UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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前回投稿からそこそこに間が……
シグルド当たりました。やはり単発か
ところで今年の水着はジャンヌだそうですが……滾りますなぁ



雷撃

 

 

 

 霧と夜の闇が満ちる墓地の奥、謎の神殿のようなものの前で数人の怪しげなローブを着込んだ者らが何やら儀式の様な事を行なっていて────その中の一人がローブのフードを被っていない禿頭の男へと声をかけた。

 

 

「来ました、カジット様」

 

「……ふん、来たか」

 

 

 カジットと呼ばれた禿頭が視線を動かせばその先、街の方向から二人の人影がやってくる。片方は全身鎧、片方はローブ、両方共に銅級(カッパー)のプレートを付けた冒険者。

 カジットはそのプレートに怪訝な表情をする。

 最下級、すなわち銅級の冒険者がたったの二人だけであのアンデッドの群れをどうにか出来るものか、と。カジットとしては来るのはこのエ・ランテルに最近現れたという竜退治を成し遂げたアダマンタイト級冒険者だろう、と考えていたが来たのは銅級。

 首を傾げるがすぐにどうでもいいと考える。

 

 

「やあ、今夜はいい夜だな」

 

「まったくだ、かび臭い儀式をするには惜しくないか?」

 

 

 さながら茶を誘うかのような気軽さで告げられた言葉にカジットは苛立ち気に言葉を荒らげる。

 

 

「アンデッドの群れはどうした」

 

「吹けば散るような脆弱さだ」

 

「全部吹き飛ばしたに決まってるだろう?」

 

 

 さも当然のように告げた二人にカジットは見え透いた嘘を、と零し二人の冒険者を睨みつける。

恐らくどこかに伏兵が潜んでいて、目の前の二人は陽動なのだろうとあたりをつけて。

 

 

「ふん、貴様らなんぞにそんな事が出来るわけがない。どうせ、伏兵がいるのだろう?」

 

「フッ、信じるも信じないもそちらの自由だ。無論」

 

「すぐに理解するが、な────」

 

 

 瞬間、魔法詠唱者の手元に稲妻が迸り、カジットらへと襲いかかった。

 それに気がついたカジットはすぐさま近くにいた配下の襟首を掴み、自分の前へと突き出す。その際に生まれた反動を利用し他の配下からも充分に距離をとって────恐らくは雷撃(ライトニング)であろうそれは配下たちを炭へと変えた。

第三位階にしては威力があるそれにカジットは二人のプレートがこちらに対する偽装工作と見抜き────そんなわけはない────内心舌を打ち、声を荒らげる。

 

 

「クレマンティーヌ!貴様の出番だぞ!殺せ!」

 

 

カジットの叫んだ名前に冒険者の重戦士は一瞬、その手の大斧で反応したがそんなことに気がつくカジットではない。

 

 

「カジっちゃんさぁ、私に中にいろって言ったくせに出すんだァ」

 

「ふん、ワシだけでは時間がかかると判断しただけだ。貴様がいれば無駄に時間もとられんだろう」

 

「そりゃあそうだろうけどさぁ。まっ、別にいいけどね」

 

 

神殿の内部から姿を表したローブを着込んだ金髪の女、猫を思わせるその嗜虐的な表情は間違いなくその女がつい少し前にアクトが逃した女戦士クレマンティーヌだと理解させ、アクトは武器を構える。

 

 

「あぁ、約束どおり来てくれたんだァ……ふぅん、今度はお仲間と一緒ぉ?んじゃあ仲良くあの世に送ってやんよォ!」

 

「ぬかせッ」

 

 

嗤いながら一気に距離を詰め、そのスティレットでアクトを殺そうと鎧と鎧の繋ぎ目へと高速の突きを放ってきたクレマンティーヌに対して、アクトはその大盾を上手く使いその刺突を弾く、そしてそれを皮切りにクレマンティーヌはアクトの大斧の間合いを潰すようにアクトに張り付きながらの攻撃を始めた。

 無論、モモンはそれを見過ごすほど甘くはない────がそんなものはカジットとて同じだ。

 

 

「〈酸の投げ槍(アシッド・ジャベリン)〉!」

 

「チッ、〈衝撃波(ショック・ウェーブ)〉」

 

 

 クレマンティーヌとアクトの距離を離そうとモモンが魔法を使おうとすればすぐさまその隙をついてカジットが魔法を先んじて放ち、クレマンティーヌへ放とうとした魔法でカジットの魔法を防ぐ。

それを尻目にクレマンティーヌは曲芸師のような動きをもって着実にアクトへと攻撃を打ち込んでいく。

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「〈魔法最強化(マキシマイズマジック)魔法の矢(マジック・アロー)〉!」

 

「〈火球(ファイヤー・ボール)〉」

 

 

 カジットが新たに魔法を唱えればカジットの周りに四つほどの光弾が現れ、モモンへと殺到する。だが当たり前のようにモモンはそれを人の胴ほどはある火球で迎え撃ち、四つの光弾を飲み込む。

 その様を見る前にカジットはその場から距離を取り、すぐさま新たな魔法を紡ぐ。

 

 

「〈魔法最強化・盾壁(シールド・ウォール)〉」

 

 

 それにより不可視の壁がカジットの前面に出現し────その次の瞬間にはカジットの魔法の矢を飲み込んだ火球が炸裂、内部に溜め込んでいた火を撒き散らした。

 

 

「ぬぅぅぅ!!」

 

「存外、手こずるな……」

 

 

事前に発動しておいた盾壁により、炸裂した火のダメージを減らしたもののカジットは身体の所々に大きくはないが火傷を負い、それを見ながらモモン────モモンガはあくまで現地人の中でそこそこ強いだけで自分らからすれば雑魚同然という判断を切り捨てた。

確かにレベル百からすれば弱いが、それでも経験がある、実力がある。何もレベルで強弱を判断するものではない、とモモンガは判断しその上でカジットを倒すと決めた。

 

 

「〈魔法最強化・雷げ────!」

 

 

 その為に最強化した魔法を放とうとして、何かを感じ取ったのか唐突に魔法の詠唱を止めその場から飛び退いた。

 その判断は正しかったのか、次の瞬間モモンがいた場所に何かが勢いよく叩きつけられた。

 

 

「何……スケリトル・ドラゴンだと?」

 

 

現れたそれを見れば無数の骨が集まりドラゴンの形をしたアンデッド。スケリトル・ドラゴンがその尻尾を叩きつけており、モモンは面倒だと思いつつもそれごとなぎ倒すと考える。

 

「そうだ、魔法に対して絶対耐性を持つスケリトル・ドラゴン!魔法詠唱者にとって天敵である此奴を────」

 

「チッ……」

 

 

カジットの後方、神殿のような建築物の上空から更に二体ものスケリトル・ドラゴンが降り立った。

つまるところ、三体ものスケリトル・ドラゴンがこうしてモモンの前に立ちはだかった。

 

 

この世界において魔法とは神話でも見なければ早々第六位階以上という魔法は無い。現地人では帝国のフールーダと呼ばれる魔法詠唱者が第六位階に到達しているが、しかしスケリトル・ドラゴンには第六位階以下の魔法に対する耐性を持っているためにこの世界では実質的な魔法に対して絶対的な耐性を所持している、と言っても過言ではない。

だが…………

 

 

(スケリトル・ドラゴンは別に絶対耐性じゃないんだが……ああ、そう言えばこの世界第七位階なんて神話レベルだったかぁ)

 

「行けぃッ!奴を踏み殺せ!!」

 

 

カジットの指示に応えるように咆哮を上げてモモンへと殺到する三体のスケリトル・ドラゴンにモモンは飛行を発動し、するすると攻撃を回避していく。

その傍ら、モモンは視線を自分の相方であるアクトへ向ける。

 

 

「で?どうした」

 

「クソが!硬ぇんだよ!!」

 

 

超至近距離で刺突を繰り返すクレマンティーヌに体捌きで鎧の隙間への攻撃を上手く弾いていくアクト。

オリハルコンコーティングされたスティレット、というこの世界ではそれなりの武器とクレマンティーヌの常人離れした身体能力であっても凹みもしないアクトの鎧にクレマンティーヌは苛立ちを隠せず、アクトは余裕の態度である。

 

 

「さて、そろそろ煩わしい、なっ!」

 

「ッ────!?」

 

 

唐突にアクトの手がクレマンティーヌの腕を掴んだと思えば、そのまま投げられる。さながらそれはつい少し前、クレマンティーヌがバレアレ薬品店を襲撃した際にアクトにやられた事と同じようなもの。

投げ飛ばされた勢いが強いのか上手く体勢が立て直せないクレマンティーヌは空中で苛立ちを露わにして、

 

 

「ッア!?」

 

「いや、おい」

 

「なっ!?」

 

 

モモンを襲っていたスケリトル・ドラゴンのうちの一体の頭に激突しそのままその頭部を破壊した。

スケリトル・ドラゴンに激突した際にクレマンティーヌはややダメージが入ったのか、腰元から取り出したポーションを飲み、スケリトル・ドラゴンの首へと飛び移りその場で何やら片手でスティレットを持ち女豹のようなポーズを取ってみせる。

 アクトとモモンはすぐさま、それが本気の一撃の予兆だと理解しアクトは武器を握る手を強め、モモンはすぐさま魔法を発動できる様に準備をする。

 

 

「ぶっ殺す────〈疾風走破〉〈超回避〉〈能力向上〉〈能力超向上〉」

 

「武技……か」

 

 

 次々と発動していく武技にカジットはクレマンティーヌの勝利が確定したことにため息混じりに呟き、自らも早々に決着を付けるためにモモンへ視線を向け、仕留める隙を窺う。

 

 

「死ねッ!!!」

 

 

弦につがえた矢を引き絞るように身体を引き、その力を限界まで溜め込んだ瞬間にクレマンティーヌは撃ち出された。その際にクレマンティーヌの脚は足場であったスケリトル・ドラゴンの首を粉砕しながら。

魔法詠唱者であるカジットでは決して目に追えない英雄の領域に踏み込んだ存在の全力の一撃、避ける所か防ぐ事すら出来ぬソレはアクトの身体を容易に粉砕する様をカジットは思い浮かべ────

 

 

「〈シールドアタック〉」

 

「は」

 

 

それに合うように突き出された大盾はクレマンティーヌの一物をへし折り、ありえないそれに目を見開いたクレマンティーヌを余所にアクトはその竜狩りの大斧を両手で持ち掲げ、雷撃が迸った。

激しき雷撃迸る大斧は古竜の体躯を破壊する────無論、型落ちでしかないそれにそこまでの力があるのかは不明であるが……たかだか英雄の領域程度に踏み入っただけのただの人間を討つにはあまりにも、あまりにも強過ぎる。

 

 

「〈戦技・落雷〉」

 

 

大盾でタイミングを合わせ防がれたクレマンティーヌ、その硬直は長くクレマンティーヌ本人も掲げられた大斧から目が離せなかった。故に逃げる事は不可能、大斧は振り下ろされクレマンティーヌの肉を切り裂きその雷撃がクレマンティーヌの肉を焼き焦がした。

 

 

「な、な、な……」

 

「と、言うわけだ。こちらもこれで終わらせよう」

 

 

クレマンティーヌの死を見て言葉が出ないカジットにモモンは軽く笑みを浮かべアクトの大斧同様雷撃を手に纏い、詠唱する。

 

 

「〈連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)〉」

 

 

手からのたうつ龍の如き雷撃。第六位階以下の魔法に対して耐性を持つスケリトル・ドラゴン、その耐性を超える第七位階の魔法はそのままモモンより放たれ、そのままモモンのそれに気付かずにカジットはスケリトル・ドラゴンらと共に消し炭と化した。

 

 

 

「……ふぅ、アレだな。こうしてある程度縛りがあるとなかなか厄介に感じるな」

 

「それでも、飛び回って仕留めにくい虫程度の厄介さですが」

 

モモンガの言葉にパンドラズ・アクターは言葉を加える形で首肯し、この墓地に佇む神殿のような建築物へと入っていった。

 

 

 

 




ろくに活躍出来なかったスケリトル・ドラゴンさんたち
「「「(´・ω・`)」」」

今回は時間がかかり何か変な気もしますが……そこは目を瞑っていただけると……
ところでネームレスがダクソロールじゃなくてブラボロールだったら、どうなるのかと考えたら法国がエグい……恐ろしくなります

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