夜空に、小さな光が輝く。
光の側には、二人の少女。
静かな夜に戦闘機の音だけが響くなか、修也はヲリヴィアに話しかける。
「ねえヲリヴィアさん。これ、どこまで飛ぶの……?」
そう尋ねるが、ヲリヴィアは何も答えない。
答えることができず、無言で顔を背けるだけであった。
「え、ちょっとどうするのこれ。
……って、あれ町じゃない? 家とか見えるし」
ヲリヴィアに抗議しようとした修也であったが、その最中になにやら町らしき場所を発見する。
前方にあるそこを指差してヲリヴィアに教える修也であるが、その途中に何やら嫌な音がし始める。
その音は断続的に続き、それに連動して機体の高度が徐々に下がっていく。
これは、まさか……。
嫌な予感がする修也がヲリヴィアを見やると、彼女は目を合わせてコクンと頷く。
機体の高度がどんどんと下がっていく。
黒煙がもうもうと上がる。
この機体もう限界に近く、このままでは地面に落ちる前に爆発してしまうだろう。
ヲリヴィアもそう判断したのだろうか。彼女は修也の手を引き、そのまま体を抱きかかえた。
「うわ、ちょっ……きゃあああ!」
修也が混乱しているのを無視し、そのまま地面に向かってジャンプするヲリヴィア。
数メートルの滑空。
草の生えた柔らかな地面の上に、二人はスライディングするような形で着地した。
「た、助かっ、た……?」
半ば腰を抜かしながらも、傷もなく着地できたことに安心する修也。
文字通り胸を撫で下ろしながらヲリヴィアの方を見やると、彼女は無傷で立っていた。
そのピンピンとした様子に理不尽な何かを感じるも、とりあえずはスルーすることとする。
「さて、ここが町かな……?」
改めて眼前を眺めると、そこに見えるは家屋の群れ。
「ともかく、行ってみましょうか」
ヲリヴィアの手を取り、歩みだす。
ようやっと、これでゆっくりと安心できる。
自然と顔が綻ぶ。
「ちょーっと待ってくれないかな、そこのお二人さん」
しかし、そこに二人を呼び止める声が聞こえた。
二人が振り向くと、そこにいたのは白髪の少女。
赤いモンペに、何かお札のようなものがいくつも巻きつけてあるのが見える。
年は16歳くらいであろうか、若干大人びたような雰囲気を周囲に感じさせる。
「爆発がいくつか見えたんだが、あれをやったのは君たちであってる?」
気さくな様子で話しかけてくる少女。
それに安心したのか、修也も応える。
「あ、はい。ちょっといろいろありまして……」
モンペ姿の少女はそれを聞いて、そうかそうかと納得した様子で応じる。
それは笑顔であるが、しかし次の瞬間その顔は引き締まったものとなる。
「じゃあどうしようか。危険人物を里に入れるわけにいかないし、ここで消しちゃおうかな?」
赤い目がギラリと光る。
歯がにいっと出され、戦闘態勢のような姿勢を取る少女。
頭にある大きめのリボンが赤く光り、炎のようなものが溢れ出す。
「ひぃっ……!?」
怯えて、身を固まらせる修也。
しかし、その反応がつぼに入ったのか、急に笑いだす少女。
「クッ……アハハハハ!
安心しなよ、冗談さ冗談。なあ、慧音」
「まったく、冗談が過ぎるぞ妹紅」
モンペの少女が後ろを振り返りそう言うと、そこには青っぽい服を着た少し身長が高めの女性がいた。
慧音と呼ばれたその女性は、モンペの少女──どうやら妹紅というらしい──を軽く叱り、それから修也とヲリヴィアに改めて向き合った。
「ふむ……妖怪、か? しかしこの様子は……まあいいか。
すまないな君たち、私の名前は上白沢慧音。この人里で教師をやっている。
すまないが、少しの間君たちを捕まえさせてもらう。手荒なことはしないから安心してくれ」
そういい終わるか否かの時には、既に妹紅は人の良さそうなお姉さんといった感じに戻っていた。
修也に出来ることはなにもないので、大人しく二人に従うのであった。
運命とは何か。
神にすら操りきれない、世界の流れ。
少女達は出会う。
密やかに、鮮やかに。
願わくば幸せでありますように。