どこにでもいる普通という言葉が似合う私。
何でもできる完璧でかっこいい幼馴染。

私はその幼馴染に恋をした。

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こんにちは、うみみです。
なかなか気持ちを言えない千歌ちゃんのお話です。


勇気のない私

私の隣に居てくれる人はいつも一緒で、いつもキラキラ輝いてて。

私はその隣に並べるように頑張ってきた。

でも、普通の私には隣に立てる資格なんて無かったみたいだ。

何をやっても中途半端。得意なことなんて何もなくて。

でも。でも、そんな私でもやりたいことをやっと見つけた。

 

それは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクールアイドルなんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

勇気のない私

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちーかーちゃーん」

 

私の名前が呼ばれ、はっ、と顔を上げる。

 

「あっ。よーちゃん。チカに御用?」

「あっはは!!何その喋り方!」

 

愉快に笑っているのは銀色のくせっ毛とクリクリした蒼い瞳に愛嬌のある笑顔が特徴の私の幼馴染み、曜ちゃん。

 

さっきの変な話し方は曜ちゃんの顔が目の前にあってビックリしちゃっただけで、普段はこんな喋り方じゃないもん。

 

それなのに、曜ちゃんはまだ笑っている。

 

「もう、いいでしょ!それで、チカに用事あるんだよね?」

「あー、笑った。ふぅ、今日は飛び込みがあって、部活には出れないんだ」

「あ、そうなんだ。分かった。みんなに言っておくね」

 

お願いね!と言って曜ちゃんは教室を出ていった。

どこ行くんだろう?と思い、時計を見ると既に放課後になっている。

 

曜ちゃんは飛び込みの選手。

飛び込む姿は凄く上手でキレイで。いずれは日本を背負うような人になる、とまで言われている。

 

それなのに私が始めたスクールアイドルを一緒にやりたいって言うと笑顔で引き受けてくれて結成した私たちのAqours。

でも、飛び込みも続ける。つまり、曜ちゃんは2つをかけ持ちしている。

 

飛び込みは言うまでもないし、ダンスだってとても上手。

そんな曜ちゃんは私にとってヒーローで憧れ。気がつけばそんな感情がいつからか恋心になって。

曜ちゃん自身にそんな気はないのに私が1人で緊張して、ドキドキして。

私も曜ちゃんも女の子。こんな気持ちを持っちゃダメなんだ。

 

ぱしっ、と頬を叩いて気合を入れる。

とにかく、まずは練習だ。

 

「梨子ちゃーん!部室行こっ!」

 

同じクラス、同じスクールアイドルの仲間の梨子ちゃんの手を引いて部室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!よーちゃん、大会なの!?」

「ごめーん!そうなの」

 

久しぶりに練習もない土日。

曜ちゃんと遊んでリフレッシュしようと思った矢先、曜ちゃんは大会だ。

 

「じゃあ、応援に行くっ」

「ホント!?それならこの曜ちゃん、千歌ちゃんのために優勝台のてっぺんに立つであります!」

 

敬礼をしながら笑顔で言う曜ちゃん。

 

そんなことばかり言って、いろいろ期待しちゃうじゃん・・・。

 

「千歌ちゃん?いきなり黙っちゃってどうしたの?」

「ううん。何でもない。それより、大会頑張ってね!」

「うん!」

 

私はこうやって曜ちゃんを応援できるだけで幸せなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会当日。

Aqoursのみんなは用事があるって言って今日は来ていない。もしかしたら、私の気持ちに気づいて気を使ってくれたのかもしれない。

 

素人の私の目からしても曜ちゃんの演技はずば抜けていた。

 

「あの渡辺さんてスクールアイドルもやってるんだよね!」

「そうそう!確か、Aqoursだっけ」

「すごいよね!飛び込みとスクールアイドル2つやるなんて!」

 

少し前の席で見ている他校の生徒が曜ちゃんのことを褒めていた。

 

そうなのだ!よーちゃんは凄いのだ!

 

まるで自分のことように嬉しくなってしまう。

 

「でも、Aqoursのリーダーの子。なんだっけ、高海千歌?なんかぱっ、としないよね」

「あー。分かる。なんか普通?地味?って言うの」

「そこまでは言ってないけど、周りの子に比べるといまいちだよね」

 

え?

今、私のことを言ってるの?

 

本人たちは悪口のつもりは全くないだろう。

でも、当事者の私にはどうしても悪口にしか聞こえない。

 

「だね。引き立て役、みたいな」

「言い過ぎ。表彰式も始まったし、帰ろっか」

 

2人は笑いながら観客席を離れていったが、私はその場から動くことが出来なかった。

 

普通。

そんなのは誰よりも私自身がよく分かってる。

誇れるものなんてないし、誰にも負けない特技がある訳でもない。でも、このスクールアイドルだけは私を輝かせてくれる。私が普通じゃなくなるって思ってたのに。

 

それなのに・・・・・・!

 

膝に置いた手をグッ、と力を込めて握る。

 

『はい!この結果は私1人の力ではなく、支えてくれた仲間、友人。指導してくださったコーチたちのお陰です!感謝の気持ちを忘れずに、これからも練習に励んでいきます!』

 

スピーカーから聞こえてきたのは大好きな幼馴染みの声。

 

そっか、曜ちゃんはまた優勝したんだ。

 

「羨ましいなぁ・・・」

 

ポツリ、とこぼれた言葉は曜ちゃんを褒める言葉でもなければ、羨ましいという妬みだった。

 

ダメだよ。曜ちゃんが凄いのは今まで頑張ってきたから。

何をしても途中で投げ出したチカがそう思う資格なんてない、と必死に心に言い聞かせる。

 

こんな私が曜ちゃんの隣にいてもいいのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場の出入口。

私は誰も通らなそうな壁に持たれて、片足をぷらぷら遊ばせながら曜ちゃんを待っていた。

遅いなぁ・・・、と思い、スマホの時計を見ると時刻は午後3時を回っていて、かれこれ待ち始めて1時間ほど経っている。

 

きっと、スクールの友達と話が盛り上がったんだろう、と納得させ、大人しく待っているのだが、あまりにも遅い。

 

待ちきれなくなった私は更衣室まで様子を見に行こうと姿勢を正した瞬間、曜ちゃんの声がした。

 

「千歌ちゃーん!!」

「あ、ぇ、よーちゃん?」

 

曜ちゃんは私の目の前まで走ってきて、肩で息をしている。

 

「はぁ、はぁ、ごめんね!遅くなっちゃった!」

「う、ううん。気にしないで。チカの我儘で今日は来たんだから」

「そんな訳にはいかないよ!せっかく千歌ちゃんの応援で優勝できたんだから!」

「そんな訳ないよ・・・」

 

いつもの私なら軽い冗談も混ぜながら、少しだけ調子に乗るのだが、さっきの話を聞いていたからか、否定してしまう。

 

「・・・千歌ちゃん、何かあった?」

「いいや、何も無いよ」

 

危ない、さっきのことが曜ちゃんにバレてしまうところだった。

曜ちゃんは私の顔を真剣な顔付きで見たあと、私の手を取る。

 

「うぇっ!?」

「千歌ちゃん、デートしよ」

「でででででデート!?」

「そっ。何かあったのは丸わかりだよ」

 

やっぱり、バレてた。

でも、私としてはこんな気持ちを曜ちゃんに知られたくない。

 

「本当に何でもないよ」

「嘘。何年千歌ちゃんの幼馴染みと親友やってると思ってるの?千歌ちゃんのことなんて、お見通しなんだから!」

 

そう言った曜ちゃんは私の手を引いて、会場を出る。

 

「わわっ!?よーちゃん!どこ行くの!?」

「言ったでしょ!デートだよって!」

「チカ、そんなにお金ないよ・・・」

「いいの!私の奢り!」

「えぇー!!??」

 

どうやら、曜ちゃんは私の話を聞くつもりはないみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーっ。遊んだ遊んだ!」

 

曜ちゃんに連れ回され、洋服屋さんやゲーセンなどを歩き回り、すっかり日が暮れてしまった。

 

というか、曜ちゃんは大会終わったあとなのにこんなに遊び回れるなんて・・・。元気だなぁ・・・。

 

私は疲れで少し項垂れる。

 

「千歌ちゃん?」

 

そんな私を見て曜ちゃんは私を心配してくれたみたいで、顔をのぞき込む。

 

「わわっ!」

「ごめんね、連れ回しちゃって」

「ううん。そんなことないよ。チカも楽しかったし」

「そっか!だったらよかった」

 

ニカッ、と笑う曜ちゃん。

その笑顔で私の心臓は速く鼓動する。

 

「千歌ちゃん、今日は遅いしうちに泊まっていきなよ」

「え?そんな悪いよ。まだバスだってあるのに」

「私が千歌ちゃんとお泊まりしたいの。だめ?」

「え、えぇ・・・」

 

曜ちゃんだって大会が終わったあとで疲れているはずなのに、お邪魔していいのか悩む。

 

私としては久しぶりにお泊まりしたいんだけど・・・。

 

「お泊まり、やめる?」

「やめない!・・・あっ」

「じゃあ、決定だね!」

 

上手いこと口車に載せられ、お泊まりすることになった。

 

「じゃあ、早速私のうちに、全速前進〜?」

「ヨーソロー!」

 

私としても願ったり叶ったりだから曜ちゃんの言葉に甘えることにした。

 

気がつくと私の曜ちゃんに対しての嫉妬と普通、というコンプレックスを抱いていたは嘘のように消えていた。

 

ありがとう、曜ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりにお泊まりに来たからか、曜ちゃんのお母さんは私を歓迎してくれた。

最近はどう?とかスクールアイドルは楽しい?とか曜ちゃんが迷惑かけてないか?とかたくさん聞かれた。

むしろ、迷惑をかけてるのは私の方で。

飛び込みやってるのにAqoursもやってくれて。曜ちゃんには感謝してもし足らないくらいなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、千歌ちゃん。一緒のベッドでいいよね?」

 

お風呂から上がり、曜ちゃんの部屋に行くと、寝る支度をしている曜ちゃんがベッドを叩きながら笑っている。

 

「えっ、一緒?」

「うん!いつもそうじゃん」

「いや、チカたちも高校生なんだから、流石に恥ずかしいし、狭いよ・・・」

 

曜ちゃんは私のことなんて小さい頃からの幼馴染みで姉妹みたいって思ってるかもしれないけど、私は違う。

でも、もしかしたら曜ちゃんも・・・、だなんてそんなことは無いと分かりきってるのに、つい期待してしまう自分が嫌だ。

 

「いいよ。フトンで寝るね。フトン出して貰える?」

「分かった。千歌ちゃんがそういうなら」

 

曜ちゃんはしぶしぶ別の部屋からフトンを持ってきて、それを床に敷く。

 

「ありがとう」

「いいよ。明日も休みでしょ?どこか行く?」

「もー。今日散々いったじゃん!」

 

フトンに潜っていつもみたいに明日のことを考えながら談笑する。

お泊まりの日の夜は決まってどちらかが寝るまでお互いが知らないことを話す。

それに終わりなんてなくて、気がつけば2人して寝ている。

 

「でね、その時ダイヤさんってさ・・・、よーちゃん?」

 

喋るのに夢中になっていて曜ちゃんが寝ているのに気づいていなかった。

私は体を起こし、本当に寝ているかを確認する。

 

「よーちゃーん・・・」

 

曜ちゃんの寝顔は久しぶりに見た気がする。

基本的に曜ちゃんは人に隙を見せようとしない。どんなに仲が良くても、例え血が繋がっていようと。

曜ちゃんのお母さんから聞いた話だと、お母さんには全く甘えて来なかったらしく、曜ちゃんが唯一甘えるのはお父さんだけらしい。

 

「チカじゃ頼りないもんね」

 

曜ちゃんのお父さんは海の男でとてもかっこよくて優しい。

曜ちゃんはそんな自分のお父さんが大好きで、周りから見るとファザコンに思われても仕方ないほど。

でも、普段しっかりしているからそのギャップが可愛らしい。

 

スヤスヤと眠る幼馴染みの頭をそっ、と撫でる。

 

「よーちゃん」

 

眠っているから聞こえているわけが無い。

でも、臆病な私はこういう時しか本心を言えない。

 

「ホントはね、よーちゃんが起きてる時にしっかり目を見て言いたいんだけど、チカにはそんな勇気がないんだ。チカは、よーちゃんの事が好き。あ、でもね。付き合いたいとかは思ってないよ。・・・・・・いや、付き合いたいけどね」

 

すると、よーちゃんは少し唸って寝返りをうつ。

いきなり動いたことにびっくりした私は肩が跳ねてしまった。ふーっ、と息を吐き、続きを話し始める。

 

「よーちゃんは普通のチカとは違って、なんでもできて、カッコよくて。チカの憧れで、ヒーローなんだよ。そんなよーちゃんに追いつこうと頑張って、見つけたのがスクールアイドルなんだ。もっと輝いて素敵になるまで待っててね。・・・・・・なーんて、恥ずかしいこと話しちゃった」

 

私はおどけて笑いながら、用意してもらったフトンに行こうとした。

 

「千歌ちゃん」

「え!?」

 

私の肩を掴んだのは言うまでもなく曜ちゃん。

 

ということは起きてたの?

 

「ごめんね。途中から起きちゃってて。起きようにも起きれなかった」

 

曜ちゃんは顔を赤くしながら、照れくさそうに言う。

私は恥ずかし過ぎて、軽く放心状態だ。

 

「その、千歌ちゃんが私を好きって言うまで、千歌ちゃんのことそういう目で見たこと無くてさ。どうしたらいいのか、よく分からない。ごめん・・・」

 

曜ちゃんはポツリ、と呟くように話す。

その言葉を聞いて、私は分かっていたことだから仕方ない、という言う気持ちと、期待して悲しい気持ちの半々だ。

 

「い、いいんだよ。これはチカのせいだから」

「だけどね、真剣に考えてみることにした。千歌ちゃんはもっと輝いて素敵になったら言うって言ってた。ずるいかもしれないけど、その時まで私も真剣に考えるよ。ダメかな?」

 

曜ちゃんは真剣な顔でそう言う。

 

「つまりチカ、フラれてない?」

「え、えっと・・・、そう、なるのかな?」

「そっか・・・。えへへ・・・」

 

私はそのことだけでも嬉しくて、顔が緩んでいるのが自分でもよく分かる。

曜ちゃんは曜ちゃんで顔を赤くして、私から目をそらしている。

いつもかっこいい曜ちゃんが可愛い反応をしているのが面白くて、私はいたずらをすることにした。

 

「ち、千歌ちゃん!?」

 

私はそっ、と曜ちゃん顔に手を添え、そのおでこにキスをした。

 

「これがチカの気持ちだから。忘れないでね」

 

曜ちゃんから離れ、微笑む。

曜ちゃんは茹でられたタコみたいにもっと赤くなる。

 

「な、ななななななななっ!?」

「もー、なって何?」

 

私は曜ちゃんの反応が面白くてクスクス笑う。

 

「だ、だって千歌ちゃん!きききききき!」

「えへへっ。ごめんね」

「ダメだよ。そう簡単にしちゃ・・・」

「んー。よーちゃんにしかしないよ」

 

話しているのを聞かれて吹っ切れちゃったのか、今やったことも心のブレーキはかからなかった。

 

「すぐそんなこと言う・・・。ずるいなぁ・・・。なんだか、今まで一緒に手繋いだり、お風呂入ったりしてたのが恥ずかしくなってきた・・・」

 

曜ちゃんは恥ずかしくなったのか、フトンの中に隠れてしまった。

 

「千歌ちゃん・・・」

 

曜ちゃんは顔を少しだけフトンからだし、少し潤んだ目で私を見る。

 

「なぁに?」

「次は私からだから・・・。おやすみ!」

「えっ!?ちょっとよーちゃん!?どういうこと!?ねぇ!ねぇってば!!」

 

私が理由を必死に聞き出そうと曜ちゃんの体を揺らすが、顔を見せないようにフトンに潜っている。

 

「もー!!よーちゃーん!!」

 

勇気のない私と恥ずかしがり屋の曜ちゃん。

私たちが先に進むのはまだまだ遠いようだ。




やっぱりようちかは王道でいいですね。
本音で話しているようで話せていない。でも共依存している2人の関係がいいですよねー。

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