぁ……」
少女の口がゆっくりと開き──、
「あーん、ってきゃっ!」
少女の背中に何か爆撃のようなものが直撃した。
「……え?」
視線を巡らせると、その先にいたのはヲリヴィアで。
「ヲ」
彼女が手を伸ばして呟くと、彼女の頭部の被り物の口が開き、小型の戦闘機のようなものがいくつも飛び出してきた。
その戦闘機は、小さな銃弾を撃ってきたり、そのまま突撃したりと。
金髪の少女に対して攻撃をしかけていっている。
「ちょ、ちょっと。これは何、痛っ」
「ヲリヴィア……?」
これはいったい何なんだろうか。
そう思いヲリヴィアに視線を向けると、ギリギリ人が乗れそうな程度の大きさの戦闘機を出し、こちらに手を向けてきた。
とりあえず、その手を掴んでみる修也。
「ヲッ!」
そんな掛け声と共に、戦闘機が飛び立つ。
金髪の少女はそれを追いかけようとするが、いまだ残っている小型戦闘機の邪魔によってそれは防がれた。
その隙に、二人はその場から逃げ。
少女が戦闘機を全部壊した頃には、すでに二人の姿はまったく見えない状態であった。
「あー。うーん、まあいっかなのだー」
もう飽きたのか、それを追いかけるのをやめ、どこかへ歩いていく少女。
夜空を滑空する二人。
秋の夜風が肌に突き刺さる。
さてはて、この戦闘機はどこへ向かっているのであろうか。
それはまだ、誰も知らない。
宵闇に赤く光る瞳。。
人ならざる妖。
銀の少女は人か妖か。
名前のない怪物よ、そなたは美しい。
貴女はだあれ?