バジリスクに呪死させられたのにそのまま解呪せずにオンスモを倒す程度には頑張った。
前話を投稿して来た感想がほぼ太陽万歳だった。普通に吹いたわ
焼き鳥食べたい。
あ、Twitterで質問箱始めました。興味があったら来てね
それは唐突だった。
大地を揺らす無数の行進。
大気がうねる程の幾つもの咆哮。
気分が悪くなるほどの血の臭い。
それを感じとった村の人々は一様に間に合わなかった、と嘆いた。そんな大人たちを見て子供たちはいったい何なのかは分からないが言い知れぬ不安感、恐怖に襲われた。泣き出すもの母親へ逃げるもの家の中に隠れるもの色んな色んな反応をする。
そんな子供らを守るために女は子供らを連れて村の倉庫へ、男は農具や狩り道具にボロい剣や盾を握る。彼らは皆結果を理解していた。
だが、それでも、と抗う事を決めたのだ。
音が近づいてくる。臭いが近づいてくる。
より恐怖し逃げ出したくなって、それでもなけなしの勇気を振り絞って構え……
『ァアアア!!!』
獅子の様な獣、豹のような獣、虎のような獣、蛇の様な獣、猫のような獣、狼のような獣、猪のような獣、色んな色んな獣共が薮を突き破って村へと殺到した。
目は血走り、口からは涎を垂れ流し、その手足を乾かぬ血で濡らしながら獣はビーストマンの小さな群れが無辜の民草へと踊りかかった。ただ喰らうために、たた食欲を満たすために、ただお腹が空いたがために。
腕が振るわれ、尾が振るわれ、口を開いて、その度に鮮血が吹き上がり、悲鳴が上がり、ビーストマンたちの雄叫びが上がる。血肉を喰らい、血肉を大地に混ぜ、臓物の中身を撒き散らす。
そんなさなかにとある一匹が微かに人間では聴こえないような嗚咽を耳にした。
『キィヒャァ……』
愉悦の笑みを獣は浮かべる。そうして嗚咽の発生源を探し始めれば、何かを探す動きをする同胞に周りの獣らもその意図を察して探し始める。
一体だけならば周囲の騒がしさに見つける事は難しかったろうが複数体による捜索は嗚咽の方向を特定し、其方にある有人の建築物を特定していく。
目指すは一軒の倉庫。其方へ向かう何体かの獣らに別の獣らがついていく。そうして近くへといけば匂うのは獲物の匂い。柔らかで甘い子供や女の匂いに獣らは涎を垂らして倉庫を襲い殺到していった。そうすれば倉庫から響き渡るのは女子供の悲鳴や獣らが肉を貪る咀嚼音。
聴くに堪えない、見るに堪えない。
そんな血肉の狂宴に苛立たたしげにソレは足を踏み入れる。
踏み締めた地面に焦げ跡のような足跡が生まれる。
呼気と共に火の粉が吹き上がる。
そこに居るだけで空気が熱されていく。
真っ先に周囲の環境に変化が生じた事に気がついたのは配下の獣が連れてきた未だ産まれて数ヶ月程の赤子を喰らい一休みしようとしていた他の獣らよりも一回りは大きく白い体毛の獅子の様なビーストマン。
白獅子のビーストマンは腰を下ろそうとしていたのを途中で止め、すぐ様立ち上がった。何か空気が変わったのを感じとったのだろうか。
次に気がついたのは蛇の様なビーストマンたち。他の哺乳類に近しいビーストマンと違い爬虫類寄りであるために変化に気づいたのだろう。
そして、ソレが姿を現した。
捻れた螺旋の大剣を握り締め、片手に火を灯す薪の王。
人ならざる体躯から火の粉を舞わせ、炎をチラつかせるネームレスはまるで苛立っているように荒々しく大地を踏み締め、その兜から覗く亡者の赤い瞳はまるで熱視線の様な感覚をビーストマンに抱かせる。
『ギィアアア!!』
そんな熱視線に耐えれなかったのか一体の蛇のビーストマンがネームレスへとまるで恐怖を押し退けようとする様に奇声をあげて向かっていく。
ネームレスはその大剣を持たぬ手で向かってくるビーストマンの攻撃が当たる前にその蛇の鼻面に触れ────
邪魔だ
瞬間、ビーストマンは黒ずんだ炭へと変わった。
火炎領域最強であるネームレスが保持するパッシブスキル・『灼熱のオーラ』による炎熱系の魔法ダメージ。
そんなスキルによるものなどわからないビーストマン達は驚愕し一様に立ち上がり、突然現れた敵を殺そうと口々に吠え立てる中、リーダー格である白獅子のビーストマンだけは今すぐにでも逃げ出そうとしていた。
本来群れのリーダーに必要なものとは強さよりもまず臆病さである。それは群れへと迫る脅威を誰よりも早く察知し群れを率いてその脅威から逃れ生きる為である。無論、ただ臆病では誰もリーダーについてこないため強くなければならないが。
その点を見るにこの白獅子のビーストマンは優秀なリーダーであったのだろう。
『ぁ、ああ、アアァ……』
無理だ、勝てない、いや、それよりもコイツらはアレがなんなのか分かっていないのか?
凡そ三十代後半のレベルでしかない白獅子はネームレスとその背後の存在に全身から汗を流し、恐れ戦き、同時に部下のビーストマンたちがそれに気がついていないことに驚いていた。
灼けろ
ネームレスが左腕を振るえばそのまま炎の波がビーストマンたちを飲み込みにかかる。恐怖心を誤魔化そうとするビーストマンたちはそのまま炎の波へと自ら身を投じ、白獅子のビーストマンはその炎の波がまったくの別物に見えた。
巨躯の狼より放たれた何体もの、何十体もの狼の群れ。亡者の赤い瞳を煮え滾らせながらその牙の如き刃を振るい自分の肉を切り裂こうとする狼の群れに。
焼けた村だったもの。
幾つものビーストマンであった炭の塊が転がり炭として残らず灰と変わった村人たちだったもの。
そんな村の中心、広場の真ん中でネームレスは一人焚火の前で腰を下ろしていた。
火を灯す遺骨と灰と螺旋の剣。
不死人の拠り所でネームレスは一人火を見つめている。
「我らが亡者の王」
どうした
「生き残りが」
火を見つめるネームレス、その背後に跪く騎士が一人。
金色の鎧を纏い背に身の丈ほどの鎚を背負った騎士。ネームレス曰く、とある神ロイドを最高神と信ずる白教において最初の不死である聖騎士の装備を模したモノを身に纏った
その纏っている鎧から便宜上、その不死の名を与えられた彼の名はリロイ。
スキルで呼ばれたモンスターにも性格の違いがあるのか、それとも聖騎士であったその鎧と名前の持ち主が影響しているのか、アンデッド系モンスターであるにも関わらずカルマ値が善よりの行動をする彼の腕には幼い子供が抱きかかえられていた。
性別は
「は……恐らく少女と思われます」
そうか。そう口にしたネームレスは近くに転がっていた白獅子だったモノの腕を火に焚べる。
ならば、クワイエッセの下へ送るか。……火防女見習いにでもする
「はっ」
頭を下げそのままの体勢でその場に留まるリロイ、そんな彼に振り向かずネームレスはただただ火を見つめる。
ナザリックを留守にして二日、ネームレスはリロイを含む四体の不死の戦士を引き連れこうして竜王国内に侵攻し、途中から軍勢から離れ村を襲っているビーストマンどもを気まぐれに焼き払っていた。決して決戦となる日までに死ぬ村人達を憂いての事ではない、二日ほど前にネームレスが気がついた事柄に苛立ちそのストレスを発散しているだけだ。
しかし、ストレス発散を数こなしているがネームレスの中の苛立ちは寧ろ火に油を注ぐかのように燃え続けている。
……カーク、クレイトン、レオナール
「ここに……」
「村人及び獣の死亡を確認」
「……リロイの抱える幼子を残し全滅」
そうか……《
トゲの騎士カーク、放浪のクレイトン、薬指のレオナール。ネームレスの記憶にある不死人の装備を模した装備を与えられた彼らが戻ってきたのを確認し、ネームレスは指輪に込められている魔法を行使する。
不便だろうと余っていた指輪にモモンガが込めた魔法・転移門が発動しネームレスの横側に黒い歪みの様なものが発生し、立ち上がったリロイが子供を抱えたまま入っていく。暫くして出てきたリロイを確認してその歪みを閉じ、ネームレスは立ち上がる。
行くぞ
「「「「はっ」」」」
ネームレスと四騎士はまた次の村へと向かってその足を向けた。
今回は短め。
なんでクレイトンを選んだのかというと何となく。
多分、シーリスイベにも出たからかな?
焼き鳥食べたい