UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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本っ当に遅れました。
ネームレスや三人称視点ばっかだったので別の視点とかを書いては何か違うとか書き直したりとかやっぱりやめたりとかで時間をかけ、グラブルで四象が来て、なかなか書き終わりませんでした。
アンケート結果は後書きです
よう考えたら3の主人公ってルートによりますけど公式カプとしてアンリいますね。なんせ伴侶なんだから……つまり、かぼたんは浮気相th (うわ、やめろ、かぼたn……【YOU DIED】


変化

 

 

 

 

『と、まあ、そんなわけで現在法国の暗部の一人に神認定からの崇め奉られて、法国の鬼札から貞操もとい胤を要求されています』

 

『いや、どうしてそうなった』

 

 

 やや空が赤くなり太陽が地平線の彼方に沈みかけている最中、私は冒険者稼業を頑張っているであろうモモンガさんに緊急の連絡としてつい少し前に起きた事とそこからの顛末を伝えていた。

 レティシアの力を借りて無事蘇生した番外席次、死者復活よりもレベルダウンは緩和されているとはいえちょいレベルダウンした番外席次は指輪によるとちょうど九十ピッタリらしい。

 ともかく、そんな番外席次からの蘇生成功一言目によりアンデッド故にどうなっているのかわからない胃への痛みを覚えつつ、感涙故の滂沱から落ち着きを取り戻し正気になったクアイエッセから番外席次の行動に対して止めなきゃ間違いなく自害していたであろう程の謝罪を受け、暴走しだす前に番外席次を押さえつけた。

 

 

『え、いや、だから、竜王国救ったらなんか法国に目をつけられて神人オアプレイヤーかの確認をしに来た使者のうち現地人最強に襲われまして次元★断切しました』

 

『えぇ……というか神人って?』

 

『プレイヤーの子孫が先祖返りした実力がある人物らしいです』

 

『……うーんと、やっぱり法国はプレイヤー関連なんですね?』

 

 

 とりあえずクアイエッセから得たていの情報をモモンガさんに流しつつ、これからどうするかを考える。

 予定通りに盗賊団を討伐して、ブレイン・アングラウスは適当に逃がすか……で、その後は…………破滅の竜王調査の漆黒聖典と合流するか?いや、してどうする……漆黒聖典に実力を見せつけるか?

 いや、実力云々は番外席次を一回殺した以上こっちにかなり従順……従順?ぶっちゃけ原作のアルベドみたいに押せ押せな気がしないんだが……うっ胃が……。

 

 

『……スルシャーナ、確か俺と同じオーバーロードのプレイヤーらしいけども……なのに法国は人間至上主義……いや、王国や帝国に法国とかの外側をみれば亜人国家が多いらしいし…………ネームレスさんが救った竜王国なんて何度も何度もビーストマンに襲撃を受けてるから……人類を纏めるのに特定の敵を作るのは必要で…………』

 

 

 うーん、モモンガさん。伝言で独り言始めたぞー。

 まあ、とりあえずモモンガさんは置いといて現状の依頼とかを片付けた後、ナザリックとしての動きを考えよう。モモンガさんと話し合って多少変わるが人化の指輪でそれなりに人間性があるモモンガさんならすんなり受け入れてくれるだろうモノを。

 

 まずデミウルゴスにはスクロールの素材探しさせてるが……対象はある程度制限させとこう。まあ、間違いなく人間だろうが……せめて悪人、例えば今回の依頼の盗賊団などを対象にさせよう。そういえばビーストマンはどうなんだろうか、一つ試させておくか。上手く行けば法国に対して人類の味方ですよアピールしつつ竜王国のビーストマン狩りが出来る。

 次に聖王国………………やばいな。まっったく覚えてない、なんか目付きが悪い貧乏くじ引かされる少女しか思い出せない……ああいう娘結構好きよ。とりあえずその辺は調査してからにしよう。

 王国はとりあえず腐敗してる所を引きちぎる。あの八本腕だか足だかは悪人だろうからスクロールの素材に使えるだろう。

 帝国は…………あー、うん。フォーサイトと知り合ったからなぁ……出来れば生かしてやりたいところ。

 

 

 まあ、そこらはモモンガさんと要相談だな

 

「どうかなされましたか?神」

 

 あー、別に気にしないでくれ。ちょっと独り言だからな

 

 

 私の独り言に反応したのか、私の横を鷲馬で並走しているクアイエッセが声をかけてきたが適当に私はそれをあしらい、私と同じ馬に乗って私の腹に腕をまわす誰かさんに内心溜息をつきつつ独り言で思考し続けるモモンガさんに呼びかける。

 

 

『おい、戻ってこい骸骨』

 

『てことは八欲王はだいたい異形種狩りを騒いでたプレイヤーってわけで……恐らく例え異形種プレイヤーでもスルシャーナという前例がある以上人間を守る意思があれば彼らは従う気もあるわけで────なんだ、焼死体』

 

『独り言長すぎ。いや、自分の事言えないが……ともかく、納得した?』

 

『ええ、まあ、なんとなくは。それよりもネームレスさんだけイベント豊富でズルいなと思ってます』

 

『羨ましいだろ』

 

 

 モモンガは激怒した。必ず、彼の邪智暴虐の薪の王を除かねばならぬと決意した。

 そんな冗談交じりの怒気を見せる彼に私は笑いそうになる。誰か友人が一人いるというのは気分がいい、そもそもこの転移とてモモンガさんと一緒にではなく私一人ナザリックと共に転移していた場合だってあったのだ、彼と共に転移できたのは良い事だった。

 

 

『で、法国に対してどうします?陽光聖典は無傷で返すのが得策かと』

 

『それで我々二人が彼らと敵対するつもりは無いって証明すればいいんですね?……出来ます?』

 

『ぶっちゃけ下手に出ず、こちらの武力を見せつけつつ上位者として人類を守るというていさえ出せばいいんじゃないですかね。人類至上主義はまあ、一致団結に必要だったんでしょうから適当に少しずつ緩めさせて最終的に無くせばいいんですよ。スルシャーナの例を出せばいけますって』

 

『ちゃんとそれっぽい事を言いつつ微妙に不安を残す辺りやっぱりネームレスさんですね』

 

『おい、それはどういう意味だ。うちの孔明とかと比較するな』

 

 

 まったく失礼な話だ。人の提案をそんなふうに言うなんて……いや、まあ、うん、昔からそういうところがあるのは自覚してるから……。にしても本当にモモンガさん、なんというか言うようになったな。

 こう私の中のモモンガさんのイメージというか印象は自分の意見をあまり言わずちょいちょい微妙に遠慮しながら言うだけだったが……今はどうだ。こうなんというかずけずけ言ってくる……湯に入れて出汁取るか。

 

 

『一先ず法国に対しては色々と胃とか辛くなるでしょうがこちらを上位者もとい神として敬わせる方向で行きましょう……魔王ルートかと思えば神ルートか』

 

『考えただけで胃が……いま、人間状態ですから……実物があるだけに……うっ』

 

『やめよう、これ以上は胃に悪い』

 

 

 胃がキリキリし始めたのを感じてすぐに話を切り、次の事に移らせる。……くっ、不死人であっても胃痛からは逃れられないのか…………結晶トカゲかアンリがいればこの胃痛は治まるぞ。

 結晶トカゲ……適当に殴って倒した身体を持ち上げてみると意外とぷにぷにしていてとても癒された…………んぁ?……違和感があるようなないような……気にすることでもないな。

 

 

『とりあえず法国を助ける事を考えると自動的にナザリックの面々に人間を簡単に殺すなと言いつけないと駄目ですね』

 

『そうですね。……シャルティアには強く言い聞かせないと駄目だろうなぁ』

 

『あー、確か若干アホの子でしたっけ?ペロ助ェ……ついでに偽乳、両刀、ネクロフィリア……業が深すぎるだろお前』

 

『ペロロンチーノさん……』

 

 

 今亡きペロロンチーノの業の深さにため息をつく私とモモンガさん、いや決してペロロンチーノは死んだわけではないが…………うん、もしかしたらしばらくシャルティアを見る目が可哀想なものを見る目になりそうだ。

 アウラとマーレは言っておけばなんとかなるだろう、コキュートスやセバスは言わずもがな。

 

 

『問題はデミウルゴスとアルベドですね』

 

『私はナザリックでそんなに話してないんで知らないんですが……そんなにですか?』

 

『いや、あの二人、種族が悪魔じゃないですか。こうなんというか……オーバーロードならともかく今の人間状態で考えると悪魔的基準で……』

 

『あー……異形種状態でなら流せても人間状態だと悪魔の異質さは分かりますよね。例えば人間を羊扱いとか』

 

 

 意外と鋭いな。しかし、なるほど、人間視点だからこそ察せるものもあるのか……さりげなくデミウルゴスが人間を羊扱いする可能性を出しておく。

 これで最悪人間は悪人でも駄目だと言われてもビーストマンなら……となるかもしれない。多分。

 

 

『ま、その辺はナザリックに戻ってから話しましょうか』

 

『ですね』

 

 

 そう言って伝言を切り首を押さえる。……ううむ、身体は変わっても癖は直らないのか。

 さて、どうするか。

 

 

 まあ、なんとかなるだろう

 

 

 意識を思考から現実に戻して私は手元の地図を見る。銀級冒険者の報告より得た地図によればそろそろ件の盗賊団のアジトとなる。

 一応私の依頼だから、クアイエッセと番外席次はこの辺で待機させておこう……ああ、レティシアは既に転移門でナザリックに戻っている。

 

 

 それじゃあ、ここからは依頼なのでな。すまないがここらで待機してくれるといいのだが

 

 

 腹に回された腕を外して……流石レベル九十……力強いな、おい。ともかく、番外席次を引き剥がして馬から降り、クアイエッセらに告げる。暗についてくるな、と込めて。

 

 

「で、ですが……万が一にも」

 

「その万が一って殆ど無いようなものよね」

 

 

 私と同じぐらいのがそんなぽいぽいいるわけないじゃない。と正論じみた番外席次の言葉にクアイエッセは言葉が詰まったが………すまない。お前並みの実力者がぽいぽいいるユグドラシルですまない。

 ともかく、そんな二人を置いて私は盗賊団のアジトがあるらしい森へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 まずその姿を見た時に感じたのは嘲り。

 

 つい先日に十人余りでやってきたがあっという間に自分たちの用心棒に一人を除いて殺された冒険者たちを思い出しての事だ。

 自分たちを見下していた奴らがあっという間に殺されていく姿を見るのは大いに自分たちの自尊心を満たすのに役立っていた。

 冒険者が一人逃げたのは知っている。間違いなく冒険者組合に情報が行っているのだろう。そして殺された冒険者たちよりも強い冒険者が派遣される。だが、それがどうしたというのだ。

 自分たちの用心棒はあの男だ。周辺国最強の王国戦士長ガゼフ・ストロノーフと互角に渡り合った男だ。王国戦士長本人が出張らない限りこの盗賊団は安泰なのだ。

 故に現れた冒険者一人を嘲笑う。その胸に最高位のアダマンタイトのプレートが下げられていようが勝てるわけはなく。

 

 

 そんな盗賊団のアジト入り口の警護をしていた盗賊は決して自分たちが強くなった訳でもないのに目の前のアダマンタイトを殺せると信じてその剣を引き抜き────

 

 

 

 

 呆れた事だ。他者の強さで組織が強くなれども貴公が強くなったわけではないだろうに

 

 

 次の瞬間には装備の残骸とミンチとなった肉が混じったものが二つ出来上がり、アストラの鎧に身を包んだ騎士は肩を竦めた。

 振り下ろしていた武器を肩に背負い、そのまま堂々とアジトへと入っていく。なお、入り口にはそれを知らない人間────仲間以外が通れば分かる様に鳴子がかけられているが騎士はそんなもの関係無しと進む。

 アジト内に響く鳴子に盗賊団の者が武器を片手に嘲笑を浮かべながらやってくる。

 哀しいかな、誰も彼もが自分が強くなったと過信して疑わない。

 

 だからこそ彼らはガラクタと肉の合い挽きに変わる。振るわれるのは身の丈はある無骨な棍棒────否、それは牙である。古龍の牙をそのまま武器としたモノ、名を大竜牙……騎士セレネがユグドラシルで竜種のワールドエネミーの素材から作り出した神器級のドラゴンウェポンである。

 

 

 フンっ

 

 

 既に人化の指輪により若干のステータスダウンが発生しているとはいえ、この世界では到底辿り着けない────番外席次という例外はあるが────ステータスから振られる大竜牙は正しく竜の一撃と言っても過言ではなくて。

 一振りする毎に数人の生命が散る。

 思えば、セレネが直接的に人間を殺したのはこの依頼が初めてではないだろうか。

 番外席次?彼女はただの人間として扱うのは難しすぎはしないか、ともかくセレネ否『    』は 人を殺すのは初めてだ……だがしかし―――

 

 

 そう、初めての筈なのだ。にも関わらず私は……どうも思わない。

 

 

 正確に言えばそれは違う。決してどうも思わない訳では無いのだ。ただ、慣れてしまっていたのだ。

 ネームレス、『    』の感覚を侵す程のセレネの記憶。不死人の記憶はただの人間であった彼を容易く侵し、彼は違和感を感じられどもそうなのだ、と認識出来ないでいた。

 原作にてモモンガがその人間性を大きく失っている事に気がつかないように。

 

 

 まあ、気にするだけ無駄か。

 

 

 しかし、セレネはドラゴンウェポン・大竜牙を振るいながら、自分の中に湧いた疑問を薙ぎ払うように盗賊達を葬っていく。

 そうやってどれほど進んだだろうか、どれほど殺しただろうか。

 血濡れの通路を進んでいると、ふとセレネは足を止める。

 

 

「よお、何ともまあ派手にやったじゃないか」

 

 

 通路前方より姿を現した男。

 クセのある青い髪に無精髭を生やした軽装の青年。そして、セレネの目を引くのは腰に下げた刀、セレネは嘗て見た達人と名乗る男を思い出したがすぐに捨て置き、大竜牙をしまった。

 

 

 貴公がブレイン・アングラウスか

 

「…………ああ、そうだ。俺がブレイン・アングラウスだ」

 

 

 目の前で身の丈ほどの武器が唐突に消えたことに一瞬目を見開いた為か、返答にやや間が空いたがセレネはそんなブレイン・アングラウスに兜の下で笑みを浮かべつつ腰から剣を引き抜く。

 

 

「アダマンタイト……そうか、先日逃げた奴が組合に情報を届けたわけだ」

 

 そうなるな。周辺国最強の王国戦士長と互角に渡り合ったという男にはアダマンタイトでなければ駄目だろう?

 

「はっ、アダマンタイトじゃ足りねえよ」

 

 

 不敵に尊大な笑みを浮かべるブレイン・アングラウスにセレネは剣を突きつける。

 

 

 なら、試してみるか?

 

 

 私は強いぞ。そんな威を放つセレネにブレイン・アングラウスは尊大な笑みを歪め、獲物を狙う猛禽が如く鋭い瞳で刀を鞘から抜き放ち水平に構える。

 

 

「そうかい、なら俺の強さの為の踏台になってくれよ────」

 

 

 そうして、どちらが先かその刃を振るった。

 

 

 

 

 




アンケート結果
ドラウディロン……38
イビルアイ……26
カルカ……15
ラキュース……13
アルシェ……5
ネイア、エンリ、レイナース……3
ネム、ハムスケ……1

アンケート御参加ありがとうございました。
ドラウディロンの投票多いな、おい。2位と10以上差があるんだが……。というか、それ以前に何故にハムスケに入れた……NPCや対象外じゃないから有効票にしたが……
とりあえずこのアンケート結果によりドラウディロンはヒロイン確定って事になりますね……しゃあない竜王国にはもう少し大変な目にあってもらうか。ついでに聖王国にも

さて、しばらくネームレス視点や三人称視点がありますがきちんと他の、NPCの視点とかも書かせていただきます。
ところで、冷たい谷の踊り子って……イイよね


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