東方歪天禄   作:スマート

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No.015「妖怪」

妖怪、それが日本に存在していて、圧倒的な種類の多さを誇り、人間では抗えない強さを持つものが居るという記述がある。

 

だが、日本人である僕としては馴染みの深いものであり、実際に会った経験はなくても、その数ある種類の一部を記憶しているのだ。

 

代表的なものを並べるなら「鬼」「河童」などがそうで、どちらも力強さに置いて類を見ない伝説が残されている。

 

伝説はあくまでも伝説だから、本当にあったこととは限らないが、幽香さんという非現実的な存在が居るのだからという議論は前にしたばかりだ。

 

能力という面で例を出すならば、「雪女」などの伝説が出てくる。

 

雪の降る日に現れ、人間を氷漬けにするなど、猟奇的でまさに妖怪じみたものだ。

 

まあ、能力の問題は僕にもその才能が宿っている限りを見て、妖怪だけの力と言うわけではないのだろう。

 

「ふふ、どうしてそう思ったのかしら、ほら人でないモノなんて他にもあるでしょう」

 

幽香さんは一瞬驚いたように目を見開き、その後すぐに悪戯を思い付いたとばかりに目を細めた。

 

答えだけでなく、そこに思い至った課程である方程式も必要らしい。

 

自分の頭の中でも上手く纏まっていない考えを整頓していって、やっと言葉に出来る頃には、窓から漏れる日の光は途絶えてしまっていた。

 

「いえ、普通に考えて日本の人じゃないものと言えば、真っ先に妖怪じゃないですか」

 

これに最後の方まで思いつけなかった僕は、日本人として恥ずかしい部類に入るのだろう。

 

照れて頭をかく僕に、幽香さんは暫く押し黙ったままだったが、やがて負けを認めたと手を肩の上へとあげたのだった。

 

「やるじゃない、直人は頭も使えたのね…戦術の幅が広がるわよ」

 

ほめ言葉の最後に、何やら物騒なモノが聞こえた気がしたので、素知らぬ顔をして流した。

 

 

頭の良さを直結でバトルセンスに結び付けてしまう彼女を見ていると、いつか僕は天にのぼってしまうのではないかとやるせない気分になった。

 

矢張りというか、当然というか幽香さんの正体…いや種族は妖怪だったようだ。

 

自分で妖怪だと答えたくせに、いざそれが真実だと分かると、物怖じしてしまう。

 

「妖怪と言っても、私は別に何処何処の何て言う妖怪って訳じゃないわ…

一人一種族と言うのかしら、つまり私独りの種族なのよ。

 

メジャーな妖怪…例えば「鬼」なんかは沢山の仲間が居たけれど、私は私でもう終わり。

 

あえて種族名を付けるなら「風見幽香」という所ね。」

 

幽香さんは綺麗な扇子を懐に仕舞うと、椅子から立ち上がり僕のそばに来て床に腰を下ろした。

 

「妖怪はね、どうして人と同じ形をして、人とかけ離れた力を持っていると思う?」

 

「…え、初めから強いんじゃ」

 

幽香さんの強さは初めから、産まれたときからそのままだったと、僕は無意識にだが理解していた。

 

だから、妖怪の強さについての質問は予想外だったのだ。

 

「ええ、初めから強い妖怪も居るわよ、でも全ての妖怪に共通した力の源がある…

 

人間だって食べないと生きていけないでしょう?

 

妖怪も同じ、形は違うけれど常になければ生きてはいけないモノがあるの」

 

暖かく甘い香りが部屋に満ちる、僕の身体もだいぶ暖まってきており、外はもう暗く夜が満ちてしまっていた。

 

幽香さんは此処で話を区切り、毛布ごと僕を両手で抱きしめ立ち上がると、またお姫さま抱っこのような形で、家まで送り届けてくれたのだった。

 

彼女は妖怪だった、ただ人ではないという存在では収まらず、伝記や創作物に数多く名前を残す東洋の怪物だった。

 

そして宿題のような形で出された、もう一つの問題には結局、僕は答えることが出来なかった。

 

妖怪について知っている知識が余りにも少なすぎたのだ。

 

絵本や漫画にでてくる「鬼」や「河童」までなら何とか覚えているが、何故彼らの力が強力なのかという話になると、分からなくなってしまう。

 

僕の知識はどこまで突き詰めようが所詮は空想であり、本物では無かったからだろう。

 

真実をかけらも知らないただの人間が、妖怪の力の秘密などという極秘情報を導き出せるかという方が無理な話だった。

 

いつか、図書館へ行く機会があったらこの事を調べてみたい。

 

妖怪についての記述を延々と調べていけば、その答えに到達できる気がした。

 

「さあ、明日は早いわ、今日は私が家まで送っていってあげるから、もう寝てしまいなさい。

 

博麗神社については明日教えてあげるわ」

 

流石に鍛えているからと言って、トレーニングを終えた後にまた家から幽香さんの小屋まで往復するのには無理があったらしい。

 

それに、僕の「電気を操る程度の能力」は暴走とは無関係に、僕の体力から電気を作り続けているらしかった。

 

気がついたのは偶然だったので、幽香さんにもまだ言っていない事だ。

 

これは感覚でしか分からないからか、幽香さんと出会うまでは分からなかったのだが、今まで気絶や身体が弱かったのは、思うにその所為だったのかもしれない。

 

暴走による電気の暴発は、体力を削って作られた電気が許容量を超えてしまった為に起こった事態で、体調とは関係なかったようだ。

 

それでは電気を操るではなく、作り出すという名前になるのではないか…

 

まだまだ僕の能力には分からないことが多そうだ。

 

世界には不思議な事が有り余るほど溢れている、一人の人間がその全てを知るには一体どれほどの時が必要なのか。

 

僕が此処最近の間で体感した不思議も、そんな世界中に混在している謎に比べれば、大したことは無いのかもしれない。

 

適度に体が温まり、外気と体温の境界が湯上がりに当たる扇風機のようにとても肌に気持ち良く感じていた所為もあって、

 

幽香さんの両手で抱きしめられながら、心地良い揺れに僕は意識を失ってしまった…

 

 

 

 




いつも読んでくださる人、たまたま読んでくれた人、どちらもありがとうございます。

何時になったら戦闘シーンが出るのだと、思っている人もいると思いますが、多分もう少し先のことになってしまいます。

それまでお付き合い頂けたら幸いです、どうかこれからもよろしくお願いします。
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