UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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ちょいと遅れましたが投稿です。
風古戦場はあまり回れませんでしたね……



死の螺旋

 

 

 

 エ・ランテル共同墓地に恐怖の叫び声が上がった。

 

 

 その叫び声の主は共同墓地と市街地を分ける門にて職務を行っている衛兵たちのもの。何故に恐怖の声を上げているのか、それは簡単なことだろう。墓地で恐怖するなど死体が動いたか幽霊が湧いたかの二択ぐらい。

 そして、今回は前者だ。

 墓地から、奥から夥しい数のアンデッドが湧き出し、門へ目掛けて来たのだ。

 スケルトン、動死体では飽き足らず他にも食肉鬼(グール)内臓の卵(オーガン・エッグ)血肉の大男(ブラッドミート・ハルク)、骸骨弓兵など多種多様のアンデッドが湧いている。

 

 如何に衛兵たちが門及び壁上から攻撃を加えていても、アンデッドらの数もあり次第にその数を減らしていく。

 

 

「だ、駄目です。兵長!?」

 

「アンデッドの数が多すぎて────ァァッ!?」

 

「なっ!?」

 

 

 悲鳴をあげるように現状報告をした衛兵の一人が内臓の卵から飛び出た腸にその首を巻き取られ墓地へと引きずり込まれたのを見た衛兵長は部下が死んでしまうことに嘆きと憤怒に顔色を染めて、別方向から伸びてきた内臓の卵の腸を素早く切り裂く。

 

 

「くっ……このままでは門は破られこいつらが街に……いったいどうすれば」

 

「へ、兵長!?」

 

「どうしたッ────な」

 

 部下が何か恐ろしいもの────眼下の状況ほど恐ろしいものは無いが────を見たかのように声を漏らし、衛兵長は部下が震え青褪めながら指差した場所、アンデッドらの群れのやや奥を見て絶句した。

 いったい何だあれは。

 衛兵長は当たり前に、他の衛兵たちもそれを見てそう思った。

 

 それは彼らが一度たりとも見た事がない化け物だ。

 

 

 二、三メートルはある体躯にその四分の三近くの大きさなタワーシールドと一メートル少しはあるフランベルジェを持ち、血管のような紋様があちらこちらに走っている棘が所々に突き出た黒い鎧に悪魔の様な角を側頭部から生やした同じく黒い兜をつけた怪物。フルフェイスではないのか、兜の顔は開いており眼球の無い眼窩に煌々と揺らめく赤い光が灯っている腐りかけた動死体の顔が見える。

 まさしく未知のアンデッド。

 死の騎士(デス・ナイト)と呼ばれるこのアンデッドは決してこの世界に存在しないという訳では無いが伝説級である為にこうして未知のアンデッドとして扱われ、だからこそ衛兵たちにとてつもない恐怖心を抱かせた。

 

 

「アンデッドの騎士……」

 

「み、見たことないぞ、あんなの……」

 

「あんなのが来たら……もう、お終いだ……」

 

 

 恐怖心だけではない、その目の色には絶望と諦めの色が混じっている。もはや、抵抗する事すら諦めた彼らはその手に握っていた槍を弓を剣を落とし、床に膝をついて────

 

 

 

 

「死の騎士か、問題ないな」

 

「ああ」

 

 

 

 軽く、当たり前のように放たれた言葉がやけに強く彼らの耳に響いた。

 そして、次の瞬間には何かが二つ自分たちの頭上を通って、墓地へと降り立った。

 

 

「〈電撃球(エレクトロ・スフィア)〉」

 

「────────!?」

 

 

 着地と同時に灰色の全身鎧に大斧を持った重戦士がその大斧を振るえば周囲のアンデッドが軒並み破壊され、それにより生まれた空白に降り立った漆黒のローブを着た魔法詠唱者により放たれた雷撃の球は死の騎士へと着弾し、その身体を殆ど破壊した。

 しかし、どうやらそれだけでは死ななかったのか、邪悪な笑みのようなものを浮かべた死の騎士はその手のフランベルジェで魔法詠唱者を殺す為に足を前に踏み出し……膨張した雷撃がその肉体を完全に滅ぼした。その際に周囲の何十ものアンデッドを巻き添えにして。

 

 

「は?」

 

「……夢、か?」

 

「何が……いったい」

 

 

 突如として現れた未知のアンデッド。生きてきた中で最も強く恐ろしい存在が現れたと思えばそれがたったの二発……いや正確には一発の魔法で消し飛んだという事実に目の前の光景や状況が夢なのでは?と考え始めてきた衛兵たちだが、衛兵長はすぐに正気になり慌てながらも呆ける彼らへと指示を飛ばしていく。

 

 

「お、お前ら!武器を拾え!あのやばいのは消し飛んだ!」

 

 

 あまりに呆気なかったが決して死の騎士が弱い存在である、とは衛兵長は勘違いしなかった。あの魔法詠唱者が強すぎるのだ、と理解した。

 少なくとも魔法の知識を聞き齧った程度にある衛兵長は、死の騎士に使われた魔法が第三位階の電撃球だというのは理解し、且つ強化してもないのにあの馬鹿げた威力を見たのに侮れるはずがないのだ。

 急いで墓地の二人の方に視線をやれば既に奥へと進む後ろ姿しか無く、

 

 

「……俺らは伝説の一端を見たのかもしれん」

 

 

 慌ただしく動く部下達を余所に衛兵長の呟きは墓地に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、まったく。

 

 

 エ・ランテル市街地。その一角で、いったいどうやって共同墓地から出てきたのか分からない何体ものアンデッドたちが現れていた。

 墓地と市街地を分ける門にも現れていた死の騎士が二体、スケリトル・ドラゴンが数体、そしてスケルトンや動死体が数十体近く。

 スケリトル・ドラゴン自体はミスリル級がきちんと準備を整えチームで挑むならば勝てるだろう、スケルトンや動死体は言うに及ばず……しかし、その数が問題だ。

 何より死の騎士というこの世界において伝説級のアンデッドが二体。その二体から溢れ出る負のオーラに集まった冒険者たちも冷や汗を垂らし、数歩無意識に後ろへさがっていた。

 そんな彼らを近場の建物の屋上から見下ろしているセレネは手を兜の額に当てて首を振っていた。

 

 

 いや、確かに死の騎士はこの世界じゃあ伝説級だが…………はぁ、勝てなくとも挑む気概は欲しいものなんだが……

 

 

 レベル三十五を二体はやり過ぎたか。そう呟いて、大剣の柄に指を這わせる。

 そう、何を隠そう。この眼下のアンデッドや門に現れた死の騎士はセレネが用意したものであった。その理由としてはまず、セレネが知る原作ではこの日と同日に商人として調査をしていたセバスとソリュシャンが乗った馬車が盗賊に襲われるが武技を使う人間の捕縛を命じられたシャルティアに蹂躙され、アジトももちろん蹂躙され……最後に破滅の竜王の調査に赴いていた漆黒聖典が装備していた世界級によりシャルティアは洗脳。

 そして、それの討伐依頼が冒険者組合で組まれ、モモンことモモンガがシャルティアを打ち倒し結果としてアダマンタイトになる────が本来の流れであったがしかし、セバスやソリュシャンを襲うはずの盗賊団が既になくなればシャルティアが漆黒聖典と相対する状況はない。ならば、シャルティア討伐も無いためにモモンガのアダマンタイト昇格は無くなる。

 それを考慮し、セレネは今回のズーラーノーンによるアンデッド大量発生を利用したのだ。

 

 

 一応、殺しはするなって言っておいたし……スケルトンや動死体は巻き込んでいいって言ったからなぁ。

 

 

 さて、どうするか。ちらりと墓地の方向へと視線を向けて、すぐに大剣を掴み屋根を駆け出し眼下のスケリトル・ドラゴンへと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモンガ様」

 

「ああ……どうやら、セレネさんの事前情報通りのようだ」

 

 

 一時的に人化の指輪を外し、アンデッド特有の闇視を発動して墓地の奥を見てみればネームレスさんが調査して報告してくれた通り、何やら神殿のようなものがあってその前に複数人のローブを着込んだ怪しげな人間が何かをしている。

 確かズーラーノーンだったかな?

 アルベド曰く死霊魔術師(ネクロマンサー)のカルト組織とか何とからしいが…………あれ?死霊魔術師の最上位な俺がオーバーロードの姿でいけば終わるのでは?

 

 

「モモンガ様、お言葉ですが今回は冒険者としての地位を高める為…………それはやめておきましょう」

 

「いや、お前何ナチュラルに俺の心読んでるの……」

 

「息子でございますから」

 

 

 え、いや、それ理由になってないだろ。

 ……はぁ、まったく。それでどうするか。

 

 

「まあ、アレらを倒すのが正解なのでしょうが……」

 

「……ああ、お前が戦った……戦ったとは言えんか。ともかくクレマンティーヌとかいう女はお前に任せる。あの魔法詠唱者は私が適当に相手をしよう」

 

「一撃で終わらせるのですぐに戻りますよ、モモンガ様」

 

 

 まあ、一撃だよな。

 さて、行くか。私は人化の指輪を再び付け奴らのもとへ向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 




今回も短かったですね。戦闘は長くしたい……かもしれない
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