UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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おかしい。ショットガン記念に主夫高校生を書いていた筈なのに関わらず、俺はUNDEADを書いていた……なぜだ。

あ、一年越しの刑部姫当たった。



狂喜

 

 

 

 

 

 涙を啜る音がする。

 神へと祈る声がする。

 自暴自棄となり泣きながら怒声をあげる者がいる。

 どうしようも出来ぬ己を嘆く者がいる。

 

 そして、そんな民草の為に何も出来ず絶望に沈む女王がいた。

 竜王国の女王ドラウディロン・オーリウクルスは玉座の間で玉座に頭を抱えながら座り込んでいた。彼此数日間、彼女は現状をどうしようもない自分に対して、目前へと迫っている終わりに対して、自分の国民たちを救えないことに対して、ただただ絶望していた。

 逃げるにしても準備等で時間はかかり、人数が人数故に逃亡中に間違いなく追いつかれる。

 自らの力を使っても国民は死に絶え、決して全てを殺せる訳では無い。

 自らの無力さを責める彼女はそんな余裕を無いのか目元には薄く隈が出来、髪は少しはね、やややつれた様な表情と頬をつたっていた涙が乾燥し跡がくっきりとしている。

 他国へ向けた救援要請も突っぱねられ、もはや絶望の奈落へと堕ちていくばかり。

 いつもは宰相らしからぬ軽口を叩く宰相も口を噤み俯いている。

 

 

 

 だがしかし、何事にも希望というものはあるのだろう、玉座の間の外より響いた声にドラウディロンも宰相も顔を挙げさせられた。

 

 

「失礼します!法国より使者の方々が参りましたッ!!」

 

「ッ!?通しなさいッ!?」

 

 

 すぐ様宰相が声を上げ、扉を開かせる。

 使者が来た、という事はそういう事なのかもしれない。

 ドラウディロンにも宰相にもその心うちに微かにであるが光が見えた。使者と会うのに身嗜みが少々不味い自分の状態を忘れるほどに。

 

 

「此度の侵攻に対しての心中お察し致します……黒鱗の竜王(ブラックスケイル・ドラゴンロード)陛下」

 

 

 兵士に連れられ玉座の間へと入り、そのような言葉と共に礼をした法国の使者。

 入ってきたのは二人の男、内一人の事をドラウディロンは知っていた。竜王国が少なくない額の寄付をする事で応援として来る法国の特殊部隊の一つの部隊長の男。人混みに紛れ込んでしまうような平凡な顔立ちに頬に傷がついている金髪の男。

 陽光聖典の隊長。名前は、残念ながらドラウディロンは思い出せなかった。

 そして、もう一人。

 陽光聖典の隊長同様金髪の若者、白と茶のコートに腕輪の様な装飾の装備。その装備からして通常のそれではない事がドラウディロンにも見て取れる。

 

 

「さて、今回の件にて法国より例年通り陽光聖典、それに加え漆黒聖典より私、クアイエッセが参りました」

 

 

 膝をつきそう貼り付けた笑みを浮かべながら若者、クアイエッセが告げた言葉にドラウディロンも宰相も耳を疑った。

 

 

「ま、待て……一部隊に貴様一人?……あ、明らかに数が足りなさ過ぎる!?」

 

「今回の侵攻はいままでのものとはわけが違うのですよ!?」

 

 そんなドラウディロンと宰相の叫びに陽光聖典の隊長は背中に冷や汗をかくがその隣のクアイエッセはまったくもって意に介し無い。

 何せ、クアイエッセはどうにかなる事が分かっているから。

 

 

「ええ。分かっております。なんら、問題はありません」

 

 

 貼り付けた笑みは変わらず、クアイエッセは言葉を重ねる。

 

 

「此度。我らが新たに降臨なされた神がその軍勢をもってアレら獣の群れを尽く蹂躙するのですから」

 

「は?」

 

 

 クアイエッセの口から出てきたあまりにおかしな話にドラウディロンも宰相もまるで鳩が豆鉄砲を打たれたかのような表情と声を出した。

 そんな二人を見て、陽光聖典の隊長ニグン・グリッド・ルーインはなんとも言えないまるで哀れむかのような表情をしつつこれから起こる事にただただ諦めていた。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移り変わり、竜王国王都の外壁壁上。

 元漆黒聖典第五席次クアイエッセの言葉により宰相と何人かの衛士らと共に壁上へと足を運んだドラウディロン。

 彼女が目にするのはもはや後十数キロ程までに迫っているビーストマンの軍勢の姿。

 竜王の血を引いているが故に常人よりは身体能力の高いドラウディロンの視力が見せるのは口から涎を垂らしながら血走った眼をしているビーストマンたち。明確に絶望を視認したドラウディロンの顔色は真っ青である。

 だが、クアイエッセは違う。

 まるでヒーローショーが始まるのを待つ子供のように今か今かと待ち焦がれている表情を見せている。なお、クアイエッセの傍らに立つニグンとニグン率いる陽光聖典らは顔を俯かせている。

 

 

「クアイエッセ・ハゼイア・クインティア」

 

 

 そして、そんなドラウディロンらの意識を遮るようにクアイエッセの名を呼ぶ声がした。そちらへその場にいた全員が視線を向ければそこにいるのは一人の女性。

 修道女の衣服に身を包みフードを深く被って鼻から上が伺えない裸足の女性。

 そんな彼女を確認してすぐ様クアイエッセと陽光聖典らはその場に跪いた。

 

 

「おお、従属神様……」

 

「本当に竜の血を引いているのですね……」

 

 

 クアイエッセを無視し、チラリと修道女はドラウディロンに視線を向けたがすぐ様跪くクアイエッセへと視線を戻し口を開く。

 

 

「じき、始まるでしょう。貴方達はここより我が主の示される威を目に焼き付けなさい」

 

「はっ!」

 

 

 そう言ってクアイエッセより視線を壁外へと向ける修道女。

 周りの人間、ドラウディロンをはじめとする竜王国の人間らはまったくもって何事なのか理解出来ていないが陽光聖典もクアイエッセもそんなものはどうでもいいと立ち上がり修道女同様壁外へと目を向ける。

 そんな彼らにドラウディロンは本当に神とやらが何かをするというのか、と疑いつつも壁外へと目を向け────

 

 

 

 

 そこには幾つもの歪みがあった。

 

 王都壁外に横に並ぶ幾つもの暗い暗い歪み。

 ドラウディロンはその歪みを見て、熱を帯びた寒気が走った。まるでそこにおぞましいモノがいるかのように。

 いや、それよりもドラウディロンはその熱を帯びた寒気という矛盾したモノに覚えがあった。つい先日にそんなものを感じさせる者と出会っていた。

 

 そこにあるだけの歪みは揺らめいた。

 そうして、歪みより何かが現れる。

 

 それは騎士だ。

 槍を持つ者、剣を持つ者。

 竜王国や王国、帝国、自国と周辺諸国ですらそんな鎧を用意出来ない。そんな鎧を着込んだ騎士がぞろぞろとまるで軍勢の様にその歪みから行進して壁外に現れていく。

 銀色の全身鎧。二本の角を生やした兜を被った銀色の騎士たちが歪みから現れ隊列を組んでいる。

 

 壁外へと隊列を組んで並ぶ銀色の騎士ら、凡そ五千。

 それらが出たあと歪みは真ん中のモノを残して消えていく。

 

 残った一つ。また揺らめいた歪みから姿を現したのは銀色の騎士ではなく、いやそれよりもそもそも人型ですらない。

 ライトブルーの異形。

 蟲の様な大顎、多腕、冷気を纏う異形。一振りの太刀を握る武人の異形。

 

 そして、その後に現れるのは銀色の騎士と同じ鎧だが色が黒い騎士ら。

 彼らが手に持つのは武器では無く旗。

 王宮にある調度品の布ですら霞むほどの良質な布で作られたのであろうその旗は、風によってはためきながらその旗に施された紋様を見せつける。

 

 まるで削り出された水晶の様なモノとソレを中心に炎のような模様で縁取られた円。

 ドラウディロンらではなく修道女とその紋様の持ち主が見ればそれは『人間性』と『不死の呪い(ダークリング)』であると語るもの。

 

 そんな旗持ちの後を追うように現れるのは四人の騎士。

 金色の聖騎士、トゲの騎士、放浪の騎士、薬指の騎士。

 異形の武人に比べればその武威は弱いだろうがやはり、アダマンタイト級の冒険者を凌ぐ存在であろうことがドラウディロンには理解出来た。だが、だが違うのだ。

 彼らではない。そうドラウディロンは断ずる。

 あの歪みが現れてからドラウディロンが感じる熱を帯びた寒気の原因は未だにあの歪みの向こう側にいるのだ、とドラウディロンは本能で察していた。

 

 そんなドラウディロンに応えるように、それは歪みから脚を出す。

 

 瞬間、熱が湧いた。

 銀色の騎士たちが一様にその場で足踏みを始めた。

 黒色の騎士たちがその手に持つ軍旗をより高く掲げた。

 クアイエッセがその表情を狂喜的な笑みへと変えた。

 ニグンが畏れながらも尊いものを崇めるような表情を浮かべた。

 そして、ドラウディロンはその本能が、竜王の血が逆らうなと警鐘を鳴らし始めたのを感じ取った。

 

 

「(あ、死ぬ)」

 

 

 空気が熱を帯びた。

 竜王国に鐘が鳴り響いた。

 空に火の粉が舞った。

 

 

 その日、竜王国の民はみな一様に同じモノを見た。

 空は暗くとても暗く、太陽は黒ずみそれを縁取るように炎が円を描き、そしてその円より炎が、何かが大地へと垂れ流れているような奇妙な恐ろしい光景を。

 ただ、彼らはそれに暖かさを感じた。

 人間性の暖かさを。

 

 歪みより姿を現したのは一人の騎士。

 熱を帯びた螺旋の大剣をその手に持ち、炎を纏う焼け爛れた歪んだ騎士鎧に異形の王冠が兜の後頭部に戴く王威を周囲にばら撒く亡者の王。

 その威容は壁上から見ているドラウディロンらにも伝わり、衛士らは反射的に跪き宰相は尻餅をつきドラウディロンは放心状態に陥っていた。

 

 そんな彼らをよそにクアイエッセは狂喜乱舞しながら叫ぶ。

 

 

「おお、おお!我が神ィィイイ!!!アレが、アレこそが我らを御導きくださる新たな神ィ!!戦神たる炎の王!ネェェムレェス様ァァァ!!!」

 

 

 狂信者でしかないクアイエッセの反応に陽光聖典の者達はドン引きしつつもその視線はそれより離せなかった。

 

 戦神。

 亡者の王たるネームレスはその手に持つ火継ぎの大剣を迫り来るビーストマンの軍勢へと向け、

 

 

 貴公ら、蹂躙せよ―――――

 

 

 

 理不尽を振りかざしてきた獣の群れに理不尽が立ち塞がった。

 

 




ネームレスのエンブレムはダークリングの真ん中に人間性を配置したようなモノです。やはりダークソウルといえばダークリングと人間性ですからね。

ビーストマンへの立ち塞がる理不尽
……諸事情で苛立ってるストレス溜まってるネームレス、至高の御方の前だから張り切ってるコキュートス及びシモべ
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