UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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ギリギリセーフ!
いやぁ、何とか今日中に投稿出来た……危ない危ない。
そこそこに難産でしたね……休日でネタも無く死んでたり、忙しかったりとしたせいでなかなか筆が動きませんでした。
でも、投稿出来たから許してください。

所でドルフロの代理人……いいよね



祈る者/吐き捨てる者

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓より凡そ北東方面にてあるは竜王国。

 嘗てネームレスがこの世界に降り立った際に初めて訪れた国であり、そして最初の戦場。

 

 偽りの竜王と呼ばれる女王、真なる竜王たる七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)が人間との間に作った子の子孫、竜王の血を八分の一ほど引いている彼女、ドラウディロン・オーリウクルスが治めている竜王国は今、嘗て無いほどの窮地に陥っていた。

 竜王国は何年も前からビーストマン達の脅威に晒されていた。

 竜王国を餌場と認識し、人々を喰らいに来ていた獣共の脅威に。

 三つの都市が落とされた、竜王国が有するアダマンタイト冒険者らを中心に何度も撃退はせれども大きく戦況は変わらなかった。

 そして、つい先日に竜王国の王都を襲ったのは数千ものビーストマンの群れ。もはや滅ぶかもしれない瀬戸際にて、それが現れた。

 

 戦神が如き騎士がその双剣を振るい獣共を尽く斬り殺した。

 まるで神話の如き戦場……否、神話の如き蹂躙を彼らは見た。

 

 王都を襲った獣共は駆逐された。

 それに女王も兵士らも冒険者らも国民たちも沸き立ち────

 

 

 

「巫山戯るな――――」

 

 

 女王は怒号のような嘆きのような叫びをあげた。

 もはや、万人受けを望んでの少女の姿を取っていられる程の余裕などあるわけが無い女王は本来の姿をとって玉座の間に訪れた兵の前で王威を露わにしていた。

 竜王の血を引いているだけあり、その露わになった王威に伝令の兵は過呼吸に陥り宰相の命令で他の衛士達が速やかに兵を連れて玉座の間から出ていく。

 さて、いったいどうして女王が今まで人前で使用していた少女形態を解き本来の大人としての姿を晒してこうも冷静でいないのか。それは今現在竜王国へと迫っている脅威、過去を見ても決して存在しない程の脅威にある。

 

 

「十万の軍勢……だと……!?」

 

 

 そう憎々しげに言葉を吐き捨てる女王はその傾国の美女とも言える美しい相貌を歪ませる。何を隠そう、今現在竜王国の王都へ向けて凡そ十万ものビーストマンの群れが侵攻しているのだ。

 未だ王都へ到着はしていないが既に一つの都市が落とされ、その都市から一割にも満たない民草らが王都へと逃げ込んできた。

 少しでも侵攻を遅らせようと兵士らや一部の冒険者らが向かったが多勢に無勢と言うべきかその大半が仲良くビーストマン達の胃の中へと収まってしまった。

 

 

「法国からは何も連絡はない……いったい、いったいどうしろというのだ」

 

 

 真なる竜王の血を引く女王、ドラウディロンだが彼女は条件を満たせば竜王の扱う切り札を切ることが出来る……がしかし、それを行うには王都の民草の命を生贄にせねばならず仮にやったとしても到底十万ものビーストマンなど殲滅出来ない。これが二、三万程ならば苦渋の決断として行っただろうが流石の数に無駄死にでしか無い。

 それを理解してるからこそ、ドラウディロンはどうしようもないこの現状に頭を抱えている。

 曽祖父である七彩の竜王へ竜王国を救う事を願った所でそれはきっと無為に終わるだろうとドラウディロンは切り捨てる。そもそも曽祖父と曾孫の関係ではあるが決して直接会ったことがあるわけではないのだ。ほぼ間違いなく救援は拒否されるだろう。

 もはや、絶体絶命。

 

 

「……そうだ、彼奴。彼奴なら……いや、如何に彼奴が強くとも十万もの群れに勝てるわけがない……」

 

 

 この脅威を乗り越える方法など、どこにもない。国民を連れて逃げようにも国民の数や逃亡の準備を考えればそれを行う前にビーストマンが王都へと着くだろう。仮に逃げれたとしてもビーストマンの脚と人間の脚どちらが速いかなど論ずるまでもなく……そもそもどこへ逃げればいいのか分からない。

 

 

「―――どうしろというのだ……!!」

 

 

 心の叫びを露わにするドラウディロン、それを聴いている宰相は心痛そうに俯き、ただただドラウディロンの叫びだけがこの玉座の間へと響いた。

 

 

 ビーストマンの群れが王都へ到着まで後一週間────

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……不死者か、私の姿が見えるのか?……面白い。人の身で私の姿を見る者は久しぶりだ……才もある」

 

 

 彼女と出会ったのは二つ目の鐘を鳴らして、そう時間が経っていない頃の事だ。

 最下層で助けた呪術師の男ラレンティウスにより呪術を昇華させた私は一先ずそれ以外の武器を鍛える為の素材を集める為に病み村を訪れ、ついでに最下層のネズミや侵入してきた闇霊より奪った人間性を混沌の娘……白姫に捧げようと考えその住居へと足を向けた時に私は彼女に出会った。

 

 

「お前も私の呪術が目当てなのか?……あのザラマンのように」

 

「ふうん。そうか、そうだな。だったら、お前を私の弟子にしてやろう。だが、私の呪術は、それなりの種を要求するぞ。お前に応えられるものかな」

 

 

 聴けば彼女も呪術師だという。ラレンティウスが知らない呪術というのに私は惹かれ、彼女に教えを乞うた……馬鹿弟子呼ばわりには何とも言えなかったが実際の所彼女の方が年齢的にも呪術師としても目上であるから、私はそれを受け入れた。

 その旨を伝えた際に思いっきり頬を張られたのは私としては辛い思い出だ。

 

 

「呪術とは、炎の業。炎を熾し、それを御する業だ」

 

「だがいいか。これだけは覚えておけ……炎を畏れろ。その畏れを忘れた者は、炎に呑まれ、全てを失う」

 

 

 彼女、師匠との研鑽は私にとってとても有意義な時間だった……彼女より教わった呪術は不死の使命をまっとうする為に大きな助けとなった。

 砦での巨人や鉄巨人との戦いに、神の都にて立ち塞がった竜狩りと処刑人との戦いに……友との殺し合いに。

 そして、火継ぎの為に王のソウルを集めるという新たな使命を示された矢先に私は師匠より聴かされた。

 

 

「一つ頼みがあるんだが……」

 

「私の母は嘗て最初の王の一人だった……最初の火の近くでソウルを見いだし……王となった力で自らの炎を熾そうとして……制御出来ずに、混沌の炎は母も妹たちも呑み込んで異形の生命の苗床にしてしまった……だが、私は、私だけは逃げ出してしまった……母も妹たちも、ずっと、ずっと苦しんでいるというのに……」

 

「だから、お前に頼みたい……どうか母を妹たちを……混沌の炎から解放してくれ……」

 

 

 そんな、まるで縋るような悔いるような声音の弱々しい彼女の言葉を姿を聴きたくも見たくもなかったのだろう。私は彼女の為に最初の死者でもなく鱗の無い白竜でもなく封じられた公王らでもなく真っ先に混沌へと挑んだ。

 そこで私はもう一人の友人を失った。

 そして、苗床を殺しそのソウルを奪った。

 

 

「ありがとう……お前に会えて、本当に良かったよ」

 

「もう、お前には何も教えることは無いな……そろそろお別れだ。短い間だったが、楽しかったよ」

 

 

 彼女の解放されたような笑みに私は荒んだ心が安らいだのだろう。

 

 

 目覚めの鐘がなった。

 冷たい谷のイルシールへと向かう最中に立ち寄ったカーサスの地下墓……その奥底に広がる燻りの湖……その先にあった懐かしいとは口にしたくない者たちが潜む遺跡にて私は彼女たちに再会した。

 物言わぬ混沌の娘、そして彼女を抱きしめ息絶えた我が師。

 いったい何が、どうして、そうなったのだろう。

 私は嘆き泣き叫び────────

 

 

 

 

 

 

「違う。それは俺じゃない」

 

 

 

 

 瞬間、視界の全てが黒い炎で塗り潰される。

 それと同時に割れたグラスが俺の手を傷つける。

 

 

「……寝落ちてたか」

 

 

 視線を動かせばいつも通りの俺の部屋が広がっており、俺は寝台ではなく椅子に腰掛けワインか何かを飲んでいたのだろう、手には握り割ったグラスがありワインが手とテーブルを濡らしていた。

 グラスの破片を握る手を開き、テーブル脇に置いてあったタオルで手を濡らすワインを拭い別の手で顔を覆い天井を見上げる。

 どうやら、人化していたせいで酔ってそのまま寝落ちしてしまったようだ。

 

 

「はぁ……最悪だ」

 

 

 寝ていた最中に見たあの夢……いや、記憶と言った方がいいのだろうか。

 記憶……決して俺の記憶ではない。例え、アレがこの身体の記憶なのだとしても俺のものではない俺は、俺にはあんな経験なんて一切無い。

 この世界に来てから、ネームレス……いや、セレネの記録が現実化し始めてから俺自身が気づかないうちに俺を蝕んでいた。そして、気がつけばこれだ。

 まるで本当の記憶のように俺は夢に見てしまっている。モモンガさんをモモンガではなく鈴木悟のままに出来てはいるが……肝心の俺がこれか。

 

 

「笑えない冗談だな」

 

 

 適当に割れたグラスを処理して俺は椅子を立つ。

 半分も残ってないボトルを直接口に運び飲み干してから、俺は部屋に置いてある姿見の前に立つ。

 そこに映っているのは髪色や彫りのある俺ではない男が黒金糸のローブを身にまとっている姿。『 』は、俺は別に髪が灰色がかってるわけじゃないし、白人のような顔じゃあない。

 鏡に映っているのは俺ではなくネームレス。なるほど、それはいい。

 この身体はネームレスであるから……だが中身は、中身がセレネでは駄目だ。中身は俺だ……俺でなければならない。

 

 

「俺たち風に言えば、(セレネ)のソウルが(『 』)の脆弱なソウルを喰らおうとしてるって所か」

 

 

 三度の旅を経て王となっている……最後は王ではなかったか、ともかくそんな不死人のソウルとただ転生した程度の人間のソウルじゃあ比較になんてならない。むしろ、こうして未だに俺が残っているのが不思議なくらいに。

 

 

「ハハ、ハハハッ……ッア」

 

───パキンッ

 

 

 乾いた笑い声が出たと思えば、俺はいつの間にかに姿見に手を叩きつけていた。鏡はヒビが走り映る俺の姿は歪みちゃんとした姿見としては使えなくなってしまったがそんな事は至極どうでもいい。

 俺はアイテムボックスから早着替えの指輪を取り出し、それを指にはめて黒金糸から指輪に登録していた装備へと切り替える。

 

 最初に火を継いだ不死人(セレネ)ではない、絶望を焚べる者(セレネ)ではない、火の無い灰(セレネ)ではない、あの時間違いなく(セレネ)ではなかった俺の鎧を身に纏う。

 異形の冠に歪んだ鎧、不死人ではなくワールド・チャンピオンの俺の鎧。

 大剣を装備して俺は姿見から離れ、扉へと向かっていく。

 

 

 悪いが俺は俺だ。もう、これ以上、俺はお前に近づかない。

 

 

 鎧を装備する前に見た、ヒビ割れ歪んだ姿見に映っていたまるで俺を嘲笑っていたような私に俺はそう吐き捨て部屋を後にする。

 俺からネームレスへと、しかしセレネには確実に線引きをして……。

 

 

 




暗月の不死人よ焼け落ちろ。

とりあえず、ドラウディロンと竜王国には絶望を投げ込んで起きますね☆
それと、今回はセレネという設定でしかなかった存在に自分が塗り潰されかけてることをネームレスが自覚し吐き捨てるのを書きました。
ちなみにクラーナ師匠は好きです。混沌の娘も、クラーグも好きです。

あ、ドラウディロンの容姿ですがまだ上手く自分でイメージ出来てませんがとりあえず金髪……長さは特に考えてませんね。大人版の顔としては傾国の美女だけども何処と無く幼さを感じれるっていう感じです。ええ、the大人の美女って、あまり作者が得意じゃないので
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