UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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2章クリアしました。楽しかった。屈服?何それごめん流石にやれないわ、あの娘に。
例のキャスター、真名予想したんですけど、半分あってて半分違くて笑った。北欧の異聞帯だから、あっちじゃなくてこっちだろ……と思ったんですがねぇ
ちょいと今回は短いです


前兆

 

 

 

 

 

 瞬間、幾度もの金属音が路地に響き渡る。

 

 

「チッ、いったいどんな素材で出来てんだッ!!」

 

 

 エ・ランテル、バレアレ薬品店の裏口付近にて二人の人物が激突していた。

 片方は金髪ボブカットの恐らく二十歳前後であろうスティレットを操る女戦士。

 それに対するのは竜を象った灰色の全身鎧を纏う重戦士ことアクト。

 常人では簡単には目で追えない速度で放たれるスティレットをアクトは尽くその大盾で防いでいく。

 

 謎の女戦士の連撃を防ぎつつ、アクトことパンドラズ・アクターはこうなった経緯を思い浮かべる。

 

 

 トブの森での薬草採りを終えたアクトらは多少の雑談混じりで陽が落ち切る前に無事エ・ランテルへと帰還した。

 漆黒の剣のリーダーであるペテルとモモンはそのまま依頼から戻った旨を伝えに一行から別れ冒険者組合へ、アクトと漆黒の剣の三人はンフィーレアと共に採取した薬草をバレアレ薬品店に保管するために運びに向かった。

 道中何かあるわけもなく、そのままバレアレ薬品店の裏口へと辿り着き、アクトは薬草の入った箱を持ち上げて────先に裏口から店へと入ったンフィーレアが唐突に声を上げたのを聞きその手を止めた。

 すぐさま漆黒の剣の三人と共に店へと入れば、そこにはンフィーレアと彼の前にいる黒い外套で身を包み片手でスティレットを遊ばせた金髪の女。まるで猫を思わせる嗜虐的な笑みとンフィーレアの反応から決して知人では無いことを悟ったアクトはすぐさまンフィーレアの前に身を出し、同時に放たれた一撃を受け止める。

 

 如何に変身対象……ネームレスの八割程の性能しか出せないとしてもワールドチャンピオンの一角の八割、いやそもそもレベル三十代が英雄級と呼ばれているこの世界においてそうそう彼らを脅かすものはなく。現地人にしてはかなりの速度の一撃にアクトはまず盾で上手く滑らせ、伸びきった女戦士の腕を掴みそのまま投げつけた。

 手加減したとはいえ上位者のそれにより、そのまま店の窓を突き破って路地へと出た女騎士はさながら猫のように着地し、苦々しくアクトを睨みつける。

 ここで漸く状況を理解したのか、漆黒の剣の三人はアクトの名を呼びかけ、それにアクトは三人にンフィーレアを任せ自分も路地へと出ていき────────こうして現在に至る。

 

 

 

 

「オラァ!!」

 

「…………」

 

 

 女戦士との戦いが始まって暫くは、獲物を狩るが如き嗜虐的な笑みを浮かべていた女戦士だが、自分の攻撃が尽くアクトに防がれるという事と熔鉄の竜狩り鎧にかすり傷とも呼べない僅かな傷しか付けられない事にだんだんと苛立ってきたのか、今ではもう当初の余裕のある連撃は形を潜め、余裕のない歪んだ表情のまま繊細さの欠ける攻撃をし始めていた。

 

 

(ふむ……金髪に黒い外套、そしてスティレット……最初は偶然と思っていましたが、この現地人にしては高い能力…………ネームレス様が仰っていたこの街に潜んでいる、この世界の実力者ですか)

 

 

 アクトことパンドラズ・アクターはモモンガと共に冒険者として活動する為にナザリックを出る際、あらかじめネームレスが調べ提出したエ・ランテルの実力者の調査書に記載されていた人物と目の前の女戦士が同一人物だと理解し、どうするかを考えていた。

 

 

(レベル的にここで倒すのは正しく赤子の腕を捻るより簡単でしょう…………ええ、物理的に簡単ですね。何せ、やろうとすればほぼ間違いなくそれを止めようとするシモベがいますからね!)

 

 

 そんな冗談めかした事を考えながら、目の前の女戦士をここで倒した際にどのようなメリット及びデメリットが生まれるかを考える。

 少なくとも女戦士とその仲間が企む何かを頓挫させられるだろう、しかしデメリットとしては女戦士の裏にいるかもしれない存在の情報が知れないこと。逃せば襲撃者を逃したという汚点は付けども何か起きた際に真っ先に向かい解決すればいい……

 

 

(さて、どうしましょうか……)

 

 

 自分だけの失態ならば我慢は出来るが、創造主であるモモンガにもそれが波及する可能性を考え出来うる限りここで捕縛する事を決めて────

 

 

「ぁあああ!!??」

 

「────何ッ」

 

「あはっ」

 

 

 唐突に店の中から響いたニニャの悲鳴にアクトはそちらへ注意が向いてしまい、その隙を突くように女戦士はその場から飛び退いて近場の壁を蹴り家屋の屋根へと飛び乗る。

 そんな女戦士にアクトは舌打ち、追撃をかけるのは諦める。無論、その気になれば一瞬で家屋を傷つけず且つ一撃で殺せるが重戦士がそんな速くに動いたのを誰かに見られれば面倒ごとになりかねないと判断した。

 

 

「ねぇ、アンタ名前は?」

 

「……アクト」

 

「ふぅん。ま、覚えておいてあげる……共同墓地に来い、そこで殺してやるよ。このクレマンティーヌ様が!」

 

 

 一瞬猫なで声でアクトを苛つかせたと思えば、次の瞬間にはその表情を歪ませ憎々しげにアクトを睨み殺害予告を告げる女戦士、クレマンティーヌ。

 そんなクレマンティーヌにアクトは大斧を向けて受けて立つ旨を告げる。なお、内心パンドラズ・アクターはわざわざ敵に名前と拠点をバラしたクレマンティーヌに呆れていた。

 

 

(いや、普通……そこはプライドが許さなくとも情報は隠すべきなのでは?……ちなみに私が同じ立場なら虚偽の情報を匂わせるのですが…………この方、プライド優先にしてますね)

 

 

 そのまま夜の闇に消えるクレマンティーヌに心中でダメ出しをして、つい先程の悲鳴を思い出しパンドラズ・アクターもといアクトは店の中へと駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、どういう状況だ」

 

 

 クレマンティーヌによるバレアレ薬品店襲撃からおよそ十分も経っていない頃、バレアレ薬品店にモモンガことモモンとペテル、そしてこの店の主人でありンフィーレアの祖母であるリイジー・バレアレが店へと姿を表し、モモンが三人を代表して店内の光景を見て声を漏らした。

 何やら溶けたような痕がある床、破砕した籠、そして微かに臭う腐乱臭。何よりも両腕の皮膚が溶けかけたかの様な有様のニニャの姿にボロボロなダインとルクルット、そんな三人を介抱するアクト。ンフィーレアの姿はここにはない。

 

 そんな光景に狼狽する二人を無視して聞いたモモンにアクトは申し訳なさそうな声音で仔細を話し始めた。

 

 

「……ここに薬草を保管しに来たのだが、我々が外にいた際に店内からンフィーレア氏の叫び声が聞こえてな、急いで入ってみれば武器を持った妖しげな女がいた」

 

「それで……?まさか、お前がいたのだから」

 

「……女を咄嗟にそこの窓から外へ投げつけてな、ンフィーレア氏に手は出させないようンフィーレア氏を漆黒の剣の三人に任せ、私は外でその女とやり合ったのだが…………」

 

 

 途中で話を区切るアクト、それを引き継ぐように今度は比較的軽傷のダインが口を開いた。

 

 

「一度、ンフィーレア氏を連れて冒険者組合へと移動しようとしたのであるが、どうやら仲間が来ていたようで……数人の魔法詠唱者に襲われニニャは腕を我々二人は吹き飛ばされ…………面目ないのである」

 

 

 意気消沈した表情と声音の言葉にペテルもリイジーも目を見開く。ンフィーレアが攫われたというショックが大きすぎたのかリイジーは膝をついてそのまま倒れ込んでしまったのを隣にいたペテルが受け止める。

 

 

「……アクト、その女は何か言ってたか?」

 

「墓場で待ってる、とさ。どうやら、まともな一撃を入れられなくて相当御立腹のようだ。虚偽の情報なんて考えないでいいほどプライドを優先していた」

 

「そうか……なら行くぞ」

 

「ああ」

 

 

 まるで友人の家に行くかのような気軽さでモモンは提案し、アクトは頷いた。

 そんな二人にペテルは驚き何かを言おうとして、その前にモモンはペテルへ視線を向けて口を開いた。

 

 

「我々の依頼者を攫った、こんな馬鹿にするような真似を許せると?」

 

「────」

 

 

 その視線と言葉にペテルは何も言えず、動けず、そんなペテルから視線を外したモモンとアクトはそのまま店を出ていき、そのままペテルの視界から消えた。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そう、か。

 

 

 ネームレス直下の諜報役兼護衛である八肢刀の暗殺蟲が告げた言葉にセレネは頷き、腰掛けていたソファーから立ち上がる。

 その際にいまだ背中に引っ付いていた番外席次を若干無理矢理引き剥がし、冒険者時に使っているアストラシリーズを着込んでいく。

 背負うのは冒険者としての異名『白晶』の元となった大剣。

 

 

「神よ……」

 

 クアイエッセ、私は冒険者としての働きに向かう……貴公らは待機せよ。何、下手人は分かっているし────これは我々が解決する案件ではない

 

「御心のままに」

 

 

 止めようとしたクアイエッセに先んじて釘を刺し、脚に引っ付く番外席次の首根っこを掴んで適当にソファーに放り投げ部屋の扉を開ける。

 

 

 番外席次、とりわけ貴公は部屋を出るな。もしも出て追いかけてきた時は………………ともかく、来るな。分かったな?

 

「はぁい」

 

 

 番外席次へと念押ししてからセレネは部屋を後にして、数秒後。

 ふと、クアイエッセは何かを思い出したかのように軽く天井を見上げ────

 

 

 

「あ、愚妹」

 

 

 

 

 神降臨で世界の彼方まで吹き飛んでいた今回の任務の内容の一つをポロリと口にした。

 

 




Twitterでも言ったんですが、この作品がだいたい原作でいう大虐殺辺りまで上手く進めたら並行してシンフォギア原作で別の書きたいと思ってます。チーズにするかは未定、チーズにするならもしかしたら先に短編の方にプロローグ的なのを投稿するかな?
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