UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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今回もなんやかんやで投稿が遅れました。
理由としてはFGOの夏イベで少し創作について考えさせられたりしました。
Twitterで弱音を吐いた際には暖かいお言葉をかけていただきありがとうございました。
義務感で投稿するのではなく、楽しく投稿する。



合間の一幕

 

 

 

 ナザリック第九階層。

 ナザリックの中では居住区にあたるその階層にはBARや大浴場、美容院、雑貨屋、果てはエステやネイルサロンまである。そんな階層の奥に一つ、守護者や至高の四十二人ですら入るのに制限のかかる施設が存在する。

 その施設の名は教会。

 このナザリックにおいて崇拝し信仰する対象など至高の御方々をおいて他に存在しないわけであるがその教会は至高の四十二人を信仰しているというわけではない。かといって他の神を崇めているかというとそうでもなく、単純に教会という施設に近しい部屋であるだけ。

 さて、何故この施設に入るのに制限があるのか。それはこの施設が至高の四十二人の一人であるネームレスの第二のプライベートルームであるからだろう。

 ナザリックを手に入れ内装等の様々な作業を行っていた頃のギルド『アインズ・ウール・ゴウン』。その際に第九階層にいくつか部屋が余ってしまった事があり急遽として行われた『チキチキナザリック余り部屋は誰のものでしょうかゲーム』というイベントにて勝者の一人となったネームレスが獲得、二人目の自作NPCを設置し第二のプライベートルームとした。

 教会という施設にしたのは単純にその自作NPCに合わせた為である。

 

 寝室同様許可なくば入室を許さぬその教会。

 その扉の前で至高の四十二人が一人、この教会の主であるネームレスが護衛とメイドを連れて呆然と立っていた。

 

 

(……最後にここきたのいつ以来だったか。確か、三年前か?……最初の火の炉を造ってからはまったく来なくなったからなぁ)

 

(いや、それよりも動いてるんだよな。レティシアを見る限りあちらの世界での記憶があるっぽいからな。うぅむ……戦闘の可能性を考えなきゃ駄目か)

 

 

 まあ、それを考えたからこれなんだがな。そう呟きながら肩を竦めるネームレスの姿はいつも通りのファーナムシリーズと呼ばれる神器級一式装備。指輪は斬撃耐性や氷冷耐性、炎熱耐性ときっちりとしたものを選び、腰には愛用の双剣であるゴッドヒルトの双剣が下げられている。

 

 

 ……ふぅ、行くか

 

 

 息を吐き足を前へと進める。その際に付き従っていたメイドが教会の扉を開けようと手を伸ばすがネームレスは無言でそれを制し自ら扉を開く。

 扉が開き、廊下より教会内部が窺える。

 それはとても落ち着いた空間。静寂というのだろうか、そういった雰囲気が扉の前にいるメイドや護衛に感じ取らせ、そんな事はお構いなくネームレスは教会へと足を踏み入れる。

 無論、それに追従しようとするメイドと護衛だが、その前にさっさと後ろ手に扉を閉める。

 

 

「ネームレス様!?」

 

 ここより先は私と私が許した者だけの場。今宵はここにいる、貴公らは普段通りの仕事に従事せよ。いいな

 

「は、ハッ」

 

 

 兜の下で面倒くさそうな表情をしつつ、メイドと護衛に解散を言いつけ扉を完全に閉める。

 教会へと足を踏み入れたネームレスはそのまま敷かれた絨毯を歩いていきながら、視線を辺りへ向けていく。

 ナザリックの内装と比べれば二段階ほどはランクダウンしている内装、それは作成者であるネームレスがあまり華美にしたくなかった為で、静寂を感じるゆったりとした華美になり過ぎず尚且つ質素すぎないように調整したもの。

 ギルドメンバー最年長の死獣天朱雀からアドバイスを受けながら作ったそれはネームレスの心に安らぎを与えていた。

 

 

 ……最初の火の炉とはまた違った安らぎがあるな。

 

「それは良いことですね。亡者の王よ」

 

 ────ッ

 

 

 教会に女の声が響いた。

 その声にネームレスはその足を止め、前方を注視するがそこに女の影はない。では、とゆったりと後ろを振り向けばそこには嘗て自分が創り出した女が佇んでいた。

 禁欲的な修道服に身を包みフードを被った裸足の女性。

 

 

 エルフリーデ……

 

「ええ。御久しぶりですね、亡者の王」

 

 

 ネームレスの中にある嘗ての記憶と違いフードで目元まで隠していない彼女の微笑みにややたじろぎつつも、その腰に下げている武器の柄に手を伸ばす。

 しかしそんなネームレスの心中など知らんと言わんばかりにエルフリーデと呼ばれた彼女は微笑みを絶やさずにネームレスへと近づいていく。

 

 

(あれ……全然敵意が感じないのだが。いや、俺……私はアリアンデルの絵画世界でアリアンデル諸共彼女を殺したわけで……敵意を抱かれない筈がなくて……ええ?)

 

「?……ああ、いま私が貴方と殺し合った所で何も意味はありませんので」

 

 むぅ、いや、確かに……そうではあるだろうが

 

「こうして死んだ筈の私を甦らせたのはそもそも貴方でしょう……思うところが無いというのは嘘になりますが、我が妹の様に今生では貴方を王として仕えるのも吝かではありません」

 

 

 あまりに予想外な言葉にネームレスは兜の下で口を開き唖然とする。そんなネームレスに気づかずエルフリーデは近くにあった長椅子に腰掛ける。

 

 

  ……いや、待て。

 

「どうしました?」

 

 別に貴公が私に仕えるというのは私としても嬉しい話だ。その前に少し聞きたいことがある……貴公、貴公はこの現状……今生をどう認識しているんだ。

 

「今生をですか?……そうですね」

 

 

 今生、すなわちユグドラシルにてナザリックのNPCとして作られてからという事。

 先日、ネームレスがもう一人のNPCである火防女レティシアにも似たような質問をした際には嘗てとは違う世界にてネームレスがレティシアのソウルを基にレティシアの肉体を創った事で甦った、と返された。ネームレスはレティシアもエルフリーデも同じなのかそれとも差異があるのかを確認する為にこうしてエルフリーデにもこの質問をぶつけた。

 無論、やや混乱した頭を整理する為の時間稼ぎという理由もあるにはあるのだが。

 

 

「……貴方がアリアンデルの絵画世界にて私を殺し、得た私のソウルを用いて、このナザリックという領域に在る存在として肉体を創った為に私はこうして嘗ての記憶と共に甦った。そう認識しています」

 

「そして、このナザリックには至高の四十二人と呼ばれる上位存在、神々が如き者が存在していた……今では貴方ともう一人だけ。絶対の忠誠を誓う事は……難しいでしょうが少なくとも私は貴方の事を我が主、もう一人の御方も敬意を払うべきと考えています」

 

 そ、そうか……(レティシアと概ね同じ、と。にしてもエルフリーデが私を主と認めるなんてなんというか……考えつかん。これがユリアやヨエル辺りなら分かるんだが)

 

 

 そんな微妙な反応を返すネームレスにエルフリーデは首を傾げる。

 殺し合った相手である為に目の前の姿があまりにも想像出来ず、ネームレスは頭を抱えるばかりである。だがすぐにこういう事もあるのだろうと割り切り……割り切れてはいないが姿勢を正す。

 

 

 ま、まあ、とりあえず、貴公の考えはよく分かった。……では、改めてよろしく頼む

 

「ええ、どうぞよろしくお願いします。我が主」

 

 

 仕えられる側が立ったまま、仕える側が座ったまま。そんな些か奇妙な主従の誓いにネームレスは兜の下でクツクツと笑った。

 

 

 

 

 

「ところで、何故私にしたのですか?」

 

 奴隷騎士や闇喰らいよりも強かった、からだな

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 ネームレスが教会へとこもっている頃、同じくナザリック第九階層・モモンガの執務室にて部屋の主であるモモンガ、守護者統括アルベド、第七階層守護者デミウルゴス、そしてモモンガが創造した宝物庫領域守護者パンドラズ・アクターが何やら様々なものが書かれた書類を見ながら考え事をしていた。

 

 

「ふむ……やはり、法国の後に法国へ武威を示す為にビーストマンの群れを殲滅。この流れが一番か」

 

「はい、やはり法国を支配下に置く為には我々ナザリックの、ひいては至高の御方々の御力を示すのが一番であると愚考致します」

 

 

 書類を見ながら呟いた言葉に反応したデミウルゴスが胸に手を当て、意見を述べる。そんなデミウルゴスの意見にアルベドはやや顔を顰め口を開く。

 

 

「わざわざ至高の御方々の御力を見せなきゃならないの?そもそも至高の御方々の玉体を眼にするだけでも生命を捧げ感動する程の栄誉なのよ?」

 

「いえいえ、アルベド殿。あくまでそれは我々ナザリックの価値観。将来の彼らの子孫ならばともかく今の彼らにそれを求めるのは些か酷でしょう」

 

「パンドラズ・アクター……」

 

 

 文句を言うようなアルベドを窘めるようにパンドラズ・アクターが口を開き、そんな彼らを見てモモンガは内心頷いていた。

 

 

(いやぁ、パンドラズ・アクターを宝物庫から出してほんとに正解だったなぁ。俺が創ったNPCだから遠慮する必要も無いし、なんか俺の素も知ってるから気を抜いても大丈夫だし。……うん、あのわざとらしい派手な動きと喋り方がなくなるだけでこんなに感じ方が変わるなんて…………ほんと、ネームレスさんありがとうございます!)

 

(それに何より、こうして人間蔑視をするアルベドを窘める言葉をかけてる。頭ごなしに否定するんじゃなくて改善するようにしてる……うんうん、いいぞ!)

 

(貴方様に創られたこのパンドラズ・アクター。見事期待に応えてみせますとも!)

 

(お、おう……)

 

 

 互いにコンタクトする眼球が無い創造主と被造物による唐突なアイコンタクトが行われたのをデミウルゴスもアルベドも知ることは無くより一層計画は練り込まれていく。

 

 

「モモンガ様。このビーストマンですが調べましたところ、ビーストマンの革には第四から第六位階魔法が込められることが判明致しました」

 

「ほう、第四から第六位階魔法を……」

 

「はい。無論、第六位階と言いましてもどの個体も可能というわけでなく、ビーストマンの中でもとりわけ強力な個体のみ第六位階魔法を込められる革が得られました」

 

 

 デミウルゴスの説明にモモンガは手を顎に当てながら考えこみつつ、その視線をパンドラズ・アクターへと向ける。

 その視線に気がついたのかパンドラズ・アクターはアルベドやデミウルゴスに気づかれないように頷いた。

 

 

「デミウルゴス殿。つまるところ、今回のビーストマン殲滅に際してとりわけ強力な個体、すなわちリーダー格は捕獲するという事ですかな?」

 

「ええ、既に一体程捕獲していますが、一度に取れても精々片手で数えられるほど。安定した供給の為にはせめて五、六体は欲しいところでして」

 

「なるほど……アルベド殿、ビーストマンの軍勢の正確な数は如何程で?」

 

 

 デミウルゴスの言葉に頷き、その次にアルベドへと質問を投げればすぐに返答がくる。

 

 

「そうね、流石に細かくは分からなかったけれど、だいたい十万少しじゃないかしら?少なくとも十万は下回らないわ」

 

「それほどの数ならばリーダー格が数体……いえ、十数体はいてもおかしくありませんな。ならば、法国や竜王国へのアピールとなる首の為に殺してもスクロールの素材も確保出来ますね……」

 

 

 モモンガにもわかりやすく質問と解説をした、パンドラズ・アクターに心の中で礼を言いつつふとモモンガは心の中で頭を捻る。

 

 

(……これって別に俺が出なくてもいいんじゃ、そもそも竜王国には以前竜王国を助けたネームレスさんの方がいいだろうし、俺が一人で超位魔法を使うのとは訳も違うし……よし、ネームレスさんに丸投げしよう。うん、冒険ならともかく戦争は遠慮したい)

 

 

 戦争はネームレスさんに任せよう、そう考えながらナザリック側の軍編成に目を通していると、とある部分で目が止まった。

 

 

「む、アルベド。この死神部隊というのは?」

 

「はい、それでしたらモモンガ様が御創りになられた不死の戦士(デス・ウォーリア)で編成した部隊をネームレス様が直々に率いると伺っております」

 

不死の戦士(デス・ウォーリア)?……ああ、先日のか」

 

 

 思い出すのはつい先日の事。何やら実験に使いたいと言ってネームレスがデミウルゴスに用意させた騎士の遺体数人分を使って作成したアンデット。

 遺体を使って作った為、消えなかったのか……そうモモンガは納得し頷いた。

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 それに気がついたのは蛇によく似たビーストマンであった。

 平均的な成人男性の胴回りよりやや細めの身体をした鼻先から尻尾の先までが凡そ二メートル少しの蛇に人間の様な手足……無論、鱗が生え指の数は違い筋肉量も違うが、手足が生えた人間からすれば奇妙か醜悪な見た目の怪物。

 そんな蛇のビーストマンが何やら奇妙な物音に気づいたのは蛇らしく日陰にいたからだろう。

 舌をチロチロと出しながらその奇妙な物音に首を傾げつつも、好奇心が勝ったのか物音のする方向へと足を向けた。

 

 そこはビーストマンの溜まり場もとい集落に面した森の中。

 入り口ではない場所から入って凡そ数分もしない場所。

 薮を掻き分け、物音のする場所を覗いて見れば……そこには不審なものがあった。

 

 

「血……?」

 

 

 まるで何かを殺し解体した……いや、解体というには地面や周囲に溜まり飛び散った血の量が尋常ではない光景。

 よく見れば何か毛皮の切れ端のようなものが落ちていたりする。

 ビーストマンという面から見てもあまりに奇異なその光景に何か感じたことの無いものを抱き、本能が警鐘を鳴らし始め、すぐさまその場から離れようと蛇のビーストマンは一歩後退して────

 

 

やあ(Hello)

 

「あ────」

 

 

 肩……人間でいう肩と呼ぶ場所、腕の生え際へと置かれた冷たい感触と囁かれた音に蛇のビーストマンは固まった。

 振り返る事もせず、ただ目を見開き口を半開きに舌を出したまま蛇のビーストマンはそこから動けない。

 そんな蛇のビーストマンの反応にどう思ったのか、腕の生え際の感触は消え蛇のビーストマンは一瞬安堵の息を漏らそうとし―――

 

 

「ッア────!?」

 

 

 声にならない悲鳴が盛大に漏れ出た。

 それは右脇腹に生じた激痛が原因なのだろう、いきなり何か太いもので殴りつけられた様な痛みを感じ、蛇のビーストマンは膝を突いた。

 次の瞬間、今度は膝を突いた為に下がった側頭部目掛けて何かが直撃し、蛇のビーストマンはその意識が揺さぶられそのまま横に倒れた。

 殆ど潰れた視界。見えるのは赤、朱、紅。

 そして、倒れた蛇のビーストマンを見下ろすように立つ金と白の鎧に身を包み鉄塊とも言うべき武器を振り上げる一人の騎士が見た。

 

 

 

「さよなら」

 

 

 

 処理を終えた騎士は武器の血を拭き取り、その場に佇む。

その兜のスリット、そこから覗き見えるのは亡者の赤い瞳であった。

 

 

 

 

 




オリジナルモンスター
・不死の戦士(デス・ウォーリア)
……レベル五十台後半のアンデット系モンスター。ゾンビタイプで戦士系職業をとっており、死の騎士と違い比較的人間サイズ。
……鎧を装備させると見た目が変わるなど見た目が変えられる事で一部には人気だが死ねば装備しているアイテムを一部ドロップする、死の騎士よりレベル高いのに性能的に死の騎士の方がいい、などの理由であまり召喚されないモンスター。


ネームレスのNPC2人目は修道女フリーデです。おじいちゃんや闇喰らいよりも死んだ回数が多かった思い出がありますね。
何故、エルフリーデなのかと言いますと、DLCの中でエルフリーデが特に好きで、強く、後は主人公は暗い穴8つ持ちの亡者の王なので黒教会繋がりですね。

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