UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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最近の更新速度が自分でもおかしいと思ってるこの頃。
でもここで失速するのはなぁ……と思う自分がいる。


灼熱の柱

 

 

 

 

 

『……ついに、ついに、手に入れたぞ、手に入れたんだ…………俺の、俺の太陽……俺が太陽だ……』

 

『……ああ、駄目だ』

 

『……俺の、俺の太陽が、沈む……。……暗い、まっくらだ……』

 

 

 脳裏に過ぎるは一人の青年。

 嘗ての時代では、世界ではありふれてしまった悲劇の一つ。

 太陽を求め、見つからぬ太陽に心折れそうになった際に生まれた隙間に身に割り込んだ蟲により悲劇を与えられた憐れな男。

 セレネにとって心が折れそうになるほどの悲劇。

 

 そんな、そんな、死んだ筈の、殺した筈の男が目の前に現れた。

 変わらぬバケツヘルムから見えるその瞳は亡者のそれではなく意思強きそれ、その身より感じるのは蟲によって穢された憐れな太陽ではなく、威風堂々たる暖かな太陽。

 四騎士(デス・ウォーリア)の様なガワだけの存在なんかじゃあない、正しく私の、俺の目の前に立つ男は────

 

 瞬間、俺は無意識に太陽賛美をしようとした自分を止める。

 太陽の戦士の誓約をした事があるから恥ずかしげもなくやれるだろうが、しかしここは戦場で俺は竜王国を救う存在として来ているわけで、コキュートスとかもこの場にいるわけで…………落ち着け俺。

 何か、此奴に返さねば……

 

 

 ……貴公、太陽の戦士か

 

「おお!わかるのか!!もしや、貴公……同郷の者だろうか!」

 

 いや、違う。俺は……ロンドール、そうロンドールの者だ

 

 

 そう彼に言って俺はビーストマン共へと向き直る。その際に構えている黒騎士たちに彼の事を気にするなと伝えるのを忘れずに。

 いったいどんな奇跡なのだろうか。彼はガワだけの存在なんかではなくほぼ間違いなく彼なのだろう、だがあくまでこの世界の彼なだけかもしれない。下手に何か聞くことは躊躇われる。

 

 

 このまま群れの中へと突っ込む。貴公ら着いてくるがいい

 

 

 黒騎士たちの無言の肯定に俺は軽く頷き、二発目の次元断切(ワールド・ブレイク)を撃つ為に炎が灯っていた火継ぎの大剣の炎を弱めてビーストマンの群れへと向かおうとして、

 

 

「む、ならば俺も行こう」

 

 ……好きにしろ

 

 

 俺の知る彼の様に意気揚々と告げる彼に後ろ髪を引かれるがしかし、それを何とか抑えややぶっきらぼうに応え、黒騎士たちと彼と共に群れへと向かっていった。

 

 ふと、思えば。

 意識の端にいた筈の月が何処かに消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

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 突如として戦場に参上した太陽の戦士がネームレスと共にビーストマンの軍勢の中に身を投じたのをコキュートスは見届け、戦場での戦いに目を見開いていた。────蟲王(ヴァーミン・ロード)に開く瞼があるのかは不明であるが。

 

 

「おお!」

 

 

 見かけは何の変哲もないロングソード、しかし確かに雷の力が宿っているそれを振るえば軽々と襲いくるビーストマンの身体を切り裂いていた。偶然かどうか、そのビーストマンらはネームレスが斬り殺したビーストマンと同様に焼き切られている。

 熊のように大柄なビーストマンであってもその剣は深々と切り裂き、皮下脂肪をその雷の力で焼いていく。一瞬の隙を突いてビーストマンが襲いかかればその左手の太陽のホーリーシンボルを描いた円形の盾でそれを弾き、逆に致命的な隙を作らせ切り裂く。

 ネームレスには劣るがしかし、モモンガが作り出しネームレスが装備を与えた四騎士以上の力を発揮する太陽の戦士。

 一介の戦士として、コキュートスは太陽の戦士と戦ってみたいと感じた。

 

 

 邪魔だ、灼けろ

 

 

 太陽の戦士の死角から襲いかかる白虎のビーストマン、それを察知したのかネームレスがその腕を伸ばし掴んで白虎のビーストマンの内に火を込める。

 最初はビーストマンですら気づかない小さな小さな火。だがしかし、次の瞬間には白虎のビーストマンの内で火は育ち内側から上半身を消し炭に変える炎へと成長してビーストマンを殺した。

 

 

「む、呪術か」

 

 なんだ呪術は嫌いか

 

「なに、そんな事は無い。ただ、少し懐かしいと思ってな!」

 

 

 ネームレスは太陽の戦士と背を合わせ囲んでくるビーストマンたちにその剣を振るっていく。

 

 

「ギィアア!!」

 

 煩わしい……!

 

 

 剣で胴を切り裂かれながらも蛇のビーストマンが上半身だけで飛びかかってきたのをネームレスは左手を前へと出し、その掌から黒い炎を出し飛びかかってきた上半身を焼き焦がす。

 そして、そのまま次のビーストマンを、そんな時にふとネームレスは止まった。先程から特に気にしてもいなかった事が唐突に疑問になったのだ。何故、自分は『呪術』を使っているのか、と。

 やろうと思えばスキルの応用で呪術紛いなことは出来る。例えば『発火』や『火球』などのモノマネは当たり前に出来るがしかし、ネームレスは先程から間違いなくそれが呪術である事を理解し、紛い物ではなく呪術として使っていたのだ。

 どういう事だろうか、そう思考を回そうとして……

 

 

「貴公!!」

 

「死ねぇ!!」

 

 

 立ち止まっていたネームレスを殺そうとつい先程灼き殺したギガントバジリスクのようなビーストマンと同じ種類のビーストマンがその手に握る剣をネームレスの兜のスリットへと突き入れようと迫り、太陽の戦士はそれを止めれず叫ぶ。

 太陽の戦士の叫び声にネームレスは思考の中から現実に戻り目の前に迫る剣をギリギリで回避し、反り返った火継ぎの大剣でそのままギガントバジリスクのビーストマンの首を刎ね飛ばす。

 

 

「貴公、大丈夫か?」

 

 問題ない……少し考え事をしてしまっただけだ

 

「戦いのさなかで考え事とは余裕だな、貴公!だが、気をつけろよ?」

 

 心配するな、蟲に寄生される様な失態はしない

 

「む……むむ……それは、うむ……」

 

 

 ネームレスの返しにバツの悪そうな声音で唸る太陽の戦士をその場に置いて、突っ込んでいく。その際に走りながら、反り返った火継ぎの大剣を振るい次々とビーストマンの首を刎ねつつその左手に黒い炎を吹き出させ足下へと落とす。

 そうすると地面を黒炎が走りうねるように進みビーストマンたちの足を灼いていく。

 

 

 『黒蛇』……いったいどういう理由かは知らないが……上手く使うとするか

 

 

 そう呟きながら近くにいたビーストマンの顎を掴み燃やしながら周囲のビーストマンへと叩きつけ、炎をより強く燃え広げさせる。

 ビーストマンを次々と灼き殺し斬り殺していくさなか、ネームレスは今まで感じた事の無いほどに生を自覚出来た。

 清々しく今までの苛立ちが嘘のように消えているのを感じれた。

 今ならばきっと何処へでも行けるかもしれない、そんなネームレスらしからぬポエミーな考えが胸中に湧き出たタイミングで、声が響いた。

 

 

『ネームレス様。こちら、デミウルゴスでございます……今しがたビーストマンの回収を完了致しました』

 

 そうか、ならばその場より退却。残りは俺が灼く

 

『はっ』

 

 

 ビーストマンの軍勢の後方にてスクロールの素材になる羊皮紙を確保する為に、ビーストマンを回収していたデミウルゴスからの伝言でネームレスの中にあった清々しさは一瞬で鳴りを潜め、一気にバク転をして太陽の戦士のもとへと戻っていく。

 

 

「む、おお!?き、貴公か……つくづく懐かしいモノを見るな、今日は」

 

 太陽の戦士、これよりビーストマンどもを焼き払う。ここにいれば巻き添えを食らうぞ、退け

 

「む、しかしだな。まだまだ数は多い、貴公だけでは……ぬぅ!?」

 

 

 渋る太陽の戦士にネームレスは軽く首を竦め、鎧の襟を掴みそのまま持ち上げる。

 そんなあまりに突拍子もないネームレスの行動に持ち上げられた太陽の戦士は驚くしかなく、

 

 

 言っても聴かんだろう。だから、強硬手段をとらせてもらう

 

「ま、待て、待ってくれ、貴公!ぬぅ、ぬぅああぁああ!!き、きこぉぉぉぉおおお!!!」

 

 

 そのままネームレスは持ち上げた太陽の戦士をそのレベル百且つワールド・チャンピオンが誇る筋力をもって投げ飛ばした。

 無論、太陽の戦士が地面へと叩きつけられて死なないよう、すぐに伝言を使用してコキュートスへ受け止めるように指示を出す。

 その際に戻ってこないように押し留めておく事も伝えておくのを忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 ……黒騎士たちも範囲外へと退いたか。

 探知の指輪を外し、アイテムボックスへしまう。その際に一つの指輪を取り出す。

 俺が創ったモノではない神器級装備、マァキ・ニーウ・ローゲ。たっち・みーさんにとってのコンプライアンス・ウィズ・ロー。

 その性能はギルド武器さながらのそれ、本来はコンプライアンス・ウィズ・ローと同じく鎧系であったが悪質人類種プレイヤーガチャで手に入れた二十の一を使って性能据え置き名前と装備種を変えさせて貰った為に指輪装備の癖して神話級以上の防御力を与えてくれる。

 これを付ければ実質神話級鎧を二つ付けているようなモノになるわけだ。

 

 

 《技術効果範囲拡大化(ワイデンスキル)》《剣盾反転(オフェンス・リバース・ディフェンス)》……

 

 

 スキルを三度使えば自身の防御力が弱くなったのを感じた……無論、弱くなっても充分番外席次の全力は受け止められるし、その代わり俺の身体に力が漲っている。

 さて、視線をぐるりと動かせばだんだんと距離を詰めて囲んでいるビーストマンどもがいるのをが見える。

 俺はいつの間にかに刀身が反り返っている火継ぎの大剣に火を灯し身体を捻る。

 

 

 レベル百且つ廃人プレイヤーが割り込めば所詮はこんなものか。

 

 まったく、モモンガさんの事は言えないなァ!!《次元断切(ワールド・ブレイク)》!

 

 

 炎を灯した火継ぎの大剣を俺は身体の捻りを戻す勢いそのまま、回るように薙ぎ払いワールド・チャンピオンの最強スキルを放った。

 

 

 

 

 

 

 瞬間、戦場は灼熱の嵐に襲われる。

 いつの間にか戦場の中心にいたネームレスが放った次元断切は放つ以前に使用されたスキルの影響を受け、その範囲と効果そして威力が高まりそのままネームレスを中心に広がる灼熱の斬撃の嵐となった。

 ビーストマンの軍勢の外周を誰にも知覚されずに駆けた悪魔たちによって戦場から逃げるという思考を失ったビーストマンたちが中心へ中心へとまるで砂糖へ群がる蟻のように殺到。そのまま中心より広がる灼熱と斬撃に自ら飲まれていった。

 そうして灼熱はビーストマンたちを飲み込むと徐々に徐々に本物の嵐の様にソラへと登っていきそのまま外壁よりも高く高く登る。

 

 そんな灼熱の柱と化した炎の中からネームレスがゆったりと歩いて現れる。

 威風堂々とした佇まい、正しく神話の一幕としか言い表せないその姿、異形の冠を戴く兜のスリットより覗く亡者の赤い眼光。

 その姿を見る者は等しく畏怖の念を抱く。

 クアイエッセはうわ言のように何事かを呟きながら気絶し、ニグンら陽光聖典は滂沱の涙を流しながら崇め、ドラウディロンは一切の抵抗なく庇護下に下ることを決め、宰相はドラウディロンを生贄にする事に決め、コキュートス及び四騎士らナザリックのシモべらは感動に身を震わせていた。

 そんな彼らを見てエルフリーデは微笑み、太陽の戦士はネームレスに対して一切物怖じせず太陽の様に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 火の粉が舞い、花が咲き、武器が墓標の様に突き刺さり、灰が、砂が、微かに舞う吹き溜まり。

 その中心にそれはあった。

 小山となった小さな炎と灰。

 突き刺さる一本の剣。

 刀身が捻れた螺旋の剣。

 

 そこに至るは一人の騎士。

 幾重もの試練を越え、王たちを玉座へ戻した騎士は遂にその螺旋の剣の前に辿り着いた。

 火継ぎの終わりを。

 火防女に瞳を授けた騎士は、終わりを望む。

故に手を伸ばす、螺旋の剣、その近くにあるサインに手をかざす為に

 

 手をかざし、現れるは────

 

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 騎士は至る。

 男は至る。

 黒い炎を滾らせながら彼は至った。

 

 亡者の王はここに至る。

 名も無き火の簒奪者(ネームレス)暗月の王(セレネ)の道程を一つ焼き払った。

 

 暗月の王の道程はあと二つ

 

 

 

 




オリジナルスキル
・剣盾反転……使用者の防御力と攻撃力がしばらくの間(60秒)反転する。あくまで本来のステータスと装備のステータスの合計値が反転するだけなのでスキルや魔法などで強化してから反転しても意味が無い。

マァキ・ニーウ・ローゲ
……ワールド・チャンピオン・ムスプルヘイムを決める大会の優勝賞品だった鎧の成れの果て。プレイヤーガチャまたは暗月ガチャでPKKをした際に手に入れた蛇で運営に性能そのままで装備種と名前を変えてもらった。
……長方形の黒曜石に九つの炎の様な宝石が嵌め込まれた指輪。

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